くせもの探してピクニック さーしーえー
ど、どないしよう……。
あのローブの人、
カーディフ街の外壁を飛び越えちゃった……。
「た、只者じゃないわ! あんな、ピョーンって、跳べるなんて……!」
ランクとか強さとか、よくわかんないけど、あんな身軽な人が、普通の冒険者なワケないわよ……!
「あんな人が、私を探してるっぽいなんて……」
あ、そうか!
水引き門にいたのは、山火事の時に、
ユータや私が通ったからだわ!
山火事を調べてるってゆうのは、本当みたいね。
アナ……あのおしゃべり娘、
いろいろ喋っちゃったかな?
てことは、
山火事の跡地を見にいったのかな……。
「……クラウン、私もここ、飛び越えるわ」
『────推奨はしかねます。』
「うーん……ごめん。でもね? 問題を先送りにしたくない……あんなのがコソコソしているのに、家に帰れないわ。父さんらを巻き込んじゃうかもしれない……」
もし、"時限結晶"を狙う悪い冒険者なら、その場にいる人を、巻き込む戦いになるかもしれない。
「私1人なら、逃げ切れると思うし、被害もでない。みんなを巻き込まず、あの人を調べられるのは、今だけだわ」
『……────。』
クラウンは、何だかんだ言って、
私の身を案じてくれている。
でも、私の考えや、大切な事も考慮してくれる。
今や、とてもかけがえのない、相棒だ。
「……お願い。やばかったら、すぐ逃げるから」
『────レディ。
────行動補佐シークエンス。
────対象を追跡、可能な限りの情報収集。』
「そうこなくっちゃ! クラウン! とぶよ!」
『────受諾。反重力機構、展開。』
きゅおおおおおおおおおおん……!
ト────────────────ン!
おっ……とっと。
この壁の上って、こうなってるのね。
さぁて、誰かに見られないうちに……。
私は、くるりと一回転して、下に飛び降りた。
山火事の後に、この小山に入るのは、初めてだった。
うーん、黒いスミと、白の灰。
木は燃えていると思ったら、
けっこう黒い幹が燃え残ってる……。
まるで、寒い時期の森みたいだ。
魔物が住めなくなるのは、いい事だけど、
……なんか寂しい光景ね。
ここには、命がないわ。
「ていうか、見失ったわね……」
木があるって言っても、
細い、黒いものが、ほとんどだ。
見通しは、かなりいいと思うんだけど……。
ここからは見えないだけで、
けっこう段差とか、あるのかもしれないわね。
あ、逆にこっちが見つからないようにしないと……。
「……明日、学校の試験なのに、なぁにをやっとんのや、私は……」
『────アンティの思考回路に起因する。』
「かいろ、って何よ……クラウン、近くに振動とか、感じない?」
『────近辺に、動点感知反応無。移動推奨。』
「了解。見通しはいいから、もちょっと奥まで探索する」
あ、みんな忘れてると思うけど、
今、頭にうさ丸、乗ってるからね?
「にょんが〜〜Zzz……」
『……────。』
岩がゴツゴツしている所にでた。
おお……こんな所、あったんだ。
森が生い茂って、魔物がいる時は、
絶対こんなトコには、こなかったわね。
うーん、完全に見失ってしまった。
クリーム色の、フード付きのローブ……。
この景色の中だと、目立つと思うんだけど……。
すぐ側の、でっかい岩の上に、座り込む。
くきゅるるるる……
「……お昼、食べ損ねたわね」
「にょんやや……」
あ、あんたも居たわね、忘れてたわ。
うーん、ここで食べちゃうか。
くるるー、
にょき、にょきにょき、
きゅううううん─────!
手元に出た、バッグ歯車から、
お手製バジルチキンサンドと、ニンジンを出す。
「はい、うさ丸」
「にょきっと!」
コリコリコリ……。
パリポリポリ……。
うさ丸が、美味しそうにニンジンをかじっている。
うん、ニンジンって、たまにナマで食べたくなるよね。
あ、皮剥いてないわ……
いいか、うさ丸だし……。
「にょま!」
「じゃあ私も、いただきま〜〜す!」
ガブリ。
モンぐモンぐ。
おお……美味しい。
さすが、時間停止。
チキンのフライは、時間経つと、
美味しさ抜けるからなぁ……。
バジルとかのは、特にベタつくし……。
こんだけ、サックサクでホッカホカだと、
思わず笑みがこぼれるわね……!
しあわせしわあせ♪
ふふ〜〜、ピクニックじゃ〜〜い。
『────本来の目的の喪失を確認。』
「……! ご、ごほん、いや、そうゆう訳じゃないわよ!?」
『────構いません、アンティ。あなたが脅威から遠ざかるなら、それは僥倖です。』
「! ……クラウン」
……うーん。
相棒に、いらん心配をかけているわね。
あー……今日はいい天気だし、
なんかもぅ、どうでも良くなって来たわね。
さっきのローブの人も、完全に見失っちゃったし。
もぐもぐ……。
「……もうちょっとしたら、帰ろっか?」
「にょきっとな!」
( º дº)うさ丸率、たけぇぇえええ!