ヒロガーさんと、過去のハナシ。
「ぇええええ──っっっつ!?!?!?
デブ助のやつッッッ!?!?!?!?
まぁーだ、生きてんのかァああああぁ
ぁあああああああっっ!!!????」
オーバーリアクション、ヒロガーさん……ッ!
すっごい顔である。
大声だけど、ユーくんほどでは無いわね……。
なんにせよ、肺活量が、
ヤバそうよぅぉおお……!!
ボロい、拾った椅子の上で、あぐら。
耳が、きぃーんと、なりつつ。
黄金の苦笑いをしながら、
私は答えたった・・・!
「ぇ、えぇ、バッチコイ、生きてますヮ」
「──ウっっっソだぁああああああああ!!!!???」
── ウ っ ソ じ ゃ ね ー わ !!!!!
あ ん た あ っ 、
崩壊した建造物の中を、
クロールしてくンだかんねっっ!?!?!?
「だ、だってよッッッ……!?
アイツ、もう、かなりの歳だし……!?」
「ゃ、とんでもねーバケモンに、
なってますよ。壁、突き破って
ましたもん」
「ちょ、ちょ、アンティ……」
ぇ、なにさ、マイスナ。
あっ、いや、ホントだかんね!?!?
そこはッッッ、私ッッッ!!!
ゆずんないかんねッッッ??????
ガレキを掻き分けて、
泳いでくンのよ!?
あっ、そだ。
証拠を、お見せしようじゃないのぉー。
「これっ、あやつの前歯ですッ」
「──ん"ん"っ!? なにィ!?」
──きゅぅうん・・・こっ!!
" 光る まな板 "を、ふたつ、
黄金の無限マフラーの影から、
取り出した。
ほのかに光る、ダブルまな板は、
まるで、神秘的な割符のようだ……。
ほらぁー。
「──ぇええ"え"ええええええ!?!?!?
なッ、んじゃこりゃああああああああ
ああああああああぁぁぁ!?!?!?」
──どぉーだ、わかったかぁぁあああ!!
それが、前歯サイズなんだぞぉおおお!?
全身を想像してみろってんのよおおお!!
「た、確かに……歯か!?
おまえさん……!?
コレを、どうやって……!?」
「あっ・・・。実は私、、、デブ助と
ケンカしたことが、あって、、、きひひ。
そん時、へ、へし折っちゃいまして……」
「えぇっ……、……。
ぉ、女クルルカン、、、。
意外と ワイルドぉおおぅ……」
ちょとーぉ。
んなのよぉー、その目はサー。
しっ、仕っ方、ないでしょおおおおお!?
食堂娘にとって、ラット系は、
天敵なのよぉぉおおおお!!!
「こ、これが、本当にアイツのなら……、
とんでもねぇ、
クソデブに なってやがる……!!」
言い方ぁ。
すると、ヒロガーさんが、
急に、不安そうな顔になった。
「な、なぁ……。
アイツのせいで、なにか、
被害が、出ているのか?」
「ぁ、いや、そーいうワケじゃ……」
「アンティは、強かったから、大丈夫」
「ふんっ……。安心しろ、ヒロガー。
あのネズ公はな、どうやら、
まだ、あの地下の空洞で、
仲間を、守り続けて、いるようなのだ」
「……!! まだ、あそこに、
生き残っている、個体が……!?」
「前に見た時は、
かなりの数がいました。
でも、小さな個体でも、
スイカぐらいは、ありましたよ」
「本当か……!?」
ヒロガーさんは、
とても、ビックリ顔してる。
「そぅ、か……。
突破、したんだな。
そうか……っ」
ヒロガーさんは、
とても、複雑な顔で、、、だけど、
何か、感動しているみたいだった。
ブレイクさんが、追加で、
簡潔に、説明を続けてくれる。
「──ふんっ。聞け、ヒロガー。
ナトリで、水源の汚染があった。
かなりの広範囲だが、毒性は低い。
あやつらの……能力がいる」
「──っ!!
ライトニング=モフモルの、、、
水を、"綺麗にする能力"──だな?」
手記の中で、
ヒロガーさん、デブ助を、
風呂に、ブチ込みまくってたもんね。
水質調査は、お手のモン──っと!
この難題にピッタリなのは、
デブ助、だけではな、ないって事──!
「ふんっ──ご名答……!
この子たちは、
彼らの護送のために、
西と南の息で、派遣されている」
「そう、か……」
「「 ── 」」
黄金の義賊と、白華の狂銀──。
私と、マイスナを見ていた。
ヒロガーさん。
やがて、
「──はっは……♪」
──笑った。
「おいィ、つまりよ、俺はサァ──……?
この、義賊サマと、
狂銀サマと、よおー?」
きひっひ。
「一緒に、あのデブヤローを──、
南にある、でっけー風呂に、
ブチ込みゃー、いいって事だな??」
「ふんっ──その通りだ」
「かっかっかっかっか・・・♪♪♪
こいつは、おもしろくなって
きやがったじゃねーかああああああ!!」
楽しそうに、笑ってらぁ・・・!
「はっはっは……!! 久しぶりに、
あの毛むくじゃらを、
この手で、ブチ込んでやるかぁあああ!!!」
「あー、手では、キビシっすよ……?」
「すぅごいデブみたぃだから無理だよー?」
デブの親玉みたいになってますよ。
あっ。聞いちゃあいない。
「待ってろよォおおおお、
デブ公おおおおッッッ!!!
おまえの家族ッ!! 全員ッ!!
道連れだァああああああああぁぁぁ!!!!!」
ほあーっ。
このひと、よく通る声してんわねぇぇ……。
応援団長とか、向いてるんじゃ。
「──これっ!! うるさいぞ!!
これだから、普段、
日に当たらん奴は……!
ふんっ……! たまに、盛大に、
湧き上がりよって……!!!」
「ねだやしに、してやるぜええええええ!!!
うわ──っはっはっはっはっはっは♪♪♪」
ははっは……。
言動だけ見れば、確実に、
ヤべぇ研究者さん、、、なんだけんども。
あの、"記録"をつけた本人、
だという事は。
この人は、
命を大切にするための研究を、
ずっと、マイスナのためにも、
してくれていたのだ。
彼女の命を、私のトコロまで、
"引き伸ばして"くれた。
そう考えると、
かなりの……"恩人"だ。
この人が いなかったら、
もしかしたら、マイスナと、
再会できなかったかも、しんない──。
そう考えると、サ────。
「あのデブめぇ、
待ってろよォおおお……!?
俺が生きているウチは、
てめぇに好き勝手は、させねぇぜ……!!!
かっかっかっかっかっか・・・!!!」
は、ははは……。
ソファーの上で、踊っている、
酔っ払いにしか見えねぇーっ。
「──さぁ!! やろぉどもおお!!
デブまつりじゃあああああああ!!
ケチャップを、持てえええええええ!!!」
おいっ、調味料のムダ使いは、
ゆるさんぞ。
「はぁーん……。昔っから、
こんなテンションの人だったん……??」
「ぃ、いやっ……。こんなでは、
なかった、ょ……??」
マイスナも、目が、点になっている。
「ふんっ、やれやれ……。
仕事は早いのだが……はぁぁ……」
「ふっひょおおおおおおお──っ♪♪♪」
高笑いするヒロガーさんを見。
ブレイクさんは、額を手で、
押さえていた。
「いやぁーっ! しっかし、
デブ助も、マイスナも、
生きていたとは……!!
俺の38年の人生の中で、
いっちばんの、グッド・ニュースって、
やつさぁ!!」
ヒロガーさんは、
きったねぇソファーに座り直して、
けらけらと、笑っている。
マイスナが、
私のとなりで、ちっこい、
丸いクッション椅子に座って、
かしこまりながら、返礼した。
「それは……私も、驚きました。
まさか……生きて、、、。
私のせいで……あの研究所は、
地下に、崩落したから──」
「あのなァー」
グラスを手に持ちながら、
ヒロガーさんが、言う。
「お前のせいじゃねーわ!
あンの、バカ仮面の、研究者どもが……!!
そーいや聞いたぜ! 審議局、
とーとー!
なくなったんだってなァー?」
「「 ……っ! 」」
「いやーっ✩ ほんっと、
せいせいすんなぁーっ♪♪♪」
ヒロガーさんは、
ここで閉じこもってたみたいだけんど、
外の情報は、ある程度、
届いているみたいね。
マイスナが……、
あの事件を起こしてからだから、
2年くらいだから……。
今まで、ここで、ずっと、
ひっそり、暮らしていたのかな……。
マイスナが、
神妙な面持ちで、質問を放つ。
「あの事故で……誰か、
亡くなりましたか……?」
「……んっ……」
──ドキリ。 と、する。
……。
この子に……そんな"業"は、
背負って欲しくないに、
決まっている。
でも。
いざって時は、私も……、
いっしょに──。
でも。
思った以上に、
ヒロガーさんは、
あっけらかんと、答えた。
「それなぁ。正確には、な?
わっかんねーんだよ」
ぉ、ぉおん……?
わ、わからん……って?
「──ただな! 安心しな!!
俺が配属されていた、
研究チームのヤツらは、
全員、生きてるぜ……!!」
「……!!」
「ほ、ほんとお!?」
「はっ、ウソなんて、つかねぇさ!
2、3人、軽い記憶障害があったが……、
ホラ、メガネのエミリー、や、
メガネ三兄弟とかも、いたろお?
あいつらも、近くで働いてるよ!」
「……! そうなんだ……!!!」
「よかったぁ……」
思わず、声が漏れた。
マイスナの暴走で、
大恩人の研究者さんたちは、
いなくなっては、いない・・・!
でも、マイスナの声は、
まだ、不安が、のこる。
「ぁ……その、でも。
後で来た、紫色の服の、
仮面の、研究者……」
「ぁーっ!
どっかのバカ貴族が金を出した、
審議局由来の、研究者どもだろぉーっ?
まぁ……。
アイツらの生き死にが、
イッチバン、わっかんねぇー、
所なんだが……。
ま、正直に、言うけどよ……?
あの、暴走の時──。
お前さんの、かなり、
近くにいた、ヤツら、だかんなぁー。
記憶障害になったやつは、
かなりの数に、なると思うぜ?」
「……、……」
「そ……そぅ、ですか」
「気にするこたぁ、
ねーと、思うがなぁ?
自業自得って、
まさに、このことだぜ! はんっ!」
ヒロガーさんが、
グラスを傾ける。
「はっ……♪ どんな安酒でも、
美味くなる、タイミングだわなぁ」
「ふんっ……ヒロガー。
ちゃんと、話してやれ」
ブレイクさんが、
腕を組み、木の箱に座りながら、
軽く、クギを打つ。
「──ふぅ。
俺が、そいつらの生死が、
分からねーのはな?
あの崩落の後……すぐに。
とある" 大司教サマ "が、
根こそぎ、記憶が混濁したアホ共を、
捕縛していったからなのよォ」
──・・・っ!!
「……!! それって……!」
「──"マザー・レイズ"……っ!!」
「俺もよ? フラフラ、
だったんだけどよ。
あの光景は、よく、覚えてる。
言い方は、悪いけどよ──」
「「 ──……? 」」
「地上から光が射し込んだ、
ガレキの中に立つ、あの人はな。
まるで……悪人を皆殺しに来た、
天使──みたいだったぜ」
「「 ……、…… 」」
「なにも、赦しはしないという、
怒気、みたいなモンが、
ピリピリと、していたさ」
……。
それは、たぶん……。
大事な、大切な、マイスナが……、
死んだと、思って────。
「記憶を失ったバカヤロー共は、
まるっと全員
どっかに、収容されたって話だ。
はっ。そこんトコは、
そこに座ってる、
スーツのジィさんの方が、
よく、知ってるかもしんねぇ」
「……ふんっ」
「ま、死者が出たかどうかは、
わっかんねぇーが……?
ありゃあー、何人かは、
拷問、されてらァなぁー」
「……! ──うぉっほん……!!」
ブレイクさんが、
おじいちゃん特有の、
わざとらしい、せき払いで、
ヒロガーさんの話を止める。
……。
何故かは、分からないのだけど、
あの人なら……それくらい、
やりそうな……気がする。
「ふんっ……あの人も、
想ってのことだ」
「「 …… 」」
否定、せんかいな……。
拷問、確定や、ないかーぃ……。
「──ぉお! そーいや、
あの四ツ目の大司教さんは、
もちろん、知ってんだよなぁ!?
マイスナが生きてる、ってよ!?」
「……ふんっ。もちろん、言ったさ」
「「 ぇえ"っ!? 」」
【速報】マザーにリークしたの、
ブレイクさぁあああん!!!
「……はっ!
そりゃあ、よかったぜ!
あの人は、まぁ……よく、
わっかんねぇ人だったが。
マイスナの事は、
みとめたかーねぇが、
とっても、心配してたかんなァ。
敵だと恐ろしいが、
味方だと、ありがてぇ人だったぜ」
「「 …… 」」
「いやぁーはぁ……! しかし……!
今日は、めでてぇ日だ。
本当に……!
よかった……よかった……!」
「……! うんっ」
「……そう、だねっ」
複雑な思いが、
ヒロガーさんの、
超・嬉しそうな顔で、
じんわりと、温かさを、取り戻す。
そうだわ──。
ふたつも、最高のニュースが、
あったんだもの。
きったねぇ酒瓶には、
香りが台無しになった、
世界で最高に美味しい お酒が、
きらめくのだろう──。
「なぁ、嬢ちゃんたち」
「「 ? 」」
このボロ屋に射し込む陽射しは。
決して、絶望を、
感じさせは、しない。
「神サマってよ……?
いるのかも、しんねーなっ!」
「「 ! 」」
きひひっ。










