表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/1216

⚙⚙⚙ 舞い戻れ、黄金の道 ⚙⚙⚙ さーぼーてんー

 

 うさ丸が凱旋(がいせん)? した後、

 久しぶりにお店を手伝った。


 一ヶ月ぶりでちょっと緊張したけど、

 何のこたァない!

 ふふ、包丁(ほうちょう)にぎれば、チョチョイのちょい!

 タンタン手が動いたわ!


 お客さんには、

「まぁ! 今日はアンティちゃんがいるよぅ!」

 とか、

「おお! 嬢ちゃん、帰ってたか!」

 とか。


 まぁその、けっこう……声をかけられた。


「にはは、ははははは……」


 と、自分でも、

 よくわからない照れ方をしながら、

 野菜を高速カットしてたわ。うん。

 明日、ドニオスに帰るって言うと、


「「「えええええええ〜〜!!!」」」


 って、店中が唸ったので、すごいビックリした!


 ていうか、真横からも声がしたので、

 振り向くと、バイトのプライス君が、

 この世の終わりのような顔をしていた。


 ……あんた、私より年上でしょ……。


 しっかりしなさいおらさっさと火ぃ入れろよ。

 ……マ ジ か。

 鉄板が、冷えてやがる。


 うさ丸は店先でユータ達と遊び、

 何人か大きい女の子をひっかけ、

 何故かアナに貰ったブロコロは、

 茹でてあげるとヒキ姉が食べた。


 プライス君以外は、無事に夜を迎えた。


「ち、違、これはその、魔石! 火の魔石が不調だったんですよ! お嬢ぉ〜〜〜〜!!!」

「……みせ開けてるウチに(てつ)さます(やから)が、無事に食堂(せんじょう)から出れると思うなよォぉ……?」

「ひ、ひぃぃあぁぁあああ────!!!」

「あらあらぁ〜〜♪」

「はっはっは! やっぱ、プライスに店とか、まだ無理だなぁ!」





 ──ドニオスを発ち、(さん)の夜を越えた。


 ま、元々、5日間くらいみてたから、

 頃合(ころあ)いでしょ!



 朝の仕込みが終わって、少し、寂しくなる。

「ここまででいい」と、父さんらに、言われている。

 今、父さんの唯一の趣味?

 シャボテナに水をやっている。

挿絵(By みてみん)

「ふっふふ〜♪ ふふん♪ ふっふふ〜♪」

「にょきっと!」

「うおっ、いたの!」


 シャボテナの鉢植え台の下に、白い球体がいる。

 上に乗っている、いくつかの丸い植物が、

 トゲトゲしていて、珍しいみたいだ。


「あんた、丸いカタチとかで、親近感わくの?」

「にょ〜! にょやぁ〜〜♪」

「……抱きつく?」

「──にッ!? に、にょきっと……!」


 冗談よ。


 あんたゼッタイ言葉わかってるでしょ……。

 何なのホントあんた、奇跡のラビットね……。

 あと、ユータたちが言ってた、

「ラビットの王さま、またね〜〜!」ってアレ、

 確実にアンタのことでしょ?


「ふ……王様? 今日、ドニオス帰るからね。ちゃんと着いて来んのよ?」

「にょやや♪ にょんにょん♪」

「ふふ。ねぇクラウン、うさ丸の鳴き声のパターンで、意味がわかっている発音とかないの?」

『────該当:1。"にょにょや"(イコール)"無理だ"と断定。』

「それは、私も知ってるってば」

『……────レディ(準備完了)

 ────"うさ丸言語分析デバイス"構築を開始。』

「でばいす……それって"道具"、みたいなイミよね? デバイス名は?」

『────"にょきっとマスター"。』

「──ブっふぉッ! き、きひひっッ、あっはっはっはっはっはっは──!」







 予想どおりの、出発だった。

 両親の、心のそこから、安心する笑顔。

 街のお得意さんたちの、熱すぎる声援。

 横一列にならび、敬意を払う同級生達……。


 ほぉら、

 予想と、まったく……。


「……ん? んん?」


 …………。

 なんなん? おまえら……。

 さっさと、魔法の練習、いけ。



「金さじ、ばんざ──い!!!」

「「「バンザ────────イ!!!!」」」


「──────黙れぇぇええええええぃい!!!」



 くわっ!









 ────はしる、はしる、はしる。


 しかし、そのはやさは、ほどよく、心地いい。

 でも、けっこう、おケツがイタい。


 …………馬って、わりと、揺れるのね……。



「"光の手紙"が、あれば良いのに、と思ってしまいましたわ……」

「────え?」

「ふふ、お別れする、あなたの両親を見て、ですわ」


 後ろで(たずな)を引くヒキ姉が、

 ボソッと、そんな事を言う。


「"光の手紙"って?」

「そういう伝承があるのですよ。遠くの人にも、すぐに届く、光の手紙、そういう物が」

「……あのねぇ、そんなモンあったら、この世界から、手紙なんて無くなっちゃうでしょうよ? 私、食いっぱぐれるわぁッ!!」

「ふふっ、そうですわね! "郵送配達職(レター・ライダー)"なんてお仕事、無くなっちゃいますわね?」


おいおい……

もう既に、無くなってたっちゅうに……。


「……ヒキ姉ってさ、時限結晶の話とか、そんな話も知ってるしさ……けっこう、夢見(ゆめみ)ちゃんだよねぇ?」

「──なっ! わっ……私は、姉さまと違って、本ばかり、読んでいましたから……"あなた"の絵本のように、有名なもの以外も、児童書とかは、けっこう読みましたわよ?」

「"わたし"の絵本とちゃう! "クルルカン"の絵本!!」

「というか、あなたも知らないのですの? この手紙の話を信じて、気がふれた研究者……孤児院では教本に載っていますわよ?」

「ええっ!? だ、だれよ」


 ペーパー免許(試験だけ満点)の私のプライドにかけて、知っている必要があるわ!


「"シンエラー教授"ですわ!」

「ええっ!! そうなの!?」

「やはり、知っておりましたか」

「あれでしょ? 意味わかんないこと言って、時間箱を殴り壊し続けたっていう……」

「それですそれです」

「ていうか、その人の処刑前の遺言、昨日の試験問題に出たわよ!」

「まぁ、そうでしたの? ……正解しましたか?」

「──なめないで?」


 私とヒキ姉の、芝居がかった、野太い声が、

 流れる風のなか、かさなる。


「「わたしが取り戻せたのは、"ビョウ"だけだった!!」」


「───ふにょあッ!!?」

「「あ……」」


 鞄で寝ていた、うさ丸、起こしちゃった。


「にょやぃ……?」


 …………。

 ………………。


「フフフ、」

「ふふ! くくく!」

「「────はははははははっ!」」


 おっかし! イミワカンナイ!!


「はぁ、はぁ……何ジくらいに着くかな?」

「もうすぐです。午後の2ジには着くでしょう。馬より、あなたが走ったほうが、速いでしょうに」

「いいの!」


 こうやって、喋りながらゆったりが、いい──。

 

「薄情だと、思う?」

「え?」

「父さんらとのお別れ、あんまり、悲しくない」

「……いいえ、アンティ。それは、薄情なんてモノとは、まったく逆のモノだと思いますわ」


「ふふ……」




 ────ドニオスは、もうすぐだ。










「ところでアンティ? ……そろそろ、"金のドラゴン"に食われては?」


「あ────……」




 ────グォォォオオオオン……!!



シャボテナのトゲトゲ、

あんまり写ってにゃい……(´◉ω◉` )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[一言] 読み返して気づいたけど、こんな所から伏線が張られてたのか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ