お姉ちゃん、いるぅ? / 逃げられっか!
血
風
`
砂
塵
の
花
に
至
り
て
゜
白童:「まいったなぁー」
ただの、ボヤキだ。
白童:「──お姉さんって、いりますぅ?」
妹血:⟬ ──√ ⟭
そう、ユユユに言わせるほど。
全開のヒキハは、えげつないのだ。
まず、そもそも、
元々、得物からして、おかしい。
姉であるオシハは、
バタア・ナイフの、中剣と、小剣を、駆る。
もちろん、この双剣も、
常人ならば、
持つことも叶わぬ、
度し難い、鉄塊だが。
妹の、羽根のように裂く刃は、
バタア・ナイフ、大剣。
白童:「ボクの、"反射"は、ねぇ。
そんな凶悪な威力が無くても、
発動、するんですよ?」
妹血:⟬ ──√ ⟭
白童:「──聞こえてます?」
剣は、一振り──か?
忘れては、いけない。
血の妹は、陽気な姉から、
その愛剣を、あずかった。
いち、にぃ、さん。
グ ォ ン ──と。
それは、鳴く。
白童:「その剣を作った神サマも、
そんな風に使うとは、
思ってなかったんじゃないかな?」
妹血:⟬ ──√ ⟭
血だ。
連結だ。
剣は────、
連なって、いる。
白童:「それは、凶悪すぎるでしょうよ」
ヒキハは、増大した血のチカラで、
剣を、ひとつに、
束ねた のである。
" バタア・ナイフ・トロワ "。
特大剣の、おとおりだ。
白童:「あぶないって」
妹血:⟬ ──√ ⟭
巨乳の美女の全身から血が噴き出し、
それが深紅のドレスとなり、
頭部からは鮮血の角が生え、
橋でも作れそうな板みてぇな剣を、
三本、血鎖で振り回しながら、
笑いかける姫がいれば、どうだろう。
妹血:⟬ よく、よけますわね──√ ⟭
白童:「 ──受けて、いるでしょうが? 」
暗黒の怪異兎に、
滝のような、光が堕ちる。
ヒキハの額には、
ナイフで斬り開いたような、
赤の逆十字が、刻まれている──。
白童:「まったく、困ったな。
まさか……潜在的には、
姉より、強いのか?
損な、配役だなぁぁ」
勢いに乗る、ヒキハの血刃を、
捌くユユユも、怪将である。
左右に展開する装甲大腕は、
もはや、淡い光の翼さえ、
下界へと垂らし。
神の御使いと言われたとて、
信じてしまう身姿である。
白童:「もすこし、威力、抑えません???」
妹血:⟬ 言っていられる、状況でして──√? ⟭
白童:「いや、ボクが持たなぃんだよ♪♪♪」
ユユユは、清々しい笑顔で、そう言った。
エルフの耳には、宝石が光り。
半吸血鬼の姫は、贄のドレスを纏う。
誤算だった。
黒き兎は、思うより、速い。
遠くから見ても。
血の姫と、神童の戦いは、
美しいものとして、捉えられる。
当然:「火と……魔術、なのだ」
トウゼンローが、
金と銀の間で、言う。
当然:「あの、黒き怪異への、
有効打、は──・・・」
金娘:「……うさ丸、応答して」
それを聞いて、アンティは、すぐに、
聖樹の勇者へと、言葉を飛ばす。
当然:「ワシの……、炎、では……くそぅ!!
ちから……不足、なのだ……!!」
金娘:「──うさ丸!!!
おっ……応答を・・・!!!」
銀娘:「あの、ミートボールに……、
間違った戦力を、割いたんだ……」
マイスナの慧眼の、通りだった。
萌神:『んだよ……マジ、ゃく、言えよぉ……』
銃神:『うむ、目眩、が……』
異火:『 む、むりを、するな!!
おりろ!! ちに、あしを!! 』
火と、魔術。
オオマガツブリには、効かず。
ウサミミマガには、通るもの。
金娘:「まずい……あの、アレを……、
止めれる人が、いない?」
当然:「──其方が、おるでは、ないか……!
その、内に秘めたる、
轟轟と燃ゆる──、、、
──待て、おヌシ、ら……?」
トウゼンローは、気づく。
アンティと、マイスナから篭める、
熱気と、冷気の湯気を──。
当然:「煌めく装甲の狭間から、
煙、が……?」
金娘&銀娘:
「「 ぐ…… 」」
アンティとマイスナが、ゆらつき、
互いに支え合うと、
その間に、まるで、
互いを拒絶するかのような、
──温度の壁が、唸りをあげる──。
ブシュウ──わぁあああああ。
当然:「……、……燃える、体。
……凍る、肉体……」
トウゼンローは、ヒナワが若い時、
鉄板焼きの熱床に、
氷の魔石をブチ撒いて、
遊んだ日を、思い起こした──。
当然:「……、消耗した、体では……、
太陽は、撃てぬ、のか……?」
金神:『>>>……やれるんだ。
>>>ただ……──』
陽神:『────調整が:
────効かないのです☼』
金娘&銀娘:
「「 ぅ…… 」」
トウゼンローが、冷や汗を流し、
見るアンマイの間には、
今も、おびただしい水蒸気が、
発生している。
当然:「威力が……抑えられぬ、のか?」
陽神:『────危ないのです☼
────この状態では:
────とても……☼』
金神:『>>>うしろの……街が、
>>>吹っ飛ぶくらいの、
>>>可能性は、ね……』
当然:「なん、じゃと……」
これだけ、離れておるのにか、と、
トウゼンローも、当然、言いたい。
しかし──無限の空間に住まう熱星など、
確かに、恐ろしいモノである。
当然:「……、おぉ……」
自分が消し飛ぶくらいで済むなら、
今すぐやれ、とも言える豪傑の殿も、
守るべき故郷が消し飛ぶやもとならば、
おいそれと、首が縦に振れよう訳が無く──。
当然:「いや……無理を、させすぎた」
にがく、当然と、悟る。
まかせに……まかせた、ではないか。
当然:「さて──どうする」
見上げるトウゼンローの額に、
絶望の汗が、浮かんでいる──。
そして、とうとう、
視界がボヤけ始めたアンティたちに、
かの、銅の従者たちが、駆け寄った。
銅壱:「──はぁ、はあ!
追いつき、ましたよ!」
銅弐:「お嬢様がた!
ふらついて、おられる!!」
金娘&銀娘:
「「 ……ッ、さわっちゃ、
ダメッッッ!!! 」」
"銅の刑死者たち"は、
その言葉で、すんでで止まり、
理解する。
銅参:「お、お足元、がっ……」
銅肆:「焼け、爛れている……!!」
当然:「なにぃ・・・ッッ!!」
すぐ間近で見るトウゼンローも、
ここまでの、ものか・・・!
と、戦慄するものよ。
マイスナは、灼熱の義賊に抱きつき、
その氷で、生命を守っている。
いや……そうせねば、
マイスナも、凍ってしまうのだ。
銅伍:「お嬢様……っ!!」
銅陸:「なんとっ……、おいた、わしや……!」
銅従も、殺し屋家業が、
最初っから、従属だったワケが無いが、
今だけは、自然と、この言葉が出た。
当然:「むごい……!」
金娘&銀娘:
「「 はァ…… 、 はァ……── 、 」」
トウゼンローの握り拳は、
誰の幸せを、願うものだったか。
銅壱:「……お嬢様方。
倒れ行く主の肩も支えられぬ、
愚かな従属に、出来ることは、
ありましょうか」
銅弐:「この命、惜しくはありません」
当然:「ぬしら……、……それほど、か」
この言葉で、トウゼンローは、
唸るほどの真実を、目の当たりにする。
銅参:「愚考、いたします。
あの、小さき魔女に、
"隠蔽"のジェムを飲ませ、
取り敢えずの、避難を──」
金娘:「──っ! そ、れッ、は・・・」
アンティは、燃えながらも、
たいへんに、苦い顔をした。
その顔に、我らは、
なんの傷をえぐったかと、、、
銅は、見開き、待つ。
当然:「……いまは、"釣り餌"を、
無くすワケには、いかぬ」
銅肆:「────、貴様ァァ!!」
当然:「──分かりやすく、言った!!
・・・察せ……」
銅肆:「、、む……」
少女をエサ呼ばわりした、
しかし、本意では無いことを悟り、
銅は、拳を収める。
何より、黄金は、否定せず。
つまり、街長と、同意見なのである。
金娘:「わたし、だって・・・。
トドメ、ちゃん、を…………、
キケンな、オトリ、なんかに、、、」
涙。
金娘:「で、でも……、いま、わ……っ」
当然:「……ぶつけ合わせるしか、ないのだ」
銅全:「「「「「「 ──!!! 」」」」」」
トウゼンローは、流石であった。
言い難い黄金を、代弁する。
当然:「倒せる見込みが無いなら、
ソレ同士を……当てれば良い」
銅伍:「本気、なのですか……」
当然:「さもなくば、土地ごと、
滅ぼさねばならぬ。
……で、あろう?」
憔悴しているアンティの代わりに、
マイスナが、答えた。
銀娘:「……ぶつ、、けるのが、
失敗したら、私とアンティで、
やります」
ごくり。
銀娘:「た、だ……ここまで、
やりすぎチゃった、身体で……、
どこまで、、調整、でキるかは、
わかラナい……」
当然:「……、……」
銅全:「「「「「「 ……、…… 」」」」」」
マイスナが、少し、
呂律が、回らなく、なってきている。
銀娘:「あの子、ヲ……信じて、ミル……」
酷な、決定であった。
アンティの無敵のナックルは、震えている。
金娘:「ちくしょう・・・!」
メイドたちは、わかった。
もう……動け、ないのだ。
銅壱:「……禍々しき者たちを、
ぶつけ合わせなさると、
言うのなら──お命じください。
わずかでも、助けに」
アンティは、そっと顔を上げ、
即答した。
金娘:「──街に向かい、
避難を呼びかけなさい」
トウゼンローは、
熱い何かを感じた。
銅は、狼狽える。
銅壱:「ですが……っ! 万が一は、
お嬢様、がた、がっ……!」
金娘:「私の従者を、語るなら──」
キ ッ ──っと。
15歳の乙女は、眼光を射る。
それは、弱き、涙であったか。
金娘:「最善を、尽くしなさい」
銅壱:「 ── 」
金娘:「ガキを、おとりに使ってんだぞ……?」
涙を、ぬぐう。
金娘:「" 黄金の義賊 "が、
逃げられっかッッッ!!!!!」
マイスナが、苦しそうに、だが。
不敵に、ニヤリと、笑い。
そして──。
金娘:「 い き な っ っ ! ! ! 」
銅全:「「「「「「 ──ハッ! 」」」」」」
霞のように。
銅のメイドは、掻き消えるのだ。










