ふたりの像
おまたんたん♪(●´ω`●)
「「 ────……、 - 」」
──なんて。
なんて、モノを、
つくりやがった──……!
と、アンティと、マイスナは、思う。
たぶん、ふたりは、初めて。
とある分野での、" 完成形 "を見た。
そして、これは。
"渾身"の──ヒトガタ なのだ。
────よく知っている、カタチ、だった。
「「 ──── 」」
" 黄金の義賊、クルルカン "。
" 白華の狂銀、オクセンフェルト "。
物語の中では、最後のページにて、
謎の会合を果たす、対の宿敵たちは。
しかし、目の前の、巨大な像では、
どちらも、少女のカタチとして、
その姿を、表現されている。
二人は、互いの、背中を、預け。
どうだろう、敵同士であるはずの、
"彼女たち"は──。
それは、"信頼"のような、カタチだった。
"これ"を、見て、取れるのは、
この"ふたり"は、お互いを、
"信じあっている"という点だ。
それは、この像の意匠自身である、
いや……アンティと、マイスナだからこそ、
よく、心に、刺さった。
この像は──互いの背中を合わせ、
"外"の、何かを、見つめている。
目線は、合わさっていない。
感じるのは、互いの、背の熱さだけ。
絵本とは、真逆の、構図だった。
誰も、その意図を、説明できない。
ただ、これは、素晴らしい、像だった。
皆が、そう、思った。
「なんちゅー……、もん、を……」
「わ……たし、たち、なんだ、よね……」
10メルトルテを、優に超える、
アンティ・クルルと、
マイスナ・オクセンの像は、
でかい広場の、カフェの前に、
どどん、と、見事に、立っている。
敵同士ではなく──、
最も信頼し合う、ふたりの少女として、
削り彫り出された、その、
アダマンタイトの像は、
絵本の──はるか、未来を、
想像させた。
あの絵本の、未来だった。
青空の下の、希望の像だ。
これが、王都の名物として、
大成するのは、言うまでも無く、
周囲の感嘆は、時たま、
よく分からない、拍手のようになった。
この像を、きらいになれる者など、
まず、いないのだろう。
まるで、はるか昔の、対の英雄とさえ、
そう、言われれば、信じそうな、
──そんな、出来だった。
「ひえぇ……」
アンティは、自分の、10メルの像を見ても、
正直、よく、分からなかった。
なので、マイスナの像を見ることに する。
すると──すごい・・・!
これは、マイスナだ、と。
当たり前のことを、思った。
凄まじい、の、ひと言、だった。
マイスナと再会したのは、
ついぞ、数ヶ月前だったが、
アンティと、マイスナは、
濃厚な、時を過ごしている。
しゃべり、たべ、あいしあい。
4年分の、あらゆる想いが、
少し、過剰に、発現した。
マイスナの全てを、
この世の誰より、知っているのが、
アンティだった。
その、自分が──、
" これは、マイスナだ "と、
確信をもって、思う。
ちがう、所など──ない。
素晴らしい、、、再現度だった。
アンティの像に、背を預け、
どこか、遠くの、敵を見るような、
マイスナ・オクセンの像は、
アンティの心を、温かくした。
ヒトガタの像を見て、こんなに、
心強く、思うことなど、
田舎街の、食堂娘であるアンティにとって、
とても、はじめての、事だった。
有り体に言えば、
アンティは、感動していた。
頭が、おかしいほど、
この像は、よく、出来ていた。
マイスナが、言う。
「あの……わたしの……狂銀の、像……」
「ん……」
「自分では……よく、わからないの。
でも──……」
マイスナは、
アンティ・クルルの像を、
じっと、見つめている。
「──あれは……"アンティ"だよ。
わたしの……よく、知ってる、
大好きな、アンティだ」
「……うん」
マイスナは、ウワサに聞いた、
アンティの像が、気に入らなければ、
絶対に、破壊する気だった。
とんだ、杞憂に終わった。
巨大な、アンティ・クルルの像は、
マイスナの、狂った愛をも、満足させる、
圧巻の、作品だった。
アンティも、言う。
「あの……アンタの、像、ね?」
「ぅん……」
「最高だと、思うわ。あれは、
わたしの大好きな、アンタよ……」
マイスナは、
仮面を着けた、アンティの横顔を見て、
嬉しくなって、もう一度、
"ふたりの像"を見た。
アダマンタイトと言う金属は、
まるで透明に見える、
しかし、透明では無い、
少し……青っぽく見える、
複雑な、反射をする、素材のようだ。
表面は、磨かれているが、
中に含まれる、
沢山の鉱物の要素は、
とても、入り組んでいるようで……、
まるで、同じ色が無い。
よく晴れた空の下で、
祭を祝福する、陽の、そよ光が、
ふたりの像に、そそぐと、
淡い、虹色のようになって、
楽しませた。
虹輝きの中で、
アンティ・クルルの像が、
淡く、複雑な、黄金の光を孕み、
マイスナ・オクセンの像が、
淡く、複雑な、白銀の光を孕んだ。
もし、これが、狙って、
表現されているなら、
流石だった。
もしくは、見た者たちが、
そう、あってほしいという、
光の色を、心で、
こし取っているのかもしれない。
これを、アダマンタイトで造るのは、
バカだった。
"情熱"が、籠っていた。
「は、は。これ……100年くらい、
のこる、かな」
「そう……かも、ね」
アンティと、マイスナは、
ほぁぅ……と、ため息を、
つくしか、なかった。
どうも、その感情は、
やれやれ、と、言いたくも、
心の中の興奮と感動を、
誤魔化せそうに無い、ため息だった。
アダマンタイトは、特殊な魔術でしか、
ゆっくりとしか、加工できない。
逆に言えば、故意に破壊しなければ、
この、ふたりの像の耐久力は、
頭がおかしい レベルである。
ふたりは、感嘆していた。
互いに、互いの愛する人の像を、
認めた、ということは……、
おそらく、自身の像の方も、
素晴らしい、出来なのだろう。
「よぅ……こんなもん、つくったわ」
「ほんとだ、ねぇー……」
また、拍手が、起こった。
こいつは……ダメだ。
この王都で、いっとう、有名に、
なり過ぎるに、ちがいない。
確信が、あった。
像の台座の文字を、ズームする。
" 私たちの物語は、いつも、ここにある "
アンティと、マイスナは、
温かな、かわいい笑顔を、
するしか、なかった。
「完敗だわ。どうしよう」
「わたし、あれは、壊せないなぁー」
おったまげるほど、デカイ、
自分たちの像に、
ふたりは、笑うしか、
仕様が、なくなった。
『────アンティ:マイスナ……!☼』
「そうね」
「まさしく」
太陽の女神が、警鐘を鳴らす。
『────ち:ちがいます……!☼』
「「 ?? 」」
〘------まずいのんよぉ〜〜──……!☆〙
月の精霊王が、注意を促す。
アンティと、マイスナは、
とある、子供を、見た。
女の子だ。
小さい。
クルルカンの、かっこうを、している。
可愛らしい。
ご本人が選ぶ、
ベスト・コスプレイヤー賞を、
受賞させてやりたいほどの、
可愛さだが、
この子レベルの仮装キッズは、
今の王都には、ごろごろ、
そこらじゅうに、溢れかえっている。
ちがう。
そこでは、ない。
その、小さな、女の子の、クルルカンは、
──まっすぐ、
アンティと、マイスナを、
指さしている。
とても、まぶしい、笑顔で。
「「 ────…… 」」
陽気の中。
アンティと、マイスナは、
とっても、イヤな、予感がした。
とっても、笑顔で、
滝のような、冷や汗が、
オリジナルの、仮面の下で、
流れまくった。
「ぞぉの、くゆゆかんー!
おくへんへるとー!」
もちろん、
その女の子のそばには、
保護者が、いた。
おそらく、その、チビ義賊の、
お父さん オクセンフェルトと、
お母さん クルルカンは、
アンティと、マイスナの顔と、
うしろの、巨大な像と、を、
明らかに──往復して、
見まくっている。
その、表情は──、
記号で表せば、" !? "
であり。
つまり、驚愕である。
アンティとマイスナは、
お股が、きゅっ、となるような、
感覚を、味わいながら、
周囲を、よく、意識して、見た。
いつの間にか、
アンティたちの周りには、
半径、4メルトルテほどの、
不自然な、誰も立っていない空間が、
形成、されている。
逆に言えば、その円の中央に、
ふたりは、取り囲まれていた。
その、全員が──、
アンティとマイスナと、
"ふたりの像"と、を、
交互に、高速で、見るのだから──、、、
────まるで、ヘドバンである。
生涯の愛を誓い合った、
二代目、クルルカンと、
二代目、オクセンフェルト。
さいきょうの、ふたり。
いつだって、
彼女たちの天敵は────、
無垢な、子供たちである。
「ぁー! くゆゆかんだぁー!!」
「いっしょだー!
ぞう、と、いっしょー!!!」
「おんなじ、かみがた、だぁ!!」
「おとーたん! ぜったい、そぉだよ!!」
「うわぁー!おんな、くるるかん だ!
おくせんふぇるとも、いるぞー!!」
「おんなじ、どれすだぁー♪♪♪」
「えーっ!! ちょっと、
ちがう、かたちじゃ、ないかぁー!?」
「でも、ぜったい、そうよ!!!」
「あの、まふらー、かっけーなぁああ!!!」
「ちょっと、ちがうカッコーだけど、
ぜったい、あのひとたちよ!!」
「ぞうと、おんなじ、くるるかんだ!!!」
「あの、きょうぎん、すごいね!!!」
「おんなじだああー!!!」
『────遅かった……はぅぁ☼』
太陽の女神の、ため息が聞こえる。
子供たちの声に、
大人たちが、反応し始める。
それは、黄金の、連鎖である。
「え……ご本人???」
「………──え"!? ご本人ッッッ!?!?」
「えっ、ガチじゃない!?」
「────いっしょじゃん!!!」
「おおっ!? 激レアじゃね!?」
「……よく、似ているなぁ」
「うわーっ!!! ぜったい本人じゃん!!!」
「あれ、自分たちの像、見に来てんのかな!?」
「ぜったい、そうだろ!!!!」
「うおおっ、本人、すげええええええ!!!」
「実物やばいな」
「カフェのやつ、グッジョブ!!!!!」
「は? 本物ふたり、可愛すぎんか???」
「手ぇ繋いでんぞ。てぇてぇが?????」
「なんか、くるもんあるが」
「はぁ……!!! なに、あの子ら……!
すごっ、かわえぇえ……♡♡」
「あれは女の身で見ても良いもんだわ」
「確実に本人で草」
「あー!!! あの子らが元か!!!」
「よく出来てんなぁー!!!!!」
「いや、クリソツすぎでしょ」
「仮面、クオリティ、たっか!!!」
「それよりも、あのヨロイだろ」
「カッコよ!!! 作ったやつ、天才か?」
「うおおおおおおお!!! ご本人ッッ!?」
「やっぱ、見に来るよねー、そりゃあ」
「像と、少しだけ、ちがう鎧だが……、
確実に、あの子たちが モデルだな」
「おい、お前、声、かけてみろよぉ♪」
「バッ……!?/// なんで、オレなんだよぉ!!」
(( サァ────……・・・!! ))
アンティとマイスナが、
すんごい笑顔のママ、
血の気が引きまくったのは、
言うまでもない。
だれだ。
今の王都なら、
クルルカンとオクセンフェルト、
隠せるって、言ったやつ。
ヒゲ:「──ばっくしょーい!!!」
ユビ:「──は、はげしいですっっっ!!?」
思考がフリーズしかけた、
アンティと、マイスナの元に、
ごった返す人々を掻き分け、
とある人物が、近づいてくるのが見える。
ズドドトドドドドドドド・・・・・!!!!!
「──ぅぅうううおおおおおおおいいい!!!
きっ、きみたちぃいいいいいいい!!!!
わっ、わたしだぁあああああああ!!!!
カフェ・ド・ランドエルシエの、
オぉぉぉー、ナぁぁぁぁー、だああああ
ああああああああああああああ!!!!!!」
「「 ぎぃやぁあああああああああ!!!!!! 」」
アンティと、マイスナは、
どっかで、こいつの声を、
聞いた事が、あった。
直感した。
こいつで、ある。
自分の、アダマンタイト製の、
立像を、ぶっ壊してまで、
アンティ&マイスナの、
巨大な観光名所を、
ブチ爆誕させやがったのは、
────すべて、コイツの所業なのだ!!!
「うおおおおおお──!!!!!
き、きみたちぃいいいいい!!!!!!
そっ、の、まふらーと、はな、と、
ヨロイはぁあああああぃ!?!?!?!?
す、素晴らしい〜〜〜〜ッッッッ!!!!!
あの、像はッッッッッッ!!!!!
まだ、素晴らしく、なるぞっ!!!???
あの、天使のような、氷の翼っ!!!
絵本と同じッッ、ジグザグの、
黄金、マフラあああああああああ!!!!!」
「クラウン、逃走経路」
『────きびしいですって……☼
────周囲の人混み:
────見てください……☼』
「ローザ、電撃準備」
〘------この人数は;ちがう罪状で;
------指名手配犯に;
------なるのんよぉ〜〜ぅ?☆☆〙
そして、だいぶ興奮気味の、
カフェのオーナー兼、店長が、さけぶ!
「──であえっ!!!
カフェ・直属ぅ──!!!!!!
──" キッズ、スケッチ部隊 "!!!
彼女たちの、新しいヨロイの、
意匠をッッ!!!
余す所なくッッ!!
デッサンするのだぁああ〜〜〜〜!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
どっからとも無く 出てきた、
スケッチブックを持った少年少女は、
皆、おそろいの、緑色の帽子を、
被っている!
目は、輝き!!!
その筆の速さは、凄まじいッッ・・・!!!
「うわ──っはっはっはっは!!!!
これで、また……!!!
あの、ふたりの像が、
素晴らしいカタチで、
アップグレード、されるぞぉおおおお
おおおおおおおおお……!!!!!
とくに、クルルカンさんの方はぁ、
マントで、胸元から背中を、
覆っているデザイン、
だからなぁあああ・・・!!!
あの、マフラーを、
削り出してしまえば、
よく、顔も見れるし、ああ・・・!!!
オクセンフェルトくんのドレスも、
あのデザインなら、もっと、
艶やかに・・・!!!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「カキカキカキカキカキカキ!!!」
「ぎ、ぎぃやぁああああ〜〜っ!?!?//////」
「やっ、やめろおおおお〜〜っ!?!?//////」
──キィィィぃいいいンンン!!!!!
──ギィィィぃいいいンンン!!!!!
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !! 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !! 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」」
人が溢れかえる、
この広場から、アンマイが逃げ出すには、
──" 上 "に、行くしか、ない。
「──と、とんだぞお!!!」
「──すげええええええ!!!!」
「──なに!? あの、ジャンプ力ッ……!?」
「「 ひいえええええええ〜〜〜!!!???////// 」」
『────ああっ:こんな高さで:
────逃走するのは:
────非推奨でっ……!?☼』
〘------もう;おそいのんよぉ☆☆☆
------うわぁぁ〜〜☆☆
------人々が;ゴミのようのんなぁっ☆☆☆〙
────キィィィぃいいいンンン!!!!!
────ギィィィぃいいいンンン!!!!!
「「「「「「「「「 う 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 お 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !! 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !! 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !! 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !! 」」」」」」」」」
「「「「「「「「「 !! 」」」」」」」」」
祭の最中に、
宙を、駆けながら。
街灯や、建物の、でっぱり屋根を、
キンギン、跳びまくって逃げた、
アンマイは──、
ア ホ み た い な 人 数 に 、
見 ら れ ま く っ た と い う !
「おい聞いたかよ!!
あの、広場の像の本人ら、
見に来てたらしいぜ!!!!!」
「はは!!情報が おせぇし!!!
オレなんか、あっちの広場で、
ピョンピョン跳ねながら逃げる、
ふたり、見ちゃったもんね!!!」
「おまつり、サイコぉおおおおお──っ!!!♪♡♡」
飛び跳ねて逃げた(笑)
すげぇ人数に、見られたんじゃ……?^^;










