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ヤング・オールド・ブレイカー

おまたんたん。(●´ω`●)*.+゜

リハビリに、テケトォーな

ブレ爺の過去話でっす。





 漆黒のスーツの、細身のイケおじが、

 銅のメイドに護衛を任せ、

 地下を、駆けていた──。


 今は、見事に、白く染まった、

 滝のような長髪が────(えが)く。





「ふんっ──」



 たたたたたたた──────。






 ブレイク・ルーラーは、

 かつて存在した、

 王都直轄、暗殺部隊の元・隊長である。


 孤高の女王、エルミナイシア。

 銀の大司教、マザーレイズ。

 予言の魔女、ヨゲンナ。


 国造りの魔女たちの下で、

 彼は、手足となり、

 汚物(おぶつ)を、(ちゅう)し続けた。



 "隠密(インビジブル)" Lv.5 という、

 最大解放スキルを会得していた彼は、


 やがて、歴史には残らぬ暗殺を成す、

 "聖兵(クレリア)機関(きかん)"との、

 "合同任務"の、多くを、(とも)にするに(いた)る。



 もっとも近くで見た、

 四つ目仮面の魔女は、

 まさに────"鬼神"であった。




「あれが……"大司教"だと、いうのか」




 イカれている。

 素直な、感想だった。



 あの、仮面の女は、

 いつも、体を隠す、

 ダボダボのローブを選び。


 何故か、(おのれ)(あたま)ではなく、

 (はら)だけを、守り。


 後は、どんなに斬られようとも、

 両腕に持った剣で、蹴散らすのだ。


 ふと、消えたと思ったら。


 背後に現れ、首を、もぐ。


 何故か、受けた傷は、消えていく。




 血の、竜巻のような、女だった。






「……なぜ、エルミナイシア女王は、

 あのような、殺戮者(さつりくしゃ)を……」




 あまりに、狂ったような戦いをする大司教を、

 ブレイクは、調べた事がある。


 血で()れた、仮面の亡霊のような女を、

 部屋まで、つけ行ったのだ。


 誰にも知られぬ、

 高い、牢屋のような場所に……彼女は、

 ひっそりと、暮らしていた。



 部屋に、()らぬ時間を(はか)り、

 ブレイクは、忍び込む。




 内装は、外見ほど、

 独房(どくぼう)の様では、なかったが。



「 …… 」



 驚くほどに、物が無い。

 ベッドは、大司教が使っているとは、

 思えぬほどの、ボロ箱である。


 が……料理の道具は、美しく整頓(せいとん)され、

 そこだけは、意外な ほどだった。



( ………… )



 若き日の、ブレイクは、思う。

 あの、血の中に(おど)るものが、

 料理、か…………と。


 何もない居間に、

 小さな、祭壇(さいだん)のような物があった。



「……なんだ?」



 よもや、邪教の神など、

 (まつ)っているのでは、と。

 警戒する、ブレイクであったが。


 そこにあった、異質なモノに、

 思わず、声をあげる──。



「……!? ほ……。

 宝石に閉じ込められた……、

 " (あか)(ぼう) "……!? 」



 そこにあったのは、

 透明な、いや……少しだけ青みがかった、

 大きな、水晶(クリスタル)の結晶のなかに、


 ──眠るように、封印された、

   赤子の、姿であった。



「 ……── 」




 透明な、岩の中で、死んでいるはずの赤子は、

 まるで、生きたまま……、

 眠っている、ようである。


 止まって──いる……すべてが。



「……()(がい)、なのか?」



 髪は、紫の産毛(うぶげ)で、

 おそらく……女子であった。


 その、奇妙な封印石の横には、

 流線型(りゅうせんけい)の、

 金色の、なにか、が、

 供え物のように、置いてあった。



金塊(ゴールド)、か……? いや、

 この形は……魔物、の……?」



 ブレイクは、考える。

 そして、察するのだ。



「これは、祭壇(さいだん)では、ない……。

 (はか)……なのだ」



 ここは、(いの)りを(ささ)げる場所だ。

 ブレイクは、(さと)った。



「あの者の……"(にく)しみ"の、

 根源、なのか……?」



 にくしみ。

 そう、にくしみ、だ。


 ただの、ものでは、できない。


 血まみれに、なりながら。

 血を、大地へ、(かえ)すのだ。


 つよい……なにかが、

 心に、なければ。


 それは、続けられない、ことだった。



( ……邪悪、だと……思っていた。

  が……それが、過剰な、"愛"、

  なのだと、したら──── )




 ブレイクは、自分で、目に、し──、




「 いいのこすことは、ありますか? 」




 その剣に、気づきさえ、しなかった。




「……」




 気配など、ない。


 四つ目の、仮面の女には、

 なんにも、感情が、なかった。


 ブレイクは………、……こたえた。






「……たいへん、不躾(ぶしつけ)で、あった」


「……」





 剣のそばで、頭を、さげる。



 ブレイクが、わかったのは、

 これが、この、赤ん坊が……、

 "大切なモノ"だと、いうことだ。


 果たして、何なのかは……分からない。


 だが。


 決して、他人が、

 土足では、踏み入ってはいけない、

 " 何か " なのだ────。



 ブレイクは、若かりし頃から、

 たくさんの盗みをやったが、

 今の仕事を選んだのは、

 自分だけにしか出来ない、

 世直しを、成したかったからである。


 まともに治世もできぬ、

 ブタのような貴族どもに、

 盗っ人仲間を殺される。


 そのような、子供たちを、

 増やさぬために──。


 彼は、ここに、いたのだから。




 ブレイクは、目を、閉じる。



 彼は、たくさんの非道を(おこな)ったが、

 これが、最期となると……、


 暗殺者の身で、ありながら、

 バカな、騎士のような、(いさぎよ)さが出る。


 ツケが、(まわ)ってきたとさえ、思った。


 



 動かぬ、剣光。





 

「あなた……」


「……?」


「おなかって、()いて、いらっしゃる?」





 持ち上げられる、かいものぶくろ。







 その日から、

 ブレイク・ルーラーは。


 どれだけ、大司教が、血に()れようと。

 背中を(あず)けようと──思ったのである。


 それは、"騎士"のようでも、あった。







「今日も……凄まじい、お働きでした」


「すがすがしい、おもいです」


「もう少し……お身体を、守られては?」


「あら、まもっていてよ?」


「ふんっ……。(はら)、だけでしょう……」


「かお は、ふふふ……かめんが、あるもの」


「……他の傷は、どのように回復を?」


「と、いうと?」


(なお)るのが、早すぎるので」


「きひひ……っ♪ ひみつ、ですっ♪」


「部下にも……適応できぬ、術……ですか?」


「あら、なかまおもい、ですね?」


「ふんっ……からかわんでください」


「わたしにしか……できないのです」


「そう、でしたか……ですが」


「むりは、するなと?」


「……流れる血は、無限では、ない」


「くえれば、ふえるわ。いつまでも」


「……」







 時たま、部屋に呼ばれ、


 飯を食う合間だけ、


 少し、しゃべる。






「しんぎきょく は、かならず、つぶす」


「……」


「わたしから、すべてを、うばったもの」


「……花を」


「?」


「その、赤子どのに……花を、()()けても?」





 透明の赤子の前で、しかし。





「──ブレイク、かんちがいするな」


「え?」


「 そ の こ は 、 い き て い る わ 」


「そ……ん、な?」


「はやく、会いたいわ……♪

 ああ、でも、どうしましょう。

 私……男の子しか、

 育てたこと、ないから……ふふふ。

 ね? ブレイク。

 はやく、ここから、

 出して、あげないとね?

 だって……あの子が、

 浮かばれ、ないもの……」


「……」




 時たま、覗く、狂気が、

 ただ、ブレイクは、気の毒だった。




「ご助力……いたします」


「ありがとう。でも、

 これは、わたしの、しごと」


「ですが……」


「はやく、食べなさい。

 冷めたら、ダメなやつよ?」









 やがて、(よご)れ仕事を、引退し。

 王都からの斡旋(あっせん)で、

 ギルドマスターなどという、表の仕事も得──。


 ゆったりと、生き、進み。



 ブレイクは、しかし、

 革の椅子の上で、

 思い出す────。





「ふんっ……。あの時の、赤ん坊は、

 どうなったの……だろうか……」




 何かを、やり忘れたような、人生。


 ()いていく、身体。


 もう、次への世代に、


 引き継ぐ、時……なの、だろう。





「……私の……役目は、おわりか」





 ズドン、という、音がした。


 それは、教会から であった。




 ブレイクは、恐ろしい速さで、

 そこへ、駆けつけた。







「マザー・レイズ……!!」





 (なつ)かしき、血の、亡霊。





「ブレイク……どうしましょう」





 その、手に抱かれた、赤子。





「その、赤ん坊は・・・!!!!!」


「これしか……なかった。

 なかった、の、です……」





 北の教会の外壁は、

 丸く、えぐられたように、

 何ヶ所もが、欠落していた。


 パラパラと、落ちる破片と、

 ガラスの、舞い散る世界と、

 (おだ)やかな、日光。





「目覚めるべきでは、無かった……」


「それは、ちがうぞっ……!!」




 ブレイクは、さけぶ。


 老いた、身体で。


 まったく、歳を取らぬ、


 時の止まった、仮面の女に。





「あなたが……いつか、言ったでしょう!!

 その子は……生きている、と!!

 ふんっ……その通り、だった!!!

 あんな、ガラスのような中から、

 やっと、出られたのでしょうッッ!?」


「……!!」


「誰かが、来てしまいますっ!!

 ふんっ……!! こちらへ!!

 さぁ、はやく! なにを、

 しているのですっ!!」


「ブレイク……」


「この壁の穴……!

 その、赤ん坊の、能力ですか?」


「これは……」


「ふんっ、お話し、いただきたい。

 後で、殺していただいても、結構!」


「……」


「 お は や く !! 」


「"能力、おろし"を……したのです」


「 ──っ……!? 」


「この子は、まだ、小さい、から……。

 もはや……それしか、方法が……」




 赤ん坊。


 能力おろし。




 裏の仕事をしていた、

 ブレイクだからこそ。


 任されていた、ある、施設。





「地下、だ……」


「……?」


「地下の、研究、施設へ」


「ブレイク?」


(あず)けましょう。その子を」


「……!? あなた……」


「助けるのです」













「──ふんっ。

 もう……あれから、15年、か──」




 たたたたたたた────。







 神の、奇跡か。



 あの子は生きて、


 黄金の、(つい)も、できた。





 ああ、なんと、喜ばしいのか。




 ブレイクは、奇妙に、思う。







「ふんっ……不思議だ」







 あの、黄金の、義賊は、


 笑う。






 "  きひひっ・・・♪  "






「ふんっ……なぜ、マイスナより、

 あっちが、ソックリ、なのかね?」






 ブレイクは、急ぐ。


 この、ガレキの下の、地底湖に。






「ふんっ。もしもの、ことが、あっては、

 申し訳が──たたんからな」







 流れる黒と、白──。




 息は、まるで、(みだ)れなかった。









目次絵、水着にしました!

(((o(*゜▽゜*)o)))♬*

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白すぎて一気見しかけてます… [気になる点] もしかしてマザーって…アンティの…… [一言] すごく面白いです!!!
[一言] マザー、やっぱりそうなんか〜
[良い点]  謎が謎を呼ぶ。長編作品はこうでなければ。 [気になる点]  マザーの能力、仮面由来なのか?  確か空間系最強のアイテムだったっけ。  傷は時間を巻き戻して直してるのかな? [一言]  す…
2022/08/12 17:46 退会済み
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