ウイスキーは必要ですか? 下
ブォン(っ'ワ')╮=話
古い友人と、悪態を つきながら、
ヒゲイド・ザッパーは、思う。
──また、彼女たちも、
このように、悪態を つき合うべきだと。
それが、もっと後に、
するはずだった酒に、
手が伸びた、理由かも、
しれなかった。
ヒゲ:「──……勿体ねぇんだ、アイツらは」
ゴリ:「あん?」
ビゲ:「あの性格だ。マイスナも、
良い方向に、変わってきている。
アイツらは、良いパートナー同士、
だと……思う」
ゴリ:「ゴハ、ラッパ飲みは、やめとけよ?」
ヒゲ:「ただでさえ、煌めくのだ。
新天地で だって、
連れ合いは、どうせ……増える」
ゴリ:「ゴハハハ……♪ この街で、もう、
アイツらを、知らないヤツぁ、
ニワカ だ」
ヒゲ:「だから、別に……いいじゃねぇか。
その、輪っかの中に、
古い……友人が、いてよ」
ヒゲイドは、子の父では無かったが、
ドニオスの、父だった。
そんな事は、ゴリルが、いちばん、
理解っていた。
ヒゲ:「俺ん時はな……無かったものだ」
ゴリ:「……アンティの古いダチは、
いいヤツら、だったか?」
ヒゲ:「……ああ、いいヤツら、だった。
アンティは……能力が目覚めずに、
悩んだろうさ。
ただ、アイツも色々、
あったんだろうが……、
腐らずに、
ちゃんと悩めたのは、
たぶん、アイツら、
学校の連中の、お陰だ」
ゴリ:「ゴハハ……そうなんだ、ろうな」
ゴリルも、火酒の、
ご相伴に あずかりながら、
故郷の──バヌヌエルの村の、
旧友たちを、おもう。
ヒゲ:「ちょっと、バカげた強さ、
くらいなら──、こっちから、
ブチまけて、やったんだ。
それが……世界の、ナンタラとか、
言い出しやがる から──…… 」
ゴリ:「あん? 世界の──なんだって?」
ヒゲ:「ッ、なんでもない。……ったく、
因果な、もんだぜ、
やれやれだ」
ゴリ:「なぁ……やっぱり、アイツら、
アンティと、マイスナは、
つよい のか?」
ヒゲ:「……強い。
“至高の冒険者たち”の中で、
アタマを張れる くらいだ」
ゴリ:「ゴハ、ソイツはスゲェや!」
ヒゲ:「しかも、本人たちにも、
バレまくってやがる」
ゴリ:「ゴハハハ……!
絵本の主人公どもだ、
隠れんぼなんて、
一番、似合わねぇよ!」
ヒゲ:「まったく、その通りだ。
だから、アイツらは、
やはり……堂々と、
歩くべきなのだ」
葉巻と、ウイスキーの、組み合わせ。
もちろん、至高だろう。
ただ、この、ふたつの ペアが、
すばらしいと、感じるのは、
やはり──“ この世界のすべて ”が、
あってこそに、決まっているから── 。
ヒゲ:「この世に、葉巻と火酒しか、
無かったのなら──、
そんな勿体ない、ことは無い」
ゴリ:「──、 」
ゴリルは、何も、言わなかった。
コイツも、父ちゃんなんだな……と。
そんな、野暮なことを、
友の前で、口に出す歳でも、
なかった からだ。
ヒゲ:「あの、隣街の、
ガキ共の ためにも──、
世界は、広げてやるべき だと、
思うんだがな──……」
ゴリ:「……、── 」
この時点で、ゴリルは、
口の中の、美味い酒を、香りながら、
アンティとマイスナには──、
まだ、ドでかい秘密が あることを、
確信していた。
そして、ゴリルは、
あの二人組に──安堵していた。
ゴリ:「……オレも、思ったよ」
ヒゲ:「ん?」
ゴリ:「マイスナが……現れた時。
──“ ああ、二人に、
なれたな ”って」
ヒゲ:「……」
ゴリ:「この街が、全体で──、
冒険者も、一般民も、
総出に なって、
アイツらを隠そうと、
してくれてンのは、
それが、あると思うぜ。
ゴハハ……さいしょ、
ボロボロの アンティが、
ボロボロの マイスナを、
担いで来た時にゃあ、
そりゃあ、驚いたが」
ヒゲ:「……そうだな」
ゴリ:「みんな、あの、
朝のギルドで、わかったんだ。
“ ああ、コイツらの未来は、 ”
“ コイツらが、勝ち取ったんだな ”
って。 それが……、アイツらが、
ドニオスに愛される理由の、
ひとつ だと、思うぜ?」
ヒゲ:「……クック、クックック……。
街、総出で、親、
みてぇな、モンか」
ゴリ:「ゴッハッハッハッハ……!」
ヒゲ:「くっくっくっく……!」
酒は、そんなに進んでいない。
後に、取っておくべきだし、
今は──ひと口だけで、充分なのだ。
ゴリ:「中心になって、隠そうとしてんのは、
あの日、アンティと追いかけっこした、
冒険者どもと、街の主婦層だ」
ヒゲ:「思ったより、連帯感が あったな」
ゴリ:「冒険者のヨメも、多いからな……。
新人どもと、街のダンナ組が、
ベテランと、ヨメに あてられて、
“ なるほど、隠さなきゃ、なのか ”
ってな具合に──」
ヒゲ:「感化、されてるワケか」
ゴリ:「みんな、ジワリと、感じてんだよ。
もし──アンティとマイスナの、
秘密が……ヒミツじゃ、
なくなったら。アイツらは、
この街に、居られないんじゃないか、
ってな」
ヒゲ:「……」
ゴリ:「アイツら 二人は、もう、
ドニオスの、連れ合いだ。
心から、仲間だと、思ってる」
ヒゲ:「家族みてぇなもんか?」
ゴリ:「──ハン。オメェが一番、
わかってんだろ、ヒゲイド?」
──カン。と、
空に なったグラスを、
ヒゲイドが置き、立つ。
ゴリ:「──それによ、ヒゲイド。
オレはな、現代に よみがえった、
煌めく英雄サマに、
ヨメさんと娘ん命、
助けられててな──。
義理ってのはな、
当然、返すモンなんだ。
ハ、あの義賊ちゃんと狂銀サマは、
厄介なゴリラに目ぇ、
つけられたのさ……!」
ヒゲ:「どうするつもりだ?」
ゴリ:「街を、見回ってくる。
しばらく、剣の叩き売りは、
お休みだ。
……なにか、動きがあったら、
また、戻るぜ。
どうも……オメェが言うように、
ちっせえ子供が、いちばんの、
天敵、みてぇだが……」
ヒゲ:「たのむ。めんどくせぇ事に、
なったな……?」
ゴリ:「──ま! ちょっと、
楽しいんだけどな!」
そう言って、ゴリル・ゴンゴラは、
一室から、出ていった。
ヒゲ:「やれやれだ……」
酒を注ごうとした瞬間、
入れ替わるように、入室される。
ユビ:「あの……ギルドマスター。
例の……隣街からの、
案件ですが……」
ヒゲ:「やれやれ、すぐ行く」
しばらくの間、
ヒゲイドは、奔走した。
珍しく、今日は、
二本目の葉巻が、
イカれようと、している所だ。
ユビ:「ひとつ、気になる報告が」
ヒゲ:「どうした?」
U.B.は、優秀な、
ギルド受付嬢として、
大成しつつ あった。
ユビ:「隣街から、いらっしゃっている……、
アリーヴァ学院の生徒さんが……、
何名か、見当たらないんです」
ヒゲ:「なんだと? 事件か?」
ユビ:「いえ、そういう訳では、
なさそうなのですが……。
ちょうど、ひとクラスぐらい、
ドニオスから、
消えているそうです」
ヒゲ:「ふ、む……?
ひと足、さきに、
カーディフに、帰った……?
いや……。
あの、楽しみ様だ、
一部だけ、トンボ帰り、
と、いうのは……」
ユビ:「あと、もうひとつ」
ヒゲ:「ん?」
ユビ:「旅行ギルドの、“ 雷馬モドキ ”、
ですが──、何体か、まちがって、
お酒を与えられてしまったらしくて……」
ヒゲ:「──はぁ!? あの学生どもを、
ココに送ってきた、あの、
変な馬の魔物に、か……?」
ユビ:「単純なミスで、樽を間違えたようです」
ヒゲ:「調教された、従獣に、酒……。
贅沢な もんだ……。
つか、それ、健康上、大丈夫なのか?
暴れたりとかは……」
ユビ:「今の所、お馬さん達が暴れた、
とかは、聞いてないんですが……。
一応、旅行ギルドの方には、
お酒を飲んだ、お馬さんたちは、
学生の運搬には、
使わないでくださいね? とは、
言っておきました。ただ……、
旅行ギルドの方たちは……その、
あまり、聞いてないような、
感じでして……」
ヒゲ:「よくやった。やれやれ……。
俺の方からも、念押ししておこう」
ユビ:「ぉ、お願いしまっす!!」
ヒゲ:「まったく、色々、起こるよな。
酒飲み馬モドキねぇ……。
どんな酒だったんだ?
つよいのか?」
ユビ:「──”雷酒”、という、
新しい、ウイスキーだったようです。
なんか、アブなそうですよね」
ヒゲ:「おい……」
ユビ:「いちおー、目を、光らせておきますっ!」
ヒゲ:「ぉ、おう……」
ユビ:「──では!!
それだけですっ!!」
ドダダダダダダ……!!
ヒゲ:「…………ひょうきん さが、
キッティに、似てきたな……。
しっかし、やれやれ……。
出版ギルドも、旅行ギルドも、
なんだって、いつも、
ヒトの話を、聞きやがらねぇのか」
酒瓶は、棚に戻り、
ヒゲイドの巨大な背広は、
スラリと、正される。
ヒゲ:「……アンティのクラスの生徒が、
ひとクラス分、この街から、
居なく、なった……?」
ヒゲイドは、何かが、引っかかる。
事件……? いや……。
ひとクラスなら、40名ほどか。
その人数が、いきなり、
掻き消えるような、
トラブルが起きれば、それこそ、
すぐに連絡が、飛んで来ているはずだ。
ヒゲ:「……大丈夫だとは、思うが、
少し、調べて──。
明日の朝にでも、
アンティとマイスナに、
連絡するか── 」
そうして、あの朝に、
噛み合って、いくワケなのだが。
やーな予感するぜ、かば はよォ……!(((´゜ω゜`;)))










