タイヘンさんの手記 上 さーしーえー
Switch版のね、スカイリムをね、
キャラメイクやり直して、
やってんすよ((´∀`*))
あの日の事を、
よく、覚えている。
ほとんどの、14、5歳の生徒が、
集まっていた事もあって、
学院の、白の大教室は、
たいへん、ガヤガヤしていた。
わたしは成人してから、
カーディフの学院に、
里帰り、した事があるが、
あの、小さな街に、
よく、あれほどの大教室を、
作ったものである。
もちろん、王都にある、
かの有名な、ヤキソ・バパン大学の、
天楼教室ほどの大きさは、
無いだろうが──。
わたしが、大人に なってからでも、
あの教室は、たいへん雄大だったのだ。
ふふ、話が逸れた、
何が言いたいかと言えば、
あの、少しばかり、
娯楽の少ない、小さな街で。
あの教室は、たいへん、
素敵な場所だったのである。
蟻地獄の巣のような、
火口のような、素晴らしき階段座席……!
後ろの席は、天井に手がつき、
ふふ、地獄、などと言ったが、
丁寧な石レンガが基礎となった、
白くも見える段模様は、
数少ない、カーディフの街の、
観光名所だったに違いない。
飲み物を持参するように と、
事前に通達があり、
生徒主体の会議の内容は、
気には、なったが。
小さな街には、子にとっては、
変わり映えの無い日々も多く、
街の祭りでもないと、
ここまでの人数は、集まらない。
子供だった わたしは、
もれなく、皆と同じように、
隣の仲の良い級友たちと、
たいへん、しゃべりに、
しゃべっていた。
たいへん騒がしく、
すると、例により、
新年の挨拶のように、
スネイオ先生が、
長杖を持って、現れた。
ゆっくりと、中央台に行き、
ロング・スタッフで、
床を、「コツ、コツ、コツ」と、
鳴らすと、瞬く間に、
静かさが伝わる。
当時からも、スネイオ先生は、
生徒より、たいへん慕われており、
この「静寂鳴らし」で、
教室が静かに ならなければ、
美しい魔法の球体が、
私たちの目の前で、
ダンスを始めるのを、
全校生徒、皆が知っている。
大人になって、知ったのだが、
彼は、魔法職の間では、
たいへん有名な方で あったらしい。
四大属性使いで、
ぜひ、学院の長に、との声もあったが、
「女性の目線で気づくことも多かろうて」
と、ドーラ校長へ、礼を尽くしたと言う。
噂から思うに、若き日の、
スネイオ先生と、ドーラ校長には、
何か、ロマンスが あったようである。
また、盛大に話が羽ばたいたが、
すると、スネイオ先生は、床への、
3回のノックだけで、大教室を、
あっという間に、
自分の鼓動だけが聞こえる空間に、
してしまった。
杖を持った、いかにも魔法使いの、
といったような、風貌のまま、
長い、トウフヤギのような、顎髭を触り、
「オホン、」と、声を、鳴らしたと同時に──、
「す、すみません」「おくれました」と、
ふたりの少女が、
あわてて、教室に駆け込んできた。
その二人は、
顎髭を触る魔法使いを見て、
ギョッ、と、立ち止まる。
魔法使いは、眉を上げた。
「これ、小さな未来たちよ。
数分とはいえ、遅刻は遅刻。
時間は、守りなさい」
「す、すみませんでした……!
スネイオ先生、テストの後、
お昼を食べて、中庭で、
ウトウト、してしまって……」
「ご、ごめんなさい……、
とても、いい陽気で、
ふたりとも、寝てしまって……」
「ううむ、仕方あるまい。
太陽を、さばくことは、
このスネイオを、もってしても、
恐れ多いよのう」
静かになった教室に、
また、さざ波のような、
しかし、いやらしくない笑い声が、
わずかに、ささやいだ。
「で、では……」
「ええと、どこに座れば……」
わたしも、もちろん「金さじ」という、
女の子の事を、よく、知っている。
だが、この時の彼女は、
あの、よく、
男子と追いかけっこをしていた、
かつての姿とは、かけ離れた──、
ものであった。
あの時、わたし達の中で、
唯一、彼女だけが、隣街へと、
巣立っていた。
思えば、恐らく、
恋の輝きを知っていたに、
違い、ない。
「あっち、すわろ!」
「うん!」
慌てて、階段座席を、
駆け上がろうとする二人に、
スネイオ先生が、
まったく、いつも通りに、
待ったを、かけて──。
「これ、待ちなさい。
失敗をした時ほど、
礼を尽くさねばならん」
「えっ!?」
「ど、どうすれば」
「謝罪は、受け入れよう。
ただ、この人数だ。
挨拶を、なさい」
「「 ……!? 」」
金さじと、あの子は、
少し、目が点に、
なったようだが、やがて。
「あ──、アンティ・キティラ」
見慣れぬ、スカートの端を、
ちょこっと、つまみながら。
「ええと……」
「もちろん、君もじゃ」
金の、御礼の後。
「ま──、マイスナ・オクセン」
「ふむ、よろしい」
銀の、御礼の後。
ふたりは、紅い頬のままに、
あわてて、空いている席に、
すっとりと、収まった。
スネイオ先生。
「知っての、とおりじゃ。
よい、盟友だと聞く。
参加してもらうことにした。
皆、穏やかに迎えたまえ」
思えば、彼女たちの近くの者は、
ラッキーだったに、違いない。
少なくない何人かが、
彼女たちを、目で追った。
あれほどの変貌を、
「女は化ける」という事を、
同年代の男子・女子、共に、
おおいに、実感しただろう。
ただ、わたし達の年代になると、
着飾り、また、自己を出す者もいる。
彼女たちの美貌は、ゆっくりと、
わたし達へと馴染み、
あまり、目立たなくなった。
少しだけ、騒がしさが戻り、
しかし、それは問題には、
ならなかった。
「ふむ──── 」
スネイオ先生は、
わたし達が、すぐに、
静けさを成した後にも、
陽射しの教室で、
大きく、言葉を待った。
「カーディフを、誇りに、思っておる」
それは、不思議な呪文のように、
皆の印象に、のこった。
「この、抱えられるながらも、
しかし、大きな教室が作られた時。
ワシらは、これらの椅子が、
本当に見えなくなるのか、と、
心配を、したものじゃ。
しかし、それ見たことか──」
魔法使いが、教室の、
わたし達を、見渡す。
「──今、西の果てと言われた、
この街の大教室は、
君たち、若者で埋め尽くされ、
この、輝ける未来を作るのは、
間違いなく、君たちである」
しっとりとした物言いで、
スネイオ先生は、続ける。
「じゃが、知っての通り、
この街より、ひとたび西へ行けば、
豊かな緑の後、"崩海"と言われる、
人、相容れぬ大地が、広がっている」
もちろん、実際に、"崩海"を、
見た事のある者など、
わたし達の中には、
だれ一人、居や、しなかった。
「──よって、じゃ。
より、卑屈な見聞を、すれば。
我らは、君たち、未来ある若者を、
この、西の果てに、
閉じ込めているとも、見える」
今でも、はっきりと言えるが、
わたしは、故郷を、愛している。
ようするに、スネイオ先生の言葉は、
話を引き合いに出すための、
例え話、でしかないのだ。
「──そこでじゃ。
ミス・キティラ。ミス・オクセン。
ご起立、ねがいたい」
「「 はん!? 」」
皆の視線が、
麗しき二人の少女に、あつまった。
今日は、ここまで。










