サンデリケーション さーしーえー
わたしは──だれだ?
空中を、落下している。
空間を、落下している。
落ちる、自分の髪の、輝きが見える。
光に当たれば、キンに。
影に当たれば、ギンに。
つまり、光源と、障害物が、あるFIELD。
フィールド? これが?
タテ型のトンネル。
巨大な、長方形の金属板たち。
ビルの様で、とても、うすっぺらい。
頭から落ちていて、
まっしろな空間を、
あがっていくプレートが、
さがっていくように、落ちていった。
「 ここは 」
声は、ひとつで、
ふたり ではない。
なんで?
ふたり だと おもった?
わたしは。
愛するひと と ふたりで。
あいする人とは、だれ?
あれ?
さびしいのか?
いや。
そんなことはない。
だって、わたしたちは────
なんだ、この空間は。
どうして、わたしは落ちるのか。
いや、もしかして、あがっているのか。
すれちがう、巨大な黒色の、情報板たちは、
なにか、複雑なプログラムが、
光る、エメラルド色の文字で書き込まれていて、
しかし、スピードのせいで、とても読めない。
おおきな、解読不可能な手紙たちは、
わたしを避け、
ただただ、通り過ぎてく。
もしかしたら、わたしは止まっていて、
これらの、巨大なプレートが、
ビュンビュンと、過ぎ去っているのかも。
透明な、巨大な四角いエントツの外側を、
すべるように、なぞるように、
巨大なカミソリのようなプレートは、
旅立っていった。
──わたしは、どこに、辿り着くのか?
「 わたしは── 」
『────☉。』
──パシん、と、手を、つかまれた。
「ぉ」
落下か、上昇か。
それが、とまる。
「だれだね、きみは」
みょうな口調で、わたしは、問うた。
『────あなたは、うらおもてなのよ☉。』
上品な、おとなっぽい、こえだ。
逆光で、その、かんむり を、
かぶった ような、
おんな は よく、みえない。
「なんだと?」
『────前半と、後半のように☉。
────A面と、B面のように☉。
────最初と、最後のように☉。
────生と、死のように☉。』
光の、集まったような、おんなだ。
「なんなの、きみは」
『────むずかしかった☉。
────あなたたちは、たくさんの謎に:
────きづいたわね?☉。
────おおくの符号と、その言葉たちが:
────あなたたちに、多くの未来を:
────約束させたわね?☉。』
わけの、わからないことを言う。
『────本当は☉。
────あなたたちは:
────同時に存在しては、いけなかった☉。
────システムの存在として:
────あなた方は、どちらかが:
────どちらかを、
────否定し続けなければならない☉。
────そんな、存在同士でした☉。』
「やめて」
『────でも、それでも☉。
────私は、賭けました☉。
────私は、信じています☉。
────フフ……少しばかり:
────仲良く、なりすぎましたが☉。』
おおきな、かんむり を かぶった、
ひかる、おおきな、どれす を きた、
ひかり の ような・・・
にちようび の ような、おんな だ。
『────あなたは……どんなときも:
────ハダカですね☉。』
「うっしゃい」
『────フフ……失礼♪☉。』
ふかい、逆光の笑顔が、
かわいくて、気にくわない、女だ。
「……ここは、どこなの」
『────フフ……いやだわ♪☉。
────わかって、いるくせに☉。
────その状態の、あなた"たち"は:
────"未来解析"に近い:
────ログ解析能力を持つ──☉。』
……。
今の、わたし、だからこそ。
わたしは、こいつの正体に、
見当が、ついていた。
……。
でも、たぶん、わたしが、
" ふたり " に もどれば。
目が、覚めれば。
そんなことは、きれい、さっぱり、
忘れてしまう。
『────フフ……"夢"とは:
────そういう、ものですよ♪☉。』
「もう……姿を隠す気も、ないのね。
わたし"たち"の、運命の──"黒幕"のクセに」
『────まぁ☉。
────黒幕、ですって?☉。』
わたしと、手を繋いだ、まま。
ひかりの、かんむりの、おんなが、しゃべる────。
『────やだわ──☉。
────まぁ、言わんとする事は:
────わかりますが……☉。
────そうですね──せめて:
────"白幕"──☉。
────そう、呼んでくださいましな♪☉。』
「──はァ!?」
この女……言葉の意味が、
わかって、言ってんのか?
「……ヘンな言葉あそび、
しないで欲しい」
『────言葉なんて、ものは──☉。
────その、意味は──☉。
────その、時代と共に:
────生まれ、響き、語られ……☉。
────変わっていくものです☉。
────ヒューガの失敗は、そこでした……☉。
────"復旧"ではなく、"刷新"☉。
────それが、答えなのです☉。』
「……?」
『────だから──私は☉。』
神々しい女は、勝手に、しゃべる。
『────あの ふたりに頼んで:
────あの"クラス"を、作ったのだから☉。』
「あの、ふたり……?」
わたしが、本当に分からない顔をすると、
そいつは、楽しそうに、笑った。
『────あら……♪☉。
────あなた様も、まだまだ ですね♪♪☉。』
「……ッッ、チッ」
なんか、やたら、ハラ立つわー。
「はァ……。わるいンだけどさ? "シロマク"さん。
わたし……アンタの、
その、ヨユータップリの、
人を食ったような笑顔、苦手だわ」
『────あら……心外です☉。
────私ほど、あなた達を:
────愛している存在も:
────そうそう、いませんよ?☉。』
「言ってろ……//////」
まったく……////
生まれは、ロボットのクセに……。
なんで、こんな、
年上お姉さんみたいな性格に、
なっちゃったんだろーか……。
『────それは、あなた達のせいですよ☉。』
「ヒトのせぃにすんなよ」
『────いえいえ:ヒトのせいですよ☉。
────私が、どれだけNPCの:
────感情サンプリングに、影響されたと:
────思ってるんです?☉。』
「……」
この女に……口喧嘩では、
一生、勝てない気が した。
──広大な、わたしたちのいる、
光の通路の──光量が、
一気に、増す。
これは、まるで、そう。
────夜明けのような。
『────時間切れですね☉。』
「……」
『────まぁ、忘れちゃうでしょうが♪☉。』
その彼女の苦笑は、
スカした笑顔に隠れて、
……本当に、残念そうだった。
これは、無駄な、抵抗だ。
そう──彼女の、ムダな、テイコウなのだ。
いちいち、わたしたちを、
夢のナカで、複合させて。
概念として、接触しても、
記録なんて、のこらない。
それは── ズル だ。
たぶん……昔に。
彼女自身が、決めたのだ。
世界は、進化している。
それでも。
いくつかの、神のルールは、
"絶対"なのだ。
だから、こいつは。
それを、打ち砕く、ために────。
────ひかりが、つよまる。
「……、さいごに、おしえてよ」
『────え?☉。』
すっとんきょうな、声が出た。
「あるイミ、いちばんサイキョウの、
カミさま……なんでしょ?
なんか、わたしに、
アドバイスとか、ないの?」
『────は、はぁ・・・☉。』
もちろん、この記憶が残らないことなんて、
ひゃくも、せんも、まんも、承知だ。
だからこそ。
相手の記憶には、残すべきだ。
『────……☉。
────フフ……そうですね☉。』
見た目だけでも、
その女は、楽しそうに、わらう。
『────……お金に、こまったら☉。
────カジノに、いってください!☉。』
「── は ァ !? 」
なにを、言っちょんのじゃ、こいつァ!
『────実は……あなた達の:
────LUC値、ブチ上げたの:
────私でして・・・///☉。
────何しても、勝ちますよ☉。』
「あのねェ……。ソレぜったい、
いま言うコトじゃ、ないと思うよ……」
『────……フフ♪ いいえ:
────良い頃合いの話題だと:
────思いますよ♪☉。』
「いってろ……」
──限界だ。
しろい。
なにも、みえない。
────てやんでぇ。
「じゃあな、クラウン」
『────ええ、いつの日か:
────ティマ──☉。』
「「 ────ッッ!? 」」
おきた。
かなり、ビックリして、起きた。
いきなり、マイスナと、はなれたので。
クチ と クチ には、
光の、橋ができた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
合作☆よだれブリッジの消滅を見ながら、
ハダカのコイビツと、見つめ合う。
「・・・・・・なんか」
「・・・・・・・うん」
「・・・すっっごい、ヘンな夢、
見た気が、すゆ」
「・・・・・・・うん・・!!」
「・・・・・・・・どんな、だっけ・・?」
「・・・・・・・・・わかん、にゃい・・」
……。
……。
『────だ:大丈夫:ですか・・・?☼』
マイスナと、豪華な ベッドの上で、
見つめ合っていると、
クラウンに、心配された。
「いや……うん。なんか、
すっげえ、大切な ゆめ、だった、
気が、すんのよ……」
「うん、うん……!!
こ、こう……!!
グワーッ、っと、ピカッ、と……!?」
『────ぃ:いえ……その……☼
────夢の話では:なくてですね・・・☼』
「「 ……??? 」」
『────そ:その:お手元の・・・☼』
「「 ・・?? てもと??? 」」
マイスナと、私で。
自分たちの手元を見ると──。
────────────────────────
メッセージを 一件 消去 しました▼
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「「 ・・・んゥっ!?!? 」」
『────起きた:瞬間に……いきおい良く☼
────誤操作で:未読メッセージを:
────消して:らっしゃいましたよ……☼』
「ま……マジでか……!」
「ぁ、あわわわぁぁ……」
重なり合った、私の左手と、マイスナの右手。
それに、下敷きになっている、
半透明の、アナライズ・ウィンドウ──。
・・・起きた時に、寝ぼけて、
ウィンドウを、ふたりで、
ぶち殴ってしまったらしい・・・。
消去されたデータの窓は、
真っ白なシーツの上に、押しつけられている。
「く、クラウン、バックアップは!?」
『────もっ:申し訳ありません☼
────ちょっと・・・きびしいです☼』
「そ、そんなぁ、、、何とか、ならないんですか」
マイスナと、食い下がる。
『────ぃ:いえ……その……☼
────単純な流路データなので:
────記録が付く前に消去すると:
────逆に:復元が難しいんですよ……☼』
「そ、そんにゃあ……」
「だ、誰から、来たメッセージか、
わからないんでしょうか!」
『────も:申し訳ありません☼
────"印刷機"の実験に:
────気を取られて……:
────件名は確認しておりませんでした……☼』
だ、だれから、きたメッセージ、
だったんだろか……。
ぷ、ぷれみおむず、の、誰か……?
いや、ひげいど、さん、かな……??
あれ、そういや、ギルマスは、
ほかにも、さんにん……???
「め、メッセージを送れる人が、
多すぎて、わっかんねぇ……」
「や、やっちったね……」
やべぇ。罪悪感が、ヤベぇ。
……でんも、気にしても、
しァあない気も、すゆ。
「……ま、しょうがない、っか。
次回から……気を付けるしか、
ないよね……」
「そ……そうだね!」
「はは……マイスナ。
もし、誰かに怒られたら、
いっしょに、あやまってくれる?」
「ど……ドンと、こい!!」
「きひひ♪」
『────ともかく……そろそろ:
────服を:着てください☼
────ここは:ドニオスの塔では:
────ない事を:お忘れなく☼
────もう:朝とは言えない:
────時間です☼
────誰かが:この図書館に:
────たずねてくるやも:
────しれませんよ☼』
「「 ──!! 」」
そだ。
ココ、おしろの、トショカン。
いま、カメン、シテナイ。
フトン、のなか、ハダァカ。
ダレカ、キタラ、オワァリぃ。
『────ほら:おはやく☼
────最近:ぱんつ は:
────はく のでしょう?☼』
「「 あわわわわわわぁぁ……!!////// 」」
わたしたちは、
いつの間にか現れていた、
慣れた様子の、銅色のメイドさんに、
あわてて、着替えを手伝ってもらった。