もりあがってまいみこました!
3人よれば、船、山に登る?
『────強制退去。強制退去。』
『>>>ちょっ! まっ!? 今ダメ今ダメ、操作系ほどけちゃうって!! ぐおお』
「ちょっとぉぉぉおお!! こんな時に仲間割れしないでよぉおおお!」
白い龍モドキは、着実に数を減らしている。
「……なんか、巫女様がお空で一人でしゃべっておられる」
「まさか、神と対話されているのでは!?」
「まさか!?」
「なんと……! なんということだ……!」
「ありがたや、ありがたや……」
一部のラクーン達に、あらぬ誤解が生まれていた。
まだ誰も、大きな怪我はしていない。
天から降る黄金の攻撃により、
皆が、黄金の巫女を拝む時くらいはあったのだ。
だが、魔物の進行は、
これで、終わったわけではなかった。
『────痴漢ぼくめ、────警告。』
────敵対勢力の行動ダイアグラムが変質。』
────および、第二波が接近中。』
「!? 第二波って!?」
『>>>あたたた……うわ、けっこう数きてるね、おかしぃなぁ。こいつら、明らかに水辺で暮らしてる魔物だよね。浮遊行動も、普段はこんなに使わないはず……住んでいる所に、何かあったのか?』
「そ、そんな分析は後でいいからっ! とりあえず今はっ! うわっ、上から回りこんでくるぅ!」
半円を囲むように襲来する、魔物たち!
蹂躙されていた魔物たちは、高度をとり、
一斉に巫女に襲いかかる!
彼女は、空中。
初めての空の戦闘。
曲がりくねる大量の魔物。
巫女は、狼狽した。
「うわっ、うわっ! どしよっ! く、クラウン! "ましんがん"のでばいす、腕に作れる!?」
『────使用可能。────ですが。』
『>>>うーん、今はオススメしないね。ブレット系、けっこう歯車の消費はげしいでしょう? ぼくも経験値、削ってるからね。さっきは脅しで言ったけど、あれ、乱射しすぎたら、ホントにオーバーヒートしちゃうよ?』
「え、え? ぶれっと系……? うわっ!」
目前に、明らかに自分たちを目標にそえる、
大量の、魔物たち。
『────アンティ! 回避行動を!』
「回避って言われても!? 反重力装置、上下にし──……!?」
『>>>間に合わない! いったん切るよ!』
『「────え?」』
──きゅう、きゅううううんん……。
巫女のローブの下に隠された、
重力に逆らいし機構が、停止する。
星の愛は、皆に、平等だ。
「────う、うわぁぁぁあん!!」
『────き、緊急停止──。』
『>>>まだだ! もう少し……よし、今!』
──きゅううううんんん──!!
再び黄金は、重力に逆らいはじめる!
緩やかに遅くなる、速さ。
巫女の身体は、ゆっくりと、停止する────
『>>>避けられたけど、はやくあがらないと! このままじゃこっちにきて、里のみんなが巻き添えだ!』
『────地表までの距離:5メル単位。上昇開始。』
「ちびってないちびってないちびってない──……」
魔物の数が多い!
それは、まるで河だ。
小さなフィッシュの魔物は、群れをなし、
長い胴体を絡ませ、
まるで大きな、龍となった。
旋回し、横から巫女に、襲いかかる。
「わぁぁああああっと!!?」
巫女は、自身の力を忘れ、
必死によけようとした。
──それが、結果に繋がった。
────きゅいい────シュタン──!
『>>>え────?』
巫女が、空中を、蹴った。
彼女が着込んでいるヨロイは、
力を入れれば、力を増す。
彼女は大きく、斜め上への回避に成功する。
『>>>い、今の、どうやったんだい!?』
「え、え!? いや、必死で……?」
『────状態把握。足底部に、多重構造の歯車が構築固定。』
『>>>多重構造……? そうか!!』
「え? え?」
『>>>ははは! すごいや! アンティ、きみ、空を歩けるよ!?』
「──そらを、あるく?」
『>>>クラウンちゃん、移動補助まかせた! ぼくは感知とマッピングするよ!』
『────不服。────方針把握。』
「え、ちょと……?」
『>>>アンティ! ぼくらにまかせて! いいから走るんだ!』
『────攻撃、きます。』
「うわわわわ!!?」
巫女は踏み出す。
空中での、愚かな1歩を。
風の魔素は、通り過ぎるのみ。
身体は、星の愛に、引き寄せられるはず。
だが────……!
────シュタン!
────タン!
────タン!
────タン!
────タン!
────タン!
────タン!
────タン!
────タン!
「おわっ……すっすごいっ! 空を踏んでる!? な、何これぇ!!」
『>>>いや、初めてやったのきみだから……次、右からくるよ!』
『────感知速度上昇。制動補助。』
「うおっとぃいいい!!?」
巫女は、感嘆する。
空を、駆けぬける自分自身に。
遠ざかる地面から、
ラクーン達のどよめきが聞こえる。
それはそうだ。目の前で、
人が自由に、空を駆け巡っているのだから。
巫女の金の靴底に、いくつかの歯車が、重なる。
足に固定された歯車は、踏み出す瞬間、
一時的に、空間に固定される。
なんと、シンプルで、単純な仕組みだろう。
ただ、ただ、空を翔けるためだけの仕組み。
それゆえに、獣人たちには、奇跡に見えた。
『>>>消費コストも少ないし……うわぁ、もうビックリ人間だね、後輩ちゃん?』
「うわぁああん、嬉しくないぃぃい!!」
『────アンティ。その装備で叫ぶことは、推奨しかねます。』
何故か息が合いつつある、王冠と仮面。
のん気なやりとりを聞いて、ぶぅたれつつ、
巫女は、両手の金の鎖で、束になった魔物を、
削りとっていた。
「はぁ、はぁ、きりがないわ……!」
『>>>多いな……。おっと! 分散するよ! 離れて!』
『────仮面、あなたは───。』
「ほ、ほんとだっ! 後ろに跳ぶよっ!」
はやい。
仮面の判断が、はやい。
それはまるで、少し先の未来を思わせる。
わずかな動き、表情、感覚。
そして、魔力を見る力。
彼が、黄金の義賊たる由縁。
逃げ続け、戦い続けた男。
その"見る"力は、もはや、
一国の、英雄の域に達している。
「ねぇ! "カーディフの火"は、どう!? まとめて焼き魚にしてやるわよ!?」
『────氷属性の魔法にて飛行中の対象。予測効果:軽。』
「えうう、相性が悪いってこと……?」
────シャアアアアアァァ!!
────パキパキパキ──!!
バラけ、集まり、ぐねぐねと。
突撃。氷。旋回。
様々な攻撃をしてくる、ドラゴンデライドたち。
巫女は、歯車の鎖で、自身に近い敵から、
順番に打ち付ける!
『>>>うーん、真正面から行き過ぎてるなぁ』
「そ、そんなことっ、言われてもぉ……!」
巫女は、真っ直ぐに、見つめている。
下のラクーンの里から注意が逸れたのはいいが、
細かく、不定形な魔物たちの群れに、
彼女は、手をこまねいていた。
『>>>よし、後輩ちゃん』
「な、なんですか!?」
『>>>ちょっと、交代』
「────え?」










