表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/1216

テストにおめかし

 



「朝だ……」


 寝坊、しなかったわ。

 ふふっ、勝ったわね。


 昨日、うさ丸が踊った後、なんと、

 ヒキハさんに、勉強を教えてもらった。

 地形学は、ヒキハさんが唯一、得意な分野だそうだ。

「土地勘や、地図の知識があってこその護衛任務です」

 だそうです。

 そうだよね。

 守る側が道に迷ってたら、話になんないもんね。


 朝の仕込みは、父さんらに甘えてサボったので、

 いつもよりは遅い起床だ。

 でも、学校の試験時間に、

 間に合わない時間ではない。



 眠ったままのうさ丸を抱え、階段を降りると、

 珍しく、お客さんが一人だけだった。


「って……ヒキハさんじゃないの」

「おはようございます、アンティ」

「おはよ、あ……またポタージュ?」

「え、ええ、今の宿には、朝から、これ程のものはでませんの」

「あ、もしかして、赤い屋根の?」

「ご存知ですの?」

「ふふ、商売ガタキよ」


 パジャマのまま、ヒキハさんの前に座る。

 お客さん……少ないから、大丈夫だろう。


「あら〜また、この子ったら〜〜」

「母さん、私もポ──」

「は〜い、どうぞ〜〜」

「あ、ありがとう」

「うさ丸ちゃんはこっちね〜〜」

「あれ? 名前、教えたっけ?」

「うふふふふ〜〜」

「にょぅ、うぃっと!」


 お、起きたわねこいつ。

 うさ丸の、朝食メニューは、

 ニンジンの固いとこと、キャベツの外側か……。

 母さん、ちゃっかりしてるわ。


「母さん、試験の間、うさ丸頼める?」

「あら〜〜、でも、お店あるし〜〜」


 父さんが、厨房から顔を出す。


「……お! アンティ、起きたか! うさ公もいるな!」

「にょんむにょんむ……にょきっとな!」

「あ、おはよう……ねえ父さん、うさ丸、部屋に置いて行くけど、大丈夫かなぁ……」

「ん──? そりゃ、ちょっと可哀想じゃねぇか?」

「え……やっぱりそかな……」

「う〜〜ん、かといって、厨房には入れられないし〜〜」

「はっはっは! そんな上等な白玉肉、間違って(さば)いちまったらどうする!」

「にょややややや……にょややややや……!」


 ────ドゴンッ。


「かっフォ……!」

「ふふふ〜〜大丈夫よ、うさ丸〜〜」

「うわぁ……」

「今の肘、昨日と全く同じ所に入っていますわ……」


 よろよろと父さんが厨房に戻っていく。

 ……大丈夫か?


「アンティ、私がうさ丸をあずかりますわ」

「え! いいの? いやダメでしょ。宿屋に魔物持ち込んじゃ」

「ふふ、心配事(・・・)はなくなりましたし、今日は街の散策でもしますわ」

「う〜〜ん、あんまり見るとこないよ?」

「なら、うさ丸でもさわっていますわ?」

「はは、じゃあ、頼んでいい?」


 私が食べている間に、

 うさ丸はヒキハさんと遊んでいた。

 本当に人懐っこい……。

 ていうか食べるのはやいわね!

 ……この子、手でつかむからなぁ……。


「本当によく発達した手ですわね……」

「にょややぃ♪」

「ん、ごちそうさま! 母さん、昨日渡したシャツある?」

「洗ったわよ〜〜」

「……え?」


 ……うん?


「……あれ、まっさら……なんだけど……」

「あら〜〜」


 いや、あらじゃないあらじゃない。

 ま、まさか……。


「あの……母さん、ショートパンツは……?」

「あら〜〜」


 …………。


「昨日、出してたやつ、全部……?」

「あららぁ〜〜」


 …………。


「……あ、アンティ?」

「────!!」


 ────ガタン!


 思い切り立ち上がり、裏口から外へでる。

 そこで目にしたのは……。


「────全部、干されている、だ、と……!」


 わ────。

 旗みたいだ────。

 風になびいて、きれいだな────。


 とぼとぼと、食堂に帰る。


「あ、アンティ……その、まさかとは思うのですが……」


 いま、ヒキハさんの目の前には、

 小さな王冠を、頭でくるくるさせて、

 金色の髪をだらんと前に垂らした、

 顔を青くしたパジャマ娘が、

 見えているはずだ。


 髪、前髪おりてきた……。

 邪魔だな……。

 そうだ、2つに結ぼう。

 母さんがいるので、手に歯車をだして、

 隠して結わえようとする。


「(……! アンティ、忘れたのですか!)」

「え……あ」


 そ、そうだった。

 ヒキハさんから、

 クルルカンと同じ髪型はしないように、

 言われたんだった……。


 昨日、森で会った時、髪型と色、

 そして王冠で、イッパツでバレたそうだ。

 うう……しゃあない。

 前に使っていた髪紐で……。


「おう、アンティ、まだいたのか、遅刻するぞ?」


 再び、父さんが、厨房から顔をだす。

 片手には、紐でしばられた、お肉を持っている。

 ────(ひも)


「と、ととと、父さん、そのっ、(ひも)っ……」

「ん? ああこれな? 肉の調理に丁度いい。洗い場に干してあってな? ……そういや、以前どこかで見たことがあるな……」


 私だよっ。

 私の背中だよ、父さんっ!

 ていうか、洗ってても、髪をしばったモンで、

 肉をしばっちゃダメでしょっ! 

 それなに、茹でんの?

 いや、どっちにしろ、あの紐はもう、肉専用だわ。


 ────いやぁぁああああ!!

 試験会場に、パジャマコースだぁああああ!!


『────何故、混乱するのか、原因が不明。』

「(い、いや、だって着るものないでしょ! バッグ歯車の中のタンスの中身、全部干されてんのよ!)」

『────衣服装備は一式、バッグ歯車内に、揃っています。』

「え」


『────装備自動最適選択。

 ────頭部:ラワムギの帽子。

 ────胴部:黄色いワンピース。

 ────脚部:革のウッドサンダル。

 ────臀部:ごーるでんぱんてぃ。』


 お、おお! そっか!

 あのワンピースがあった!

 け、けど! あのワンピ、かわいいけど、

 ちょっと色とか派手じゃない!?

 いつもショートパンツ派の私にとっては

 少しレベルが高いっていうか……


 ていうか、学校にも、あの金色ぱんつ

 履いていくんかいな……

 なんか、人として恥ずかしいんだけど……。


「……アンティ、良ければこれをどうぞ」

「え、ヒキハさん、何これ」

「剣の握り紐ですよ。薄い革で出来た、リボンのようなものですわ。滑りませんし、これは新しいので汚れていませんわ」

「え! あ、ありがと」

「……ちなみにアンティ? あなた、どんな髪型を?」

「ふぇ? 後ろでぐるぐる巻きにしばる」

「な……なんて……勿体ない!!!」

「ふええ?」

「あ、あなたのようなサラサラの髪に、私がどれだけ憧れていたかッッ……!!」

「え、ちょと? ヒキハさん……?」

「後ろを向きなさい、アンティ! 私が結わえてさし上げます! というか、あなたの髪でしたら、少しワンポイント入れるだけで充分ですわぁッッ!!」


 う、うおお、なんだなんだ、この羊さん。

 ん、羊? あ……

 天然モコモコヘアーだから……。


「後・ろ・を・向・き・な・さ・い!」

「ハイッ!」


 目がこわい。


 わたし、ど〜〜なっちゃうの?


『────追加装備に、革紐のリボンが設定されました。』







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ