表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/1216

キラキラぺこぺこしょぼん巫女

 

 ジジアラさん家の朝ごはんは、

 茹でた野菜と、穀物だった。

 ご飯のようなものが、

 可愛く丸めてあり、驚いた。

 ラクーンのみんなも、

 特別な日に、これを食すそうだ。

 ……めっちゃ気ぃ使われてますやん。


 とても美味しいまぜおにぎりだったので、

 後で、再現したい。


 着慣れぬローブを揺らし、里をまわる。


「あっ……アンティラさま、おはようございます!」

「えっ」


 ぺこり。

 だだだだだだだだた……。


「……なぜ、はしりさる」


 ────……。


 とぼとぼとぼ。

 ふらふらふら。


「あっ、アンティラ様だっ!」

「ほ、ほんとだ! きれいなお人だなぁ」

「きゃ──金巫女のアンティラさまよぅ!」

「うわっ、すごい……噂は、本当だったんだ……!」

「神秘的……」

「お美しいわぁ……」

「わ──! あんてぃらさまだ──!!」

「きれい──!!」


「は、はは、ははは、みなさま、おはようございます……」



 ────ぅぅぅう。


 どうしてこうなっとぅぁぁああああぃ!!!???



 わたしがきてからまだいちにちだぞ

 わたしがきてからまだいちにちだぞ

 わた     らま     だぞ

 わたし   からまだ   ちだぞ

 わた がきてからまだいちに だぞ

 わ  がきてからまだいちに  ぞ

 わたしがきて     ちにちだぞ

 わたしがきてからまだいちにちだぞ



 めだちまくっとるやないの……

 ぐすん……。


「はい、おはようございます」

 「おげんきそうでなによりです」

  「かわいらしいしっぽかざりですね」

   「ほぅ、そんなことがあったのですね」

  「ふふ、そんなことはありませんよ」

 「わたしはそのようにりっぱでは」

「おやそのかたはこいびとですか」



「……いや、夫婦だから……」

「はは……知ってるでしょう?」

「はっ!」



 ポロ君と、コヨンちゃんだ……。



「──ボロぐんどゴヨンぢゃんだああああ!!」

「うわぁ、いきなり芝居やめるのやめろよ!!」

「ちょ、アンティさん! 今は誰もいませんがっ! やり始めたことは、責任もって貫いてください!」

「だ、だっで、だっでぇ!」

「ちょおまえ泣くなっっって! "神秘の金巫女アンティラ様"で通ってんだからな!? あんた」

「なぁにぃぞぉれぇ〜〜〜〜!!?」

「はは……アンティさん、私達の里に、人間のお客様なんて、ほぼ来ないです。それだけでも注目の的なんですよ……」

「ちょ! ふざけんじゃないわよ! クルルカンより目立たないって言うからっ、この格好にしようってなったんじゃないぃ!」

「さ、叫ぶなって! バレるだろ色々!」

「あの……クルルカンのままだったら、抱きつかれまくって、歩く事すら、できなかったかもですよ?」

「うううううう……でも、なんでこんな、様づけなんて……!」


 そうぞうして。

 明日から、あなたの知り合い全てが、

 あなたに、様づけ。


 う、あ、ありえん。

 ねこむ……

 心がもたん……。


「なしてこんな悪目立ちするのん……」

「えと、いや、それはだな……」

「その──、ちょっと、ハマってしまってるというか……」

「……ハ、マる??」

「いや、そんなことはどうでもいいんだよ」

「よ く な い わああぃぃい!!」

「アンティさん、落ち着いてください……」

「てかあんた、僕達が迎えにいくっていったじゃないか」

「あ」

「なんで自分から外歩いて、お上品な対応をしまくってんだよ……」

「うあああああああ──……!!?」

「アンティさん、自分見失わないでください……見ていて可哀想になってきますから……」

「おかあさまぁぁぁぁああああ────!!」




「──へくちっ!」

「お、なんだソーラ、風邪か?」

「……ん〜〜、あら〜〜?」

「どしたんだ?」

「娘に、様付けで呼ばれた気がしたわ〜〜♪」

「……な、何言ってんだおまえ」

「うふふふふ〜〜」




「お母さんばんざい……」

「ほら、とりあえず柵まで行こう」

「あまり皆が通らない所を選びますから!」


 金の巫女(わたし)は、小さな夫婦に、

 ずるずる引きずられて行ったという。





 ずらりと並ぶ、大きな丸太たち……。


「けっこう、しっかりした柵よね……」

「……むっ」

「えっ」

「ちょっと、怒った……」

「ポ、ポロ……」

「ごめん、なんでかな……」

「むっ」

「ポロったら、仕方ないよ……」

「えっと……」


 私の一言で、ポロが怒ってる。


「……ちぇっ。アンティには世話になってるから、言ってやる」

「えと……」

「さっきの一言は、すっごい上から目線だってこと」

「──!」

「ドニオスに住んでてさ、でっかい街の壁に守られているから、"思ってたより"しっかりした柵、って評価になるんだ」

「あ、……」

「……アンティ、僕達は、死にものぐるいで、この柵を維持するんだ……」


「……謝罪します」


 頭を下げる。

 ローブの前に両手。

 顔の横に、金が流れる。


 命がけで作ったものを、

 無意識に"それなり"と決めつけた。

 そりゃ、怒るのは当然だ。


『────アンティ、それは──……。』


「ば! ばか! やめろって! 目立つから! あんたに頭下げられるとか、最高に目立ちまくるから!」

「ほ、ほ、ほら、頭あげてください、アンティさん!」

「で、でも……」

「いいから! 君はあんなに強いんだから、ちょっとは自分を主張したほうがいい! ……まったく。自分の想いに、自身の心をくわれるぞ?」

「う、うう……」

「ふふ、でも、強いのに素直って、とてもステキで、アンティさんのいい所ですよ?」

「ほら……そんな顔すんな。もういいから。ただ、他のやつに、そゆこと言わないでくれな?」


 ポロや、コヨンは、私より小さな獣人だが、

 今のやり取りは、彼らが私より年上だと、

 よく感じるものだった。

 久しぶりにガキっぽい失敗をして、

 私はしょぼんとした。


「しょぼん……」

「口で言うのかよ……」

「アンティさん……今は、アンティラ様なのですから、お控えください……」

「すぅ……すみませぬ……」


 そ、そうだわ。

 今は、とにかく、この喋りで通さないと。

 万が一、他のラクーン族がドニオスに来ても、

 アンティラ様と、クルルカンが別人だと、

 思えるような立ち振る舞いをしなきゃ……!


 柵のまわりの、作業を始めている、

 ラクーン達に目をやる。

 けっこう騒いでたが、気づいてない。

 とても、集中してるんだ。

 目が、真剣そのものだ。

 体が小さい種族だけど、この仕事が、

 愛すべき故郷を、生命を守る事だと、

 ここにいる皆が、理解しているとわかる。


「……順調だな」

「……そう、なの?」


 さっきとは違い、少し、小声で話す。


「ああ。いや、王都まで一週間もかかると、思ってなかったのもあるけど……昨日は、魔物の襲撃がなかったらしい」

「……お爺様も言ってました。このまま、私達の柵が、仕上がってしまえば、よいのだけれど……」

「…………そうだね」





「────おぉぉおおおい! 遠方組が戻ったぞぉお!」


「「「────!」」」




 私達と、その場のラクーン皆が、見張り台を見た。

 一気に、晴れの空気が、険しくなる。



「この時間に戻るのは、おかしいわ!」


「え?」


「ああ、なにか、あったんだ……」





 ──たたかいが、はじまろうと、していた。





わたしがきてからまだいちにちだぞ


↑ちょっと遠目で見てね((((;゜Д゜))))。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[一言] わたしがきてから の所、よく分からなかったけど涙目の顔になってんのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ