表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/1216

しゅっぱぁつ、しんこーぅ!

 

「しばらくドニオスを離れるだと?」

「そ。しばらくね」


 一応、出発する前に、

 執務室にいるヒゲイドさんに挨拶しておく。

 キッティがベルをならしても、

 しばらくは留守にしてるワケだし。


「あ……手紙、配れないのマズい、かな……」

「いや。お前はこの前、2日に一回とか配達していただろう。あれは少し、こまめ過ぎだ。お陰で手紙の滞納は、ほぼ無い。少し溜めてもよかろう」

「……うーん、そか。ホントはその日の内に届けたいんだけど……じゃあ、お言葉に甘えて行ってくる! そんなにかからないと思うけど、もしかしたら一週間くらいかかるかな?」

「まて」

「?」


 ギルドの執務室から出ようとすると、

 ヒゲイドさんに引き留められた。


「もしや、ラクーンの里に行くのか?」

「ギクリ」


 うおう、言葉で言っちゃったじゃないのよ。

 あれ。これ、前に誰かがやってて、

 それをバカにした記憶があるような……。


「やれやれ、やはりか……遠いぞ」

「そ、そうなの?」

「ああ」


 ゴソゴソ……

 引き出しから、何かを取り出すヒゲイドさん。


「アンティ、昔、俺が使っていた地図だ。持っていけ」

「え!?」


 ヨレヨレの茶色い紙……地図を渡される。

 所々に、あの大きな手で書いたとは思えない、

 細かい書き込みや注釈がある。


「……いいの? すごい使い込まれてる。思い出深いんじゃ」

「全部、頭に入っている。それに、地図は使わなければ紙きれだ。返さなくて構わん」

「……ありがとう。貰っておきます」

「ふん。恐らく、お前なら大丈夫なんだろうが、気をつけろ。湖に向かって、真っ直ぐ南に進めば着くが、遠い」

「湖?」

「地図を見ろ。ドニオスのはるか南に、まん丸の円が書いてあるだろう」


 パラ……


「……これ、湖……?」

「"レエン湖"だ。名前くらいは聞いたことがあるだろう。昔、ある王朝があった場所だ……」

「! これが、あの……」


 まん丸の湖、レエン湖。

 その大きさは、街が一つ、余裕で入るくらい。

 学校で、"珍しい正円の湖"として習うけど、

 今、私の知っている情報は、それだけじゃないわ。


「"飲み込まれた街"……」

「? なんだと」

「……なんでもない。行ってくるね!」


 ギィ────……バタン。



「……なんだ? アイツ……」






 さて、では、いざまいらん。

 まいらんが……。


「よっ、よろしくお願いしますっ!」

「たっ、たのみますっ!」

「…………」


 ぴょこぴょこお耳、ふるふる尻尾の、

 獣人の子供が2人。

 ……この2人と、どうやって行こうかな。


「えっときくけど、ここまでどうやってきたの?」

「あっ、歩いてきました!」

「マジか……」


 こんな子供2人で……?

 強行突破すぎんでしょうよ……。


「あなた達の里って、どこらへん?」


 地図を見せると、

 レエン湖の、手前辺りを指差すポロくん。


「このあたりだ」

「マジでか……」


 遠い……。


 しかも、王都西のドニオスから真下へ、

 南のでっかいナトリの森を抜けて進んだ先だ……。


「……アンタ達、よく魔物に襲われなかったわね」

「たいへんでした……」

「砂岩帯を避けて、木のある所を登りながら少しずつ来たんだ。僕らラクーンは、木登りは得意だから」

「なるほど……」


 でも、木の上だって、

 絶対に魔物がいない訳じゃないでしょうに。

 バールモンキーとか、バカだって言うけど、

 腕はバールみたいなんだろうし……。


「片道7日くらいかかったよ……」

「い、一週間もかけてきたの!?」

「は、はい。木の実とかをとって、なんとかここまで……」


 ──思わずクラっとした。

 さっきヒゲイドさんに、

 一週間で戻るっつったのに……。

 じょ、冗談じゃないわ!

 往復2週間と、問題解決で何日か……

 半月かかっちゃうじゃないの!


 …………。


 …………かくなる上は……。


「……アンタたち、"私の事はしゃべらない"。覚えてるわね?」

「「は、はいっ!」」


 2人の耳と尻尾が、ピィんと上を向く。

 ……これなら大丈夫かな? まだ子供だし……。


「とりあえず、南に進んで森に入るわ」

「えっ!? 街道を進まないんですか?」

「ど、ドニオスから、南のナトリへの道が安全だと思う」

「真下に降りた方が速いわ」

「「え、ええええええ……」」


 無茶だ……と、明らかに顔に出ている2人。

 いや気持ちはわかるけど、

 私はさっさと行きたいの!

 それに、森に隠れた方がいいのよ。


 "速くて"、"隠れられて"、"追いつかれない"。


 ……ふふ、全てが、私にとって好条件。

 爆走☆森ガールを、舐めんじゃないわよ?





 街道をガン無視し、1ジカ半くらいかけて、

 ドニオスから南に進み、森の側まで来た。

 人目が無いとは思ったけど、

 原っぱで見晴らしが良かったから、

 ビビって歩きで、のんびり来たのだ。

 そう。

 ここまでは、のんびりだ……ここまではなァ!!


 ────にやり。


「こ、ここから行くんですか?」

「僕達は木の上を行くけど……やぁ、気が滅入るな」

「──いいえ? 木の"真ん中"辺りを行くわ」

「「──はい?」」


 昨日から思うけど、この子ら仲良いわよね……

 息ぴったりじゃないの。

 大きくなったら、ホントに結婚するんじゃないの?

 ……あ、苗字一緒だから、兄妹か……?


「……まぁいいや。アンタたち、私の腕に掴まんなさい!」

「えっ、えぇ!?」

「な、なぜ!?」

「ほら、さっさとする! "私の言う事は、ゼッタイ"!」


 昨日した約束を振りかざし、目で訴える。

 2人は戸惑っていたが、小さな手足を使い、

 私の両腕にしがみつく。


「──クラウン、ロック頼む!」

『────レディ(準備完了)。衝撃分散の為に、複数箇所に展開。』

「まかせた!」


 きゅううううううう────ん!!

 きゅううううううう────ん!!


「えっ、なっ!? わっ!?」

「ななな、なんだ!? この金色の輪っか!?」

「ほら、じっとする!」


 瞬く間に歯車の輪っかが現れ、

 2人を通り、私の腕に結えつける。


 きゅるるるるるるる…………!!


 モチのロン、

 黄金のブーツには、金色の歯車じゃい!!


「──先に言っておくわ。絶対に(・・・)口開けんなよ(・・・・・・)?」

「えっ、えっ!?」

「な、なにがおこ──」



 ギュルルルルルルルル、

 ゥゥウウウウンンォォオ────!!!!




「「ぎ、ぎゃあああああああああぁ────!!」」




「だから、口開けんなって……」



 ケモノの腕の金ピカが、森へ突っ込んでいく。



 2人は仲良く悲鳴をあげ、



 黄金と共に、森をぴょんぴょんした。






 森に入って2フヌくらいで、



 2人は仲良く、舌を噛んだ。








ごめぬ(;´Д`)明後日まで、

お仕事ふにゃふにゃですぁ……

いけそうなら、ぶっこむ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ