表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/1216

なんでいるんです? さーしーえー

 

 ばばばばーちゃんこと、バスリーさん宅。




 テーブルに人数分のコップが並び、みんなで座っている。

 バスリーさんは、やっと私を直視して話せるようになった。


「は~~……いや~~あんた……。年寄りをあんまり笑わすもんじゃないよ。30年くらい若返っちまうじゃないか」

「若返ったんならいいじゃないですか……もう。この格好には、色々、ワケがあるんですぅ」

「かっかっか! いやぁ、しかし、それはすごいよ。あいつを思い出すねぇ!」

「あ、やっぱり、似てます?」

「雰囲気というか……とにかくそっくりだね! その王冠はなかったが」

「そ、そんなにですか」


 実際にクルルカンに会った人を(うな)らせるとは……

 アブノさんの再現度、ムダにすごいわね……。

 多分、色んな絵本や書籍を見て、研究したんだろうな、あの変態……。


「その仮面……おあつらえむきだよ」

「……!」


 そうだ!

 この仮面、借りパチしてたんだった……!

 か、返した方がいいかな?


「あ、あの、バスリーさん、これ……」

「もっときな」

「!」


 にやりと笑い、バスリーさんに言われる。

 ……先を、越されてしまったみたい。


「で、でも……」

「……なぁアンティ」


 バスリーおばあちゃんが、肘をテーブルに置き、

 ぐっと、体を前に乗り出す。


「確かに、その仮面は、あたしの思い出がいっぱい詰まっている、大事なモンさ! でもね、だからこそ、アンタに持っておいて欲しいって、何故わかんないかねぇ?」

「……!」


 大事だから、持っていて欲しい……?


「……アンティ。その仮面は……アイツは、あんたを助けてくれるかぃ?」

「……とても」


 何度も、助けてくれてます。

 この仮面が無ければ、本当に死んでいたかもしれない。


「ふん……ならいいんだよ。それは、あんたが今、必要な物のはずだ。そうだろう?」

「…………」

「……あたしは前に言ったね? それを持つのは、"縁"があるからだって。運命ってのは、あるって」

「はい……」

「アンティ。あんた、鏡見な! 不本意かも知んないけどねぇ、そいつは、よく似合ってるよ! "運命的"にねぇ!」

「ぐっ!」

「くっくっく。それに、そんな格好をして、今さら仮面だけしないなんて、そんな事をできるのかぃ?」

「う…………」


 ……そうなのだ。

 私は今、正体を隠して冒険者をしている。


 クルルカンの仮面があって、

 クルルカンのヨロイを着た。

 スキルの助けも大きい……。


 もう、私の装備の重要な一部になりつつある。


 そして、かなりの人前に、この姿で立ってしまっている。

 それぞれの街のギルド出張所では、もうこの"クルルカン"で顔が通っているはずだ。


 うう……

 ……今さら、外せないよぅ……。


「うぅ……お預かりしていて、よいですかぁ……」

「だから、前からいいって言っているだろう。あんたに預けたいんだよ! お嬢ちゃんも、あたしの大事なヤツの一人だからねぇ!」

「お、おばあちゃん……!」


 ありがたかったり、情けなかったりで、私の声は弱々しくなる。

 この仮面とは、本当に、長い付き合いになりそうだ。




「……しかし、お嬢ちゃん、そのナリでドニオスをうろついてるのかい? かっかっか! 子供が見たら、大喜びだろうねぇ!」


 ぐうっ!

 すでに、子供達に、何度か囲まれているとは言えん……

 歩いてたら、よく、指さして笑われるし……

 何故か酒場からお客さんが全員見に来て、マスターから苦情がくるし……。


 とっ、年頃の乙女が、なんて道化なの……。


「……な、なんで泣きそうな顔するんだい」

「ううっ……やっぱり、呪いの仮面だぁ……!」


 あの時、私の青春は、真っ金金になっちゃったんだわ……。




















「……で、そろそろ突っ込んでいいかい?」

「は……はいっ!」

「このコ……何だい?」




「かんくるるぅ~~! くるくる、くるくる……」


 しゃむしゃむしゃむ……。


「わぁ~~!! また食べた~~!!」

「おもしろい! かわいい~~!!」


 ロロロとラララが、花おおかみに、むっさ精霊花、食わしとる。

 お、おい、ええのんか。

 貴重な花、なの、よね……?


「いや、ははは……」

「……今さら笑ってはごまかせないよぅ?」

「じ、実はですね……」

「かんくるるぅ~~!」














「……つまり、お嬢ちゃんが持っていた"おおかみの(もと)"のようなアイテムが暴走して、精霊花を取り込んだ魔物ができたと、そういう事かい?」

「そ! そうです!! まさにその通り!」


 なんてわかりやすいの!

 さすが、ばばばばーちゃん!

 三百歳は、伊達じゃないわ!


「あんた、何をやってんだい……」

「か、返す言葉もありません……」


 しょぼん……。


「かんくる、かんくるるぅ」


 しゃむしゃむしゃむ。


「あ、あの、今さらですけど、精霊花、こんなに食べてもいいんですか……?」

「「かわいい~~!」」

「う~ん……本来は、許されない事なんだけどねぇ……」


 あ、やっぱりそすか。


「……アンティ。屋根、見たかい?」

「あ、はい。その……」

「"精霊花まみれ"、だったろ?」

「あ、はははは……」


 うん、真っ白でしたね。


「私もね……群生した純精霊花が、こんなにも繁殖力が高いとは、知らなかったんだよ……最近は、家の中まで生えてくる始末でねぇ」

「うわ、中もですか……」

「ほれ。そこ」

「え……うわ!」


 て、テーブルの下の床材のスキマ!!

 気づかなかった……うわ。

 精霊花が20本くらい生えてるわ……。


「最近、とうとう見かねて、引っこ抜いて、外に植え直してたんだよ……」

「あらんま……」

「うーんだから、こいつが家の中の精霊花だけでも食ってくれたら、とても助かるねぇ!」

「ほ、ホントですか! あ、でも、魔物なんですけど、大丈夫ですかね? 一応、肉はめちゃめちゃ嫌いっぽいんですが」

「肉、食わないのかい?」

「ええ……ミートボールあげたら、ひっくり返って、脚をバタバタします」

「ええ~~何それ~~!!」

「見てみたい~~!!」

「これ、アンタ達、可哀想だからやめな!」

「ははは……」


 ……よかった。

 この子、ここに預けてよさそうだ。

 新鮮なご飯がある方がいいからね。


「しかし、こんな精霊花の群生した場所に、こんな小さな魔物がいて、よく平気だねぇ……。よっぽど高位な魔物か、伝説の精霊獣なんかしか、入ってこれないはずなんだが……よしよし」

「かんくる~~♪」


 あ、なんか普通に懐いてるな……。


「そうなんですか?」

「ああ……普通の魔物や、邪悪な存在は、この花畑には近づけすらしないよ。まったくこの子といい、お嬢ちゃんの(そば)にいるヤツといい、どうなってんだか」

「へぇ~~……ん?」


 "(そば)にいるヤツ"……って??


「で? そっちの子は、何を食べるんだい? まさか、その子も精霊花かぃ?」

「え? バスリーさん、さっきから、何言って────」








































「……にょきっと!」

挿絵(By みてみん)

「……………………」














 …………。









 ………………。










 なぜだ……。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ