むてきのもうてん
我ラ、幻影ヲ駆ケル者。
獣王:「 ……マルデ 」
立ち尽くしている。
獣王:「 マルデ、ジゴクノ、イリグチダ 」
ゴウガリオンが、
仲間の前で、マトモに喋ったのは、
これが初めてだったが、
誰も、突っ込みは、しなかった。
獣王:「 ソコニ、、、
ツレテキテ、シマッタ 」
彼の言うことが……、
尤も──だったからである。
目の前で、繰り広げられているのは、
" 虐殺 " だった。
熊神:( ここまで……、
実力差が、あるのかよ── )
たくさんの、黒の少女が、
生まれては、ソレらに立ち向かったが、
およそ、ビョウも、もたなかった。
数だけは いたので、
歩み寄る間だけは、
動いていて。
ただ、頭部は、地面に、
吸い込まれないように、
徹底的に、破壊された。
白童:( はやく、なって、きている…… )
効率化が、なされている。
砕き散らす、その、"作業"が。
黒の足場に、よく分からないチカラで、
浮く、その、ふたつの光源は。
────もはや、天使に近かった。
熊神:( むごいぜ…… )
綺麗、だったのである。
淡い、光だ。
いまの、このふたりが、
街中の、教会なんかに現れたなら、
みんなが皆、
天人だと思うに、違いない。
それだけ、人間離れ、していて。
浮遊するカラダからは、
ギアや、翼が、
花のように、咲き乱れている──。
ヒュンヒュンと、辺りを舞う、
無数の光。
ゴゥン、ゴゥンと鳴る、
心臓では、ない音──。
襲い来る、
黒いモノたちのほうが、
ニンゲンの、形をしていた。
いちばんの、ふたつの脅威に、
攻撃は、集中し。
他の、至高たちは、
観戦すら、する余裕がある。
いや、これは、戦いではない。
もはや……ちがうのだ。
熊神:( 一方的、だ……。
頭部だけを、イチバン、
早い、方法で──…… )
ハンマーで、石を砕くように、
黒の少女たちのアタマは、無くなった。
繰り返されている。
もはや、どうやって砕いているのか、
ハタから見れば、わからない。
熊神:( 自分を……コロし続けている )
羽根だらけの黄金の背中からは、
今も、小さな歯車が、
バシュ、バシュ、と、
クラゲの子供のように、
排出され続けているし、
機械仕掛けの鎖は、
地面を輝かせながら、
一定のラインで、黒い少女たちを、
絡め取り、停止させている。
まさしく、" 作業 " であった。
ベアが、"むごい"と、感じたのは、
別に、敵を哀れんでの、事ではない──。
熊神:「 ……おれ達が、ヤらしてんのは……、
ただの……、"虐殺"の、
練習じゃあ、ねェのか……?
それも、"自分たち"を、使って、
もっとも、効率のいい……、
命の、奪い方って、
ヤツをよォ…… 」
姉乳:「 ……、…… 」
至高たちは、わずか、
数メルトルテ先の戦場に、
踏み込む、ことが出来ない。
漠然と、邪魔になる事だけが、
わかった。
そして、美しい。
残酷だった。
熊神:「 ……あいつァ、
"人でいたい"と、そう、言った。
でも、ありゃア、なんだ。
おれ、だって…… 」
姉乳:「 クマ……、 」
熊神:「 ……! ぁ…… 」
妹乳:「 …… 」
ヒキハは、
黄金と、白銀の、光に、
淡く、照らされながら。
さびしそうに、その光景を、みていた。
よく分からないチカラで浮遊し、
まるで、天使の像のように、なりながら、
無数の発光体を操り、
敵を、コロし続ける、彼女たちを。
アンティと、マイスナは、
もはや、目を、閉じていた。
彼女たちは、まったく、別の方法で、
全てを、感知していた。
ブドウの実が、つぶれるように、
黒い液体が、撒き散らされ続ける。
全て、あたまである。
白童:「……ゆっくりと、ですが、
コピー体の方の"質"が、
落ちてきていますね。
まぁ、最初のコピーも、
半分に斬られた キューブが、
元に、なっていますし。
少女体は維持してますが、
歯車と鎖を使える個体は、
減ってきています」
萌殺:「……なんか、マジ、もう、
ザコのゾンビみてぇに、
マジ、ノロクサと、
襲いかかってきてる、
だけじゃねっかよ……」
発光・浮遊する、ふたつのモノに、
むらがる、たくさんの黒い乙女たちは、
もはや、神に助けを求める、
愚かなモノたちにしか見えない。
近づいたモノから、消えていく。
破裂、するのだ。
姉乳:「 健気な、こって……。
どんどん弱くなって、
もう、ぜったいに、
勝ち目なんて、ないのに…… 」
熊神:「 アレなら、おれ達でも、
倒せそうだが……、
加勢、すっか……? 」
姉乳:「 やめときなさい、
敵が、弱くなってんのよ?
尚更、邪魔になるわ。
ホラ──── 」
ムチのように、しなる、
錨が付いた鎖が、
横薙ぎに振るわれ、
黒の少女たちが、消し飛ぶ。
無数の、輝く歯車たちが、
輪投げのように、頭部に、
スポスポと、ハマったかと思うと、
輪が、急に小さくなり、
頭を締め上げ、発火する──。
銃侍:「 …… 一度で倒す数が、
増えているで、ござる 」
異火:『 すさまじき、ちからとは
おわりが、わからぬものだ 』
無敵のモノに、あらがう、
有象、無象の、黒。
もはや、可哀想に思えるほどである。
無表情の乙女たちは、
集団で、なんとか、アレを攻略し、
あきらめず、抗い続けなければならない。
勝ち目など、ない、はずだ。
皆が、確信していた。
妹乳:「 はやく、終わって、ほしい……!
こんなことを、何度も、
繰り返して、いたら……!
あの子たちの、
" ココロ "は……ッ……! 」
アンティと、マイスナは、
ココロを、コロしている。
カメラは、増やした。
でも、目は、閉じて。
ただ、キカイ、テキ、に。
コロし、続ける。
────黒の乙女たちが、
"無謀"を、始めた。
獣王:「 ナゲル 」
白童:「 ……! ほんとだ 」
やぶれ、かぶれ、だったのだろうか。
集団の、黒の乙女たちは、
仲間を、胴上げのように持ち上げ、
なんと、投げつけ始める──。
ブン投げられた個体は、
空中で、回避など出来ない。
回転する歯車が飛び、
鎖が、薙ぎ払われ、
両断される──。
姉乳:「 …… 」
妹乳:「 見て……いられませんわ 」
ひどい、もんだった。
黒は、殺され続けていたが、
同時に、心も、死んでいた。
ふたりは、考えたくなかった。
だから、キカイになった。
────それが、原因だった。
バカみたいに、
同胞を、投げ続けて、
たまたま、鎖と歯車の包囲網を、
ふたつの、個体が、すり抜ける──。
金娘:『 ──── 』
銀娘:『 ──── 』
なぁに、たいした、問題では、ない。
すり抜けた、からといって、
目の前で、くだけば、いいのだ。
わざわざ、目を、あけるほどじゃない。
全身に、センサーは、完備している。
直接、見るまでも、ない。
見ないでも────。
投げ込まれ、死に行く、
黒い、
アンティと、マイスナ。
──────指を、さす。
黒黒:『『 おーだー 』』
ふたりが、目を、あけた、ときには、
黒黒:『『 こうどうふのう 』』
おそかった。










