喰われかけたので、逃げたなら さーしーえー
「…………」
「…………」
なんかおった。
おおきっ。
首ながっ。
たっ、倒した方がいいかなっ。
「あ……こ、この首の長さ、まさか、ドラゴン!?」
どうやらこの魔物は、巨木の後ろで、
じっとしてたらしい!
かなり近くに来るまで、気づかなかった!
ずいぶん長い脚と首だわ!
青いぶちみたいな模様が全身にあるわ!
頭と首に、角がいっぱい生えてる!
かなり、いきなり会ったので、
どうしていいか戸惑ってしまう!
地竜種なんかは羽根がなくて、
地上を歩いてるって聞いたことがあるし……
あの頭は、教本の竜種に似てるわね!
けっこう、深い森だから、
竜系統もいるのかもしれない!
ここで倒さなきゃ、
ラクーンの皆が危険かも!?
首の長い魔物は、じっとして、
こちらを覗っている!
「ど、どうしたら────」
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>>>あ──……アンティ
そいつはいい だいじょぶ
─────────────────────────────
「え!?」
『────検索完了。
対象名【 ジラーティエ 】
水属性個体。弱点属性:雷。
全長、5メル30セルチ単位。
草食生態。』
─────────────────────────────
>>>へ──! そんな名前だったんだ
─────────────────────────────
「え、え?」
こんなでっかい魔物の前で、何をのん気な。
「だ、大丈夫って……ここの森、途中まではラクーンの皆が来るんでしょう!? こんな大きな魔物、ほっといて平気なの?」
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>>>だいじょぶ
こいつ木の葉っぱしか食べない
怒ると蹴ってくるけど
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……前に来た時、怒らしてるんじゃん……。
「な、なんか顔、ドラゴンっぽくない? ほんとに大丈夫!?」
『────解。ジラーティエは大型草食生態の一。』
────ランク:"D"相当。』
────蹴りの威力は脅威。』
のしっ。
「"D"って、まぁまぁ危ないヤツなんじゃ……蹴り、そんなに強いの?」
のしっ。
『────肯。ウルフ程度の魔物なら、一撃死します。』
のしっ。
「うわっ、まじなの……」
─────────────────────────────
>>>あ、うえ
─────────────────────────────
「……え? うわあ!」
なんだ!?
でかい!!
顔かっ!?
────ごっ。
「いたっ」
頭を攻撃された!
……攻撃、された?
はむはむはむ。
はむはむはむ。
「ちょっ……」
ごっ。
ごっ。
はむはむ。
なんなの……。
……これ、アレね。
攻撃されてるって言うより、
小突かれてるわね……。
でっかい頭してるから、
けっこう重みと、衝撃があるわ。
なんか、はむはむしてくれてんだけど……
お茶の葉っぱみたいなにおいがするわね。
「……これ、攻撃されてんのかな」
─────────────────────────────
>>>違うでしょ
髪の毛 喰われかけてるだけだよ!
ほら、この森で金色とか珍しいし
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「い、いやぁぁぁあ」
こいつアレか!
髪か!
私の髪を、珍味かなんかだと思ってんの!?
「や、やめぇぇえい」
──ガシッ!
──グググググ……!
首長魔物の顔を両手で掴み、
とにかく押し戻す!
「……モ──ォ!」
「な、鳴いたっ!?」
な、何が"モー"よ!
牛さんかっ!
「私が"もー!"よ!! あんた、乙女の髪を何だと思ってんの!?」
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>>>だから草でしょ
─────────────────────────────
「先輩、鍋煮込み決定な」
『────アンティ。同種個体接近。退避推奨。』
「うえっ、わっ!」
ぐぐぐっ。
のしっ、のし。
左の巨木の後ろから、
同じ魔物が、立ち上がったり、
こっちに歩いてくるのが見える。
「こんなにいたの!」
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>>>たぶん集団で寝てて、一体が見張りだ
手を出さなきゃ危険じゃないから、
離れた方がいいよ!
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「わ、わかったぁああ」
この魔物たち……
瞳に敵意はないけど、
興味津々といった感じだわ!
こいつらみんなに髪の毛をついばまれちゃあ、
たまったもんじゃない!!
「逃げるが勝ちぃぃぃィイイ────!!」
「「「ンモ────ォ……!」」」
─────キンキキ、キィ────ン!!
私は、黄金の義賊らしく、
すたこらさっさと、逃げ出した。
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>>>あの魔物って、ああ鳴くんだね……
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ちょっと離れた場所で。
「うええ、ひどい目にあった……」
『────頭髪の清掃を開始。』
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>>>……おかしいな
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「そんな面白かったか、よし、鍋ね」
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>>>ち、違う違う!
あの魔物、草食系だったでしょ!
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「……だから?」
『────清掃完了。アンティ、あの地点に草食系統の個体が休息しているという事実は、近辺に肉食系統の魔物がいないことを意味します。』
「あ……」
2人に指摘され、私も、言わんとする事がわかる。
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>>>肉食系統の魔物が、少なすぎる……
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「……ラクーンの皆の話だと、手傷を追わせても、またすぐに戻って来たりしてたんだよね」
変だ。
魔物がすぐに傷を治して、
また襲ってくる理由は、わからない。
でも、ここいらに、
危険な魔物が見当たらないのは、
おかしい。
ぜったい、ここら辺を通って、
ラクーンの里に攻め入っていたはず……。
いるはずの魔物がいない、深く、静かな森。
その、静寂の中、聞こえてくる音があった───。
────ズズゥン────……。
「……!」
『────震音感知。距離:100メルトルテ単位。』
「今の、私にも聞こえたよ……何か、大きな物が、落ちた?」
────ズズゥン────……。
「────!!」
─────────────────────────────
>>>……これ、足音だよ
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な……。
先輩の指摘に、いやな汗がでる。
「そんな……おかしいよ! こんな大きな音、クラウンなら、もっと事前に感知できたはず!」
『────停止していた個体が、動き出した可能性。』
────ズズゥン────……。
「さっきの首長みたいに、ってこと!? でも……!」
────────キ──ィン!
一歩、後ずさった私の足音が、
深い森の中に、ひびく。
──ズズゥン…………
────ズズゥン、
────ズズゥン、
────ズズゥン、
────ズズゥン!
────ズズゥン!
『────接近中。』
─────────────────────────────
>>>気づかれた
注意して いやな予感しかしない
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「…………!」
ちょっと、やめてよね。
先輩の、予想とか、予感とか。
めっちゃ当たる気しか、しないんだから。
明らかに、こちらに近づいてくる、
巨大な、何か。
私は、まばたきをするのを忘れ、
その足音の来る方に……構えた。
────ズズゥン!
────ズズゥン!
────ズズゥン!!!
────ズズゥン!!!!!
────ズズウゥン!!!!!!!!!!










