ドニオスの流儀
だだんだんだだん(ง ᵕωᵕ)ว♪(気分)
メッセージに、
from:ヒゲイド
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時間が出来た
夕方に顔を出せ
と、来たので、
アンティとマイスナは、
まぁ、腹をキメて、
ドニオスのギルドに向かった訳だ。
塔の家があるので、
どの道、あそこには、
帰るのだが。
日が傾くまで、
何度か、子供たちの襲撃にも遭い、
やれやれと、アンマイたちは、
劇場幕と聖霊湖での隠蔽を、
とりあえず、やめ、
堂々と、歩くに至った。
二人の足音は、いつもの如く、
凛とした、
邪悪を打ち払うような、
金属の福音となり。
運、善し悪しの、静まりかえった、
夕方の、ギルド内の丸テーブルに座る、
幾多の、老若男女の冒険者たちの、
興味を、大いに惹いた。
「ヒュ〜♪」
「すげぇ」
──キン、ギン、キン、ギン、と。
交互に、丸テーブルの間を、
通り過ぎていくアンマイは、
まるで、歴戦の騎士である。
──と、共に、以前より、
すっきりとした腰まわりの、
左右、上下に揺れる動きは、
言い方はアレだが、扇情的でもあった。
得体は知れないが、
彼女たちの新しいヨロイが、
度し難い技術で練り上げられ、
洗練されている事など、
少し、経験を積んだ者であれば、
一目の瞭然の元である。
ベテランの冒険者たちは、
椅子の上でリラックスしたまま、
酒の入った堀り木のグラスを、
空に乾杯しだしたし、
若い冒険者たちは、
男女共に、顔を紅潮させながら、
少なくとも、外見だけは、
堂々と歩いていく、
アンティとマイスナを、目で追った。
「いいねぇ……人生は面白い」
「イカすぜ」
バチバチにキマった、
誰もが知る絵本の、敵、味方が、
悠然と歩く一興は、
良質の娯楽である。
「来年の祭りが、楽しみだなぁー……♪」
──キン・・・。
──ギン・・・。
その一言で、
アンマイが、急に止まったので、
皆、ドキリとした。
「…………」
「…………」
──……キン、ギン、キン、ギン。
何事も無かったように、
歩き出す。
「ビ……、ビクッたぁ〜〜……!」
「はは! 怒らせたら、
こえぇんじゃねーの?」
「なんか、姫様方の、ゴキゲン、
うかがってるみてぇだな♪♪」
「ハクがついて、いいわねぇ〜〜♪♪」
止まるだけで、一度、
これだけいる、ギルドの冒険者を、
シン・・・とさせられるのも、
面白い。
夕食に、奇妙なスパイスが、
混じったものだ。
カウンターの、天が深い場所に、
ヒゲイドは、いた。
「──よぅ、すまんな。
少し、立て込んでいてな。
ふっ、なんだ、
マントで隠すのは、やめたのか?」
「……うっしゃい///」
「用件……なんですか///」
「何を照れている」
台無しである。
「ああ、やっぱ、照れてんだ……」
「やっぱ、ハズいんだな……!」
「ちょっと、顔、赤いもんね……!」
「「 ……むっすぅ〜〜……/// 」」
「ふん。奥で話そう」
ズシン・・ズシン・・。
キン、ギン、キン、ギン──。
黒い巨人の後を、
輝くヨロイたちが、追う。
酒の、肴となった。
「……特別な、依頼か、なんかかな?」
「そうだろ。昨今、中々いねぇ、
職種だしよ……それに、嬢ちゃんら、
一応、"至高の冒険者"なんだぜ?」
「あのっ……!
前から聞きたかったんですけど、
やっぱり、あの二人って、
強いんですか……?」
「あん? はは、オレらもな?
半年前は、正直……、
見世物みてぇな感覚で、
見てたトコロはある」
「でもなぁ、考えたら、
最初っから、エグかったよな?
ホラ! あの、鬼ごっことか……」
「ははは、あったな!」
「?」
「一度、ドニオスの冒険者、
総出で、クルルカンの嬢ちゃんを、
捕まえようとした事があってな」
「そ、そうで、で!?」
「ああ。理由は、些細なこと、
だったんだが」
「結果は、どうなりましたの?」
「惨敗! 誰よりも、素早い」
「全員で……ですか?」
「すごいぞ、アイツ。
その速さに、あの狂銀ちゃんも、
ついていける、
ってのが、またなぁー!」
「最初はな……みんな、
速さだけかと、思ってたんだよ」
「ええ。でもねぇ──、
あの──"お芝居"。
あなた達も、みたでしょ?」
「……! あれは……凄かったです。
"スキル"ではなくて、
純粋な……"剣技"、でしたよね?」
「"氷の魔法"も、どのような術式で、
発動しているのか……、
まったく……わかりませんでしたわ」
「……"配達"がな、速すぎんだよ。
街道を無視して、森を突っ切って、
最短を行くって、もっぱらの噂だ」
「トレイガーの新人研修、受けたなら、
森を、一直線に駆ける、なんて、
イカれた事の、難しさが、
よく、わかるだろう」
「ええ……あれは、大変、
勉強になりました!」
「ゴツゴツとした、地面の傾斜……、
うねる樹木……方向の感覚、
何処に潜んでいるか、
分からない魔物……。
正直、ナメてました。
森の中のこと」
「それ、ゴリルの剣だろ。
今、二本、持ってるのは、
正解だぜ」
「ふふ♪ あの二人が、
アイアンソードを買った所は、
見たことがないけどねぇ♪」
「いらんだろ、あの腕だぜ?
自前の武装も、あるみてぇだし」
「あの、お芝居の、剣……」
「綺麗でした」
「……誰にも、言うなよ?」
ベテラン冒険者たちと、
新人冒険者たちが、
丸いテーブルの上、
顔を、ぐっと近づける。
「何人か……倒すところを、見てる」
「どゆことすか」
「"隠蔽のジェム"を使って、
魔物から、やりすごしてた、
奴らが、いたんだ」
「……! あれ、私も、
欲しいんですの」
「金が溜まったら、ノリで、
ひとつは、買っとけ。
ランクが低くても、
じっとしてりゃあ、
いざと言う時に、やりすごせる」
「飴みたいに、口に、
含むんでしたよね?」
「ああ。ソイツも、例外なく、
ねぶって、木の根っこに座って、
じっとしていたそうだ」
「アイツ、落ち着いて喋ってたけど、
けっこー、ヤバかったみたいよ」
「そりゃあ、オークジェネラルだもんよ」
「オーク・・・!!」
「ジェネラル・・・!!」
「ジェムで、気配を消していても、
けっこう、近くまで……、
迫られてたそうだ」
「……。想像しただけで……気が、
気じゃありませんわね」
「ああ。ジェムが無くなったら、
死ぬからな」
「5メルトルテの所まで、
詰められたらしい」
「まぁ……」
「触られたら、バレるからな。
いよいよ、ダメか、
と──思った時に──」
" お、にくだ "
" ごうせいだね "
「その……来たん、ですか」
「一瞬だったそうだぜ。
轢き殺す感じ、
だったそうだ」
「酒、のみながら、
稲妻みたいだったとも、
言ってたわね。
金と、銀の、残像が、
6〜7つ、見えたそうよ」
「首と、腹だ。
血抜きしてるみたいに、
しばらく、眺めてたそうだせ?」
「なんなんすか、ソレ……」
「死骸は、見えない力で、
吊り下げられた後、
消えたそうだ」
「……! まさか」
「ああ。"集荷"したんだ」
「あの、絵本の中の方々ぁ、
晩ご飯の話をしながら、
森の中に、消えたってよ」
「木の根に座りながら、
思わず、笑っちまった、
って、言ってたわね?」
「……ギルドは、その事を」
「絶対、知ってるだろうよ。
あの強さを、放置してるはずは無い。
ただ──」
「ただ?」
「王都は、知らねぇかもしんねぇ。
オーク・ジェネラル、単体ってことは、
嫁探し中の、若い個体だ……。
報告されてたら……もちっと、
騒ぎに、なるはずだからな?」
「そ、それって……!」
「……"ドニオスの守り神"、とまで、
最近じゃ、言われてたりするぜ?」
「本当……なんですわよね?」
「オレが聞いただけで……、
少なくとも3件、同じことが、
起こってる」
「ひえぇ……」
「誰も、進言、しないんですの?」
「あの仮面を、見ろよ。
はっは、絶対に、ワケありの、
お嬢さま、ふたりだぜ!?」
「まったく、面白い時代に、
なった、もんだよな!」
「そんな無粋なマネ、
ドニオスの冒険者は、
誰も、しないのよ!」
「は、はぁ……」
「もし、一瞬で、
オーク・ジェネラルを屠れるなら……、
とんでもない、ですわね……」
「聞いた話じゃあ、
食う気、マンマンだしなぁ♪」
「はっはっは・・・!!」
「これも聞いた話だけど、
料理、めちゃくちゃ、
うまいんですって!」
「ありゃあ、"引く手数多"、
ってヤツさ。だからヒゲイドの旦那は、
あえて、隠してんのかな?」
「さぁなぁ。なんだかんだ、
情に、ふけぇからなぁ。
我らが巨人は」
「ちげぇねぇ。オレらも、
他の街じゃ、こうは、
上手く行かなかったろうよ」
「そ、そうなんですか?」
「ドニオスはな、元を辿れば、
炭鉱で働いてた、罪人たちがよ、
改心して、町を興したのが、
始まりなんだよ」
「ま、まぁ……!」
「そういう始まりだかんな……、
ここにはな、ワケありを囲う、
懐のデカさが、あるってワケよ!」
「まったくだ。
ドニオスと、絵本の守護者に、乾杯!」
「そんな感じは、しませんね……。
みんな、気さくで、
人当たりが良いって、
印象が、すごくあります」
「──お──い!!!
みんな、きいたかぁああ──!!!
この、新人がよぉ!!!
オレたちのこと!!!
ひとあたりが、
いいってよおおお──!!!!!」
「──ぎゃっはっはっはっは!!!
なぁ──にいってんだ、
新人ちゃんがよぉおおお──!!!」
「なぁにー♪♪♪
お姉さんのこと、
さそってんのー!!??」
「てめー、そんなこと言っても、
パーティ組んだら、
きびしく行くからなぁー!!!」
「ちょ、ちょっと、
やめてくださいよ……///」
「今、ちょっと、ドニオスが、
こわくなりましたわ……」
「はっはっはっはっはっは♪♪
すまねぇ、すまねぇ」
「まぁ、そういう事情だ。
お前らも、肌で、いいヤツだな、と、
思ったヤツのことは、
詮索すんな。
"ドニオスの流儀"、ってヤツだ」
「ああ。覚えておけよ」
「……わかりました!」
「肝に、銘じておきますわ」
「ふん。いい顔だ。
ふぅ……しかし、こんなに、
新人が増えるたぁ!
ま、嬉しいねぇ♪」
「ふふ、アンタは、先輩風、
吹かせたい、だけでしょお?」
「いーじゃねぇか!
鼻にとまる、えらそうな先輩、
上等だぜ!」
「ははは、そのセリフ、
あの義賊ちゃんと狂銀ちゃんに、
言ってみろよ?」
「ぉ! おぃ……よせよぉ。
どっかの、貴族の お嬢さんだったら、
どうすんだよぉ……!!」
「しっかし、改めて見たけど……、
あの、仮面の、目の穴、
おっきいわよねぇー」
「それな」
「あんまり、隠してるイメージ、
ないんだよなぁ。
ちゃんと、鼻まで、
隠れてる、ハズなんだけどな?」
「あの髪と目……たぶん、自前よね?
あんだけ綺麗な髪してたら……、
仮面なしで歩いてたら、
すぐに分かると思うんだケド???」
「ははは、ソレを、言ってやるなって♪」
「はっはっは!!
誰よりも、目立ってるよなぁー」
「盗賊職なら、
100メルトルテ先からでも、
わかるわよ」
「ぎゃっはっは!!!
足音、うるせぇからなー!!!」
「……ニチ。なんか、
すごい街に来たね!!」
「そうですわねぇ。
すみません、この小皿って、
もう一つ、もらっていいです?」
言われてるぞ、アンマイ!!((´∀`*))