あんたかぁあああああ!!! さーしーえー
目の前の、岩の上で、燃え盛る炎の塊。
青く、蒼く、碧く。
よく晴れた空を背景に、
その炎は、あまり脅威に思えなかった。
いや、違う。
あれは、なんか、こわい。
「スピリット系の魔物……はじめて会うわ……」
『────ファイア・エレメントは、物理攻撃を無効化します。』
「うわマジか……どうしよ」
当然、火は効かないだろうし……"カーディフの火"は、今回は意味ないわね。
あ! やば!
今、クルルスーツ着てないじゃないの!
「うわわヤバイッ!! あれ着るの、歯車でやっても、何十ビョウかは、かかる!」
『────きます! 回避行動。』
「うわわわわわわわぁ!!」
ボオオゥ……!
ボオオゥ……!
わぁぁ! 炎を飛ばしてきた!
いや、飛ばすっていうか、
アレ、本体の炎と繋がってるわ!
青い炎のスネークが、襲ってきたみたい!
────こえぇぇええええええぇ!!
「ひぃぃいいいい!」
きゅるるるるるる──!!
「に、逃げるが勝ちぃぃいい────!!」
"距離滑り"最大回転!!
────小川沿いを、猛烈ダッシュ!、
「そ、そいや、わざわざ戦うこともないのよね……逃げちゃえば……」
ボオオゥアアアアアア────!!
「なんで、追ってくるのんなァァ────!!!」
アンタ、私と戦ってもイイコトないでしょうがよぉぉおおお!!
『────否。ファイア・エレメントは、火を取り込む事で、自身を強化する魔物です。』
「だ、だからなに!」
『────アンティ。ここは、山火事のあった地点です。』
「そ、そうね? 地面も黒っぽいし、川があるだけね?」
『────燃えるのは、あなただけです。』
「────────────ッ!!!」
────ぞぞぞぞぞぞぞッ────!!!
も、燃やすってか。
私を、燃やすってか。
おおおおおお、おんなのこに、なぁにを求めとんのじゃああアアアアアア!!!
「ぎゃあああああああ!!!」
────ボオオゥアアアアアア!!!
────きゅいいいいいん!!
む、むりだっ!!
振り切れんッ!!
なんとなく川沿いに進んできたけど、
どうしたらいいのっ!?
ボオオゥ……!!
「くっそ! またかッ!」
こいつ、攻撃は遅いッ!!
ゆっくりと、青い炎のヘビが、私にせまる!!
「とっ、りゃ!」
────ボォアン!!
隣の地面に、空振りした炎が弾ける!
くっそ! しつこいのよ!!
「クラウン! 仮面!」
『────レディ。』
ブォオオオオオン────!!
カシャン!!
"クルルカンの仮面"が、一瞬で、
私の顔に装備される!
ふんっ! クルルスーツは無理でも、
仮面はすぐにつけられるのよっ!!
「速さで振り切ってやる! "反射速度"!!」
『────!! アンティ! いけない!!』
ブゥゥゥゥウン……!!
時間には、重さがある……!
え、何、クラウン、何がダメなの??
この能力は、私の思考が加速する!
ほら、炎のヘビも、止まって見える!
後は、走ればいいだけじゃない!
はぐるま付きの、足を出す。
ん?
な、なんだ?
…………重い!!
…………遅い!!
!! しまった!!
な、なんて、初歩的なミス……!
私は、今、仮面だけなんだ!!
────────"力量加圧"は、使えない!!
なんてバカ!
思考が加速しても、
身体がついていかないなら、意味がない!!
攻撃なら、ゆっくり動いても、避けられる!
でも、"逃走距離"は、まったく稼げないわッ!!
身体の方に、移動する速さの、限界があるッ!!
慌てて、"反射速度"を、解除する!
「────うっ、わぁ!!」
変に足を出した状態で、時間の流れが元に戻る。
う、うわぁ、足を、どこに着くつもりだったっけ!?
────ゴッ!!
────さ い あ く だ。
────つ ま づ い た。
────────ゴシャアアン!!
「うぅっ!!!」
川のそばの砂利に、派手にコケる。
丸い石のせいで、ケガはしてない……?
いったい…………。
! 仮面がない!? はずれた!?
かめん……仮面はどこ?
『────アンティ!!!』
「はっ」
炎が、きた。
────ボオオゥアアアアアア!!!!
「────うわあああ!!」
────ぐぉん!
「…………………え?」
────トトトッ、トッ!
「────やれやれ、あぶない所でしたわね……」
「え、あ……」
────私、かかえ、られてる?
ジャリ。
地面に、おろされる。
「……! あ、あんた!」
……クリーム色の、ローブ!!
私を探していた、冒険者の人だわ……!!
「やはり、ファイア・エレメントが発生してましたわね……。あなた、なんでこんな場所に……?」
クリーム色のローブの人が、そのフードを、とる。
私と、目が合った。
……!
「「その、髪の色……」」
────肌色の、くせっ毛の、髪!!
あ、あ、あ、
「「あぁァ──────────────!!!?」」
ひぃぃぃ、きぃぃぃぃ、はぁぁぁぁぁ、
さんやぁぁああああああああああんん!!
今回の挿し絵。
描画時間、10フヌ。
名作です。