だれかがきてる? さーしーえー
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
「ハァ……ハァ……!」
からだ熱い。
めっちゃ熱い。
「よお、嬢ちゃん! いやぁ、久しぶりだなぁ! …………って、どした?」
「お……、お……」
「おぉ?」
「おっちゃんの……門番のおっちゃんの……!」
「はっはっは! なんだぃ? 久しぶりの再会に、感動してんのかぃ!?」
……想像してみてほしい。
40メルトルテほど離れた所から、そこに向かうまで、延々と、自分に向かって声をかけられる場面を。
周りの人たちから、ガン見である。
ちょ、
ちょ、
超、恥ずかしかったわぁ〜〜!!
「──おっちゃんの、アホぉぉぉおおお!!」
「──にょきっとぉぉおおおおおおおお!!」
「──な、ぐわぁぁあああああああああ!!」
────ずがぁあああああああああん!!!
『────非推奨の行動です。』
───────────────────────────
アンティのうさ丸バスター!!
効果はバツグンだ!!
トルネ・クリーガーはもがいている!!▼
───────────────────────────
「ぐああ! 前が見えん!? な、なんだ、この心地よいモフモフはッ!?」
「ちっ……しとめそこなったか……!」
「ぷぉっ! やっと顔からはがれたぜ! ……な、なんだこいつはっ!?」
あ……やばい。
門番のおっちゃんに魔物、投げてもた……。
「にょきっとな☆」
……うさ丸。
アンタも余裕ぶっこいて、ウインクなんかしてるばやいやないのよ?
『────告。アンティの必殺技に起因する結果です。
使用回数カウント:2。"うさ丸バスター"を登録しますか?』
……おおぅ、必殺技認定されたで。
「にょやにょや〜〜!」
「はっはっは、なんだこいつ! かわいいな!」
──ポムん。
門番のおっちゃんに、うさ丸を頭に乗せられた。
「嬢ちゃん! まさか、"獣従職"になったのかい?」
「うえっ!?」
……また、突拍子もないことを……。
"獣従職"って、確か、複合系、中クラスでしょ……。
"魔法職"や"剣技職"の人が、たま〜〜〜〜に、ごく稀になるっていう……。
「いやっ、この子は! そういうんじゃなくて、何というか、トモダチと言うか……」
「はっはっは! まぁ何でもいいじゃねえか! 悪意があるようには見えないぜ!」
「え、ええええええ……」
街の門番さん。
それでいいんすか……
立派なラビット系統の魔物ですよ……。
「にょやや〜〜♪」
『────クラウンギア本体、傾斜角前方60単位。』
「……うん?」
クラウン……えと、なんて?
けいしゃかく?
『────クラウンギアが、前方に傾いています。』
「えぇ……?」
……あ、そうか。
うさ丸が乗ってるから……。
「……おっちゃん。今、私の頭の上の王冠、どうなってる?」
「ん? そのラビットの毛の中に、スッポリ隠れてるな」
「な、なんですと!」
恐る恐る頭上をさわって確かめると、な、なんと、毛玉にしか触れない!
クラウンが……この白いモフモフの中に、完全に隠れているというのか!
『────クラウンギアの表面温度が摩擦により上昇中。』
「……それって大丈夫なの?」
『────最高到達温度は、お風呂レベルと予測。』
「なら大丈夫ね……」
まさか、こんな方法でクラウンを隠せるとは……
アブノさん印のラワムギ帽子、いらなかったんじゃ……。
い、いやいや、落ち着けアンティ!
こんな、珍獣を頭に乗せて、明日の試験なんて受けにいけないわッ!!
「にょきにょきにょきっとな?」
『……────。』
「そうだ、嬢ちゃん……実は今、カーディフに変な奴がきてるんだよ」
「? 変な奴??」
い、いきなりね……。
「ああ……どうも、ひと月ほど前の、例の山火事の調査に来ているらしいんだが……」
「げっ……」
山火事って、私が持ってる山火事のことよね……。
うわぁ、厄介事の気配が、ガンガンしてきたわ……。
「それが妙なのは、来たのは一人だけって事なんだよ」
「ひとりで? ……どこの街の人だろう?」
「わからない。淡いクリーム色のローブをスッポリ被っていてな……ただ、門を素通りしても、水晶球が正常だったからな。ギルドカードを持った、正規の冒険者だとは思う」
「あ……街門の水晶球、カーディフにもちゃんとあったんだ」
「そりゃあるぜ! カーディフは小さいが、丁寧に作った街だからな! あ、それでよ、どうやらそいつ、嬢ちゃんを探してるらしくてよ……」
「げげっ!」
そ、それはまずい……!
あの山火事の時は、色々やらかしてる!
バーグベアとやりあったり、
森の中を爆走したり、
山火事を消し飛ばしたり!
この"力"、もしバレたら、大変だわ……!