と、り、つ、か、れ、るぅ
「こ、交代?」
『>>>そ、交代』
い、いきなり言われると面食らうわね……。
「え───っと……うわっ!」
後ろの空に飛び退く!
やっば……!!
カタマリになったドラゴンデライドたちが、
さっきまで居た場所を、川の濁流みたいに、
通り過ぎていったわ!
うわ……。ウネウネネトネトしてそう……
き、きしょい……。
あんなデカい魚は調理したことないわよ!?
い、いやそれは置いといて。
「こ、交代、ですか……」
『>>>うん。チェンジ! チェンジ!』
か、軽いなこいつ……。
たまに深刻な話ぶっこんでくるのに、
この落差は何なのよ……。
「交代って、あの、まさか……」
『>>>え……なにさ』
とっても最悪な想像をして、血の気が引く。
「せ、先輩ぃ……! 私、呪いの仮面に、なりたくないですぅっ……!」
割とガチでビビったので、
割とガチでビビった敬語になったわ。
『>>>うぇっ!? い、いやいやいや……あのねぇ、あ、上からくるよ』
「ぅおっッ」
よけたで。
『>>>お上手。あのねぇ? 交代って言っても、仮面と身体を入れ替えるって、そゆことじゃなくてね?』
「魂に安らぎを」
『>>>やめぃ。今のきみのカッコで祈ると、シャレになんないよ! ちょっと意識借りるだけ! 精霊花の時もやってるじゃない!』
「そやって最初はちょっとだけって言って、乙女を貶めるんだから! 知ってるのよ!」
『>>>ぅおい、何を知ってんのさ!? ……はは、きみ、こんなに集中攻撃されてるのに、けっこう余裕あるよね』
あ……いや、その。
さっきまでは、ラクーンの皆が狙われてたけど、
今はこっちにウヨウヨウネウネ集まってるし。
広い範囲で、やたらめったら襲われてるより、
集中して私が狙われてる方が、
対応しやすいし……気が楽だわ。
並んでるお客さん、さばくのと同じよ。
……言わないけど、こうやって、
クラウンや、先代としゃべってるのも、デカい。
気は持ち直すし、頼りになる。
心強い。
『────伝。アンティ、現在は同期中ですから────。』
『>>>言わなくても、ある程度伝わっちゃうっての。あらかわ』
「な!? ぐわぁぁぁぁぁああ!!」
はずいはずいはずいはずい……。
『>>>はっはっは! 先輩冥利に尽きるってもんだよ! ね! クラウンちゃん?』
『────過剰接触不愉快。』
『>>>ひどくね?』
「わわっ! てき! バラけてきたよ!」
こ、これがっ、苦手だっ!
ひとまとまりに、かたまって襲ってくるなら、
まだ、いい!
でもこのヒモ魚共、たまにバラけて、
不定形で襲ってくる!
うわぁ! 魔法撃ちそう!
こわいこわいこわい!
下にも落ちるんじゃないの!?
どうすんのどうすんの!?
こっちも光ってる!?
わわ、わわわ!!
『>>>一箇所を、見すぎ見すぎ……』
────キュおん!!
「──あ……」
私の片腕が勝手に動き、
魚の群れがお刺身になる。
バラバラバラ、ヒュ〜〜……。
「ま、また、勝手にうで〜〜!!」
『>>>助けてあげたんだから、半泣きにならないの! クラウンちゃん、相談』
『────却下します。』
『>>>おいい聞いてくださいよ! ……君のスキル"同期結合"の応用で、ぼくと後輩ちゃんの"あるもの"を、同期させてほしい』
「え」
『────対象を入力。』
『>>>五感』
「は!?」
『────目的。』
『>>>"未来視"のコツを掴ませる』
「み、みらいしっ──!?」
な、何それ、みらいって……未来!?
「みらいを、見るって、そんなこと言ってんの!? ど、どゆこと──!?」
『────……。』
「え、クラウン、なんでだんまり……? ととっ……よっ!」
────シュリリリリン、シュババァッ!!
『>>>お! 今のいいとこ入ったね! ちょいおそだけど』
「ぶぅ!」
『────可能、なのですか。』
え、ちょっと、クラウン!?
『>>>そんな特別なことじゃない。ちょっと未来を、見て予想する……それだけさ』
「みて、未来を……? えいっ!」
『>>>そ。当たり前の未来をね?』
『────。』
クラウンが……迷ってる。
え、悩む、価値がある……?
『────私の予測より、あなたの予想が、速い。』
「──!」
『>>>なんか恐縮しちゃうな』
予測を上回る、予想?
『────アンティ。判断は委ねます。』
「えっッ……」
意識を乗っ取られてもいいかどうかの判断を、
食堂の一人娘にたくすのんかぃ……。
『>>>いや、乗っ取らないから! ちょっと勝手に動かすだけだよ! 右上っ!』
「──そりゃあ! 充分こわいですからぁぁああ!!」
"体、勝手に動かしてい──い?"って聞かれたら、
やっぱ乙女として、乙女として!!
警戒してしまうのは、
当然と思うわけよ!! 乙女として!!
3回いったわよ!?
『>>>次、下からだかんね』
「なんでわかんの!?」
さっきから、ホントにやばそうな攻撃は、
全てが予告されている。
こ、この人っ……! ……人じゃないけど。
『>>>アンティ。"速さ"を使って、"今"を見ちゃダメ』
「────!」
『────……。』
説得力が、あった。
"彼"は、絵本になるくらいの、
伝説級の"逃げ専"だ。
見て、生き残ってきた。
いや今はしんでいらっしゃるが。
その秀でた特徴は、
彼のスキルにも、顕著に表れてるわ。
反射速度。
────加速する思考。
眼魔。
────魔力を見る眼。
でも、この2つのスキルだけじゃ、足りないんだ。
「このスキルを使いこなすために、私に足りないもの……」
それは、なに?
『>>>……きみが、本当に嫌なら、ぼくは絶対に、きみの身体を借りない』
「! クルルカン……」
『>>>でも、もし、きみが許してくれるなら──』
「────」
『────。』
『>>>時の中での踊り方は、教えてあげられるよ?』
……。
……。
……は、
…………はは。
キザなセリフを、はきやがる。
そか。
この人、
絵本の主人公、だったわね。
『────可哀想なセリフです。』
『>>>ひ、ひどくね? そ、そら、はやく決めてよ! 今も、抑えてるとはいえ、経験値、溶かしてるんだからねッ!?』
「ふふふ……ふふふふっ!」
あれですか。
奥義継承ですか?
ふふ、そんな大袈裟なモンじゃないかな?
食堂の看板娘が、魚のおろし方を習うなんてね?
ふふ、いい。
いいわよ?
初心に戻るのって、大事なんだからね!
「……おねがいしますっ、せぇんぱい?」
『>>>お……今のは、気持ちがこもってて良かったね!』
いらっ。
「──さっさとやれや? せんぱい」
『>>>さ、さーせん。クラウンちゃん、感覚の同期、頼むよ』
『────仔細把握、同期開始。』
きゅううううううん────!!
あ、わかる。
今、クラウンの周りに、
歯車の輪っかが、いっぱい回ってんのよ。
いいオト、なってるもの。
この音、すき。
『>>>……ごめん、身体の主導権は、ちょっと貰うね』
「いいから」
今さらマジ声で謝られても、
どうしていいかわかんないっての。
「先輩って……」
『>>>ん?』
「すごいのか、気が弱いのか、わかんないわ?」
『>>>それ、きみもだよ? 後輩ちゃん』
──────キュアアアアアァァア!
『>>>いくよ』
「はい」
全身の血に、火が流れるような、気がした。
あらかわ=あら可愛い(笑)
荒川ではない(*´﹃`*)










