表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/1216

はじめてのおつ……指名依頼!

 

「この服……?」

「なんか、さらさらしてるな……」

「あ、洗濯しといたわよ?」

「「ええっ!?」」


 クルルカンは、洗濯屋さんにもなれるのよ?


「あ、えと、お先にお風呂、いただきました」

「……ありがとう」

「いーえ。調理台が近いから、声きこえてたんだけど、"いまはダメだからね!?"、"き、今日するわけないだろ"ってどういう意味?」

「ぶォッふぉ……」

「……なんでもないです……」


 あら、ポロくん、敬語も使えんのね。

 ……なんでコヨンちゃんに、

 バシバシ叩かれてんの?





 昨日に作ってあった、

 コガネアユの炊き込みライス(野菜過剰)

 があったので、少し多めに、

 お皿によそってあげた。

 ────もちろん、ほっかほかやで。


 例の"火の玉消火活動"の時に、

 川でシメたやつだ。


 獣人ちゃん達がライスを食べれるか心配だったが、

 どうやら平気なようで、

 魚と野菜を使っていたのもよかったらしく、

 とても美味しそうに食べていた。


「……ごちそうさまです! す、すごい美味しかったです……」

「ごちそうさまでしたっ……!」

「はぁい、お粗末様」


 食器を片付ける。

 流しにおきっぱだ。

 後でバッグ歯車で吸い込む。

 ……ああ、私の女子力、どこいったの……。



「……すみません、無償でご飯までいただいて、その……今からする話も、その……」

「…………」

「……ああもう、とりあえず聞いてみるから、暗くなるのはやめなさい!」

「しかし、あなたは、怒っていた……」

「ぐぅ!」

「……ブチギレていました……」

「や、あれは……そのちょっと、間が悪かったというか……」

「でも、直前まで、あんなにスヤスヤ寝ていたのに!」

「お、おおおぅ……」


 こ、こら、やめれ。

 私がとっても血の気が多い、

 寝起きに低血圧な、

 どうしようもない金ピカ女にきこえるじゃない……。


「いいから話しなさい! もう、ここまできて、言わないってのはないでしょッ!」

「う……」

「は、はい…………」





 パジャマに仮面というマヌケな格好で、

 あぐらをかいて、片ヒジを頬につき、

 私は話をきいた。


 何も言わなくても、2人は、

 かなり詳しく話してくれた。


 自分の故郷がおかしいこと。

 獣人仲良しパーティのこと。

 王都で羊姉妹に会ったこと。

 ヒキハさんが怒鳴ったこと。


 ……聞き終わる時には、さっきは、

 ちょっとキレすぎたかなと、反省してた……。


「……ヒキ姉、副隊長だもんなぁ……」

「「!」」


 あ〜〜。なんか、

 色々大変な役職なんだろうなぁ〜〜!!


 2番目とか、"上"と"下"から、

 どっちからも、突っつかれるもんな〜〜!

 あ、上って、お姉さん??


 ……まるで、バイトのプライス君だわ。

 父さんに突っつかれ、

 母さんにこき使われ、

 私にもブチギレられ……。

 ん? 2番目じゃなくね?


 がんじがらめの時もあるんだろなぁと、

 失礼かもしれないが、少し、同情する。


 あの人は、優しく、責任感がある。

 じゃないと、休みを使ってまで、

 ファイア・エレメントを探しに来たりしない。

 あんな、泣き方はしないのだ……。


「……ヒキハ様と、お親しいのですか?」

「む……」

「あ! いえ、その……」


 うーん。

 あんましヒキ姉と仲良しだって、

 広めたくないんだよなぁ……。

 どこからポタタづる式にバレるか、

 分かったもんじゃないわ。


 やっぱ、今度、ヒキ姉は土下座ね。

 あの髪型だから、

 ホントに羊さんみたいになるんじゃないかしら。


 後は、アブノさんに会わせよう……

 ふふ、楽しみね。


「……そ、友達か、お姉ちゃんみたいなもん」

「「!!」」

「──きけ。少し、脅しておく」


 ゴクッと、2人が唾をのむ。

 ……こんな、パジャマ姿の金仮面なんて、

 そんな怖くないでしょうに。

 ……あ、さっき下で、ブチギレてたわ。

 なんかごめん……。


「私は表向きは郵送配達職(レター・ライダー)! でも、裏の顔は……なんだと思う?」


 少しおちゃらける振りをして、問うてみる。


「えと……」

「ひ、必殺、仕事人……?」

「…………」


 必ず、ころしてどうすんの……。


「なぜ、そういう言葉がでるかわからんが……まぁ、ちょこちょこ秘密の依頼を受けていると思って」

「秘密の……」

「依頼……!!」


 うわぁ、目がキラキラしてきちゃったよ……。


「──私は、正体がバレると困る」

「はい」

「クルルカンだもんな」


 むッ……。


「軽く、考えんじゃねぇ!! バレたら、お前らは敵だ」


 またまた、ビクッ、とする、獣人2名様。

 あ……ちょっとおもしろい……

 いかんいかん……。


「私の言う事を守らないと、話にはのらないッ!」

「うぅッ……」

「……わ、わかった!」


 脅しやハッタリには、ポロくんが強いな。

 ふふ、男の子じゃん。


「いち。私の事は、この先どんな事があっても、人に言うな」

「「コクリ」」

「に! 私がヒキハ副隊長と知り合いだと、誰にも言うな」

「「はい」」

「さん。私の言うことは、基本的にぜったい」

「……」

「それは……」

「……そんな無茶苦茶なことは言わないわ。例えば、アンタたち明日に結婚して! とか、そんなことは言わないから……」

「「………………………………」」

「何となくアンタたちも察してるでしょ。私、あんまり表舞台に立っちゃダメなの!」

「「……コクリ」」

「ただ、その、多分……Bランクくらいの強さはある……」

「なッッ!!?」

「び、B、ですか!?」

「ちょっと!! ぜったい言わないでよ!!?」

「「コクコクコクコク……」」


 元Aランク冒険者、

 ヒゲイドさんのお眼鏡ですから?

 ……あの人、裸眼だけど?

 たぶんそれくらいはあるんでしょう……。


「アンタたちの里に一緒に行くとして、安全は私が預かる事になる。馬車か、徒歩かはわかんないけど……怪我しないために、したがえってことよ」


 2人は、目を合わせて、

 お互いの意志を確認している。

 否定的な雰囲気はしない。


「──お願いします。私達には、もうあなたしかいない」

「たのむ……みます。僕らに力を貸してほしい」


 …………。


 真っ直ぐで、強い意志の宿る目だ。


 ……やれやれ。

 ツケは羊さん持ちね。

 ツケを許すなんて、食堂娘も、

 丸くなったもんだわ!


「はぁ、わかった! 何ができるかわかんないけど、一回、引っ付いていくわ! なんか、魔物いっぱいなんでしょう?」

「……ほ、ほんとか……?」

「あ、あ……ありがとう、ありがとう……!」


 2人がいきなり涙ぐむので、

 仮面の下で、焦ってしまう。


「ほ、ほら、泣かない泣かない! さっさと寝る! 明日の朝に出発!」

「え、でも……」

「用意とかは……」

「ごはんは用意してあげるから、とりあえず今日は寝なさい! そこに換えの布団だしといたから!」

「「は、はい!」」



 2人は疲れていたんだろう。

 魔石を消して、すぐに、寝息がきこえる。


 私は仮面をとろうか迷ったが、

 先ほどの醜態を思い出し、

 一応、つけたままで寝ることにした。


「……変な跡とか、顔につかないでしょうね?」


『────仮面より"さっきみたいに上向いてたら、だいじょぶじゃない?"と申告。』


「だいじょぶじゃない? って……」




 仮面は程よくポカポカして、

 意外といいあんばいだった。




 くか〜〜〜〜






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ