表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/1216

もりあがってまいみこました!

 

 3人よれば、船、山に登る?



『────強制退去。強制退去。』

『>>>ちょっ! まっ!? 今ダメ今ダメ、操作系ほどけちゃうって!! ぐおお』

「ちょっとぉぉぉおお!! こんな時に仲間割れしないでよぉおおお!」


 白い龍モドキは、着実に数を減らしている。


「……なんか、巫女様がお空で一人でしゃべっておられる」

「まさか、神と対話されているのでは!?」

「まさか!?」

「なんと……! なんということだ……!」

「ありがたや、ありがたや……」



 一部のラクーン達に、あらぬ誤解が生まれていた。

 まだ誰も、大きな怪我はしていない。

 天から降る黄金の攻撃により、

 皆が、黄金の巫女を拝む時くらいはあったのだ。

 だが、魔物の進行は、

 これで、終わったわけではなかった。



『────痴漢ぼくめ、────警告(アラート)。』

 ────敵対勢力の行動ダイアグラムが変質。』

 ────および、第二波が接近中。』

「!? 第二波って!?」

『>>>あたたた……うわ、けっこう数きてるね、おかしぃなぁ。こいつら、明らかに水辺で暮らしてる魔物だよね。浮遊行動も、普段はこんなに使わないはず……住んでいる所に、何かあったのか?』

「そ、そんな分析は後でいいからっ! とりあえず今はっ! うわっ、上から回りこんでくるぅ!」


 半円を囲むように襲来する、魔物たち!

 蹂躙されていた魔物たちは、高度をとり、

 一斉に巫女に襲いかかる!

 彼女は、空中。

 初めての空の戦闘。

 曲がりくねる大量の魔物。

 巫女は、狼狽した。


「うわっ、うわっ! どしよっ! く、クラウン! "ましんがん"のでばいす、腕に作れる!?」

『────使用可能。────ですが。』

『>>>うーん、今はオススメしないね。ブレット系、けっこう歯車の消費はげしいでしょう? ぼくも経験値、削ってるからね。さっきは脅しで言ったけど、あれ、乱射しすぎたら、ホントにオーバーヒートしちゃうよ?』

「え、え? ぶれっと系……? うわっ!」


 目前に、明らかに自分たちを目標にそえる、

 大量の、魔物たち。


『────アンティ! 回避行動を!』

「回避って言われても!? 反重力装置、上下にし──……!?」

『>>>間に合わない! いったん切るよ!』

『「────え?」』


 ──きゅう、きゅううううんん……。


 巫女のローブの下に隠された、

 重力に逆らいし機構が、停止する。

 星の愛は、皆に、平等だ。


「────う、うわぁぁぁあん!!」

『────き、緊急停止──。』

『>>>まだだ! もう少し……よし、今!』


 ──きゅううううんんん──!!


 再び黄金は、重力に逆らいはじめる!

 緩やかに遅くなる、速さ。

 巫女の身体は、ゆっくりと、停止する────


『>>>避けられたけど、はやくあがらないと! このままじゃこっちにきて、里のみんなが巻き添えだ!』

『────地表までの距離:5メル単位。上昇開始。』

「ちびってないちびってないちびってない──……」


 魔物の数が多い!

 それは、まるで河だ。

 小さなフィッシュの魔物は、群れをなし、

 長い胴体を絡ませ、

 まるで大きな、龍となった。

 旋回し、横から巫女に、襲いかかる。


「わぁぁああああっと!!?」


 巫女は、自身の力を忘れ、

 必死によけようとした。


 ──それが、結果に繋がった。



 ────きゅいい────シュタン──!



『>>>え────?』


 巫女が、空中を(・・・)蹴った(・・・)


 彼女が着込んでいるヨロイは、

 力を入れれば、力を増す。

 彼女は大きく、斜め上への回避に成功する。


『>>>い、今の、どうやったんだい!?』

「え、え!? いや、必死で……?」

『────状態把握。足底部に、多重構造の歯車が構築固定。』

『>>>多重構造……? そうか!!』

「え? え?」

『>>>ははは! すごいや! アンティ、きみ、空を歩けるよ(・・・・・・)!?』

「──そらを、あるく?」

『>>>クラウンちゃん、移動補助まかせた! ぼくは感知とマッピングするよ!』

『────不服。────方針把握。』

「え、ちょと……?」

『>>>アンティ! ぼくらにまかせて! いいから走るんだ!』

『────攻撃、きます。』

「うわわわわ!!?」


 巫女は踏み出す。

 空中での、愚かな1歩を。

 風の魔素は、通り過ぎるのみ。

 身体は、星の愛に、引き寄せられるはず。

 だが────……!



 ────シュタン!

    ────タン!

     ────タン!

      ────タン!

      ────タン!

      ────タン!

     ────タン!

    ────タン!

  ────タン!



「おわっ……すっすごいっ! 空を踏んでる!? な、何これぇ!!」

『>>>いや、初めてやったのきみだから……次、右からくるよ!』

『────感知速度上昇。制動補助。』

「うおっとぃいいい!!?」


 巫女は、感嘆する。

 空を(・・)駆けぬける自分自身に(・・・・・・・・・・)

 遠ざかる地面から、

 ラクーン達のどよめきが聞こえる。

 それはそうだ。目の前で、

 人が自由に、空を駆け巡っているのだから。


 巫女の金の靴底に、いくつかの歯車が、重なる。

 足に固定された歯車は、踏み出す瞬間、

 一時的に(・・・・)空間に固定される(・・・・・・・・)


 なんと、シンプルで、単純な仕組みだろう。

 ただ、ただ、空を翔けるためだけの仕組み。

 それゆえに、獣人たちには、奇跡に見えた。


『>>>消費コストも少ないし……うわぁ、もうビックリ人間だね、後輩ちゃん?』

「うわぁああん、嬉しくないぃぃい!!」

『────アンティ。その装備で叫ぶことは、推奨しかねます。』


 何故か息が合いつつある、王冠と仮面。

 のん気なやりとりを聞いて、ぶぅたれつつ、

 巫女は、両手の金の鎖で、束になった魔物を、

 削りとっていた。


「はぁ、はぁ、きりがないわ……!」

『>>>多いな……。おっと! 分散するよ! 離れて!』

『────仮面、あなたは───。』

「ほ、ほんとだっ! 後ろに跳ぶよっ!」


 はやい。

 仮面の判断が、はやい。

 それはまるで、少し先の未来を思わせる。

 わずかな動き、表情、感覚。

 そして、魔力を見る力。

 彼が、黄金の義賊たる由縁。

 逃げ続け、戦い続けた男。

 その"見る"力は、もはや、

 一国の、英雄の域に達している。


「ねぇ! "カーディフの火"は、どう!? まとめて焼き魚にしてやるわよ!?」

『────氷属性の魔法にて飛行中の対象。予測効果:軽。』

「えうう、相性が悪いってこと……?」



 ────シャアアアアアァァ!!


 ────パキパキパキ──!!



 バラけ、集まり、ぐねぐねと。

 突撃。氷。旋回。

 様々な攻撃をしてくる、ドラゴンデライドたち。

 巫女は、歯車の鎖で、自身に近い敵から、

 順番に打ち付ける!


『>>>うーん、真正面から行き過ぎてるなぁ』

「そ、そんなことっ、言われてもぉ……!」


 巫女は、真っ直ぐに、見つめている。

 下のラクーンの里から注意が逸れたのはいいが、

 細かく、不定形な魔物たちの群れに、

 彼女は、手をこまねいていた。




『>>>よし、後輩ちゃん』



 「な、なんですか!?」



『>>>ちょっと、交代』



 「────え?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[一言] ラクーンの一人が言った 「神と対話している」 あながち、間違いじゃないんだよなぁ(;^ω^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ