黄金の管理人 下 さーしーえー
※挿し絵を追加。
※めちゃくちゃ、加筆/修正しました。
このマンションには、
ワンフロアを ぶち抜いた、
豪華なプールが ある。
ぼくたちは、そこで、
例の"複合機"を、調べていた。
すぐに、"複製"にも、
強烈なプロテクトが、
かけられていると、わかる。
水の そば で、これを調べているのは、
弱体化している"Q3"が、
少しでも、速力を、出せるからだ。
まぁ、……ダメっぽいけど。
〘++++++はぁ・はぁ・グ・はぁ・・・〙
『──無理、すんなよ……?▽』
水びたしの彼女の手には、
"透明の剣"が、握られている。
水面に浮く、印刷機には、
傷ひとつ、ついていない。
水面は、極端に、低く。
まるで、お風呂のようで、台無しだ。
積層階にある特性上、
天井と床は暗く。
自然光とは言い難い、
でも、さわやかな光が、
ぐるりと、まわりの四方から、
ぼくたちを、照らす。
愚行に揺れる、
さざ波の波紋は、美しく、
円をつくり、
光は波長を、ダンスする──。
言うまでもなく、"剣"は、解除コードだった。
でも、まだ、世界の謎に、
斬り込むことは、できない。
〘++++++く・そっ・・・。
++++++手が・6本だった時の・
++++++速力さえ・出れば・・・!〙
『──ぃやぃやぃやぃや・・・そのためだけに▽
──クリーチャー・ボディに▽
──戻る必要は、ねーだろ……!▽
──それによぉ、あの時はサ?▽
──オリジナル・サーバーの▽
──加護が、あったし──▽』
原初の水の神の剣は、
頬の汗と共に、
水滴を集め、プールへと、おちる。
ポタ、ポタ、と。
服が濡れ、膨らんだ身体の、
華奢な色気が、
彼女を、湿らせている。
ぼくは、プールサイドの、
ベッドもどき の椅子で。
なぁにを、してんだろなぁ、ぼくら。
と。
ふと、思った。
今も、この船は、
世界を、作り続けている。
ぼくたちは、ここにいる。
なにが、どうなるか。
だれにも、わからない。
〘++++++ダメだわ……!
++++++このままでは・・・〙
『──ちょっと、休憩に すっか……?◎▽◎;』
原初の木の神サマも、
困り果てているようだった。
彼女の左の手には、子供が大好きそうな、
かっちょいい、半透明の、
小型のパソコンの ようなものが、
ガチャンと、装備されている。
かつては、肥大化した脳を使った演算を、
機械的に、助けるものだろうか。
もしかしたら──彼女も、
"どデカい頭脳"、が あった頃よりは、
色々と、スペック・ダウンしているのかも、
しれない。
かもしれない、お化けが 出そうだ。
アーム・パソコンから、
表示されている、光のキーボードが、
彼女のビン底メガネと、
プールの波に、反射していた。
……──ふぅ。
『>>>──なぁにが……つまづいてる感じ?』
プールサイドから、ぼくは 聞く。
『──"印刷機"の情報端末の▽
──障壁構造体が▽
──積層化しちゃってんのよぉ~~……▽』
〘++++++破壊したいんだけど・・・
++++++プロテクトの再生速度が・
++++++異常なのよ・・・っ!!〙
『>>>なるほど、ねぇ……。
>>>スピード&ぱわー、ってワケだ。
>>>ふぁぁ〜〜っ──……』
〘++++++ぁ・あんた・ねぇ・・・!?〙
ゲームを するためには、
コントローラーが、必要だ。
なのに、ハード・ウェアの、接続部分が、
イジワル な ナゾナゾで、
塞がれている。
復活の呪文を、覚えていても、
ぼくたちが動かす"舵"が、
なければ、世界とは、繋がれない。
見上げた天井の、波に反射した、
光のダンスは、美しかった。
『──ちぇっ!▽ これ、どうしたら▽
──解除できんだろなぁぁ~~……!?▽』
〘++++++ぅーむむむ・・・。
++++++やっぱり・直接的な"剣"じゃなくて・
++++++浸透式の・ディスペル・プログラムを・
++++++イチから・組んで────……〙
『>>>はぁ……』
こん時の"気持ち"を、
上手く……説明、できないん だけれども。
ぼくは、なんだか、
バカらしく、なってきていた。
"箱庭"の"印刷機能"を、
もちろん、"制御"しなきゃ、
マズイのだけれど。
こんな……、高層マンションの、
高級そうなプール・サイドで。
嫁さんの女友達、2人が、
びちょ濡れに なりながら、
剣で、機械を、ぶっ叩いているのを、
見ているんだぜ?
ぜったい、音楽プレイヤーとか、必要だよな?
『>>>はぁ……。クラウンちゃんも、
>>>呼べば、よかったなぁ……』
〘++++++ちょっとおおおおお!!!
++++++そこぉぉおおおおお!!?〙
『──ゃ、やる気……だしてくれよぉー▽
──そりゃあ、まずはウチらが▽
──やってみるとは▽
──言ったけどよぉ……◎▽◎;』
プール・サイドの、ベッドみたいな椅子で、
裸足で、ごろん と、寝転がる。
すると、そばに あった、いかにもプール! 的な、
パラソル付きの 机の上に、
ライターと、箱の、煙草があった。
〘++++++ぁ……そうだわ!
++++++それ・使ってみるの・忘れてた!
++++++こっち・持ってきてちょうだいっっ!〙
と、言われたので、
『>>>──えぇ……元・水の神様だったのに、
>>>煙草、やるんすかぁ……?』
と、素で返すと、
〘++++++ぅ・うるっさいわねぇえ~~……!?
++++++それは・ただの煙草じゃ・ないのっ!!///
++++++ヒューマノイド系ボディでも・
++++++基本 演算処理が・
++++++上昇するプログラムを・
++++++充填してあるのっっ!!!///〙
『>>>え"っ、ヤクってことっスか?』
〘++++++ぁ・あんたぬええええ"え"え"え"え"〙
キューカちゃんの顔が、
みるみる、真っ赤に なってきている。
〘++++++ジュンヤと同じ"カオ"だから・
++++++尚更・ハラ立つんだけどっ・・・!?///〙
『>>>知らね。こんなの吸ってたら、
>>>先生に、教育指導、されちゃいますよぉー』
〘++++++な"っ・・・!?
++++++パパは・カンケイないでしょっ・・・!!///〙
『──ぁ〜〜ははは……◎▽◎;
──ぁのぉー、黄金の義賊さん……?▽
── 一応・そのデバイスは▽
── 合法薬物レベルには▽
──威力を、抑えてますんで▽
──ギンガっちには、チクらないで▽
──ほしいと、言いますか……▽』
『>>>やっぱり、ヤクじゃねぇか……』
今ので、言い訳できなくなったな。
この二人・作のウスィ本と共に、
確実に、、、"ご禁制レベル"の品だわ。
〘++++++みっ・・・身も蓋もない言い方・
++++++しないでよねっ!?
++++++し・仕方ないでしょ!!
++++++この身体ったら!!
++++++持病が完治したのは いいけど!!
++++++代わりに・
++++++私の1番の武器の・"速力"が・
++++++弱体化しちゃったんだからぁ・・・!!〙
おぉ、キューカさんのライターは、
なんと、ジッポだった。
シブい。先生のシュミだろうか。
なかなか、かっこいいね。
くすんだゴールドで、
木の模様が、彫り込んである。
ちな、箱タバコの方は、
ぼくらも知ってるとおりの、
なんかを、白い紙で、
巻いたヤツである。
『>>>……こーゆーの吸ったら、
>>>ぜんぶ、味、
>>>変わっちゃうんだろうなぁー……』
タバコをやめると、
ご飯が美味しくなって、
太るって言うし。
てか、ご飯だけじゃなくて、
キスの味とかも、
変わっちゃうんじゃね……???
『>>>はは、最悪だなー!』
〘++++++ちょっとぉ!?///
++++++どういう意味よぉ!?
++++++いいから・わたしなさいな!?///〙
どうやら、ドーピング剤としてだけ じゃなく、
嗜好品としても、
この紙タバコは、
キューカさんお気に入り みたいだ。
いや……もしくは、
このジッポ・ライターが、
お父さんからの、プレゼントかも、しれないが。
先生には、是非、
娘さんの生徒指導に、
勤しんでもらいたいもんである。
まぁ、あの人も、
ちょくちょく、吸ってっから、
何とも言えないけど。
……やれやれ。
考えたら、ぼくはもう死んでるから、
ここで、経験するしか、ないのか──。
『>>>……香りは、きらいじゃないけどな』
ぼくは、おかしみたいな タバコを、
口に つまみ。
──キンッ・・・!
────ヂュッッッ!!
黄金のジッポで、火を着けた。
ジジジ・・・、、、
〘++++++えっ・・・!?〙
『──ぉぃぉいおいっ……にいちゃん?◎▽◎;』
『>>>──ふぅ────…… 』
ぼくの父さんは、
煙草を やらない人だったけど。
何かの景品で貰った、
オイルの入っていないジッポを。
なぜか、とても大切にしていて。
たまに、手遊びをして、
母さんに、怒られていた。
父さんは、ジッポのフタを、
・・────キィイン・・!!
〘++++++・・・!〙
『──か、かっこょ!▽』
って、人差し指で、ピストルを撃つみたいに、
閉めるのが、上手くてさ。
子供ながらに、かっこいい、
ってさ、思うじゃん?
はは。
そりゃ、
練習するよね。
ジ、ジ・・──……
『>>>──もう、会えないん、だろうなぁ…… 』
水位の低い、プールに、飛び込む。
────パチャんぅっっ!!
・・・・・。
──バチャ・・・。
あるく。
──バチャ・・・。
──バチョ・・・。
──バチャ・・・・・。
〘++++++・・・ぁ・あなた・・・〙
『>>>いいジッポだね。へぃ── 』
ズボンが浸る、ゃーな、感覚と、
煙草の煙を、吟味しながら、
キューカさんに、ジッポを返し・・・、
つーか、投げた。
──ピンっ・・・!
〘++++++うわっ・とととぉお・・!?〙
『>>>……二度と吸わね。まっず……!!』
〘++++++──ぁ"あんゥッッ!?!?╬〙
恩師の娘さん、キレ散らかす。
〘++++++っーか・ジッポ・投げないでよねッ!?
++++++水んナカに落ちたら・
++++++どうすんのよッッ!?////〙
『>>>こんな感じなのか・・・。
>>>人が吸ってる時の においは、
>>>あんまし、嫌いじゃあ、
>>>なかったんだけどなぁ──』
キューカさんに向かって、
左手を、差し出す。
〘++++++……?〙
『>>>剣、借りるよ』
〘++++++──……えっ!?〙
キューカさんが、おどろく。
冷や汗か、しぶき か。
よく分かんない水滴が、
タラリと、する。
『──に、にいちゃん……▽
──ゃ、やる気かぃ……?▽』
『>>>だぁれが、にいちゃんだ。
>>>ホラ、さがってろよ。はやく』
〘++++++……、ぇと、……でも〙
『>>>はぁやーく』
手を、出す。
〘++++++……、……ん。〙
キューカさんは、
何やら、言いたげだったようだが、
しばらくすると、
"水のロングソード"の柄を、
ぼくに、差し出した。
濡れている服を、
あまり見ないように、目線を、そらす。
〘++++++……、えろガキ。///〙
アナライズ積層体で造られた刀身は、
彼女の性質に引っ張られたのか、
まさしく見た目は、"ウォーター・ソード"、
って感じに、なっている。
──だが、ぼくが。
左手の義手の方で、受け取った瞬間──、、、
『>>>"時"は、"金"なり、か── 』
──それは、黄金に、凍りつく・・・!
──パキ・・・ッ
────バギキっ・・ぱきぺき・
──────キ・・・ィィイんん・・・──!!!
『──すっ、、、げ……!!▽』
〘++++++は・はやい・・・っ!!
++++++あっという間に・
++++++もぅ……高密度化した・・・!!〙
そして、下を、見下ろす。
まったく──アホらしい。
何が、悲しくて、
初めての煙草を吸いながら、
水の抜けた、でっかいプールの中で。
ズボンを半分、濡らしながら、
水没しそうなコピー機を、
剣で、タコ殴りにせにゃあ、
ならんのだろうか。
いみ、、、わっかんねーよな?
──あと、さ。
『
>>> ── ぼくは、
さがれって、
いったよな?
』
剣は、光で、できている。
それは、時のチカラを、
はらむの、だから────。
『──あっ、待って!?▽
──まて待て待てまてまてまてっっ!!?!?▽』
〘++++++──ちょ・ま・・・!?
++++++ひ・ひぃッ・・・!?〙
別に、いま。
ぼくは、殺し屋の目なんか、していないさ。
────ホント、だぜ?
『>>> ──" 管理者権限 " 』
目の前に、" 金色の砂時計 "が、
見えた、気がした。
時が、止まったなら。
水は、キズつけられる。
だから、こんなふうに。
こまぎれ、なんだ──── /
カンテンみたいに、斬れた、
水面のキズらは、
さすがに、ひと息ついたら、
ぜんぶ、とじちまった。
だが、消えないキズもある。
あたりまえの、ことだ。
〘++++++・・・・・・・・・・〙
『──・・・・・・・・・・・▽』
──ポちゃン!
『>>>ほら、これだろ、接続端子。
>>>んだよ、ちゃんと中に、
>>>あるじゃないか!』
──ポちゃン!
──ポちゃン!
ポチャン、ポチャン、と。
飛び散った、ガラスのような破片は、
しこたま、プールの中に、落ちまくる。
『>>>これなら、
>>>コントローラーでも作って、
>>>接続、可能だろぅ?』
〘++++++・・・・・・・・・・〙
『──・・・・・・・・・・・▽』
『>>>……なにを、抱き合ってるんスか』
『──な……なに、いまの……?▽
──ど……どぉ、やったの……?▽』
〘++++++積層・・・防壁・・・、
++++++だったで・しょ・・・?〙
『>>>だから全部、斬ったじゃないスか』
『──でっ、でも!?▽
──空間圧縮式、だったし……!?◎▽・』
〘++++++たっ・たとえ・斬れたとしても・・・!?
++++++発生装置が・・・!?〙
『>>>だから、コレでしょ?
>>>さすがに分かりますよ!』
黄金の剣に、四角い破片が、
挿さっていた。
こいつが、なにかのプロテクトを、
作り続けていたっぽい。
パキ。
あっ、、、割れちった。
──とぽぷんっ・!
透明の破片は、
水の中だと・・・見えない。
『>>>……。プールに破片って、
>>>考えたら、めたくそ、
>>>あぶないんじゃないか……?』
しまった。
これは、やったわ。
クラウンちゃん、呼べないじゃん。
『──にいちゃん、あんた……◎▽◎;
──じぶんのヤバさを、わかってねえよ……?▽』
〘++++++いま・・・"斬れない時間"を・
++++++斬ったのよ・・・・・?〙
なんて?
『>>>ぁー、あー、あー……!
>>>破片、拾おうとすると、
>>>袖口が、濡れるじゃないかー!!
>>>よく、見えなぃし……。
>>>うわー、さいあくだぁー!』
『──す、ずげぇ・・・▽
──ホントに端子、露出してる……▽
──ぁ・・・暗殺者、ハッカー・・・??▽
──なに? どうなってんの・・・???▽』
〘++++++なに・この・
++++++正確な・破壊・・・。
++++++ぇ・こわ・・・。
++++++ぁ・ありえなくない・・・?〙
『>>>──ちょっと! あんたらなぁ!?
>>>少しは、手伝ってくださいよぉ!!』
プールの中のガラス探しは、
けっきょく、水を抜いて、終わらせた。
キューカさんと、アップルさん?
その剣、分析してないで。
さっさと、印刷機、バラせ。しばくぞ。
先輩の絵、描きたかっただけです(^^♪