⚙⚙⚙ 舞い戻れ、黄金の道 ⚙⚙⚙ さーぼーてんー
うさ丸が凱旋? した後、
久しぶりにお店を手伝った。
一ヶ月ぶりでちょっと緊張したけど、
何のこたァない!
ふふ、包丁にぎれば、チョチョイのちょい!
タンタン手が動いたわ!
お客さんには、
「まぁ! 今日はアンティちゃんがいるよぅ!」
とか、
「おお! 嬢ちゃん、帰ってたか!」
とか。
まぁその、けっこう……声をかけられた。
「にはは、ははははは……」
と、自分でも、
よくわからない照れ方をしながら、
野菜を高速カットしてたわ。うん。
明日、ドニオスに帰るって言うと、
「「「えええええええ〜〜!!!」」」
って、店中が唸ったので、すごいビックリした!
ていうか、真横からも声がしたので、
振り向くと、バイトのプライス君が、
この世の終わりのような顔をしていた。
……あんた、私より年上でしょ……。
しっかりしなさいおらさっさと火ぃ入れろよ。
……マ ジ か。
鉄板が、冷えてやがる。
うさ丸は店先でユータ達と遊び、
何人か大きい女の子をひっかけ、
何故かアナに貰ったブロコロは、
茹でてあげるとヒキ姉が食べた。
プライス君以外は、無事に夜を迎えた。
「ち、違、これはその、魔石! 火の魔石が不調だったんですよ! お嬢ぉ〜〜〜〜!!!」
「……みせ開けてるウチに鉄さます輩が、無事に食堂から出れると思うなよォぉ……?」
「ひ、ひぃぃあぁぁあああ────!!!」
「あらあらぁ〜〜♪」
「はっはっは! やっぱ、プライスに店とか、まだ無理だなぁ!」
──ドニオスを発ち、3の夜を越えた。
ま、元々、5日間くらいみてたから、
頃合いでしょ!
朝の仕込みが終わって、少し、寂しくなる。
「ここまででいい」と、父さんらに、言われている。
今、父さんの唯一の趣味?
シャボテナに水をやっている。
「ふっふふ〜♪ ふふん♪ ふっふふ〜♪」
「にょきっと!」
「うおっ、いたの!」
シャボテナの鉢植え台の下に、白い球体がいる。
上に乗っている、いくつかの丸い植物が、
トゲトゲしていて、珍しいみたいだ。
「あんた、丸いカタチとかで、親近感わくの?」
「にょ〜! にょやぁ〜〜♪」
「……抱きつく?」
「──にッ!? に、にょきっと……!」
冗談よ。
あんたゼッタイ言葉わかってるでしょ……。
何なのホントあんた、奇跡のラビットね……。
あと、ユータたちが言ってた、
「ラビットの王さま、またね〜〜!」ってアレ、
確実にアンタのことでしょ?
「ふ……王様? 今日、ドニオス帰るからね。ちゃんと着いて来んのよ?」
「にょやや♪ にょんにょん♪」
「ふふ。ねぇクラウン、うさ丸の鳴き声のパターンで、意味がわかっている発音とかないの?」
『────該当:1。"にょにょや"="無理だ"と断定。』
「それは、私も知ってるってば」
『……────レディ。
────"うさ丸言語分析デバイス"構築を開始。』
「でばいす……それって"道具"、みたいなイミよね? デバイス名は?」
『────"にょきっとマスター"。』
「──ブっふぉッ! き、きひひっッ、あっはっはっはっはっはっは──!」
予想どおりの、出発だった。
両親の、心のそこから、安心する笑顔。
街のお得意さんたちの、熱すぎる声援。
横一列にならび、敬意を払う同級生達……。
ほぉら、
予想と、まったく……。
「……ん? んん?」
…………。
なんなん? おまえら……。
さっさと、魔法の練習、いけ。
「金さじ、ばんざ──い!!!」
「「「バンザ────────イ!!!!」」」
「──────黙れぇぇええええええぃい!!!」
くわっ!
────はしる、はしる、はしる。
しかし、そのはやさは、ほどよく、心地いい。
でも、けっこう、おケツがイタい。
…………馬って、わりと、揺れるのね……。
「"光の手紙"が、あれば良いのに、と思ってしまいましたわ……」
「────え?」
「ふふ、お別れする、あなたの両親を見て、ですわ」
後ろで轡を引くヒキ姉が、
ボソッと、そんな事を言う。
「"光の手紙"って?」
「そういう伝承があるのですよ。遠くの人にも、すぐに届く、光の手紙、そういう物が」
「……あのねぇ、そんなモンあったら、この世界から、手紙なんて無くなっちゃうでしょうよ? 私、食いっぱぐれるわぁッ!!」
「ふふっ、そうですわね! "郵送配達職"なんてお仕事、無くなっちゃいますわね?」
おいおい……
もう既に、無くなってたっちゅうに……。
「……ヒキ姉ってさ、時限結晶の話とか、そんな話も知ってるしさ……けっこう、夢見ちゃんだよねぇ?」
「──なっ! わっ……私は、姉さまと違って、本ばかり、読んでいましたから……"あなた"の絵本のように、有名なもの以外も、児童書とかは、けっこう読みましたわよ?」
「"わたし"の絵本とちゃう! "クルルカン"の絵本!!」
「というか、あなたも知らないのですの? この手紙の話を信じて、気がふれた研究者……孤児院では教本に載っていますわよ?」
「ええっ!? だ、だれよ」
ペーパー免許の私のプライドにかけて、知っている必要があるわ!
「"シンエラー教授"ですわ!」
「ええっ!! そうなの!?」
「やはり、知っておりましたか」
「あれでしょ? 意味わかんないこと言って、時間箱を殴り壊し続けたっていう……」
「それですそれです」
「ていうか、その人の処刑前の遺言、昨日の試験問題に出たわよ!」
「まぁ、そうでしたの? ……正解しましたか?」
「──なめないで?」
私とヒキ姉の、芝居がかった、野太い声が、
流れる風のなか、かさなる。
「「わたしが取り戻せたのは、"ビョウ"だけだった!!」」
「───ふにょあッ!!?」
「「あ……」」
鞄で寝ていた、うさ丸、起こしちゃった。
「にょやぃ……?」
…………。
………………。
「フフフ、」
「ふふ! くくく!」
「「────はははははははっ!」」
おっかし! イミワカンナイ!!
「はぁ、はぁ……何ジくらいに着くかな?」
「もうすぐです。午後の2ジには着くでしょう。馬より、あなたが走ったほうが、速いでしょうに」
「いいの!」
こうやって、喋りながらゆったりが、いい──。
「薄情だと、思う?」
「え?」
「父さんらとのお別れ、あんまり、悲しくない」
「……いいえ、アンティ。それは、薄情なんてモノとは、まったく逆のモノだと思いますわ」
「ふふ……」
────ドニオスは、もうすぐだ。
「ところでアンティ? ……そろそろ、"金のドラゴン"に食われては?」
「あ────……」
────グォォォオオオオン……!!
シャボテナのトゲトゲ、
あんまり写ってにゃい……(´◉ω◉` )