とむらうしかた 下
しっとり ひとり回です。
『>>>……』
まるで。
夜明けのようなマンションの一室で、
カネトキは考える。
我らが 彼女たち は、とうとう、
裸の謁見の ことに ついては、
ひと言も、言及しなかった。
心配そうに見上げるクラウンに、
「>>>少し、一人にしてくれ」と告げ、
彼は、ちがう部屋へと、移動したのだ。
この摩訶不思議な空間は、
アンティとマイスナが、
箱庭内に創り出した、
第一旧世界を再現した、
積層住居オブジェクトである。
第二改世界の遺物である、
多元現光体を、
NPC群であるはずの彼女たちが、
ここまで自由に組み替えること自体、
異常なのだが。
『>>>……』
背もたれが倒れたゲームチェアに、
カネトキは、ぐったりと、
座っている。
三枚の板だけで作られた、
木製のように見える、
ミニテーブルの上に、行儀わるく、
エアコンのチャンネルと共に、
彼は、両足を乗せ。
少し開いた、
グレーの遮光カーテンから射す、
模造太陽の祝福は、妙に、白っぽい。
白 。 灰 。 黒 。
無彩色の、落ち着いた明暗の部屋。
──ここは。
今、この空間は、、、
第三新世界と、呼べるのだろうか?
『>>>……おそらく。
>>>今、この世界で。
>>>もっとも有名な、死の王が言った、
>>>3つの忠告・・・』
カネトキは、ベッドのようになった、
ゲームチェアの上で、目を閉じ、考える。
リラックス、しているように、見える。
『 >>>……" ぜんぶで、4つ、いる " 、
>>>……" なんとおり か、方法は ある " 、
>>>……そして────… 』
カラーの無い部屋で。
金色の前髪に隠れた、
ライトグリーンの瞳が、ひらかれる。
輝ける、若葉のような、ひとみ だ。
『 >>>……" 香を火に焚べ、桜に水を与えよ。"
>>>──か……── 』
わかっている。
カネトキにも、わかっている。
早計に、なるべきでは ない。
だが、もし──。
『>>>……もし、
>>>後輩ちゃんと、紫電ちゃんが、
>>>いなくなっても……
>>>旧神たちが、消滅しない方法が、
>>>確立できたら……。
>>>……もし、
>>>ぼくと、先生の、
>>>" ナナノカミ "の権限を、
>>>誰かに、スライドできれば──… 』
思考は、自由だ。
どんな、良心も。
どんな、悪行も。
やらないのであれば、
ただ、そこに、あるだけだから。
心は、そのままでは、
カタチに、ならない。
この、幻影とは、ちがうのだ。
『>>>先生の"水曜神"は……、
>>>うまく行けば、
>>>元々の、Q3に……。
>>>ぼくの……"金曜神"は……、
>>>だめだ、ちくしょ……、
>>>キングマンも、宇宙にいる……。
>>>ぁぁぁ……』
思考。
それだけで問題が解決することが、
どれだけ、あるのだろうか。
心の、ナカ、だけならば。
でも、それだけでは。
誰かを、助けることなど、
出来ないのだろう──……?
『>>>……』
限界まで倒れた椅子に、
寝っ転がりながら、
自分の、手のひらを見る。
『>>>……黄野 金時。
>>>お前は……何になった?
>>>"香"なんて、死のイメージを、
>>>依り代なんかに、
>>>選んじまって──…… 』
仮面。
かれは、仮面だ。
金色の、まじないの、かめん。
『>>>……" 火に焚べよ "、
>>>って、何だよ……はは。
>>>今さら、焼身自殺でも、
>>>しろってか。
>>>は、わっかんね……』
苦笑は漏れるが、
自暴自棄には、なっていない。
『>>>……』
心を支える仲間が、もう、多すぎる。
とうとう理性が、
冷静な自分を、後押ししてしまう。
『>>>……考えろ。
>>>確定している、こともある。
>>>後輩ちゃんと紫電ちゃんは、
>>>"身体"の代わりは、
>>>正規のものが ある』
まちがい、ない。
あの死神は、あの地で、眠っている。
自分さえ居なければ、
永遠に なるであろう、死の、眠りを──。
『>>>元々の、身体なんだ。
>>>ゼッタイに、後輩ちゃん達より、
>>>馴染むさ・・・。
>>>だから、問題は、ぼくだ。
>>>仮面たちの、ほうなんだ──…… 』
し、という、からだ。
かお、という、かめん。
それさえ そろえば、
ことば、という たましい は、
もどって、くるのだろうか。
『>>>──……。
>>>"死"は、止まっている。
>>>生きていた ぼくが、止めたから。
>>>そして、それが、
>>>シゼツの、スイッチになって、、、。
>>>でも、たぶん、
>>>あのままじゃ、いけない』
若草色の瞳から、
とうとう、朝露のような光は、
ついに、失われは、しなかったのだ──。
『>>>……"死"を、殺したら、
>>>どうなるんだ?』
まるで、ヒントのような、
言魂を、いって。
『>>>──はっはは……わっかんね……── 』
────ギシリ!
と、彼は、立ちあがる。
横の、小さな タタミの部屋に、
仏壇が見えて。
死者は、サムズダウンした。
『>>>くたばりやがれ、だ。
>>>はは……やれやれ、だ。
>>>はぁ、、、そもそも、桜の香を、
>>>顔に するって、どうすんだ。
>>>桜の木の下に、死体でも埋めて、
>>>火でも、つけるのか?』
苦笑の問いに、答えるものなど、いない。
だって、これは、
心の お話、なのだから。
『>>>……ふん。まだ、ぼく、
>>>ちょっとは余裕、あるかな』
あらためて、部屋を見回すと、
随分と、古いゲーム機が、置いてあった。
『>>>部屋とは、不釣り合いだなー。
>>>ふ、誰の記憶が、混ざったんだか──』
彼は、微笑む。
さて、そろそろ、
行かねば、ならない。
ページを めくらない本は、
思うだけの心と、同じなのだから。
だからこそ。
ここまで、読んでいるからこそ。
ここは、ココロでは、ないのだ。
『>>>くっくく……!
>>>できれば、先生とは、
>>>ひとつには、なりたく、
>>>ないんだよなぁー……。
>>>どっかの腐女子の、元・木の神さまが、
>>>アホみたいに漫画、
>>>重版、しそうだもんな?』
カネトキは、パソコン机の上に あった、
ヤバそうな、開封済みの、
ポテチの袋を掴み持ちながら。
その部屋を、スタスタと 出ていった。
きょうも思いつきですたー(´∀` )










