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第467期素体休眠期間の迷子の手記





 (どこからか、

  大人びた女性の声が聞こえる・・・)



 第四双世界の形成が、

 この時から始まっていた。

 アップルの形成した印刷機のトリガーは、

 もう、この時には、止まらなくなっていた。


 第8工業の発生と、

 あの出来事が関連性があったのかは、

 今では、予測する事が出来ない。


 この手記が、過去を振り返る形になるのは、

 私たち、が、今、休眠状態にあるからに、

 他ならない。


 長期間接続は、夢という形になって、

 このような、精神同一性周期を作り出す。

 言わば・・・これは、

 いまの、わたしの、日記のようなものだ。


 だいじょうぶ。

 時間軸は、かわらない。


 あなたたちは、怖がらなくていい。

 ただ、語り手が、変わっただけ。


 私は、今、取りつかれたように、

 これを、形成しているだけ。


 精神を落ち着かせるために、

 つづっているだけだ。


 私が、また、ふたりになる前に。

 単なる、ひまつぶし、なのだから。


 いま、私が、

 どのように自己保存しているかは、

 まだ、知らなくていい。

 きっと、理解は、できない。


 だいじょうぶ。

 まだ、わたしは ──── / |




 えぇと・・・どこまで、話したっけ。



 ふふ、そうだ。

 あの、お祭りの、迷子のことだ。



 とても、懐かしいと感じる。


 ふと、下を見ると、

 ア□◪ィの、クルルカンのマフラーを、

 小さな、男の子のクルルカンが、つかんでいた。

 

 彼女の経験則からだが、

 迷子の時の子供というのは、

 多様な、個々の精神的な特徴が、

 非常に豊かに、表現されるものだ。


 泣きべそを、かいたり。

 ケロッと、自分の状況を、忘れたり。

 誰か、知っている近しい者を、

 探そうと、努力したり。


 ふふ、迷っている本人からしたら、

 不謹慎に思われるだろうが。

 そのような時は、愛おしいものだ。


 ア□◪ィの状態では、やはり、

 その(Tagui)の対応に、(Na)れていて、

 ( 彼女は実家の食堂で迷子係である )

 彼女は声をかけ、なぐさめ、

 肩車をしてやると、

 マ◇ス◆状態の私から見ても、

 その表情は、明らかに、回復した。


 えっと、音声ログは、(Do)(ko)だったかな。

 あった あった、コレだ。




GS-L4:「んもーっ。あんたのお母さん、

     どーこ、行っちゃったのよぉー」

kid-J:「ぁわわ、たかい・・・!

     すごいね・・・!」

SS-R4:「足、バタバタすると、落ちちゃうよ」




 ア□◪ィ・ユニットと、

 マ◇ス◆・ユニットが、

 対人接触をする時は、様々なことが、

 彼女たちの精神道徳に応じて、

 自動で施行される。


 わかりにくいか。

 この時のことで言えば、彼女たちが、

 子供などの最重要保護指定物に触れる時、

 彼女たちの装備の金属質のエッジレベルや、

 髪繊維の表面硬度が、最低レベルまで、

 引き下げられる。


 細かな事だが、重要なことだ。

 彼女たちの(Yoroi)や仮面が、最高エッジレベルになれば、

 擦れ合っただけで、アダマンタイトにだって、

 裂傷ができるし、髪は最高硬度に達すると、

 触っただけで、生身なんか、

 即座に切断する。


 この時の子供は、( 確か、名前はジェイムス! )

 ア□◪ィに肩車をされた後、

 思いっきり、ツインテールの根元を、

 素手で(Tuka)んでいたから、


 私たちの倫理機構から発生する

 自動装備軟化プログラムは、

 実に重要な事柄だと、わかるはずだ。


 自分の髪に触れた子供の手が無くなるなんて、

 想像しただけでも、イヤな気持ちだ。






kid-J:「見て・・・! 見て!

     お城が、あんなに、見える!

     すごいね・・・!」

GS-L4:「こら。ツインテの根元を、

     (つか)むんじゃねぇ」

SS-R4:「こら。それは、とても、

     神聖なものなんだぞ」




 ふふ、マ◇ス◆形態の私が、

 なぜか、ツインテールの尊厳を(To)いている間に、

 ア□◪ィ形態の私は、クラウンに、

 捜索を命じていたっけ。




GS-L4:「──クラウン。

     フィルタリング、たのむわ」


Sun-G:『────レディ(準備完了)

     ────捜索対象:

     ────メアリー・クレスト☼』


SS-R4:「あなたの お母さんの名前、

     メアリーさんで、間違いなぃ?」

kid-J:「なんで、知ってるの!?」


Fri-G:『>>>充填した。

     >>>共鳴体に、髪を使うよ!』

Sun-G:『────第一射☼

     ────ソナー:撃ちます☼

     ────情報流入に注意を☼』


GS-L4:「今さら、大丈夫でしょ」

SS-R4:「うんうん」


Sun-G:『────物理情報で:

     ────視界が(ふさ)がると:

     ────言いたいんです:んもぅ☼

     ────行きますよ!☼』



 金と銀の髪が共鳴し、

 フィルタリング波が、私たちを中心に、

 波紋状に、かなりの広範囲に、

 発射された。

 この時の全方位/分析パルスは、

 少し、出力が強かったので、

 気圧に弱い周囲の人たちは、

 何十名か、軽い耳鳴りに襲われたようだと、

 後の試算データで分かった。


 一秒も経たない内に、

 ア□◪ィ・ユニットと、マ◇ス◆・ユニットに、

 周囲にいた、大量の人々の名前のリストが、

 押し寄せるように、流れてきた。


 あの時から、これくらい(Saba)けるメモリは、

 有していたけど、アップルいわく、

 1990年代のPCなら、

 ハードが 吹っ飛ぶくらいの容量だったはずだと、

 言われたのを、覚えている。




Sun-G:『────分析完了(アナライジング)☼』

Fri-G:『>>>少し、強すぎたか……。

     >>>周囲の人が、何人か、

     >>>耳を押さえて、不思議がってる。

     >>>健康状態は……大丈夫そうだな。

     >>>で? どうだい? 後輩ちゃんたち。

     >>>頭、パンクしそうに なってない?』


GS-L4:「余裕だけど、前が見えん・・・」

SS-R4:「も、文字の、カーテンが・・・」

kid-J:「す、すっげー! お姉ちゃんたちの、

     目、ぴかぴか、チカチカしてるよ!」

GS-L4:「ちょ、今、動くんじゃねえ!」

SS-R4:「いい子だから、ストップしなさい!」


Sun-G:『────申し訳ありません☼

     ────こちら側でリストにしても:

     ────よかったのですが……☼

     ────視覚野を経由した方が:

     ────手っ取り早いものでして……☼』


GS-L4:「いーわよ、ただ、はやくして」

SS-R4:「さすがに、この人数で前が見にくいのは、

     あぶないです」

kid-J:「ぉ、お姉ちゃんたち、さっきから、

     誰と、しゃべってるの・・・??」


Sun-G:『────すみません☼

     ────大通りの端っこに:

     ────移動してからの:方が:

     ────よかったですね☼

     ────急ぎます☼』



 クラウンは謝っていたけど、

 記録上では、30秒も、かかっていない。

 私たちの流路双脳処理を使って、

 膨大な人名データは、即座に、

 処理されていく。


 ア□◪ィ・ユニットと、マ◇ス◆・ユニット、

 その視覚野に、該当の名前が、

 点滅して、ヒットする。



Sun-G:『────見つけました☼

     ────170メルトルテ先の:

     ────(えい)(へい)(つめ)(しょ)に:

     ────居るようです☼』


GS-L4:「なぃす。よかったわね、ガキンチョ」

SS-R4:「お母さん、この先に、いるって」

kid-J:「ホ、ホント・・・!!」

GS-L4:「きひひ、クルルカンは、

     ウソ、つかないわ」

SS-R4:「連れてってあげるから、

     いい子にしてるんだよ」


Fri-G:『>>>オーケー。後遺症はナシ。

     >>>この状態だと、迷子、

     >>>他にも、いっぱい居そうだよなぁ……』

Sun-G:『────アンティ☼

     ────スキャン中に:ステータスが:

     ────ひったくり:の者を1名:

     ────発見しました☼

     ────どうしますか☼』


GS-L4:「マイスナ、石、投げろ」

SS-R4:「わかっぱ。

     ──ッッドラアアアァァァァァァッァァ!!!」


thief:「────ガッ、ぐぶおあああああああ!?!?!?」

sim-A:「な、なんだ・・!? 人が、

    いきなり、吹き飛んだぞッッ・・・!?!?」

madam:「──そっ、そいつ、捕まえてーっ!!?

     私のカバン、()ったの!!

     ドロボウよぉーっっ!!?」

sim-B:「んだとぉー!? ふてぇヤロウだ!!」

sim-C:「ボコボコだぁあー!!!!!」

thief:「──ひ、ひぃぃぃいいいいい!?!?!?」


SS-R4:「悪・即・斬。えっへん」

GS-L4:「あきらか打撃」

kid-J:「き、狂銀の お姉ちゃん・・・。

     いきなり、人に、石、

     投げちゃあ、ダメだよ・・・」

GS-L4:「あいつ悪い奴だもん。ええんやで」

SS-R4:「わたし、狂銀だもん。ええんやで」

kid-J:「ええぇ・・・・・」



 少し、この時の子供には、

 ドン引きの目で、見られたが・・・。

 あの、どさくさで正義を成した事は、

 評価、して欲しい。


 石が、貫通していなかったのは、

 幸いだったな・・・。




kid-J:「ねえ♪ この、おーかん!

     なんで、浮いて、まわってるの!?」


Sun-G:『────アンティ:助けてください☼

     ────子供が近いです☼』


GS-L4:「()れろ。予行演習だと思えば、

     いいじゃないの。子育ての」


Fri-G:『>>>なんの、予行演習だってぇ……?///』




 クラウンと先輩を からかっているうちに、

 少年の母親個体が居る、詰所に、

 かなり、接近していた。


 第一旧世界の情報の、交番、といった物に、

 よく、似ていた。


 さらに近づくと、

 槍斧を持った衛兵の近くで、

 少年の母親らしき人物が、泣いているのが見えた。




Sun-G:『────対象です☼

     ────間違いありません☼』


GS-L4:「ほらー。あんた、おっかさん、

     泣いてるやないのぉーっ」

SS-R4:「ちゃんと、あやまるんだよー」

kid-J:「ぉ、おかーさんだっ!!

     すごい! ほんとに、いるね!!」

GS-L4:「そりゃ、いるだろ。

     アンタが居るんだから」

SS-R4:「ちゃんと、あやまるんだよー。

     詰所に相談に行ってて、よかったね」



 衛兵詰所に接近するため、

 さらに、大通りの人混みを、突破していく。

 少女の肉体のまま、

 子供を肩車しているので、

 少し、目立っているようだった。





kid-J:「おかーさーん!!!」

J-mom:「──まぁ・・・!!」




 母親には、何度も頭を下げられ、

 感謝を述べられた。

 



GS-L4:「クルルカンなら、

     まず、おかーちゃんを守れ」

kid-J:「──うんっっ!!!」

SS-R4:「おかあさんの、お手伝いしないと、

     石、投げにいくよ」

kid-J:「えぇ・・・・・」




 親子とバイバイし、

 やれやれ、と、ユニット同士で、

 ため息をつく。


 すると、後ろから声が、かけられた。




guard:「──おや! こいつは、ツイている!

     精霊王の、お(みちび)きだな」


GS-L4:「──!」

SS-R4:「──?」




 初老の衛兵と、若い衛兵が、

 私たちを、笑顔で、見ていた。




guard:「王民を助けていただき、

     まことに、感謝する。

     アンティ・クルル。

     マイスナ・オクセン」


GS-L4:「──ぁ、あなたは・・・!」

SS-R4:「──ぇ、えっと・・・?」



 彼らの顔には、覚えが、あった。

 そうだ──。王城の、警護を、

 していた────、、、





guard:「さて、君たちを、探していた。

     実は・・・私の知り合いの、

     冒険者ギルドの、受付嬢が・・・、

     あまりの多忙のために、幼児退行、

     しかかって、いるのだが・・・。

     そちらも、助けてくださるかね?

     絵本の お二方よ────」


GS-L4:「ぁ、あはは・・・。

     そっちは、子供にならないよう、

     尽力させて、もらいますよ・・・」

SS-R4:「ぇ、えっと・・・。

     そんなに、いそがしいの・・・?」




 私たちのユニットは、

 その、ふたりの衛兵に、同行したのだ。










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― 新着の感想 ―
[気になる点] 〉GS-L4:「マイスナ、石、投げろ」 〉SS-R4:「わかっぱ。 〉     ──ッッドラアアアァァァァァァッァァ!!!」 joj○風? 本当に貫通しないで良かったw
[良い点] 誰だ語り部……
[一言] 合体サーバーちゃんも、単独で意思を持ってるってこと…?これは天福に新たな人格が現れるのかも?
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