まいみこくるくる さーしーえー
────身体が、あつい。
今までの同期とは、ワケが違う。
自分のからだに、ヒトの意志が、
重なっているという、実感。
(あ……)
今までとは、違う感覚。
今までとは、違う世界の捉え方。
そして、意志。
『>>>よく、見ることは、大事。でも、ひとつを見すぎちゃ、いけない』
さっきより深く、身体から声が、ひびく。
『>>>考えるだけでは、だめ。──感じなきゃ』
(感じ、とる──)
『>>>そ。それがまだ、ニガテみたいだから』
両手が、広げられる。
金の鎖が、なびく。
まるで、重さなんて、ないみたいに。
『>>>うーん、武器は、一回このままでいってみるかな? 個人的には、あんまり鎖に、いい印象が無いんだけどね──』
(そう、なの?)
『>>>ふふ、昔、色々あってね? ま、でも今は、これが都合がいいや……せっかく感覚も同調してるわけだし』
意志を、感じる。
身体の、すべてから。
これは……"覚悟"……かな?
それとも、"優しさ"……?
よく、わからない。
彼が私に入って、
もっと、心と身体が、軋むのかと思ってた。
でも。
逆に、あたたかく、やわらかく、なった。
『>>>ふぅ〜〜……』
「──ふぅ〜〜……」
彼は私。
私は彼。
『>>>じゃ、いきますか!』
(はい……!)
個人授業が、はじまった。
上を見ず、両手をあげた。
鎖が、追いつく。
魔物が散った。
何故、わかったのか。
音だ。
わかる。
感覚だ。
「こう、泳いでるだろう」
「こう、向かってくる音」
これは、経験からくる、予想。
そして、確かな未来。
確信をもって、ふりあげられた。
……わぁ。
これ……"反則"だ。
何が反則って────。
『>>>次は───』
(──右から────!)
──感覚が、繋がっているということ!
何かを学んで、自分のモノにするという事。
これは、人それぞれに、習得する時間の差がある。
初めてニンジンを切った時。
母さんのマネをして、でも、けっこう苦戦した。
何度も見て。やって。
幾度も見て。やって。
包丁の向きは、こうしたらいい?
ニンジンを支える手は、こうね?
同じ大きさに切るのが大事なの?
だからこうやって、揃えるのね?
見て、真似て、学ぶ。
そして、"自分の感覚"を創る。
時間がかかるのは、当然だ。
自分のチカラで、ココロの中に、
はじめての、"やり方"を、構築するのだから。
でも────。
『>>>わかる? 最初に光るやつがいるから──』
(──うん、次に狙うのは、あっち)
『>>>ふふふ、反則だよねぇ? この教え方さ』
────そう、反則だ。
この、技。
この、感覚。
この、やり方。
黄金の義賊クルルカンは、
この"やり方"を得るまで、
幾度も、積み重ねたはず。
たくさんの、経験を。
たくさんの、努力を。
たくさんの、戦いを。
その中で、時間をかけて、
培われてきた、感覚。
それは正しく、英雄の英智。
それを、それを、こんな、たやすく────。
(──また、こっちからだわ)
『>>>そうだね。じゃあ───』
義賊の魂が、空中で、おどる。
金の空駆ける靴は、
きぃん、きぃんと、
天地など無視して、
自在に飛び跳ねる。
(──これ……ダンスのステップなんだ──)
『>>>そ。前に、お城に忍び込んだことがあってね?』
(──はは、何してんのよ)
みんな、わかる。
わかって、しまう。
だって、彼の感じているすべては、
今、私に、同期しているのだから。
たくさんの、経験を、一瞬で。
たくさんの、努力を、一瞬で。
たくさんの、戦いを、一瞬で。
────その場その時に、感じ得る。
本来ならば、積み重ねて、
自分で作り上げる、考え方。
真似をして、真似をして、覚える、技術。
だけど、今。
ぜんぶ、プレゼントされてる。
一気に、魔法の光が、消えた。
───当然だわ。
だって、
そういう風に、してるもの。
当たり前の、事なんだわ。
きぃん きぃん きぃん
しゃらら しゃらら しゃらら
きぃん きぃん きぃん
しゃらら しゃらら しゃらら
──くるりと、舞う。
───くるりと、舞う。
────くるりと、舞う。
金の鎖は、未来を覆うように、敵を巻き切り、
黄金の舞にあわせ、光のうずを描く。
くるくる、くるくると。
地面にいる、ラクーンの一人と、目が合う。
今の私には、子供だと、わかった。
目が、キラキラしてる。
そうだね。
空で、こんな綺麗に舞っていたら、
一生、忘れられない思い出に、なっちゃうよね。
私から見ても、綺麗だもん。
金色って、卑怯よね?
────きぃん、きぃん、きぃん。
──しゃらら、しゃらら、しゃらら。
私達の身体は、止まらない。
流れるように、舞い続ける。
「ひとつを見すぎちゃいけない」。
よく、わかる。
目の焦点なんて、ふんわりで、いい。
ぜんぶを、感じ取る。
後は、明るいか、暗いかで、いい。
なぞれ。
そこでいい。
だから、ぜんぶ、当たる。
私の中に、英雄のやり方が、根づきつつあった。
『────敵対勢力:残:17パセルテルジ。』
(はっ……!)
クラウンの声を聞いて、我にかえった。
自分に、酔っていたのかな……?
いや……これが、
"集中する"って事なのかもしれない。
たくさん感じているはずなのに、
何も考えずに、舞っていた。
身体に感じる力は、
黄金の義賊の、モノだけでは、ない。
『>>>……ご感想は?』
(──あなた、ホンモノだわ──)
『>>>ははは! そりゃそうだ! あんだけ派手な盗賊は、ぼくしかいないよ!』
(──自分で言っちゃうのね……)
かなりの数が、減った。
もう少しだ。
もう少しで、終わる。
守りきれる────。
もう、す、こ────……
────ぐ ら り 。
──────え?
『>>>──な!?』
『────アンティ!』
────視界が、ぐらついた。










