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聖樹の勇者 ⑦

 

 長い、年月が、たったと、思う。


 ぼくが、どこにいるのかなんて、


 ぼくには、わからなかった。


 ぼくは、自分のチカラを、


 なんとか、使って生きてきた。




 ぼくのチカラは、


 "ききみみ(リッスン)"と、"ちいささ(スモゥル)"。


 だけ。


 後は、ちょっと、

 身体が丈夫になっているようだ。


 "ちいささ(スモゥル)"は、目の前のものを、

 少しの間、小さくするチカラのようだった。

 しばらくすると、元の大きさに、戻る。

 とても、便利なチカラだった。


 魔物は、このふたつのチカラで、

 ことごとく、追い返した。

 相手の言葉で、攻撃は読めたし、

 いきなり小さくすると、彼らは驚いた。

 逃げる彼らを、追いは、しなかった。

 ……彼らを、倒しても、

 ぼくの仲間は、戻ってこない。


 最低限の戦いをして、旅をした。



 砂の大地を進む間は、

 トゲトゲの草しか、

 食べれそうなものが無くて、

 さいしょは困ったが、

 一度、小さくしてから、

 石で割り、元の大きさにして、

 中身を食べた。

 砂の大地の温度差には、

 参ってしまったが、

 砂にもぐったり、

 岩陰に隠れたりして、

 旅を続けた。


 大きな、水が溜まっている所にも行った。

 その光景に、さいしょは感動した。

 でも、水って、集まると、こんな色してたかな?

 白っぽい水で、飲むと、なぜか甘かった。

 なぜか不気味だったので、それ以上飲まず、

 先を急いだ。


 ぼくの住んでいた森とは、ちがう森にも行った。

 こちらは、ジメジメしていて、困った。

 食べるものはたくさんあって、

 変な動物もたくさんいて、退屈しなかったが、

 あの湿気だけは、勘弁してほしかった。


 岩だけの大地にも行った。

 ゴツゴツしていたが、

 上に登って、見ると、

 茶色い光沢が、とても美しかった。

 ただ、ここではひとつの小さな実しか、

 食べれるものが見つけられず、

 ひもじい思いをした。



 食べ、 眠り、 歩き、

 戦い、 見て、 考え、

 思い、 逃げ、 隠れ、

 走り、 勝ち、 笑い、

 落ち、 泣き、 跳び、

 登り、 決め、 進み────。



 そして、今。


 また、ひとつの、森を、抜けた。


 目の前には、平らな大地が、広がっている。


 そしてぼくは、何かを、見つけた。




「あれは、なんだろう……?」


 …………木と、石で、並べてあるのか……?


 おおきい。


 おおきく、囲ってある……。


 何か、おおきな、囲いがあるぞ……。


 いや! 上は、空いている。


 太陽の光が、中に、射し込むんだろう。


 …………。


 "平らな大地"……。


 "光さす ばしょ"……。



 ゾクリ────。



「ま、さ、か────……」


 昔。もう、昔なのか。

 でも、忘れは、しないだろう。

 "長老の言葉"を、思い出す。



 森を越え、山を越え、水を越えた先。


 平らな大地に、"かみの みつかい"は住んでいる。


 そのどこかに、"せいなる しんでん"は、ある。


 その"しんでん"は、光さす、清らかな地にあり、


 旅をしてきた者を、迎え入れるのだと言う。


 "しんでん"には、"かみの みつかい"がおり、


 旅の者たちは、"さいごの しんぱん"を、


 受けるのだという。




「ここ、だ────」


 ぼくは、知らず知らずのうち、

 旅を、してしまった。

 辿り着いて、しまったんだ────。


「"かみの みつかい"が、住む、場所だ……!!」


 手足が、震えだした。

 久しぶりに、恐怖を感じた。

 なんて、所に来てしまったんだろう……。

 あんなに、長老には、止められていたのに。


「"みつかい"は、何でも食べる……」


 こわい。

 こわかった。

 ぼくは、茂みに隠れ、

 その、"みつかい"の住む、囲いを見てみた。


「……!! たくさん、いる……!! はじめて見る、生き物だ……!!」


 なんという、量なのだろう!!

 ゾロゾロと、中に入ったり、外に出たりしている。

 あれは、ダメだ。

 見つかれば、逃げることも、追い返す事も、

 できないだろう。


「お、おそろしい、場所だな……」


 あんなに、集まって暮らしているのか……!

 ぼくは、その場で座り込んでしまった。


「…………ここが、そうなんだね、長老……」


 大きな、ほんとうに、大きな。


 石と、木でできたであろう、囲いを、見る。


 ……すごい。


 ……きれいだ。


 ……自然の、綺麗さとは、また、ちがう。


 ……"かみの みつかい"は、あんなものを作れるんだ。


 ……きっと、"せいなる しんでん"も……



「あ…………」


 しんでん……。


「しんでん、が、ある……」


 言葉にしたら、昔の記憶や、感覚が、

 鮮明に、思い起こされた。


「しんでんが、あの中に、ある!!」



『生きるんじゃ! 何か、やり遂げて、みせろッ!!』



「────!!!」


 あの時の、長老の言葉が、頭で、(またた)いた!


「あ、あ、あ……ぼくは……」


 やめておいた、ほうがいい……


「ぼくは……なんて、事を考えて、いるんだ……」


 死にに、いくような、もんだ……


「あんな、場所に、入るなんて……」


 絶対に、生きて、帰れない……


 ああ、


 ああ、


 ────でも。




「でも……見てみたい。"しんでん"を……」






 その日、ぼくは、


 あの、化け物たちの住処に、


 忍び込もうと、決めた。







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