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「…………」

「…………」

「…………わぁ」


「にょんむにょんむ……」


 ──彼らの仕掛けた罠に、何かが、ひっ掛かった。


 白い毛皮におおわれた、丸い身体。

 上に伸びる、身体と同じ長さの耳。

 小さいが、つぶらで綺麗なお目目。

 なぜか、赤いグローブをしている。

 ニンジンは、わしづかみに、されていた。


「……な、なんなんだ、こいつ……」

「……見たことない、生きものだな……」

「……白くて丸いね……?」

「にょや! にょやや!」


 ……パリ、ポッキ! 


 オレンジ色の野菜が、良い音をたてて、割れる。

 どうやらこの生き物は、

 ニンジンが、とても好きなようだ。


「にょんむにょんむ……」

「……たべてるね」

「……たべてるな」

「あれっ! おどかすのしっぱいしてない?」

「「あっ!」」

「もぅ────!!」

「にょやや?」

「……こいつ、ぜんぜんにげないな。ふつう、のら(・・)の、どうぶつって、すぐにげないか?」

「そ、そう言えばそうだね……」

「この子がはんにん?」

「え、どうだろ……」

「金ポタタ、あげてみろよ」

「にょやい?」


 剣の少年が金ポタタを差し出すと、

 白い生き物は、あからさまに困った顔をした。


「にょややややや、にょややややや……」

「? たべないのかな?」

「なんか……すごくいやがってないか?」

「もっと、口におしつけてみよ──よ!」

「えっ、あっこらアナ……!」


 ───ぐんむ、ぐんむ。


 杖の少女が金ポタタに手をのばし、

 金ポタタをぐりぐりと押し付ける。


「にょ、にょき、にょきっとな……」

「……なんか、かわいそうだな」

「……そうだね」

「あれ────? たべないな──……」


 ────ぐいん、ぐいん。


「にょ、にょきっとなぁああァ────!!!」


 ────ガッ!


「「うわぁ!」」

「お、おこった!」


 白い生き物は、顔に押し付けられた金ポタタを

 いきなりわしづかみ(・・・・・)にして、ぶんどった。

 すごい勢いで、穴を掘り出す。


 ──ばしゃしゃしゃしゃ────!!


「──にょきっっっとぃいッッ!!」


 ────ずごんむ!!


 金ポタタが、物凄い勢いで、穴に叩き込まれた。

 中で、ポタタの先端が、土に刺さっている。

 白い生き物は、土を集めなおし、穴に被せていく。


「あ────!! なんでうめるの────!!」

「……すごいおこってたね」

「金ポタタ、きらいなんじゃないか?」

「あ、ねぇ! 見て! しっぽになにかついてるよ!」

「ん……ほんとうだ。これって……」

「"はぐるま"……?」


 白い生き物が、穴を一所懸命、埋めている時、

 おしりの白に、目立つ赤が見える。


「赤い、はぐるまだ」

「どうしてこんなところに……?」

「この子、どこかから、もってきちゃったのかな?」

「でも、はぐるまなんてあるの、"まんなかひろば"とかにある、"じかんばこ"くらいだろう?」

「ええっ、それはまずいよ。もし、こわれてたら、たいへんだ。みんなが見てるものなのに……」

「でも! アナ、あのはこ、あけたことあるけど、こんな、まっ赤っかな、はぐるまじゃなかったよ?」

「アナ……じかんばこを、あけたらダメたよ……」

「こわれたら、ぜったいおこられるぞ……」

「なによぉ────!!」

「にょあ…………にょあ…………」


 子供達が話している間に、金ポタタは、

 すっかり種ポタタとなっていた。


「か、かんぜんに、うまったね……」

「こいつは、"金ポタタかじられじけん"の、ようぎしゃじゃ、ないのか?」

「ようぎしゃってなぁに?」

「にょ、にょきっとなあ────!!?」


 白い生き物が、ブンブンと両手を振っている。

 ずいぶんと、感情豊かな動きだった。


「……すごく、ちがうって言ってるみたいに見えるな……」

「そぅいや、こ、こいつ、手があるよね」

「さっきも、ニンジンをかた手でつかんでたぞ……」

「「ま、まさか……」」

「? なになに? どうしたの? ふたりとも」


 キョトンとする、杖の少女をよそに、

 同じ考えに行き着いた、剣と、盾の少年達は、

 顔から血の気が、引いていた。


「な、なによぅ! アナだけのけもの、やだよぅ!」

「……アナ、とてもまずいかも、しれない……」

「うん、とてもまずい……」

「え? やさいが? そうだね!」

「「ちがうちがうちがう……!」」


 二人の少年は、顔を見合わせ、

 コクンと頷くと、杖の少女に、つげる。


「この、生きもの……」

「"まもの"かも、しれないんだ……」

「……えっ!」



「にょきっとなぁ〜〜!」




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