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夜伽に咲きしは幻の さーしーえー

(^ω^)ちょい短め。

 


 しずんでいく。


 しずんでいく。




 真っ黒か、真っ白か。


 光っているような、暗闇のような。


 広さもわからない、空間を。


 知らない間に、仮面が、ない。


 手を、見た。


 黄金のヨロイも、纏っていない。


 産まれた姿で、落ちていく。


 私は、ただの、女の子。


 そうだ、そうだね。


 嫌な感じはしない。


 よく、わからない。


 やさしく、ただ、ゆっくりと、


 しずんでいく────。




   ピ コ ん。



─────────────────────────────


 "さいしょ の むねあて" に


 "どらいぶ" が セット されました


 実行しますか ?


  ▼はい

   いいえ


─────────────────────────────




  しゃんら しゃんら


    しゃんら しゃんら


   しゃらん────……。




【──ちょいと、休んどき──……】



(あ……)



 眠る前に、


 何度も、夢の中で聞いたような、


 そんな、声がした。









 舞った。



 何がだ。



 斧だ。



 破片だ。



 大きな(・・・)斧の(・・)破片(・・)



 ────断たれている(・・・・・・)



 振り下ろされた、血鉄の、



 悪意ある、魔物の武装が。



 まるで、食材のように。



 絶対的に、裂かれやがった(・・・・・・・)



─────────────────────────────

 >>>な……

─────────────────────────────


『────かの、じょは──……。』


 意思を持つ、王冠が、言う。

 無機質なその器とは裏腹の、

 感情を含んだ、戸惑う声で。


『────あなたの、力を使うことを、良しとは、しない。』


 彼女の意志をくみ取り、

 思いやり、言う。


『────あなたを、戦いに晒すことを、彼女は────。』


【──言うな、(かんむり)……】



 その(こた)えは、他ならぬ、彼女の口から。

 だが、その意志は、黄金のソレではない。


 その金の意志は、わずかに黒に、包まれていた。




【──俺っちにもなぁ……】

挿絵(By みてみん)

【──俺っちにも、"(じょう)"っちゅうモンがあんのじゃ──】




 ヨロイはまだ、光を帯び、

 その観てくれは、変わりつつあった。



 両の足。

 凹凸のある装甲と足履きは、

 その足の曲線に沿うようにしまり、

 女性的な印象を、(かも)し出す。

 美しい流れの中、

 菱の装甲だけが発起し、

 綺麗に、(もも)まで連なりやがる。


 胴。

 血肉の鎧の赤は散り、

 (まばゆ)い金の骨格だけが、

 その柔らかい腹を包みあげる。

 胸元の白甲の乳房(ちぶさ)だけが変わらず有り、

 淡く光を放ち、存在を示す。


 両の手。

 手を覆うはずの甲殻は吹き飛び、

 足の首に収まりよる。

 先は、化け物の爪と化し、

 金の刃は、見るをも切り裂かんとす。


 羽織。

 白金の衣には、金の花が浮かび、

 わずかに、いぶし黒が浮き上がる。

 紳士を思わす外套は、

 今や天女の衣となる。

 両の腕に絡む光の黒は、

 爪のおぞましさを、

 わずかに殺しよる。


 面。

 賊の仮面は曲がり、(きし)み、

 裏の装甲は、まるで二本の、角。

 目下の紋様から、牙の意匠が裂き出よる。



 ────"鬼"。


 (きん)女鬼(めおに)じゃ。


 色香と、爪を(まと)いよる────。



【────俺っちを戦わさんとす、安嬢(あんじょう)の心意気には、悪いけんどもな……】



 金の二つ結の髪が(ほど)け、

 上からストンと、流れるように光る。

 少しだけ、黒の艶が、混ざり始める。


 ────しゃらりと、なびいた。



【────"娘"っ子、()ァで()っ叩かれてよォ…… 】



 黄金の瞳と、黄金の鉤爪。

 優美な姿に不釣り合いな。


 涙がにじみそうな怒りで、

 縦に裂けた、化け物の瞳。

 ギャリギャリと鳴る、刃。



【────俺っちが、黙っておいたると、思うなよォ──?】



 ────ギロりと。



 その眼光を見て、(おろ)かな化け牛は、

 確かに、気圧された。



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