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黄金少女は気づかれない さーしーえー

 




 すべての価値観は、


    ある、些細なことで、


      書き換えられてしまうのだ。








 カーディフの北よりに位置する、

 お世辞にも大きいとは言えない学院。

 アリーヴァ学童院。


 しかし、狭い土地を利用するために、

 それぞれの教室には、傾斜がある段床に、

 机と椅子がならんでいる。


 正面の黒石板に対し、

 扇状に広がるように、席があるのだ。


 少しでも多い子供を学ばせ、

 少しでも講義を見やすいように。


 段差のある、地層のような教室に、

 子供たちは、集まっていた。


「なぁ、おい! 今日さ、金さじ、くるかな!」

「……え、ああ! あいつな!」

「え、あの子、最近見ないけど、どうしたの?」

「ハハ! あの子って、お前、歳、同じだろ?」

「いや、あんたもね……ホラ、背が低いから」

「ドニオスにいるらしいって! 母ちゃんが!」

「えぇ!? 何してんのあの子」

「えーなんの話ー?」

「ほら、金さじ!」

「あ──! 魔無しちゃんか! 最近見ないねー!」

「あいつ、能力おろし、受けたんだろ?」

「──"お前らみんな私の魔法で地獄おくりだ!!"」

「ぶっ、ぐわぁははは! えっ、ほ」

「ひゃはははははははははは!!」

「あははははははは!! 超似てる、今の!!」

「え、何なに、それ、金さじちゃんのマネでしょ!」

「おぅ、なに、あいつ今日くんのか」

「なんか、試験は受けにくるってウワサ!」


 彼らが、"金さじ" と呼ぶ、少女。

 ひと月ほど前から、ぱったりと姿を消した、

 自分達と同じ歳の、あの少女のことだ。



 いつも、緑や青の、よれているシャツ。

 男の子が履くような、ショートパンツ。

 妙に濃い色の、くるぶしまでの、靴下。

 何故かゴツくて角ばっている靴を履き、

 背は小さく、目線の下に、いつもいる。


 ひどいのは、髪だった。いつも後ろで、

 ヒモで、ぐるぐる巻きにしてあるのだ。


 彼女の髪は、薄い金色で、

 束ねられた髪は、明るい線を描く。

 金の丸い頭から、スッと、背中に流れる金。


 まるで、金のスプーン(・・・・・・)のようであった。


 彼女は、食堂の一人娘だった。

 彼女が、皆に会ったその日から、

 彼女は、"金さじ" と呼ばれだした。


 彼女は、魔法が全く使えなかった。

 でも、落ち込んでいるかと思えば、

 からかうと彼女は必ず言い返した。


 背が低く、小さな男の子のような格好。

 彼女は、毎日、からかわれた。


 彼女のおかげで、教室は、とても賑やかだった。

 みんな、割と、金さじの事が、好きだったのだ。

 負けん気があり、小柄で、からかいがいがある。

 だから、彼女がいなくなってしまった時、

 多分、けっこうみんなが、残念に思った。


「なぁ、今日、ほんとにくるかな」

「また、ギャアギャア言うんだぜ、きっと!」

「ふふ、ちょっとオシャレすればいいのにね」

「おおっ! 上からだねぇ? おばさまは」

「あんた、しにたいの?」

「でもよぅ、もうすぐ試験始まるぜ?」

「うーん、残念。弟ほしい」

「母ちゃんに頼めよ」

「ウチの環境、手遅れ」

「なーんだ、来ないのかー金さじちゃん」


 まだ、少し時間はあるので、

 壇上の教師は、黙っている。

 彼女もまた、まだこない生徒が

 本当に来るのか、気になっているのだ。


「……頃合か。は──い、静かに。そろそろ答案用紙をくばりま────」


 ガララララ────……!










挿絵(By みてみん)

「すっ、すみません!! おくれました……!」









「────────?」

「あの、間に合い、ましたよ、ね?」

「あなた、だれです? どこの学年?」

「……はい?」




(うおお……なんだあのこ、マブイ)

(やべ……オレ好みだわ)

(うわ、髪サラサラなんだけどあの子……)

(私……あんな妹、ほしい……はぁ)

(おい、かえってこい……おい……)

(ムギで出来てる帽子? 超可愛いんだけど)

(ねー! あんなツバが短いの見ないよね!)

(おお……ワンピースとか、王道すぎてやばい)

(うわ、やらしいよ! ……それは同意するけど)

(肩、丸見えだぜ……隣に座るやつ、かわれよ)

(あ、あの色のワンピ、着る度胸ないわ私……)

(あのサンダル、足が出てるのポイント高いぜ)

(黙れ変態……え、あの革の装飾いいなぁ〜)

(革? サンダルの?)

(ちがう、髪、髪!)

(髪? どこ?)

(革で出来たリボン! 何あれ、可愛い〜〜!)

(ん? なぁ、あの髪、どっかで見たことねぇ?)

(はい? なんか言った?)

(髪! あの髪の色!)

(なんてぇ?)

(だから髪の色!)

(……あ、そういや、あれ、見たこと……ある?)

(だろ? どこだったかな……)

(う~ん?)




「────とにかく、もうすぐ始まりますから、自分の学年に行きなさい。ここはお姉さんお兄さんの所です!」

「いや、だか……」

「何ですか? 教室がわからない?」

「アンティ……ですけど……」

「────は?」


「アンティ・キティラ、ですけど……?」



「────────……はい?」




(は?)

(は?)

(は?)

(は?)

(は?)





「いや、だから……先生。アンティですってば」





(え?)

(え?)

(え?)

(ええ!?)

(ええ!?)

(ええ!!?)

(えええ!!!?)

(ええええええ!!!!!?)



「────……あんてぃ、きてぃら、さん?」



(((((えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?)))))







「──だからそうだっつってんでしょうよ」








ヾ(*´∀`*)ノ

アブノさんチョイスの破壊力

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