-D8- さーしーえーまーつーりー
『>>>──そんな はずない』
ポツリと、声が零れた。
『────・・・、、☼』
クラウンは、かつての盗賊王の、
その、儚げ な表情に、
無意識に、目を奪われたが、
『────……ッ……!☼』
すぐに、我に返り。
索敵を、開始する。
幻影の箱舟には、
少しだけ、聞き慣れてしまった、
警告音が、木霊している。
── D8 [ ディー・エイト ] ──。
10段階 表記である、そのシグナルは、
現実が、かなりの脅威に晒されつつあることを、
意味していた。
「 ────・・・ 」
アンティの視界モニターには、
すでに、"上方を観測せよ"、と、指示が出ている。
カスタマイズを重ねた、彼女の 望遠レンズは、
その、異常を、王都の、
誰よりも早く、捉えている。
きぃぃいいいいいいいんん・・・・・───・・・!
「ん? なんの音だ?」
「なに・・・? この、耳鳴り・・」
アンティの周りにいる、
同年代の子供たちも、
その、音を、捉え始める。
黄金と白銀の仮装を楽しむ民草も、
やがて、なんだ、なんだ、と、
どよめきが、ひろがっていく───。
───それは、落下音だった。
「え・・・?」
「あれ、なに・・・?」
「なんか、いっぱい・・・落ちて、きてない??」
いまの、世界に、住む者の、なかで。
おそらく、アンティ達だけが。
それらを、正しく、認識した。
「・・・鳥の、、魔物?」
「いや、なんか・・・鉄、っぽくね?」
「は? ありえねえし!」
───" 鋼鉄の鳥 " 。
無知な子供たちの、
無垢から来る、その、
感覚から生まれた言葉は、
的を、得ている。
ただ、それは、"魔物"、では、ない。
決して、ここには、もっと。
存在しては、いけない 、モノだ───。
───アンティが、言った。
「 ── せ 、 ん ・・ 」
「 ・・ せ 、ん、とう、き ・・─── 」
「「 ぇ? 」」
有り得ないモノが、落ち続けている。
あれは、
あれは、
た く さ ん 、 だ。
『>>>ふざけるなよ・・・』
『────質量が、あります・・☼』
まだ、信じたくないカネトに、
クラウンが、事実を伝える。
『>>>せめて、世界観を、守れってんだ・・・!』
『────:カネト・・・た:対策を・・・!☼』
複座式の情報統括シートに座る、
太陽の化身が、黄金の盗賊王に、声で、縋る。
『な・・・ナンだ、こりゃあ・・・◎△◎』
『──ウソでしょう・・アレ、私の時代の・・?❖』
〘++++++冗談、キツイわよ・・・〙
木と、火と、水の、旧神たちも、
乙女の記憶の船の中で、
言葉を、、、失うような、驚きに、飲まれる。
〘#……。……かつての、キミたちは、
#……こんな "イベント" も、
#……用意、していたのかね……?〙
冷たき水の剣士が、優しく、問い、
〘------知ら;ない・・・☪︎.*・゜〙
記憶の削れた、月の女神が、
覚醒しつつ、震えて、答えた。
〘++++++・・・パパ、信じて・・・〙
クローンの娘が、懇願する。
〘++++++私たち・・・、
++++++こんな、" クエスト "、
++++++つくって、ない・・・・・!〙
〘#……。……その、ようだな……〙
ギンガは、娘の残滓の音声を、
信じることにした。
だが、突然のことに、
皆が、数拍、対処に、遅れる。
マイスナも、アンティの隣で、
空を見上げ、惚けている。
太古の世界の、"知識"を、ダウンロードし、
"情報"として、アレが、何なのかは、
彼女たちにも、理解できる。
だが当然、"実物"を見るのは、
これが、初めてである。
『>>>エンジン音が、聞こえない・・。
>>>なぜ、落下してくる・・』
『────すべての機体が:
────停止しているようです☼』
『>>>コックピットを観測できるか』
『────いけ・・・ます!☼
────誰も:乗っていません!!☼』
『>>>ブロック・ゲームじゃ、ねぇんだぞ・・・。
>>>ぼくで、落下地点を計算する』
『────それは:私が:やります!☼
────終わりました!!☼
────カネトは:"格納"の:補助を!!☼』
『>>>・・わ、かった・・・!
>>>くそっ・・頭が、回んねぇ・・・!!
>>>しかも、なんだ・・・!?
>>>あの、戦闘機どもが、まとってる、
>>>赤黒い、" モヤ " は・・・──……っっ!?』
『────わか:りません・・・!☼』
『>>>まるで──……っ!
>>>──" 撃墜 "、された、みたぃだ・・・!』
ヒュィぅぅぅゥゥゥウウぅぅううう・・・・・!!
ヒュィぅぅぅゥゥゥウウぅぅおぉぉ・・・・・!!
火が、灯っていない、
コウテツのツバサたちは、
黒煙を纏いながら、
落下してくる。
十 や、二十、では、ない。
「なぁ……あれ、やばくないか?」
「ぇ……いや、でも、王都の防壁なら、
だいじょうぶでしょ?」
「そ、そうだよ……魔物なら、
ぜんぶ、はじいちゃうだろ?」
「鳥系の魔物の群れだろ?
そ、んなに……強くないだろ!」
「ぃや……アレ、けっこう、デカいぞ?」
空を見る者に、つられ、また、
空を見る者が、ふえていく。
どよめきが、あたりに、ひろがっていく。
『────アンティ☼』
「・・・」
『────アンティ:しっかりして☼
────"格納"できるか:試します☼』
「・・・うん」
まだ、とおい。
だが、確実に、墜ちて、くる。
おそろしい、ことだ。
アンティは、ねらい を、定めるために、
空に、手を、のばす──。
『────ひとつ・・成功したら:
────すべて・・行います ☼
────ごめんなさい ・・☼』
「そうだね・・」
アンティは、クラウンが、
何故、謝ったのか、
よく、わからなかった。
『>>>よし・・・まだ、間に合う。
>>>オッケー、行ける、大丈夫だ。
>>>いざとなったら、ぼくのスキルで、
>>>意識を、加速する』
「・・・うん」
『>>>落ち着け・・よく、狙うんだ』
空から落ちてくる、
旧時代の、最新兵器。
どうやら、戦闘機の、
年代は、バラバラの、ようである。
どちらにせよ、混乱を避けるためには、
"彼女"が、"盗む"しか、ない。
"無限"の チカラで、" 盗る "しか、ない──。
『────バッグギア:展開します☼』
「えいっ」
──きぃぃぃいいん・・・!
そんな音が、ここまで、聞こえた気がした。
水の中に落とす、コインのように。
ゆっくりと、堕ちてくる、
戦闘機の、ひとつの、
ちょうど、真下に、
黄金の、環が、ひらいた。
「なんだ、アレ」
「ひかってる」
『>>>よし、いいぞ──』
『────充分な:大きさです☼』
かれらの演算は、完璧であり、
お空の水の中を、
ゆらゆらと、落ちてきた コインは、
黄金のコップの中に、
吸い込まれる、はずだった。
フツウ、ならば────。
バ チ ン ッ ッ ・・ !!
「 ──……ッ!? 」
『────なッ……!?☼』
『>>>はじいたぞッッ……!?
>>>何故だッッ!!?』
黄金の環に、触れた、瞬間。
そこに、透明の膜が、
あるかの、ように。
逃げる、金魚すくいの、紅さ の ように。
それは、入らなかった。
「・・ぬすめ、ない・・・。ッ……、、 」
アンティは、自分の口から出た表現に、
ドキリと した。
『>>>もう一回だ・・!!』
『────アンティ・・!!☼』
アンティの、歯車の操作は、
もはや、卓越している。
マシンガンの乱射でも、
すべて、捉えることが出来るくらいだ。
その精度を以て、再び、
落下する、鋼鉄の鳥を、とらえる。
「にがさない」
バ チ ン ッ ッ ・・ !!
「・・・っ」
謎の、ポップアップ・ウィンドウ が、
軽快な音と共に、表示された。
────PON♪
========================
同属性 対象 のため
選択した 対象は
格納できません ▼
========================
わずかな、空白。
無音。
『────ぞ、く・・・せい?☼』
『>>>なんだ、コレは・・・』
クラウンと、カネトの、
思考が停止することは、
改善されない、
致命的な現状の、持続を、意味する。
〘#……── バ カ 者 ッ !!!〙
────ギンガの、喝が 飛んだ・・!
〘#……──呆けている、場合かッ!!!〙
〘------マイスナ・・・!!☪︎.*・゜
------いまはッッ・・;" 鎖 "が;有効です・・!!☪︎
------用意してッっ・・・!!☪︎〙
「──っ・・!! う、うんっ!!」
まさか、アンティ が 失敗するとは、
思っていなかった マイスナ は、
ヒューガの口調となったローザに まくし立てられ、
あわてて、意識を集中させる。
同じ時調で、
王都の民たちも、
おそろしい事実に、気づいていた。
「あれは・・・ちがう!!
普通じゃない・・・!!!」
「王都の上空の結界を、通り抜けている!!」
「に・・・逃げろ!!!! みんな!!!!
あれは、落ちるッッ・・!!!!!
落ちてくるぞ・・・!!!!!!!」
憲兵や、街の防衛 魔法に詳しい者たちが、
目を逸らしたい事実を、
民衆に、ぶちまけていく。
「な、なんだって・・・!?」
「あれ、落ちてくるのか・・!?」
「思ったより。大きいぞ・・・!!」
「え!? 魔物なの!?」
「バカな、魔物なら、はじかれるはずだ・・!!」
「数が、多い・・・!!!」
小さな悲鳴が、
心を、ざわつかせる予感が、
紙に 滲む インクのように、
辺りに、浸み込んでいく──。
〘------"鎖"で;あの"戦闘機"たちを;
------できるだけ;ヒトが いない ポイントに;
------絡め取ります・・・!!!☪︎〙
〘#……くそ、"氷" が、どれだけ、
#……緩衝に、なるか・・・!!〙
「や、って、みる・・・!!」
ギぃぃぃ──いいいいいいンンン・・・!!!
マイスナ、ローザ、ギンガ の、" 鎖業 "は、
つまる所、"神業" であった。
ぎ──いいいいいゅゅュュュゥウンンン・・・!!!!!
「──にがさない」
空が、いくつもの、
銀色の、光の線で、引き裂かれる。
最強の、ミスリル銀の鎖は、
一瞬で形成され、紫の稲妻の磁力で、
誘導されていく。
──ジャラジャラ、ジャラ──!!!
──ギぃぃィイイインンンン・・・!!!!!
〘------いけた!!☪︎
------巻き付いた──!!!☪︎.*・゜〙
「・・・ぐッ・・!?
ぜ、んぶは、っ、ムリ・・・!!!」
〘#……かまわん!! 投網だと思え!!
#……引き寄せるぞ・・・!!!〙
『>>>妙だ・・・』
『────・・・ええ……☼』
かなり、地上まで、
鋼鉄のカタマリたちは、近づいている。
『>>>なんで・・・こんなに』
『────落下速度が・・・おそいの……?☼』
〘#……──いけぇ、マイスナ・・・!!!〙
「でぇええええええいいい・・・!!!」
〘------機動;制御──・・・!!!☪︎.*・゜〙
敵役たちの鎖が、
輝く蛇のように、
うごめきだす。
戦闘機を絡めた鎖たちは、
槍のような頭に変形し、
比較的、高い建物に、
撃ち込まれていく。
── ズ ド ン ・・・ !!!
── ズ シ ュ ゥ ン ・・・ !!!
「──うわあああ!!?」
「きゃあああああああ!!!」
あがる、悲鳴。
空と繋がれた、銀の糸。
〘------伸縮させます!!☪︎.*・゜
------ギンガ殿は・・・!!☪︎〙
〘#……仔細承知・・・!!〙
赤に輝く王都には、
祭りの人々が、溢れている。
そんな所に、戦闘機など堕ちれば──。
しかし、そうは、ならなかった。
悲鳴の中、落ちかけた鋼鉄の鳥は、
──銀色のチェーンによって、繋ぎ止められる。
──ぎぃぃぃぃぃぉぉぉおおおおおんんん・・・!!!
建物の、5階に撃ち込まれていた鎖が、
戦闘機が、民衆に墜落する軌道を、
無理矢理、曲げる──。
──砕ける、レンガの壁。
──軋む、鋼鉄のツバサ。
──── ふ り こ 。
───グぶぉぉぉぉおおオオオオンンんんん・・・!!!
〘#……全、座標を送れッッ、ローザ・・・──!!!〙
〘------───はいッッ☪︎.*・゜〙
数え切れぬ場所で、
罪人のように吊り下げられる、
戦闘機たちは、
だが、その落下エネルギーを、
まだ、完全には、殺しきれて、いない。
旧世界の、時計の、振り子の ように──。
戦闘機は、比較的、
"生命"の少ないポイントに、
"鎖"によって、誘導される──。
───ギュルルルルルルぅぅ、ぎぎぃぃん・・・!!!
──ぎゅぉぉおおおおおおっっ・・・・!!!!!!
鋼鉄の翼が、
現代の構造物に、
触れる、瞬間──。
〘#……── 凍 れ ── !!!〙
──シャァァアアアアアンンン・・・・!!!!!!!
巨大な、剣のような、氷の刃たちが、
その衝撃を、殺し、尽くした。
『>>>す、すっげぇ・・・、、、』
『────お:見事:です・・・!☼』
素直に感嘆する、クラウンと、カネトキ。
〘#……──状況はッ・・・!?〙
〘------何か所もの;建物の崩壊は;
------勿論ですが……☪︎.*・゜
------怪我人は;かなり;出ています・・・!!☪︎
------観測可能範囲で;今の所;
------死者は;出ていませんが・・・☪︎〙
「はァ、はァ・・・」
肉体的な疲労は、あまり、ないが、
精神的なプレッシャーから、
冷や汗が、噴き出す、マイスナ。
〘#……くそ、よくやった、マイスナ……〙
〘------ええ;本当に……☪︎〙
『>>>これで……ぜんぶ、落ちたのか?
>>>すべて、同じ、タイミングで、だと……?
>>>まるで、誰かが……お空の上で、
>>>おもちゃ箱を、ひっくり返したみたぃだ……』
『────昔の私も:王都の天空に:
────そんな子供部屋は:
────作りませんよ……☼
────それより:見てください☼
────ちょうど:至近距離に:
────:一機:墜ちています☼』
『>>>本当だね……。
>>>氷のクッションの お陰で、
>>>損傷が、少ないな……。
>>>先生、氷を、砕けますか?
>>>調べなければ……』
〘#……む、炎で融かしては……〙
『>>>燃料が入っていたら、シャレに なりません』
〘#……そうだな……やれやれ。
#……なぜ、このような事に……〙
ギンガの ひと言に、
全員が、共感した。
王都の人々は、
そこら中から、まだ、小さなパニックや、
どよめきが、起き続けている。
「ぐがあああっ、い、いてぇ・・・!!?」
「ぉ、おちつけ!! いま、ヒールを・・・!」
「な、なんなんだ、コレは・・・!?」
「なぜ、王都の結界を、通り抜けたんだ・・!?」
「これ、魔物なのか……? 金属のようだが・・」
「おれの店が・・くそ、なんなんだよ・・!!」
「氷の、魔法、だよな、コレ・・・??」
「この、鎖は、なんだ・・・?
誰かが、助けてくれたのか・・??」
「はぁ、はぁ、、、。
被害は、出てしまったけど、
つぶれた人は、いないみたい」
マイスナは、息を整え、
すぐ、前にいる、アンティに、
話しかける。
「・・・」
「……アンティ?」
「ええ……ヤバすぎでしょ、なによ、コレ……」
「き、金さじ、大丈夫、だったか……!?」
「すぐ、近くに、落ちたぞ……!」
「こんなことに、なるなんて……」
「あれ、人工物だよな?
ドワーフの、最新技術かな……?」
「アホなこと言ってないで、先生、探そうぜ……!」
わいわい・・・
がやがや・・・
大きな騒ぎには、なっているが、
何故か、死人が発生しなかったことで、
冷静になりつつある人々も、
出始めている。
アリーヴァ学院の学生たちも、
不安と興味から、アンティに、声をかける。
「なぁ……金さじ、
おまえは、アレ、見たことが、あるか?」
「ちょっと、バカ言ってんじゃないわ!
こんなの、知らないわよねぇ、金さじちゃん?」
「・・・はなれろ」
え ?
── と。
箱庭の神々も、
クラスの盟友たちも、
マイスナも、そう、思った。
「・・・アンティ?」
「ぜんいん、はなれろ」
この中で、アンティだけが、
まっさきに、察知した。
ただしく、わかった。
「すぐ、はなれろ。はやく」
「・・あの」
「おきるぞ」
そこで、マイスナも、わかった。
・・・・ ギ 、 ギ ── 。
── ガ チ ャ ン 。 という、音がした。
『>>>……最悪だ』
『────え?☼』
カネトキが、3番目に、気づいた。
男の子、だったからだ。
さっき、彼は、おもちゃ箱と、言った。
そうだ。
彼も、小さい時、
" この手 " の、おもちゃで、遊んだ。
・・・ギギギギギギギ。
・・・・ギギギギギギギギギギ、
・・・・キュイン、きゅいん、
・・・・・PIPIPIPIPIPI。
── ガ チ ャ ン 。
── ガ チ ャ ン 。
── ウ ィィィイイインン ン 。
──GUUUUUUUU/OOOOOOOOOoo・・・・・!!
「・・・なんだょ、アレ・・・」
魔法しか知らない。
学生の一人が、言った。
そうだ、
"変形"、している。
よく、あるんだ。
こういう、おもちゃが。
ありきたりで、
あきあき していて。
いつまでも、こころが、おどる。
そして。
モンダイなのは、
これが、どこまでも、実物大で。
──まったく、おもちゃ なんかじゃ、ないって、
そういう、トコだ。
それは──
それは──
『 ──GYUuuUUU/oooOOOO・・・! 』
────" 竜 " に、似ていた。
『 ──GYUAAAAAAAAAAAAOOOOOOoooooo!!!!! 』
──バリバリバリバリバリぃぃぃいいいい──!!!!!!
「「「「「 ぅ、ぅぎあああああああああああ 」」」」」
この日、たくさんの、
キカイの竜が、
王都に、解き放たれた。