アバンテ男爵の、長い話。さーしーえー
「30文字にまとめて!」の回です。
アンティと、マイスナが見た、
アバンテ男爵と云えば、
いささか、派手であった。
豊かな頭髪は、だが、
清潔に保たれつつも、
野性的である。
体は良く鍛えられており、
唯の文官という口でも あるまい。
縫製が丁寧な上着は、
よく見れば、蜜柑橙に、
白黄の紋様が入り、
星の意匠まで縫われ込むという、
なんとも、奇抜な出で立ちである。
だが、どっしりとした体躯と、
しゅらと伸びた姿勢が、
その、派手な衣装の違和感を、
不思議と馴染ませていた。
アバンテ・シューティングスター男爵とは、
そのような、男である──。
「派手な、鎧だな……」
「「 っ 」」
アンティ、マイスナは、
思っていたことを、そのまま、
男爵より返されたので、
そのようになった。
「……! そう、か。
"黄金の、クルルカン"……!
"白銀の、オクセンフェルト"……!
マリーの言っていた、助っ人とは、
君たちだな──?」
ふたりの絵本の住人は、
まだ少々、気持ちの整理が つかず、
言葉の空白を持つ。
男爵の声は続く。
「なるほど……これは……。
あの、広場の像を見た時、
なんの冗談か、と、思ったが──。
ううむ、ここまで、
似ているとは……。
良い、仕事だったと、いうことか」
当然、目の前の貴族も、
あの、天たかく立つ、
ふたりの英雄像を、
ご照覧なされている。
「共に、生き写しでは、ないか。
こうして、実際に出会うと、
なんと、小柄な ことか──。
うぅむ──……」
黄金と白銀が、緊張を解く前に、
アバンテ・シューティングスターの、
言葉は、紡がれ行く。
ふたりは、思う。
このまま、だんまりと、
いう訳にも、いくまい。
どうも、この明るい色を着た貴族は、
あまり、悪い印象など、感じない。
とうとう、改めて、
話してみることにする、
双方である。
「あ──"アンティ・クルル"」
「ま──"マイスナ・オクセン"」
キん──……+
ぎン──……+
「む──……」
おぼつかない名乗りとは裏腹に、
実に、様になっている、
騎士の一礼と、カーテシーは、
アバンテに、好んでは参加しない、
舞踏会の、ダンスの場面を、
連想させたものだ。
「名乗りが……遅れ、
申し訳ありません」
「いきなりの、ことで……、
驚きましたゆえ」
「む、すまぬ。
眠気覚ましに、"隠蔽のジェム"を、
ねぶったまま、眠っていたようだ」
「「……」」
「王宮、御用達の、
多少の物音まで、遮断できる
たいへん、質の良いジェムなのだが……、
多忙の中の、口の寂しさに、
ついぞ、耐えられなくなってな……」
クラウンが感知できなかった理由を、
悟った、アンマイである。
上質なジェムは、効果だけでなく、
甘味としても、良いと聞く。
ハシゴの上で眠るのは、
どうかと思うが。
落下してきた体躯を、
受け止めなければ、
大事故になっていたのは、
言うまでも ない。
「ご自愛、くださいませ……」
「ひやりと……いたしました」
「うむ。尤もだ」
その後、妙な沈黙が、
3人に、流れた。
類に見ぬ多忙の最中であり、
このような一時は、
褒められたものでは、ないはずだが──。
「なぜ」
「「 はい 」」
「そのように、畏まるのか」
「「 ?? 」」
アンティとマイスナは、
アバンテ男爵の問いの意図を、
掴むことが出来ない。
片方は、ついぞ、食堂娘であり。
片方は、ついぞ、手配犯である。
貴族の男性に、畏まりたくも なるのは、
至極、道理なのだが。
ふたりが、キョトンとしていると、
流れ星の質問は、矢継ぎ早となった。
「……"プレミオムズ"という、
ことについて、どう思う」
「「 っ!? 」」
明後日からの流れ星に、
また、ふたりは、ドッキリした。
質問の意図など、分からぬ。
ただ、試験のようにも、
思えなくも、ない。
まわらぬ頭で、双勇は、
応えるしか、なかった。
「え、らい、……冒険、者、でしょう、か……」
「すご、い、……冒険、者……です、か……?」
「間違いでは、ない。
ただ──" 強い、冒険者 "なのだ」
"なにより"……という、
隠れた、言葉。
「出会ったのだろう」
「……!?」
「……あの、それは……」
他の、"至高"に、と、
いう、ことだろうか?
──。
「……仲良く、させていただいてます」
「みんな、いい人、です」
「……あれらはな、謙遜する。
自分たちくらいの強さの者など、
そこらじゅうに、溢れていると」
流れ星の、落とし所は、まだ、分からぬ。
「──ただ、それは、無い。
そ れ は 、 な い の だ 。
この、王の膝元の、
"隠れし本の城"には、彼らを含め、
歴代の、"至高の冒険者たち"の、
記録が、納められている──」
アンティ、マイスナの、
流路束-書籍データに、
該当のタイトルが、何十冊か、
ヒットする。
「彼らは、災厄級の魔物を、
少なからず、個々で、
狩り崩して、きたのだ。
巨躯の死骸の上で、
大剣、突き立てる、
血まみれの 女剣士。
道ごとを薙ぎ払う、
呪いの盾の鎧を着た、
咆哮の重戦士。
山すら裂く様に穿つ、
獣の王たるべき、
殴り尽くす者。
風のように射抜き、
瞬きのように奪う、
火炎の武者。
見渡す空の魔道で、
全てを叩き潰す、
小さな魔女。
光の雨を降らせ、
何も残らない、
天装の使者。
────……。
ここにある記録はな、
そういう、ものだ 」
「……」
「……」
誰が、誰の、ことか、など、
もちろん、ふたりには、理解っていた。
まぁ、今、聞く言葉と、
実際に会った感想とでは、
かなり、ええと……差を感じるが。
「ふんわりとした、貴族の同朋には、
どうも……そこに疎い者も増えたが……。
──我らのように、記録に見られ、
知に礼する者たちは、理解している。
私も……武に折れた身だ。
あの、"至高"が、
どれほどの、ものかを──とな」
「……?????」
「……?????」
よく、分からない雰囲気は続き、
質問は、流星群である。
「"二次星評"──、
"セカンドブロウ"という、
"至高"の制度を、知っているか」
「……っ!?」
「せ……!?」
まるで初耳なので、
素直は、美徳である。
「……恥ずかしながら」
「……存じ上げません」
「"至高"の新人が現れた時、
既存の"至高"が評価する、
二回目の、ふるい落としの機会だ」
「「 ──っ……!? 」」
……"二次星評"……ッ、
──" ふたつめの、かぜ "……!!
言葉の通りの意味ならば、、、
先達の"至高の冒険者たち"は、
"新人"が、気に食わなければ、
文字通り──"吹き飛ばせる"……!
そのような、評価の基準だろうか。
「"新顔"が、"至高"たるに、
相応しくなければ──、
彼らは、弾き飛ばす事が出来る。
持ち点は、ひとり、100となる。
……先に、謝罪しておきたい」
「……? ……??」
「……?????」
アバンテの話は長く、
アンティと、マイスナなど、
頭が沸騰しかけていたが、
ここで、ギブアップする訳には、
当然、いかない アンマイである。
「私は……君たちは、
この……"二回目のフルイ"で、
落とされるのだと、思っていた。
そもそも……報告すら、
皆、そろうか、怪しかったものだ」
アンマイは、思った。
オシ姉とか……そんな試験官みたいな事、
めっちゃ、邪魔くさがって、
サボりそうだなぁー……・・と。
アバンテは、お構い無しに、言う。
「君たちはな──"600点"だ。
つまり、満点なのだよ」
「「 えっ!!! 」」
「"是非に、至高に、よこせ"、と。
そう、言われているのだ」
アンティ、マイスナは、
少しだけ、びっくらこいた。
そんな……"隠れたテスト"みたいな、
ことが、プレミオムズに あったのも、
ドギマギ、したが。
つまり──、
オシハ、ベアマックス、ゴウガ、
ヒナワ、マジカ、ユユユ、は、
全員──"至高の配達職"を、
"100点満点"と、したのだ。
……ゴウガさんに、
そんな器用な伝達が、
出来たのだろうか……??
もしかしたら……、
最近、仲良くなった誰かと、
いっしょに、したのかもしれない。
「おまけにな。"至高の配達職"は、
"ふたりであるべき"と、
連名で、念押しされた」
「「・・・!!」」
「対と成さなければ、
反旗をも辞さぬ、と」
「そ……!」
「れは……」
──即ち、"脅し"である。
あの、6人の"至高"たちは、
アンティ、それに、マイスナを、
" ふたり "、共に、"至高"に、
寄越さなければ、
王国、裏切っちゃうかもよ? と、
におわせたのである──。
謎の、"銀のプレミオム アーツ" を持つ、
マイスナで さえも────……!
「これは、大きな意味を持つと、
私は、考える」
「「……」」
「……まだ、分からぬか。
どうも、そこの感覚が、
未達な ようだ」
……さっぱり、だ。
何が言いたいのか、
アンマイは、ハテナで、いっぱいだ。
そして、彼は、説明する。
「──"至高"はな、何度も、
"街"を、"国"を、"世界"を、救う。
あれらは、まさしく、"天啓の武"だ。
我ら、こっぱ貴族など、
そこらじゅうに居る。
──だが、あれらは、
やすやすと、替えなど、きかぬ。
それらに、君たちは、それこそ、
たいへんに──、
気に入られているのだ・・・!」
"本"を、"記録"を背景に、
アバンテは、力説した。
そして、流星は、進み、落ちる────。
「私は……" なぜ、畏まるのか "、
と、聞いた」
「──ぁあ……!」
「──そぅ、いぅ──」
アンティと、マイスナは、
やっと、理解した。
彼女たちは、彼に会い、
緊張した。
しかし、
彼も、また、
彼女たちに会い、
"緊張"、しているのだ。
つまり、アバンテ男爵は、
"至高の冒険者"とは、
目の前の"ガタイの良い貴族"よりも、
ずっと、敬われるべき存在であると、
伝えたかったのである。
「ぁー……」
「えっとぉー……」
「……ふむ」
この、妙な空気感は、
まさに、それの せいである。
互いに、緊張、していては。
「そ、そんなこと、言われても、なぁ……」
「えらそーに、したい訳では……」
これには、アンマイも、困ってしまった。
アバンテ系とシューティングスター系、
ポチリました。ε-(`・ω・´)フンッ










