「永遠を追求する者」 さーしーえー
「は〜〜い、あがってあがって。あ、靴は脱ぎなさい?」
「は、はい!」
「おじゃまします……」
クルルカンの格好をした少女につれられ、
私とポロは、あの、白い塔の頂上にある、
小さな家に招待されていた。
「すごい……こんな所に、家があるなんて……」
「そ、それもそうだけど……コヨン」
「なに?」
「僕たち、どうやってここに、登ったんだ?」
「それは……」
部屋の仕切りの奥に行ったであろう、
黄金の少女を見る。
「……わからない。けど──」
「……けど?」
「只者じゃない、それは、確か」
「……そうだな」
郵送配達職。
彼女は自分の事を、そう言ったけど、
さっきのような"奇術"を、
ただの冒険者が、出来るはずがない。
「……ヒキハさんは、すごい人と知り合いなんだね」
「……僕も、羊殿を信じたくなってきているよ」
「ふふ。言ったでしょ? あの人は、とても優しい人だって……それにしても、すごい素敵な部屋!」
「ああ……高いな! 僕たちの家より、高度がある」
「もう! 高さだけじゃなくて! ほら、本棚とか!」
「ああ、大きいな……」
彼女の部屋は、一つの壁が、
天井まである本棚で埋まっていた。
とても沢山の本がある。
地図、伝記、これは……参考書?
……勉強しているのかな?
わ! こことか、全部、料理の本だ!
包丁の研ぎ方……?
「なぁコヨン、ここの本、見てみろよ」
「え……わぁ」
絵本が集まった所がある。
「わぁ……いくつか知っているのもある!」
「ふっ、あのクルルカン、自分の絵本も持っているぞ」
「……ほんとだ」
私達の里は、かなり街から離れている。
しかし、子供の成長、とくに、
感情と文字の教育には、絵本はもってこいだ。
私も、里にある、数少ない絵本を読んで、
育ったクチだ。
いくつか、見覚えのある題名がある。
「太陽の巫女」。
「義賊クルルカンの冒険」。
「封じられし光の精霊の神話」。
…………。
……まさか……。
「あ……あった……」
「え?」
────「永遠を追求する者」───。
──すっ。
思わず、手にとる。
「──私が一番、好きな絵本だったの……」
「そうなのかぃ?」
表紙を見る。
両手を広げた女の子。
その上に、青い光のようなものが、
描かれている。
「……どんな話だったっけ。僕は、クルルカンの絵本ばかり読んでいたから」
「ふふ……。これはね? とても優しい、お話なのよ……」
ペラりと、物語を、めくる。
「……このお話はね? 青い光の"ぼく"と、女の子の"きみ"しか、出てこないの」
「へぇ……? ということは、語り部は、その青い光かい?」
「ええ、ええ、そうよ。この話では、青い光が何なのか、女の子が誰なのか、なぁんにも、知ることはできないの」
「ほぅ……」
「青い光は、永遠の命をもっているの。でも、女の子は、いずれ、歳をとって死んでしまう」
「…………」
「だからね? 青い光は、必死で、女の子を永遠に生かす方法を探すの。全ての世界をまわって、なんとか、その方法を探そうとするの」
「……さいごは、どうなるんだい?」
「ふふ、ポロったら、せっかちね? ……わからないのよ」
「え、ええ!」
「……見て、さいごの場面」
ペラり……。
この絵は、子供の頃の私には、衝撃的だった。
なぜか、とても、心に焼き付いた。
「これは……?」
「……わからないの。さいごの絵に、言葉はないの。"ぼく"がどうなったのか。"きみ"がどうなったのか。誰にも、わからない」
「…………」
「でも、この絵、見て?」
「?」
「"きみ"の身体から、青い光の体が、出ているように見えるでしょう?」
「……ああ、そうだね!」
「ふふ……。私はね、"きみ"は、ちゃあんと、"ぼく"の元に近づけたんだと思うの」
「……永遠を、手に入れた?」
「それは、わからない。でも、この絵の"きみ"は、"ぼく"に、引っ張られているみたいに見える……」
「…………うん」
「わたし、この絵が好きだったぁ……なぜかとても、心惹かれた」
「うん、不思議な絵だね……」
「うん、心が、洗われるよう……」
「──心の前に、身体を洗わないとね?」
「「へっ──?」」
シュバッ──!!
一瞬、何が起きたか、まるでわからなかった。
目の前に、私の服を持った、
普通の服装の、仮面の少女が立っていた。
……ん? 私の服……?
「なっ! コヨン!」
「えっ、わっ、なっ!?」
──ぬ、ぬ、脱がされてる〜〜!!!?
「ふふん! ワケあって、子供の服を剥ぐのは得意なのよ!」
「えぇ、えええええ〜〜!?」
「ほらぁ、アンタも」
シュバばばはっッ!!
バサッ! バサッ!
「えっ!? なッ!? ばかなッ……!?」
ぽっ、ポロが、ぱんいちにっッ!?
「ほら、先に一緒に入ってきなさい、お風呂!」
「「え、ええええええぇ〜〜!!?」」
わっ、私達、夫婦なんですけどぉ〜〜〜!!?
……あ、だからいいのか……。
(*゜∀゜*)わりと重要な回という(笑)