やべえぞくるぞ!!
流路圧縮回線:№-6111-1116 ▼|
ヒゲ:「──裏が取れたぞ、アンティ!」
アン:『──ひぃげぃどぉおしゃぁぁあああ
あああああんんんんんん!!???
どぉおおなって、るんでひゅきぁあああ
ぁぁあぁぁぁァァァ〜〜〜〜!?!
?!?!?!?』
マイ:『ワワワワワタシタチノノノヒヒヒ
ヒミツノハナゾゾゾノノノノッ……!!
ヤヤヤヤラナキャヤラナケスケスケス
マモルマモルマモガガガガガッ……!!』
ヒゲ:「マイスナ、落ち着け……。
"手紙の配達"の依頼をしたのは、
本来、あの手紙を配達するはずだった、
商人の"妻"だ!」
アン:『な、なんですか、そりぇェ~~……!
あんな手紙、私たち、依頼されて、
ましぇんでしたよぉぉ~~……!?』
マイ:『……私たちが、
認知していなかった、"手紙"……』
ヒゲ:「ああ、そうなる。まぁ、聞け!
こっちの者に、詳しく、調べさせた!
その手紙は、ドニオスの旅行ギルドが、
"急がない手紙"として、
二週間前に、とある商人に、
依頼した物だ」
アン:『に、にしゅうかん、まえ……!』
マイ:『随分と……のんびりしていますね』
ヒゲ:「いや、まぁ、お前たちの配達速度は、
突出し過ぎているからな。
どちらかというと、
常識的な期間の設定だとは思う」
マイ:『……そうだとしても、
私たちに依頼が回らなかったのは、
少し、不服ですね。
"配達といえば、私たち"、
くらいには、思われていたと、
自負していましたが』
アン:『ぁー、それは……そうかも。
ま、まぁ、カーディフ宛の輸送が、
増えすぎるのも、
困っちゃうケドさ……?』
ヒゲ:「まさに、ソレだ。
俺たちは、気を使われたんだよ」
アン:『……え?』
マイ:『よく……話が見えません』
ヒゲ:「実はな、旅行ギルドの奴らとは、
まぁまぁ、懇意なのだ。
ドニオスの、旅行ギルドのマスターは、
ディッキスギー、
という御仁なんだが……」
アン:『……デキスギ??』
マイ:『……出来すぎ??』
ヒゲ:「……"ディッキスギー"、だ。
ちょうど、一か月前に、
本人から直接、こう、聞かれた。
"キミの所のレター・ライダーは、
西の端まで、配達は可能なのか?"
──とな」
アン:『……──!!』
マイ:『それって……、
カーディフのこと、ですね?』
ヒゲ:「ああ……。
俺は正直、ドキリと したぜ……。
その時点で、お前たちには、
"大量の結界柵"の配達を、
任せるかもしれんと、
考えていたからな……。
だが、あまりにも、
カーディフへの配達の機会が、
増えてしまえば……、
お前たちの正体に、勘づく者が、
早々に、現れかねん。
いくら、鎧と仮面が、
あるとは言え、"アンティ"という、
ファースト・ネームは、
大公開しちまってるからな」
アン:『っ! ひぇぇ……』
ヒゲ:「マイスナに至っては、
"紫電"の名を隠すのを、
優先するあまり、"オクセン"の方まで、
名乗ってしまっているんだろう?
"大容量の配達"を引き受けている、
"二人組の少女"、その共通点に、
目を付ける者が、その街に現れたら……」
マイ:『ぅ"……』
アン:『り、旅行ギルドのマスターさんには、
どう、答えたんですか……!?
頻繁に、カーディフの街へ、
配達に来るってのは……その……!』
ヒゲ:「少し……言葉を濁しておいた。
" 可能かも しれないが、
あいつらも多忙な身だ。
しばらくは、四大都市の内に、
留めておきたい "、
────とな」
アン:『ヒゲイドさん……』
マイ:『……、……。それで……、
旅行ギルドの、
デキスギさんの反応は?』
ヒゲ:「──" そう、か…… "と、
いったような、感じだった。
ただなぁ、
同じギルドマスター仲間なのだ。
本当に、緊急の配送が、
必要だと言うのなら、
受けるべきだとも思った。
だから、聞いてみたのだ」
アン:『それは……』
マイ:『なんて、聞いたの?』
ヒゲ:「" 助けが必要か? "──と。
そしたら、
" いや、そういう訳じゃない。
こちらで何とかするさ "
と、返された。思えば、
その手紙のことを、
頼みたかったんだろう」
マイ:『……じゃあ、あえて、
私たちへは、依頼せずに』
アン:『さいしょは、商人さんに、
依頼を、した……』
ヒゲ:「ああ、そういう事になる。
大事な手紙だったという事で、
一番、信頼のおける商人に、
カーディフの街への手紙を、
依頼したようだ。
かなり、前もって、
期間・余裕たっぷりにな」
アン:『それが、二週間前……』
マイ:『でも……手紙は』
ヒゲ:「ああ。イレギュラーが起きた。
依頼された商人と、その息子が、
流行り病になっちまってな。
なぁに、結果から言うと、
胃腸風邪、ってヤツだったようだ。
すぐに治ると踏んでたようだが、
思ったより、長引いたらしい」
アン:『カゼ、ですか……』
マイ:『その頃、ちょうど、気温が、
涼しくなってきた頃だね』
ヒゲ:「商人の夏場の旅路に、
氷の魔石は必須だからな。
特に、馬の手綱を直接、
握る御者役は、
天気の"ご気分"に、
晒されっぱなしだ。
腹のポケットなんかに、
そのまま氷の魔石を、
入れたりもする。
そこに、急に温度差が、
激しくなった昼夜──。
油断していたんだろうよ。
後は、まぁ……わかるだろう」
アン:『そんな……アっツいからって、
おナカ冷やしちゃ、
ダぁーメだっての!』
マイ:『けっきょく、
どうなったんですか』
ヒゲ:「商人と、その息子は、
夫人の甲斐甲斐しい看病によって、
回復に向かっている。
ただ、時間は かかった。
彼女が旦那の手荷物から、
依頼された、
"旅行ギルドの手紙"を見つけた時には、
すでに、配達期限の三日前だった」
アン:『うえぇ……』
マイ:『商人の荷馬車では、
間に合わないですね』
ヒゲ:「その通りだ。ドニオスから、
カーディフまでは、
馬、単騎なら二日、
荷馬車なら四日ほどは、かかる距離だ。
商人の夫人には、騎馬のスキルは無い。
彼女は、お前たちの噂を知っていた。
藁にも縋る思いで、
冒険者ギルドに依頼に来たようだ」
アン:『でも、私たち、その手紙、
依頼されませんでしたよ!?』
マイ:『ヒゲイドさんに依頼された、
結界柵の木箱の中に、混入されていました』
ヒゲ:「商人夫人から、手紙の依頼を受けたのは、
U.B.だ。もちろん、あいつは、
お前たちに、正式に依頼しようとした。
だが、商人夫人は、少し、
心配性な性格だった」
アン:『しんぱいしょう?』
マイ:『……彼女は、なんて言ったの?』
ヒゲ:「"その手紙は、主人が配送を、
依頼されたものだ。
できれば配達記録を、
残さないで欲しい"」
アン:『えええっ!』
マイ:『旦那さんを、かばったんだ』
ヒゲ:「お前たちに手紙を依頼すれば、
こちらのギルドに、記録が残る。
心優しい新人受付嬢は、悩んだ挙句、
学会資料の作成に忙しい、
先輩受付嬢に、相談した」
アン:『……まさか』
マイ:『そういう……ことですか』
ヒゲ:「結界柵の木箱に、
旅行ギルドの手紙を、
ぶちこんだのは、キッティだ。
すまん……こちらの不手際だ。
ユービーには、軽く、
お灸を据えておいた。
情に流されて、
正式手続きを取らなかったのは、
褒められたことではない」
アン:『ぅ、うーん……』
マイ:『気持ちは分かります。
キッティには、なんと?』
ヒゲ:「本来なら、キッティにも、ひと言、
言うべきなのだろうが、
今回の王都学会の資料は、
あいつに任せ過ぎている……。
この一週間、あいつは、俺よりも、
寝ていない。
やれやれ、普通の手紙なら、
あまり問題には、
ならなかった のだが……」
マイ:『いつだって、小さな要素が集まって、
なにかが起きる』
アン:『……わかりました。キッティには、
どうか釘を、刺さないであげて。
大事な仕事中なんでしょう?
他の心配をさせたく ありません』
ヒゲ:「……すまんな。
お前の学院に務めている、
スネイオという魔術師は、若い頃、
かなり有名な冒険者だったようだ。
旅行ギルドのディッキスギーとは、
旧知の仲らしくてな。
その学院は、
件の、"八脚馬"の家畜化に、
継続的に、資金援助を行っている。
この件には、従獣ギルドも絡んでいるようだ」
アン:『スネイオ先生が……』
マイ:『大きな業務計画だったんですね』
ヒゲ:「"八脚馬"の商業利用の件は、
俺も、知っていた。まさか、
実用、一歩手前だったとは……くそ。
あのデカい手紙が、旅行ギルドの物だと、
分かっていれば……コソッと、
中身を確認するくらいのことは、
したんだが」
アン:『あはは……ま、まぁ、
どんな場合も、手紙の中身を、
見るのは、半分、アウトっつーか……?』
マイ:『でも、困りましたね。
アンティと同学年というと、
かなりの人数になります。
この人数を、ドニオスへ、
安全に運ぶなんて、できるんでしょうか』
ヒゲ:「結論から言うと、可能だ。
新型の旅行用の荷馬車には、
街の結界柵に使われるものと、
同等の結界術式が彫刻されている。
まったく、金を かけたもんだ……。
車軸の改良も行われている。
二日、とは、いかんだろうが、
意外と速いかも──」
ヤン:「──ヒゲイドのダンナ!
旅行ギルドの動向、分かったぜ!!」
ヒゲ:「──ッ!!」
アン:『!!』
マイ:『!!』
ヒゲ:「こ、こら!! 執務室には、
ノックをしろと!」
ヤン:「あん? 今、隠したの、
ギルド球か? へへ、なんだよ♪♪
ギルド同士の、ヒミツの お話、ってかァーっ?」
ヒゲ:「──すぐ戻る。
おぃ、部屋の外で聞こう!」
ヤン:「へぃへぃ♪ ヤボ な詮索は、しねーよ♪」
アン:『……今の、女の人の声、ヤンさん、だったよね?』
マイ:『ヤンさんって……ギルドの解体職の?』
────。
ヒゲ:「──アンティ! マイスナ!
今すぐ、その街から逃げろ!」
アン:『──な"っ!?』
マイ:『どういう事ですか!?』
ヒゲ:「ディッキスギーのヤツ、三日前に、
スレイプニルの荷馬車連隊を、
カーディフに、送ってやがる!!」
アン:『え"っ!?』
マイ:『なんで!』
ヒゲ:「タイムラグが、あり過ぎたんだ!
いや、図らずも、ちょうどいい、
タイミングに、
なっちまったと言うべきか……。
資金提供を行っていた学院側が、
今回の申し出を断るとは、考えられん!
お前たちの街に、
スレイプニル連隊が着き次第、
強制的に、"学年旅行"が始まっちまうぞ!」
アン:『そ!? そんな事、急に……!』
マイ:『あと、一日くらい、余裕が、あるんじゃ……?』
ヒゲ:「──スレイプニルは、嵐の力で、
荷馬車を地面から、
押し上げながら走る!!
お前たちは、その学院では、
冒険者、一号って、扱いなんだろう!!」
アン:『そ、それが、なにか!?』
マイ:『ま、まずいの……?』
ヒゲ:「旅行ギルドの連中は、当然、
ほとんどが、ドニオス在住の者だ!
ひっぱり出されて、
挨拶でも、されてみろ……!
顔見知りなら、イッパツでバレるぞ!」
アン:『 げっ!!? 』
マイ:『 あばばばば…… 』
ヒゲ:「まだ、昼前だな……!?
とっとと、エルフの村とやらに、
行っちまえ!!
王都の、一部の貴族の様子が、
なにか……おかしいのだ!
今、大量の人数に、
お前たちの地元が割れるのは、
避けておきたい!」
アン:『 そ、そんなぁ、急に……──あっ!? 』
マイ:『……ぃ、いま、馬の声、聞こえなかった……!?』
ヒゲ:「あぁ……急がんかぁ……!!
もし、お前たちが、学友たちに、
ドニオスの案内など、頼まれて みろぉ……!
素顔でドニオスに入ったら、終わりだ!
住民、店舗、冒険者……!!
あらゆる所から、
あっという間に、バレまくるぞ!!
この、有名人めがあああああああああああーっ!!!」










