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聖樹の勇者 ②

感想欄は、みなさんが見る、

とってもすてきな場所です。

……言いたいことは、わかるよなぁ?(爆笑)


アンティを結婚させたくない人は、

必死でぷんすかしてくださいぃ!(●´ω`●)

「俺は結婚なんかゆるさぁぁぁああん!!」

 

「手を」

「はい」


 長老は、ぼくの手についた苔を、拭ってくれた。

 もう、昔みたいに、ケガはしていない。


「ふふ……"せいじゅ"を殴り続けるとは、なんとバチあたりなヤツじゃ」

「えぇっ!? いや、その……」

「ほれ、終わったぞぃ」

「……ありがとう、です」


 ……明日、あの大樹に、

 お別れと、お詫びをしなくちゃ……。


「……明日の朝、"せいじゅ"に挨拶をしに行きます」

「それがよい。我らがここに、こんなにも長く住めたのは、あの"せいじゅ"のお陰やもしれん」

「そ、そうなの?」

「あの大樹は、我らの想像のつかんような前から、あそこでこの大地を見守ってきなすったのだ。とても旧い神の一つなのじゃよ。不思議な力を、持っていらっしゃる」

「よ、よくわかんない……」

「は、は、まだ、おヌシには早い話だったか」


 長老は、ゆっくりと腰をおろす。

 ぼくもつづいた。

 いつもの体勢だ。


「さて……では、" せいなる しんでん "の話じゃったか……」

「うん、うん!」

「ふ! おヌシまだまだ、子供じゃのぅ……」


 長老は、今は慣れた口調で、語り始めた。




 森を越え、山を越え、水を越えた先。


 平らな大地に、"かみの みつかい"は住んでいる。


 そのどこかに、"せいなる しんでん"は、ある。


 その"しんでん"は、光さす、清らかな地にあり、


 旅をしてきた者を、迎え入れるのだと言う。


 "しんでん"には、"かみの みつかい"がおり、


 旅の者たちは、"さいごの しんぱん"を、


 受けるのだという。



「……みて、みたいなぁ」

「……前にも、言ったが……」

「わ、わかってるよぅ。"かみの みつかい"に見つかったら、食べられちゃうんでしょう?」

「……うむ。彼らは、何でも食べてしまう。"しんでん"に、行こうなど、思ってはならん……」


 ちょっと前に、"しんでん"に行ってみたい! と言ったら、長老は、"だ、ダメじゃ!"と慌てだし、"さいだん"の事を教えてくれた。


 "せいなる しんでん"の中には、

 "さいだん"があり、

 そこで、"さいごの しんぱん"を、受ける、と……。


「……ねぇ長老、"さいだん"って、どんなの?」

「む? ……むぅ、そうじゃな……光さす、台……」

「台?」

「……ああ。光さす、いけにえの、台なのじゃ……」

「いけにえ……」

「そ、そうじゃ。"さいごの しんぱん"にて、強き者と認められなければ、"かみの みつかい"に、食べられてしまうのじゃ! だから、我らのような者が、近づいてはならん……!」

「わ、わかってるよぅ。行きたくても、行けないってば! ……でも、美しい、場所なんでしょう?」

「……ああ、とても。光にあふれる場所に、それはある」

「そうか……そうなのか……」


 逃げ隠れるように暮らしてきた。

 そのぼくにとって、その場所は、

 とても夢がつまった、かがやき。


「ぼくが、生まれ変わったら、行けるかもしれないな」

「……!! ……はは」


 ポロッと言ったぼくの言葉に、

 長老は、びっくりした表情を浮かべた。

 その後に、笑顔を浮かべようとして、

 でも、泣いていた。


「すまぬ……本当に、すまぬ……」

「長老……?」


 この時に、何故、長老が泣いたのか、

 ぼくには、よくわからなかった。






 ぼくの荷物なんて、この身体くらいだ。

 朝、ぼくは、りんごの大樹の前に来ていた。

 ぼくは、この大樹が好きだった。

 今、二度とこれないとわかって、強くそう思う。


「りんご、ありがとうごさいました。……あと、殴って、ごめんなさい」


 今さら、殴り続けたことを、謝る。

 まぁ、こんな大きな木が、ぼくみたいな、

 小さなヤツに殴られても、何ともないだろうけど。


 ────さあああああぁぁ……


 風が吹いて、美しく葉が鳴った。

 こんな、周りに木がなく、危険な場所でも、

 何故か、ほっとする。


 ────しゃららららら──……


 ────しゃららららら──……


 枝のなびき音が、木霊(こだま)する。

 とても、穏やかな音だった。

 昼までは、時間がある。

 ぼくは、根と幹の境に座った。


「きれいだな……」


 ここは、光に切り取られた場所。

 ぼくは、逃げ続けた一族の一人。

 でも、ここは、楽園だった。

 ……バカだと、思うだろう?

 でも、ほんとだったんだ……。

 ここが、ぼくの生きた中で、

 一番の、楽園だった。


 ぼくは、ゆっくりいきを吸い込み、

 静かにはきながら、目をつぶった。







 ────しゃららららら──……


 ────しゃららららら──……


 ん…………。


 …………。


「…………ん?」


 …………ぱちくり。


 ……。


「……ねすごした」



 どうしよう。


 あ、お昼すぎてるな。


 うわぁ。


「──うわわわわわっ!! たいへんだ!!」


 よ、よりにもよって、こんな大事な日に!!?


「や、ばい!!」


 ────しゅたっ!


 いそいで、苔に飛び降り、駆け始める!!


 いそげっ、いそげっ、遅刻だっ、いそげっ!!


 出発に、おくれちゃう!!


 視界は上下し、息は切れる。


 おとな達に、噛みつかれるのは、


 ちょっとは覚悟しなきゃいけない……うわぁ。


 はっ、はっ、はっ、はっ、はっ。


 も、もうすぐだっ……!


 ご、ごめんなさ、ぼくは────……





「────……そ、だ──……」



 ────血まみれだった。




 集落なんて、ない。


 死体も、ない。


 何も、ない。


 いや、ある。


 赤い中で、一つだけ、動いた。



「ちょうろぉぉおおおおおううぅ──!!!!」





 ──血まみれの長老が、倒れていた。






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[一言] 悲しい!!!!!!!にょきっとぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!
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