キティラ家の朝
「ぁ、アンティ、ここ、
アンティん家だ!」
「あっ! やべ」
朝から、ヤバかった。
ここは、地表40メルの高さじゃ、
ないもんね……。
「おっぱじめる所だったね……」
「おっぱじめるって、言わないの……///」
ガマンできた私たち、えらい!!
「……で、マイスナ、これ、
どう思う……?」
「ぅん……」
マイスナの銀のティアラが、
……ずり落ちている。
デロン、って、なっている。
意匠が素晴らしいだけに、
残念だ。マイスナのティアラも、
私のクラウンと一緒で、
わずかに、浮力を持っている、
んだけど──……?
くるくる、コツコツ、
くるくる、コツコツ。
「あて、あてて」
「頭に、コンコンしてるね」
私の頭の上の、寝取られ太陽神が、
フラフラと回転し、
フツーに、頭を小突いてくる。
なにすんじゃー。
「……クラウン、クラウン、なんなの。
王冠、頭に、スレてんだけど……」
『────Zzzzz……☼』
「ちょ、コラ! そ、そのまま、
回んないでっっ。おっ!?」
髪、まきこむ、、、だろがぁーっ!!
「……ローザ? ローザのティアラ、
顔の前に、デロンって、
なってるんだけど……」
〘------Zzzzz……は;はいぼーりゅ……☆〙
「今日の精霊王は、ダメだなー」
どうやら、神々は、
おネム、くそネム らしい。
「せんぱーい、せんぱーい、
あさやぞぉー」
「せんせぇー、せんせぇなのに、
おねぼう、めっ、だよー」
『>>>……Zzzzzz〜〜』
〘#……Zzz……………〙
仮面を、ノックしても、
応答が無い……。
「……なんだぁ? 徹夜で、
ハッスル……したのかな……?」
「なんだってー! 私とアンティが、
ガマンしてるのに、ずるいぞーっ!」
と、思ったのだけれど、
どうやら、箱庭メンバーが、
ほぼ、全滅のようである。
と、思ったら、ベッドのそばの、
小さな歯車から、悪霊が出て、
私たちをスケッチしていた。
『 にょろ、にょろ。にょろぉ〜〜ん♪♪ 』
〜〜カキ、カキ、カキ。
「にょきっとな……」
「くゆぅ……Zzz」
うさぎの勇者だけが、
ベッドのフチに立ち、
早朝の私たちを、守護っていた。
うさ丸、なぜ殴らない。
いや……そうか、
ここで、本気でコヤツを殴ったら、
私の実家の壁が、崩壊するもんな……。
「にょきっとな……」
「気にすんな。よくやった」
「ええんやで」
褐色☆暗殺メイドさんズには、
スマンが家の中には入んな、と、
厳命してある。
ホラ、ドニオスの塔の家と違って、
ちと、せめぇから……。
あと、流石にメイドさんを目撃されると、
言い訳が、面倒である。
上手く、隠れてくれているようなので、
一安心だけんども。
『 にょろにょろ。にょろり〜〜ん・・・ 』
お絵かきゴーストは、
スケッチ帳を見ながら、
首を、ひねっている。
私たちは、ハダカである。
もっと、首が大回転するほど、
ヒネってやりたい所なのだが。
「にょきっと、にょきっとな、
にょんにょん、にょきっとな……??」
うさぎの勇者が、こちらを向き、
なにか、苦言をタレてきた。
……なになに?
なんで、私たちも、なにか、
着て、寝ないのか……ですって?
「あのねぇ……あんなエロ下着、
着て寝たら、興奮しちゃうでしょ……!
父さんと母さんにバレたら、
どうすんの……!」
「そうだよ……! すっごく、
興奮、するんだよ……!
でも、普通の服きたら、
寝つき、わるくなっちゃうし……」
「に、にょーん……」
「くゅくゅくゅ……Zzz……」
全裸だからこそ、
抱きつき&拘束キス ✕ 7時間で、
済んでんのよ。
おわかり?
「……にょーっき」
……その視線を、やめれ!
さて、はだかで、ベッドの上に座る、
私とマイスナは。
今も、一回も許可した覚えのない、
裸婦画スケッチのモデルとして、
アホ幽霊に、晒されている。
……実家で、殴り倒すワケにも、いかねぇ。
有益な、情報源としよう。
「……おい、ラヨチ……じゃなかった、
ドエロ幽霊さん」
「いつも絵のモデルになってる代わりに、
質問に答えろ、緑ぼうし」
『 にょろりん? 』
「……他のみんな、なんで、寝てんの……?」
「ティアラが、直しても、落ちてきます……」
お絵かきゴーストは、
空いている前のページに、
さらさらと、メモを書いた。
" なんか、調べ物、
たいへんだった、みたいですよ "
「調べ物……?」
「徹夜で、って、ことかな」
『────Zzz……とーさん……☼』
『>>>……Zzz……すめさんを、くださ……zz……』
……何やら、イレギュラーが、
夜のウチに起こったっぽいが、
報告が無い分、あまり、
深刻なエラーでは、ないみたいだ……。
「……まぁ、いっか。
今日は、王冠、
髪に、結わえよ……。
落ちてきたら、かなわん」
「聖輪も、髪飾りに、
しよー!」
今日の髪型が、決定しそうである。
『 ニョロ、にょろ〜〜〜〜っ♪♪ 』
「「 ・・・・・ 」」
どうしますか?▼
悪霊を・・・
たたかう(なぐる/もやす/-
さけぶ -チェーンソーを造る)
▼ 絵を見せてもらう
──ピッ。
「……ちょっと、見せなさいよ」
「……今日は、どんなの描いたんですか」
『 にょろりん? 』
ニョロニョロはアホなので、
素直に、スケッチを見せてくれた。
「「 うっめぇ……… 」」
絵の中の私たちは、
幸せそうに、抱きしめ合っている。
シーツも相まって、
まるで、神話の挿し絵のようだ……。
「「 ……////// 」」
『 にょろりん♪♪♪ 』
胸を張るな。
たしかに素晴らしい絵だが、
お前が やっている事は、犯罪だ……。
『 にょろりん! 』
なぜか、お絵かきゴーストが、
描きあがった私たちの痴態を、
両手で持って、私たちの顔の前に、
突きつけてきた。
「な、なんだ!?/// やめぃ!!///」
「わぁっ……!!/// なにするんですか///」
『 に ょ ろ り ん (ズイズイ) 』
「やっ、やめろお〜〜……!!//////
よ、欲情するだろぉぉ〜〜!!///」
「せっ、せっかく、ガマン///
できてるのにぃ〜〜……!!!//////」
「にょきっと、にょんなぁー」
「くゅくゅ……Zzzz」
なんとか、悪霊を、
亜空間へと封印し、
だが、少しだけ、
湿度が上がった。
マイスナが、涙目で、
こちらを見ている。
私も、涙目である。
「……〜〜〜〜っ//////」
「……待って、今、わかるでしょ……///
とまんなくなんよ……//////」
これ以上、湿度を、
上げるワケには、いかない。
だけど、あまりにも、クラクラするので、
服を着てから、一回だけ、
チューしてしまった。
「にょきっと、なぁー!!!」
「「 ── は っ …… !! 」」
うさ丸が止めてくれなかったら、
大洪水だった!
よくやったわよ、うさ丸・・・!!!
「にょんやぁ……」
下の階に行くと、
早々に食堂の下拵えを終えた、
父さんと母さんが、お茶を飲んでいた。
「あら、おはよう♪」
「思ったより、早起きじゃないか!」
「おはよ……ありゃっ、
手伝おうと、思ったのに」
「おはようございます。
おはやいですね」
「ふふふ♪ こういう日はね♪」
「最愛の娘たちが帰って来てたら、
親ってのは、早起きなんだよ!」
「「 ……////// 」」
こうゆぅトコロである。
「な、なに言って、くれちゃってんの///」
「最愛……私もですか///」
さっきとは、違うイミで、照れる。
「今日は、テストでしょ〜〜♪
ちゃちゃっと、ごはん、
作っちゃいなさ〜〜ぃ♪♪」
「学院の生徒総会のほうも、
ふたりで、がんばるんだぞ!!」
そ、そうだった……!!
学年の生徒、ほとんどが集まっての、
話し合い……いったい何を、
話し合うんだろうな……??
「ていうか、最愛の……?///
む、むすめが、帰ってきてるなら、
朝ごはん、つくってくれてたって、
いーじゃん……///」
「ぇ、えへへ……//////」
料理は、好きだ。ドニオスでも、
朝食は、よく作るけど、
照れ隠しに、少し、
甘えて、みたりも、する……///。
「あらぁ〜〜♪♪ なぁに〜〜♪
甘えたさんねぇ〜〜♪♪」
「はっはっ! いやー、俺も、
迷ったんだけどなぁ」
「「 ? 」」
母さんは、日が登りはじめた、
光り射す店内で、
お茶のカップを、置きながら、
言う──。
「ふふふ♪ ちゃんと料理してるか、
テスト、みたいな、もんよぅ♪♪
かあさ……おばあちゃんにも、
しっかり、言われてるんですからね♪」
「そうだな。もう、14年も、
会っていないが……料理だけは、
必ず やらせろって、
唯一、食い下がってたもんなぁ」
「「 …… 」」
マイスナと、顔を、
見合わせる。
父さんは、確か……38歳で、
母さんは、33歳だ。
おばあちゃんとなると……、
50歳くらいかな?
生きているなら、1度くらいは、
お小言、言ってみたいモンだけど──。
「今頃、なに、してんだろーなぁ」
「しらないわよぉー♪ 母さんのことなんて」
「…… 一緒に作ろっか、マイスナ?」
「……うんっ、アンティ♪」
私たちが作った軽食を、
父さんと母さんは、
少しだけ、つまんだ。










