表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/1216

いーぜー? らいだー!

 

「ここ?」

『────はい。』


 クイッ。


 ────ガルルゥオオオン……!!


「おおっ! すっごぉ……!」

「うわわわわ……」

「あわわわわ……」


「いやアンタたち、いつまで抱き合ってんの……」


 故郷のお父さん、お母さん。

 私は今、魔物のアゴに(またが)っています。

 獣人の子供も一緒です。

 私の後ろに座っている彼らは、

 何故か、お互いに抱きつき合い、

 ガクブルしています。


「……私、誘拐犯みたいじゃない?」

『────というより、絶叫マシンです。』

「? なにそれ?」

『────説明出来かねます。』


 ……まぁいいや。

 ここの持ち手をこうヒネって、

 足のここをカチャってやるんでしょ?


『────チュートリアルを開始しますか。』

「ん、いい。だいたいわかった」

「あ、あの、クルルさん!? さっき、このアゴ、鳴きましたよ!?」

「な、なんで僕らは、こんな車輪付きの魔物のアゴに乗ってるんだ!!」


 あんた達、あんまりアゴアゴ言いなさんな。

 こいつも、好きでアゴだけになった訳じゃ、

 ないでしょうよ?

 あんた達も、朝起きて、

 アゴだけになってたら嫌でしょ?


『────アイドリングが、お気に召したようですね。』

「あ、さっきの音?」


 ────。


 クイッ


 ────ガルゥォオオン……!


 クイッ


 ────ガルルルルゥォオオン……!!


 グイッ



 ────ガルルルルルルルゥォオオオオオン!!!



「ふふっ。うん、なんかいいね」

「な、な、な、何がいいんですかぁ〜〜!!」

「こ、こ、こいつ、まだ生きてるのか!?」


 いや、まさかまさか。

 私のヨロイじゃあるまいし。


「……じゃ、そろそろ行くわよ?」

「え、え!?」

「どどどどどうなる!?」


「───こうなる☆」


 クイッ、カシャ────……!


 ────ガルルルロロロロォオオオオ─────!!!


「わあああああああああ────!!」

「きゃああああああああ────!!」



 ……誘拐犯じゃ、ないからね?





 ────ガルルルォォオオロロロロロ───!!


「ふん、ふん、ふふふん、ふ〜〜ん」


「信じられない……鼻歌歌ってるぞ、この人」

「はは、でも、なんか慣れてきちゃったよね」

「あ、ああ。風が気持ちいいな! それに、はやい!」

「うん!」


 あら、なんか、いい雰囲気?

 クルルカンは空気を読んで、黙るわよ?


「ふぅ〜〜……」


 ──ガルルルルルオオオオオロロロロ──……




 ──いい天気だわ。

 風が、気持ちいい。


 こんなのにまたがっているだけで、

 どんどん進んで行って、不思議だ。


 いや、もういい。

 正直に言う。


 私、かなぁぁあり、

 この乗り物?

 気に入ったわ!!



 食堂にいた頃には、

 こんな体験ができるなんて、

 まったく想像できなかったわ!


 なんか、とっても非日常!

 いや、そりゃ他にも色々あったけどさ。


 世界の風がごぉごぉと、

 私の頬を流れていって、

 空気の温度が良くわかる。


 息を吸い込むと、

 前から運ばれる風が、

 なんの抵抗もなく、

 身体を駆け巡る。


 お腹の下から響く音は、

 最初はうるさいかな?

 と、思ったけど、

 なんら問題はない。

「お、ゴキゲンだな?」

 くらいにまで思える。



 ────ガロロロロロロォォ────……!!



 少し、自分のアゴが浮いて、

 前の空を、見上げてしまう。

 今日は雲が少なく、

 濃い蒼が、はっきりとしている。


「ふは〜〜ぁ……はは」


 にやけてしまう。

 なんだこれ。

 わかった。

 楽しいのだ。


 前に、ヒキ姉と2人で馬に乗ったけど、

 アレとは全く違う感覚だ。

 こんなにどっしり座っていても、

 こんなに速く、前に進む。

 この手の動きだけで、加速する。

 この足の動きで、操ることができる。


 魔物に苦労しているラクーンの皆には悪いけど、

 これ、そうとう楽しいわ。

 なんかごめん。

 急いでいくから、許してね?


 ガロロン、ガルルロロロロロオォオオン──!!


 地面が硬そうな平らな所を選んで、

 どんどん前に突き進んでいく。

 景色は、真ん中から外へ、ひろがっていった。





「あ、あの、クルルさん……」

「アンティでいいわよ?」

「え? あや、その……ちょっと速すぎませんか?」

「そう?」

「あんた、こんなすごいマジックアイテム持ってるなんて、何者なんだ?」

「……平和と愛の使者、義賊クルルカンよ?」

「いや……絵本の英雄が乗るには、この馬車……じゃないけど、邪悪な意匠すぎるよ……」


 気にしていることを。


「……アンタたち、当然だけど、この走るアゴの事も、人に言っちゃダメだかんね?」

「言っても信じないよ……"車輪が付いたアゴに乗ってきた"とか、里の中でおかしな目で見られるよ……」

「それ私に失礼じゃね?」

「あはは……言いませんから……」

「ていうか私、この格好でラクーンの里に入るのよね……ねぇ、みんなクルルカンって知ってるの?」

「バッチリです」

「ぜったい群がられるぞ」

「帰りてぇぇ────!」

「そ、それは困りますッ!」

「たのむよ……」

「冗談に決まってるでしょう」


 ────ガルルルラロロロロロォォォ──……!





「魔物、いないわね……」


 さっきからガルガル走っているけど、

 気配すら感じない。

 クラウンも見つけたら言ってくれるはず。

 ……なんか、拍子抜け?


「えと、スコーピオンとかは、そんな速い魔物じゃなかったはずです。この速さで走っているなら、気づかれても追いつけませんよ」

「サンドクレイグなんか、もっとトロいんだぜ」

「そうなの?」


 スコーピオンとかは、

 学校の教科書にも載っているけど、

 当然、実物を見たことはないからなぁ……。

 移動速度の見当がつかん。


 サンドクレイグ……粘土人間?

 想像つかん……。


「一番怖いのは、チイタハです」

「ああ、そうだな……」

「チイタハって、どんなの?」

閃光豹(せんこうひょう)のことです。キャットの上位種で、大きいと全長4メルくらいになるんですよ」

「走るのがとっても得意なんだ。何回か、里の柵で見たことがあるよ……」

「ここは砂岩帯なので、群れているはずなんです」

「ふーん。ウルフみたいなモンかな?」

「ふ、ふーんって、クルルさん……そんな悠長な……」

「アンティでいいってば」

「あ、はい……アンティさん」

「わ、わかったよ、アンティさん……」

「よろしい」



 こそこそ……


(ね、ねぇ、私達が年上だって、そろそろ教える?)

(いや、この人、子供に甘そうだ……まだ黙ってよう)



『────……アンティ。』

「なぁに? クラウン」

『────ラクーン族の、成長外見についてですが──。』





 ────ギャウウウ……





『────震音感知。アンティ、前方に複数個体。』

「──!! おいでなすったか……!」


『────ガルンツァーに3Dマッピングを展開。』

『────球体レーダー採用。当機を中央に配置。』

『────全方位ホログラミングします。』


「わかる言葉で言え、ばかたれ!」


『────まるい地図の真ん中が私達。寄ってくるのが敵です。』


「あぃよぅ! クラウン、後ろの2人の拘束強化」

『────レディ(準備完了)。下半身よりロック開始。』


 きゅいいいいいん──!


「えっえっ!?」

「き、急になんだ!?」

「────()よ。注意なさい。突破するわ」

「「ええっ!?」」


 ────ガルルラロロロロロォォォ──!!



『────第一陣、接触します。』





 ──バッシャアアアアアン!!



 脇道の砂が、いくつも、宙に舞った。


 現れるは、黄色の魔物。


 しなやかな身体。


 長い尻尾。


 するどい爪に、


 横長の目。


 身体には、黒いぶち(・・)模様がついている。



「チッ、チイタハだ……!」

「なんて、数なの……」


 閃光豹(せんこうひょう)は、縄張り荒らしを、許さない。




「クラウン、逃走優先。場合によっては駆逐する」

『────レディ(準備完了)。戦闘補助を開始します。』




 ────ガルルゥロロロロロォォオオオンン!!!



 ────ギャアオオオオオオオオオオオオ!!!








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ