できるでへいか
ごめぬ、さしえって言ってたけど
できたんで投げまる。
その料理を食べた王が。
目を、まぁるく して、動きを止めたので、
たぶん、皆は、おどろいた。
アンティは、心が、キュッっとなる 思いだったろうし、
マイスナは、なぜか、王と同じく、目を、まぁるくして、
息を忘れるようだったに、ちがいない。
6人の、青い銅色のメイドも、
かしこまった立ち姿のまま、謎の、緊張が走った。
「 ……ぉ、お父様・・・? 」
王は、ゆっくりと、
動・・きだし。
確かめるように、ゆっくりと、味わった。
ごくん。
「 ……、これは・・・ 」
王は、少し、惚けたように、
仮面を着けた、ふたりの姫ヨロイを見て、
なにかに、気づいた。
「……、! ……、なるほど、そうか……!」
「「 ・・・っ、、!? 」」
アンティと、マイスナは、
ガチガチと座りながら、
高級な ソファのクッションが、
心臓のように、鼓を打つまでに、伝わったが、
王は、ふたりの動揺に介さず、
うまそうに、久しぶりの味を、
嚙み締めた。
「・・・うむ。
・・・ふふ、美味い、な・・・」
王が、どのような過去を、
思い出したのか、
誰も、知らない。
「おかわり、など、あるか」
「ぇ、、!? ぁ、、はっぃ・・!!」
「どぉっ、、どぉっ、ぅ、ぞ・・・!!!」
王は、よく、その料理を、おかわりした。
とても、すごい量だった。
娘の、オルシャンティアでさえ、
その、有無を言わせぬ食べっぷりに、
気圧された、ほどである。
あむ、あむ、と。
不思議な、静かで、強い食事があり、
皆、ある意味、唖然と、見守った。
食事を終えた王は、少々、戸惑うように、
恥ずかしかったのだが、
威厳の大きさと、体躯の大きさ故、
言葉を発する時に、そのことは、
やっと、正しく、伝わった。
「──む、すまない。随分と、
不躾な、食い方を、したものだ。
許してくれ」
「ぃ・・・いぇ……」
「ぉ、、、そまつ、さま、、、でした」
おびえ散らかしている、
今の、アンティとマイスナでさえ、
今の、王の食事は、とても、
とても、美味そうに、食べていたと、
思えるほどだったのである。
「昔・・・」
王は、滲むように笑い、
ポツリと、語り継ぐ。
「昔・・ふふ。
まだ、青い夢が、あった頃。
この料理と、たいへん、よく似た ものを、
食した、ことが あった。
その美味さに、少しばかり、
目を、覚めさせられた ものだ。
しかし・・・、
今、食べた これは、つまり、
完成、されている。
あの、料理が、……到達した未来が、
ここに、あるのだ」
「「 ・・・・・ 」」
アンティと、マイスナには、さっぱり、わからない。
この焼き飯は、カーディフの街と共に、
発生した、秘伝である。
幾多の街に旅立ち、ついぞ、
この味に似た片鱗さえ、
食堂娘と、紫電の魔法使いは、
感じ得なかったのである。
まさか、若き日の王が、
あの、出来て17年ほどの街に、
飯を食いに来る事も あるまい。
思考の回らぬ双対を余所に、
娘姫は、父の、ちがう言葉が、気になった。
「 "夢"・・・ですか!? 」
オルシャンティアの声に、
バルドアックスも、アンティも、マイスナも、
クレフティスの姉妹でさえも、注目した。
「ぁ、いえ・・・その。。。/////」
王女は、もじもじ する。
「そ・・・その、、、。
今、お父様が仰った・・・"夢"、
と、言うのは、、、、
……"王"、以外の、ゆめ・・・と、
いう、ことでしょうか……?」
「・・・ふふ、そうなるな」
"王"が、過去に目指した"夢"は、
"王"で、あるはず なのだ。
"王"の道とは、思うより、ずっと、
険しい、覇道の道、なのだから。
ただ、今、彼の口から、
思い出の味と共に、わずかに零れたのは、
若き、まだ、王に、辿り着く前の、
"バルドアックス"としての、"夢カケラ"である。
王としての父にしか、出会ったことの無い、
オルシャンティアは、
若き父の、おそらく、想像に つかぬ、
蛮勇の夢に、興味を惹かれたのである。
「ぉ・・・お父様の、
むかしの、夢、って・・・、
なんだったの、ですか・・・?」
「・・・ふ。ひみつだ」
「──ええっ!? ひどいっっ!?」
王は、鍛え抜かれた身体でも、
しかし、優しく、にやり と笑い、
ふくれる、自らの娘に、言葉をかける。
「どれ、オルシャンティアよ。
コオミナが、探していたぞ。
今夜は、食事の後で、
耳の毛並みを整える、
約束だったので、あろう」
「あっ・・・!! わ、わすれてた!!!」
「ふふ、食事の後、というのに、
食事自体を、
すっぽかすからである」
「そ、そうでした!!!」
オルシャンティアは、慌てだし、
どうやら、王妃の元に、
向かうようである。
「ぁ、アンティさん、マイスナさんっ、
ごちそうさま でした!!!
あなた方の お料理は、
お父様でも、バクつくほどの、お料理です!!!
自信、お持ちになって、くださいねっっ!!!」
「ぅ、は、はぃ・・・///」
「ァ、アリガト・・・///」
「──それでうぁ、またっっ!!!♪♪」
オルシャンティアは、
王女とは思えぬ軽快さで、
まるで、祖なる、グリーン・ラビットのように、
ピュンと跳ねて、本まみれの部屋を、
早々と、出て行ってしまった。
王は、優しく、笑みを絶やさぬ。
「ふ、ふ。いよいよ、若き頃の、
コオミナに、似てきたと見える。
あれ はな、娘の頭毛並みの、
手入れだけは、従者には、
任せられぬと、自ら、
ブラシを持つのだ」
く、く、と。
王妃との惚気とも香る話を、
筋を揺らしながら、語る、王である。
いよいよ、
アンティと、マイスナの緊迫は、止まらない。
こぶし は、キン、と握られ、
汗の止め方など、忘れたようである。
王族とはいえ、まだ、先の、
10歳の女子供の方が、気が、楽である。
目の前の男は、王だ。
大きな、ことである。
しかも、こちらには、負い目が、あるのだ。
ばれては、ならぬ、ことが、あるし。
自覚している、罪もある。
どんな、理由が、あれ。
だまって、なにも言わなかった、自分が、あるのだ。
「「 ・・・・・ 」」
「 さて・・・ 」
6人のメイドも、久しく、混乱している。
どこぞの賊が、至高の金と銀を穢そうものなら、
内臓を、クモの巣のように拡げ、
くびり殺してやることなど、造作もないが、
目の前の者は、王なのだ。
害すれば、責め立てられるのは、
主たる、ふたりの乙女である。
迂闊に、動ける訳がない。
攻撃が出来ぬ防衛に、
銅は、あせりを感じた。
義賊と、狂銀など、
息が、不味くなる、ほどである。
アンティは、よほど、
色々なことを、ぶちまけて、
謝って しまおうか、と、
先ほどから、繰り返し思うほどだが、
隣にいる、怨敵を見て、
何とか、何度も、踏みとどまっていた。
マイスナも、まったく、同じだった。
「アバンテ卿から、報告は、受けている」
「「 ぅ・・・ 」」
「ふ、、。"年老いてからでも、
かの二人は、国の宝だ。
お忘れなきよう" と、言われた。
ふふ、あれが、そう褒める事など、無い。
随分と、無理を、成したようだ。
改めて、感謝しよう──」
「「 ぉ、、、!? おそ、れ、ぃります・・・ 」」
王が、軽くとも、座礼をするのだから、
少なくとも、ふたりの乙女の、心ごときが、
礼を、返さぬ、わけが無い。
零れ落ちそうな涙が、
仮面の うち に当たり、
押しとどめられる。
「そのように、緊張、するな」
「「 ぅ"・・・ 」」
「ふむ・・・? 我、ひとり、というのが、
いかんのか・・・?」
多少、彼女たちのフランクさを、
知っている王にとっては、
何故、ここまで畏まられるのか、
如何せん、謎である。
「──" バルド "さん、で、良い」
これには、銅のメイドの、何人かが、
苦笑いを、仮面で隠すほどだった。
無茶、言いやがるぜ、、、この王サマは、と。
「そ、れ・・は、、、」
「ぁ、の・・・、、、」
「ふ、ふ。間違っても、
" 陛下 " 、などとは、
呼んで、くれるなよ?」
「「 えぇぇ・・・・ 」」
「──はっはっは!!
城の窓から飛び去っていく、
天下の二代目 義賊と、
復活せし、華の狂銀が、
畏れを成すことも、あるまい!!!」
「「 ~~~~~~ッッ・・・!!!///////// 」」
高らかに笑う王の前で、
ふたりの二代目たちは、過去を思い出し、
紅潮する頬を、自覚する。
王の前で、城の上階から、飛び降りて逃げるなど、
アホのする事である。
「はっはっはっはっはっは!!!
あの夜は、貴殿たちへの、
感謝と共に、また、
芝居でも見に行きたいな、と、
コオミナと、言っておった!」
「「 ぉ"・・・・・///////// 」」
ドニオスの祭りを、王族に知られぬようにと、
祈るばかりの、アンマイである。
「そうさな・・・ひとつ、聞き忘れていた」
「「 」」
王の言葉に、緊張すらも忘れ、
無になる、ふたりである。
「望むものは、あるか」
よく、わからない。
「そなた達に、もらい過ぎている」
やっと、取引のようなものだと、
アンティと、マイスナは、気づいた。
「「 ・・・・・ 」」
アタマが、まわらない。
わたしたちは・・・なにかを、
あげただろうか・・・?
おしごとの・・・おてつだい?
いや、、、王女さまを・・・たすけた、から・・・?
心を、こめた・・・たんじょうび、プレゼント・・?
よく、わからない。
「限りなく、応えたい」
銅のメイドたちは、思った。
チャンスだ!! いけ!!
ぶちまけてしまえ!!!
今!!!
いま、なら!!!
すべて、帳消しに、できるぞ!!! と!!!!!
教会を、崩壊させたことなど、なんだ!!!
あれは、穢れた息のかかった、
研究者どもが、わるいのでは ないか!!!
無限のアイテムボックスが、なんだ!!!
それを守る、鬼神の如くが、
もう、その手に、宿るでは ないか!!!
勝手に、ランクを詐称したことが、なんだ!!!
彼女たちの、冒険を、見ろ!!!!!!!!!
どうだ!!!!!!!!!!!!!
どこまでも!!!!!!!!
ひとの、いちばんの、心を、おもいを!!!!!!!
つんざく ように 、 おもんじ!!!!!!!!
幾多の、道行く道の、いのち、かがやき、えがおを!!!!!!!!
まもり、つづけているでは、ないか!!!!!!!!!!!!
だれが、どう!!!!!!! もんくを、言おうと!!!!!!!!!!!!
彼女たちが、荘厳たる!!!!!
S ラ ン ク な の だ ・・・・・!!!!!!!!!!!!
「「 ・・・・、・・・ 」」
もちろん、アンティと、マイスナにも、
その、交渉は、よぎった。
わからない。
わからない、が。
もし、願うのならば。
ゆるされるならば────と。
王は、大きな手を、指を、前で、嚙み合わせ。
それを、口の前にて、ずしりと、構え、
じっと、見ている。
「 ──── 」
「「 ・・ 、 」」
おそれは、ある。
じかんは、ない。
やはり、おおきな、ことが、あった。
ふたりには、
わからないのだ。
" バレている " のか、" バレていない " のかが ───… 。
「「 ・・・・・いくばく、かの、 」」
「 ──・・! 」
「「「「「「「 っっ! 」」」」」」」
アンティと、マイスナの、声は。
まるで、" ひとり "のように、重なった。
「「
いくばくかの ── 、、
おめ、こぼしを・・──……。
」」
「 ──… ! ? 」
これには、王のほうが、おどろいた。
てっきり、金銭を要求されると、
思っていたのである。
母と、娘の命と、妻の血を、後世に伝える、
"神の杖"──と。
いや、あの、── " 幻影の集荷 " でさえ、
" なぜ、王であるのか "、という、問いかけの答えに。
どれだけ、心を救われたか、わからない。
目を閉じれば、黄金の、声が、きこえる。
── " たまたまなんじゃあ、ないスか? "
──と。
「 約束、しよう 」
「「 ・・・!! 」」
「 必ず、だ 」
王は、求められたことを、
完全には、掴まなかったが。
しかし、尋常ではない覚悟で、
そう、応えた。
「「「「「「 ……──、、 」」」」」」
銅のメイドたちは、主君たちの、要望の仕方に、
さいしょは、ヘタを打ったか、、!
とも、思ったが、
その、王の、返事を聞いて。
そんなに・・悪く、ないんじゃあ、ないかと、
思い始めていた。
「「 ・・・、・・…… 」」
いよいよ、よく、
わかんなくなってきた、アンマイだが、
王の、力強い、頷きは、
今を、信じるしか、ないと、感じさせる。
義賊のヨロイを着た、アンティと、
狂銀のヨロイを着た、マイスナは、
王の対面、ソファに並び、
鏡のように、ゆっくりと、礼を成した。
それは、座ったまま、行われたが、
少女、特有の気品があり、金と銀の髪が、さらさらと流れ、
思うに、ずっと、優美で、心が籠っていた。
その座礼を、見て。
「 うむ。 」
と、王は、短く 言った。
それは、妙な空間で、
まるで、儀式的で さえも、あった。
銅ものメイドたちも、
不思議な、緊張の霧散を感じた。
ふたりの主君も、少しばかりの、
ヨロイの したの震えの、
落ち着きを、感じていた。
「ふ・・笑ってくれ」
王は、唐突な 言葉の 継ぎ方をした。
「褒賞、云々の、話を、
ちらつかせたのは・・だな。
また、其方たちに、
頼む、からなのだ── 」
「「 ・・──……!! 」」
アンマイは、少し、考え。
王の、話の、"本題"、が。
" いまから " なのだと、理解する。
今までが、" まえがき " なのだ。
「 故に、聞こう 」
アンティとマイスナは、
座ったまま、ひしりと、
背筋を、伸ばした。
「
アンティ・クルル。
マイスナ・オクセン。
そなた達は──……、、
立ち寄った場所の、すべての書物の内容を、
瞬時に把握し、記憶することが、可能か?
」
「「 - 」」
それは、思ったより、エグい、質問だった。
銅の刑死者は、王を殺す準備を、
本気で、はじめた。
銅から、
刃が、
跳ね上がる、直前に。
王が、つけたした。
「 その、仮面の、理由を──…… 」
「「 ……! 」」
「 幾ばく かは、慮る、つもりだ。 」
--------------------------------------------------------------
どうしますか? ▼
可能だと 答える
ウソを つく
--------------------------------------------------------------
「「 ・・・・・・・、・・・・・・・ 」」
数秒が、かなりの、迷いとなった。
実に、的確、だったのだ。
ツケが、回ってきている、とも言えた。
当然といえば、当然である。
たぶん、暴れ過ぎたのだ。
ナメたことを、しでかしている。
しかし、それは、" やり方 " に、よっては。
いちばん、だいじな ものを ぬすみだせる、
" ばけもの " である。
「「 ・・・・・・・・・・・ 」」
彼女たちは、迷わねば、ならなかった。
しかし、たぶん、これ以上の、
謎解きのヒントなど、出てこなかった。
だから、彼女たちは、するしか、ないのだ。
仮面を着けながら、これまでの、ように。
いつだって、彼女たちは。
自分の、世界にある輝きと、
目の前にいる人を、信じたのだから。
--------------------------------------------------------------
どうしますか? ▼
▼ 可能だと 答える
ウソを つく
--------------------------------------------------------------
アンティとマイスナは、深く、頷いた。
「 ・・そう、か。 」
王は、その恐ろしさを、
かなり、正確に、理解していた。
動かない。
それに合わせ、銅も、動けなくなった。
主君を、悪用するような王なら、
消さなくては ならない。
今度は、王が、長考した。
「 ──── 」
「「「「「「 ・・・・・・ 」」」」」」
「「 ──…… 」」
王言。
「 信じよう 」
────ジジャ・こぉオウン・・・!!
全部の銅が、ナイフを抜き、
「「 と ま れ 」」
そして、制された。
明らかな、刃が 見えていたが、
バルドアックス王は、介さなかった。
「これを、見てほしい」
アンティとマイスナは、
王に、差し出された、物を見た。
「「 ……? 」」
……奇妙な、ガラス板の、中央に、
紙の破片……のような物が、
封印されている。
サンドウィッチ、されているようだ。
ガラスの中の、メモきれに、
文字が、見てとれる。
「……手紙? いや……これは」
「……本の、カケラ、ですか?」
「ただの、本では、ない」
王は、本のカケラが封じ込められた、
ガラス板を、アンティたちに、手渡しする。
ふたりは、そっと、受け取って──……、
「これは、最も 力のある、
とある、"魔導書"の、破片だ」
陛下の お言葉に、目を、丸くする。
銅の従者たちも、その、おぞましい価値を、
そこいらの盗賊よりは、激しく、知っていた。
王が、続けた。
「
アンティ・クルル。マイスナ、オクセン。
そなた達に──
」
ふたりが、王に、目線を、あげる──。
「
" 時 空 の 書 " の 捜索を、頼みたい のだ
」
それは、王命に似た、願いだった。
でぇぇぇええ、たぁぁあああ、なぁぁあああああ!!!!!










