どわわわわわ さーしーえー
「…………」
「…………」
『────検索完了。
────対象種族名:ドワーフ。』
「ドワーフって、魔物だっけ……」
ちっこい、ヒゲまみれの、
ガタイの良さそうなおやじさんが、
両側から、頭を岩に挟まれて、
宙ぶらりんになってるわね……。
アレなんだろう……ヨロイ兜かな?
兜から、角、生えてるじゃないのよ。
だからあんな変な所に引っかかんのよ……。
「……何してんですか」
「な、何じゃい貴様……ぅおっ!? 金ピカじゃ!? 娘っ子! 貴様、金ピカじゃぞいッッ!?」
「ええ……よく知ってます」
よく鏡見て、ゲンナリするので。
「なっ!? く、クルルカンっ!? そんなっ!? 貴様、クルルカンかっっ!?」
「うおっ……あ、はい……」
ちょ、唾、飛ばさないでね。
ドワーフの人でも、クルルカン知ってるのね。
「なんと……つまり、おぬしは盗賊じゃな?」
「えっ……」
魔物じゃなくて、筋肉だった。
私は脱力した。
ちなみに私の筋肉は全身熱ダレ、ポッカポカだ。
急に気が抜けて、どっと疲れる。
「なんということじゃ……! こんな、ちんまそうな娘っ子が、こんな恥さらしな格好をして、犯罪に手を染めておろうとは……」
「……ははは、何だコレ涙でるな」
脱力している私に、
赤いヒゲのドワーフは、
なんか、容赦なく泣かしにかかってくる。
ヨトギサキ、出てこないでね。
この涙は、さっきの牛さんのとは、
ジャンルが違うから……。
【──こ、こやつ……!】
「──ん? クラウン、何か言った?」
『────否。過去2フヌの対話は、アンティ:ドワーフ間。』
「……気のせいか」
「く、ちくそうめ! こんなにうまいこと、岩の隙間にハマらなければのう!」
「すごいうまいこと岩の隙間にハマってますね」
「か、兜が……岩の隙間から、どうしても取れんのだ……」
「脱げばいいでしょ……」
「わ、ワシの頭と、兜はガッチリ、ハマっておるのだ……この体勢ではとれん……」
「つまり……」
「ワシの頭は、岩のスキマにガッチリなのだ……」
『───三段論法が成立しました。』
え、クラウンなに。
それってツッコミなの……。
「なんでそんな所に……」
「お、一昨日に、いきなり大量の魔物が空を飛んできてな……慌てた拍子に、上からズルっといったのだ……」
「! それって……」
もしかしなくても、
ドラゴンデライドの群れだ……。
あんのお魚の群れ、ここを通ったってことは、
やっぱり、レエン湖の方から来てたみたいね。
あれ、最終的には500位の数になってたからな……
そりゃあ、空を埋め尽くして飛んできたら、
ビックリして足、滑らすわね……。
「てことは! もう丸二日もここに挟まってるんですか!」
「そうじゃ……携帯食料で紛らわせたが、流石に限界じゃあ……盗賊の娘よ。命はやれんが、多少の貴重な鉱石なら、いくつかある……助けてはくれんだろうか……」
「あ、違いますよ……」
「ううっ、何じゃ、やはり物取りか……」
「ち、違う違う! その違うじゃなくて!」
そ、そんな悲しそうな顔しないでっ!!
「私、盗賊じゃありませんっ」
「なぬ? しかし、クルルカンの格好をしとる」
「いや、そうですけど……てゆか、"黄金の義賊"ですから、"正義の味方"でしょ?」
「なぁにを戯けたことを言うとる……」
「あああ。も、もういいですから……」
「何じゃい、期待させおって……腹が減ったのう……」
あ、だめだ……負の連鎖だわ。
クルルカンの格好、ぱねぇ。
何言ってもダメな時があるわね……。
も、もういいや。
とにかく、丸二日も宙吊りなのは、
あまりにも可哀想だわ。
ご飯もまともに食べられなかったみたいだし……。
無言実行。
とりあえず、助けてしまいましょ。
「よっと」
─────キィィ────ン!
「! おぬし……!」
キン!
キン!
キン!
キン!
キン!
キン!
キン!
左右の岩を交互に蹴り、
ドワーフさんの挟まってる場所まで、
ぴょんぴょんのぴょ──んじゃ……いって!?
「──ッ!」
ぐぅっ、からだおもっ……!
いや、そもそもこれ、筋肉痛なの?
全身やられてると、なんか麻痺してきてるわ……。
ジンジンして、
今日ねる時に、困るかもしれないわね……。
「ふぅ──。はい、こんにちは」
「……大した盗賊じゃ。この岩を、あんなふうにかけ登りよるとは……」
「だから違うってば」
誤解を解くのって、むずかし──なぁ……。
ドワーフさんの被っている兜を見ると、
立派な、ウルフの牙のような角が、
4本生えているみたいだった。
それが見事に、左右の岩肌に噛み付いている。
足を突っ張り、自分の身体を支え、
自由になった手で、角の部分を持ってみる。
ぐっ、ぐっ。
「お、おぅ? おぬし……」
「ずいぶんがっちり挟まってますね……」
「なんじゃ、助けてくれるのか?」
「ふぅ……黄金の義賊ですから」
「は! はは! 抜かしよる……じゃが、どうやら娘っ子の力では、この兜は、やはり取れんか……気持ちは有難いが……」
ふむ……。
「ドワーフさん。この兜って、大事なもの?」
「何じゃ、藪から棒に。やはり物取りか?」
「ちゃうちゃう。壊したら、ここから抜けられるでしょ」
「壊す、じゃと!?」
岩と岩の間に挟まり、
顔が動かせないドワーフさんが、
目だけをキョロっと、こちらに向けて、
たいそう驚いた顔になる。
「ば、バカを言え。これはそんな高価な兜じゃあらんが、俺が打った中でも、まぁまぁ丈夫なヤツじゃ! そ、そんな簡単には壊れんて……」
埒が明かないので、率直に聞くことにする。
少し角度を変え、目を見て話す。
「……答えて。もし、私に、その兜を壊す力があるとして、それをして、あなたは平気?」
「……! お、おぬし……恐ろしく、深い金の眼をしておるのお……!」
やれやれ。
母さん譲りのステキな目も、
今は、会話の腰を折る調味料になった。
「その眼……どこかで」
「ど・う・な・の」
「あ、いや……」
少し、むすっ、としながら聞く。
「……愛着がある」
「ん。わかった」
とても好きな表現だった。
私も自分の周りの物には、
愛着、感じまくり。
それに免じて、機嫌を直すことにする。
てことは、破壊するなら、岩のほうだ。
「ドワーフさん、手で顔、隠して」
「? 何をするんじゃ?」
「岩のほうをぶっ壊す」
「おぬし、気は確かか?」
「……破片が顔面に跳びまくるけど、忠告はしたわよ?」
「なっ、ちょ、待て」
サッ! っと、
ドワーフさんが、顔を手で隠した。
素直でよろしい。
ゴツゴツした、四角張った手だ。
! そうか、ドワーフ……。
"職人の手"ってやつかもしれない。
(クラウン、手を傷つけそうな破片は、歯車で保護)
『────レディ。黄金の魂に誓って。』
……な、なに、今の恥ずかしい締めくくり……。
いい?
殴るわよ?
(ナックル)
────ガチャん、ぷしゅ。
「いくよ」
「おおっ」
────しゅ。
───────ぐごォオオキィィ─────ん!!!
───────ドぉん!! バラバラバラ……!!
「──どわっ!? どわわわわわわわっ!!?」
頭と兜を挟んでた岩が、
私に破壊されて、ひろがる。
ドワーフさんは、自由落下だ。
ここは、地面まで7メルはある。
────たかいよ?
「どわっ、とぉ!?」
「よいしょ!」
────パシん!
左右の岩と岩の間に両足で突っ張り、
ドワーフさんの手首を掴む!
おお、なんかガッシリしてるな。
ちっちゃいけど、流石ドワーフ。
筋肉ぎっしりだ。
いたたた……。
「おっ、おぬし……!」
「降りるよ?」
「なっ、ぬっ? どわっ!?」
軽くドワーフさんを上に投げ、
私もそれに追いつき、
空中お姫様だっこである。
小さな筋肉だっこである。
うん、仕方なく、である。
そのまま、ひゅ〜〜っと。
7メル下まで落ちる。
まぁ、すぐよ。
──キキィン。
全身だるいとはいえ、
こんくらいの衝撃は、寝ててもころせるわ……。
……すんません、ナマ言いました。
丁寧に、ドワーフの筋肉お姫様をおろし、
胸に手を当て、軽く一礼する。
「ようこそ、地上へ」
「……こりゃあ、参ったな」










