表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1007/1216

ヘッドホン・エアレディ

久しぶりに挿し絵ボツにしました(笑)





 黄野(おうの) 金時(かねとき)が歩くと、


 箱庭(ハコニワ)の和風だましの通路は、


 たいへん、規則(キソク)ただしく、


 ゴウン、ごうん、と組み変わり、


 最短(さいたん)経路(ケイロ)構築(こうちく)した。




 今も、ナナメよりスライドする通路は、


 内観(ないかん)(シュ)木材(もくざい)仕上げだが、


 断面は生きた機械(サイバネティクス)


 そのものである。





          □

         □


    □□

         □

      □

       □

       □

       □


       △




 ─ オウノ カネトキの前方に

   通路を形成 ▽

 ─ オウノ カネトキの進行方向に

   廻廊を形成 ▽

 ─ オウノ カネトキの目的地を

   自動診断 ▽



 ズ、ズズ・・

 ガチャ・・コゥン・・・



 ─ 通路外郭を連結 ▽

 ─ 接続完了 ▽

 ─ 遊郭式照明装置 正常作動開始 ▽



 ──パ 。

 テン、テン、テン──。

 





『>>>………──』






 彼の視界野(しかいや)には、


 電子ゲームのブロックのように、


 道となっていく、ミニ・マップが、


 表示されている。



 歩いた後が道になるのは、


 もう(ふる)い。





 ──黄金の神は、立ち止まった。






『>>>……ここは、(はじ)めて()るな』





 アマノイワトは、ドアの形をしている。


 ノックをしようとし、やめ──、


 彼は、声にした。





『>>>……入るよ』





 ガチャり、と入った部屋は、


 外の和調とは裏腹(ウラハラ)に、


 ステキな、女性の部屋、


 といった様子である。


 どちらかというと洋風で、


 落ち着いた雰囲気であり、


 ベッドがあり、


 机の上には、パソコンがある。




 風変わりなのは、


 部屋の真ん中に、


 太陽神が浮遊していて、


 パソコン型のデバイスから、


 有線接続(ゆうせんせつぞく)された、


 ヘッドホン・コンソールを装着しつつ、


 フテ寝しながら、


 音楽を聞いている点である──。





『──── ── ─…☼』


『>>>……─』




 クラウンは涙を浮かべていたが、


 寝顔は落ち着いていて、


 リラックスしているように見えた。


 フワフワと(ただよ)う体と、


 黄金(ゴールド)と、虹色(レインボー)を、


 行ったり来たりしながら光る、


 太陽のカミ──。




『>>>……ふ、ふ、そうだね。

 >>>落ち込んだ日は、

 >>>好きな音楽を聞いて、

 >>>ふて寝るに限る。

 >>>ぼくも、こっちに来てからは、

 >>>よく、音楽プレイヤーが無くって、

 >>>死にたい夜があったな……』



 空中浮遊しながら、

 音楽を聞く(ヨメ)さんを見て、

 そんなに心配はしなくていいかな、と、

 カネトキは、

 そのまま、パソコンの机に座る。


 再生されているのは、

 EDM系の、合成電子音楽のようだ。

 彼はブラウザを閉じないように注意しつつ、

 デバイスに接続(せつぞく)する。




『>>>確認した。大丈夫だと思う』

『──ほんとに?❖』




 返信は、素早かった。




『>>>お気に入りのヘッドホンをしてる。

 >>>ふ、よく似合ってるよ』


『──つくづく、ヘンなシュミだなぁ……❖

 ──クラウンなら直接、

 ──音声を頭のナカに、

 ──出力(しゅつりょく)できるのにね?❖』


『>>>ふふ、それは、ヤボってもんさ』


『──で?❖ 何が聞きたいの……?❖』


『>>>──! さすがに、(さっ)するか……』




 頬杖(ほおづえ)をつき、

 勇者は、ため息をする。




『>>>就寝前の後輩ちゃんから、

 >>>記憶領域(メモリーセーブ)圧縮記録(あっしゅくきろく)抽出(ちゅうしゅつ)できた。

 >>>おっと……本人も了承済(りょうしょうずみ)だよ』


『──……見たのね?❖』


『>>>映像は、かなり(みだ)れていたけど……、

 >>>ガッツリ、動画でね。

 >>>シゼツ、どう思う?』


『──抽象的(ちゅうしょうてき)だわ❖』


『>>>ぼくの()いが?

 >>>それとも、あの"白い騎士"の映像が?』


『──どちらも、よ……❖

 ──私たち、"原初のプレミオムズ"は、

 ──あの"白い騎士"を関知(かんち)していないわ❖』


『>>>ぼくはね、絵本仲間が出来て、

 >>>喜んでいいのか、

 >>>敵意を向ければいいのか、

 >>>わからないんだ』


『──おにいちゃんって、

 ──たまに、ブッソウぅ……❖

 ──"白死王ゼウガ"って、

 ──けっこう昔の……伝説なんでしょう?❖

 ──私、200年前の記憶は、

 ──ほぼ、ないんだってば……❖』


『>>>戸橋(とばし)を助ける方法を、

 >>>教える、と、ほざきやがった』


『──おにいちゃん、、……❖』



 たしなめるような、

 あきれるような、声。



『>>>認めるよ、久しぶりに不機嫌だ。

 >>>肝心の方法を、

 >>>アンティとマイスナは、話さない』


『──?❖

 ──聞き出せたんじゃ?❖

 ──メモリーごと、(もら)ったんでしょ?❖』


『>>>……"死"は、"(さん)"の属性を持つ』


『──そう、ソレ❖』


『>>>……数学の公式を、無理やり、

 >>>押し付けられる感覚に似てる。

 >>>どうしてコレが正しいかは、

 >>>後回しにされてる感じだ』


『──きひひ、先生にグチ聞いてもらえば?❖』


『>>>そこまで子供にも、なれないさ──。

 >>>ただ……ぼくと、先生。

 >>>ふたつの"仮面(カオ)"があることには、

 >>>なにか……意味がある』


『──ふたつの、"カオ"❖

 ──ひとつの"コトバ"❖

 ──ひとつの、"シ"──❖

 ──これらは"3"ではなく、

 ──"4"になるから、ではなくて?❖』


『>>>……』




 パソコンの画面を見ながら、

 カネトキは、不機嫌そうなカオになった。




『──おにいちゃん……?❖』


『>>>……"デス"は、本当に、

 >>>死んでいないと思うかぃ?』




 無言は、死の神の驚きだった。




『>>>ぼくは……確かに、止めたんだ』


『……❖』


『>>>(こお)ったみたいに、止めた』





 もう、心の痛みには、慣れた。


 あの、巨大な、首のない、


 バケモノみたいな女を、


 殺した日から──。




『>>>……デスは、"生きている"と、

 >>>あの騎士は……言った、そうだよな?』


『……❖』


『>>>殺し(なお)さないと、

 >>>"シ"では、ないと』





 ──そう。


 それが、"オモテムキ"の、


 "白の忠告"──。





『>>>……教えてくれ。わかったらでいい』


『──……なに?❖』


『>>>時が止まった者は、

 >>>死んだ……って、ことじゃないのかぃ?

 >>>なにも動かないモノは、

 >>>生きてるって、ことには、

 >>>ならないんじゃ──?』


『──……難しい質問だわ❖』


『>>>きみでも?』


『──私だって、イキモノだった時は、

 ──腕に組み込まれた機関銃で、

 ──たくさんのヒトの頭をブチ抜いてる❖

 ──でも……時の止まった生命なんて❖

 ──厳密(げんみつ)には……この世に存在しない❖

 ──みんな、動いてる❖

 ──死んだって、()()()()()()❖』


『>>>……』


『──でも、あなたは……"切り取れた"❖

 ──完全に、"停止"させることができた❖

 ──それが……なにかの、

 ──致命的な──"変化"の、

 ──きっかけに、なって──……❖』


『>>>……この世界の人は、

 >>>生きていると、思う。

 >>>だが……再構成された世界で、

 >>>死という"概念"は、

 >>>本当に……"死"なのか?

 >>>それは……設定?

 >>>なぜ、あの亡霊は、

 >>>いきなり実体化したんだ……?

 >>>なにが、"強化"されたんだ?

 >>>……"強化"?

 >>>ぼくは……何を言ってる』


『──"デス"を、

 ──殺しなおすのが、怖い……?❖』


『>>>……!』




 カネトキは、少し考えたが、

 別に、怒りの感情は、()いてこない。



『>>>……いや。

 >>>発見できたとして、

 >>>あんなデカい時間停止体を、

 >>>どうやって再起動したらいいのかは、

 >>>サッパリだけど……。

 >>>でも……それが、

 >>>希望に(つな)がるのなら──……』


『──もしかしたら❖

 ──"噛み合うチカラ"を、

 ──強化できるかもしれない……❖

 ──"コトバ"と、"シ"だけでなく、

 ──"カオ"の、チカラも──❖

 ──アンティは──記憶野で、

 ──そう、説明してたね……?❖』


『>>>……そう、強化。

 >>>"強化"、だ──そこが、』


『──そこが……?❖』


『>>>そこが、引っかかってる』



 ぎしりと、椅子(いす)にもたれ、

 手を、頭の天で組む。



『>>>──クソ生意気な、ぼくの(カン)さ。

 >>>仲良くなった。だからこそ、

 >>>感じる部分』


『──アンティたちが……❖

 ──なにかを、(かく)してる、と──?❖』


『>>>彼女たちは、

 >>>箱庭(ココ)最高(さいこう)権限者(けんげんしゃ)だ。

 >>>本気で聞かれたくないコトは、

 >>>精神防壁を突破できない』


『──……(めん)と向かって、聞いてみる?❖』


『>>>……』




 少し、ほぅ、と考える。




『>>>……いや、やめとくよ』


『──いいの?❖』


『>>>今回のことで……よく分かった。

 >>>甘えているし、ムリをさせてる』


『──……ぅん❖』


『>>>パンク、しかかってた、

 >>>のかも、なぁ──……』




 カネトキは、考える。

 よい、機会だったのかもしれない。


 ただ、油断せず、

 でも、信頼できる者は、

 多いほうが─── ── ─ 。




『>>>これで、あの時のぼくみたいに、

 >>>ならないで済むのかもしれない』


『──おにいちゃん……❖』


『>>>ひとりでかかえるのって、

 >>>ホント、ロクなモンじゃないよ。

 >>>はは……先輩(センパイ)の実体験さ』


『──私も、ヒトゴトじゃないの❖』


『>>>ぁ……済まなかった。

 >>>無神経だったな』


『──ぅうん……だからこそ、よく分かる❖』


『>>>そう、だ……な』




 殺し尽くした者たちが考える。


 愛する者たちのこと。




『>>>……待つ気は、ないんだ。

 >>>でも、なんだ、……うかがおうと思う』


『──()き出すタイミングを?❖』


『>>>ぉ、そ、そう、、

 >>>よく、わかってるじゃん』


『──きひひ、ご先祖さまですから!❖』


『>>>いや、ぼくの、じゃないだろ。

 >>>は、は……』


『──そうだった!❖』




 少しだけの、(なご)やかな雰囲気。


 幻影のセカイの、


 死者たちの夢。




『>>>……! おっ、と……///』


『──? なに?❖ どうしたの?❖』


『>>>(ちゅう)に浮く恋人に、

 >>>後ろから()きしめられたことは?』


『──ぁー、ヤダヤダっ!❖

 ──じゃ、切るねっっ!❖

 ──んべーっ!❖❖❖』




 少しだけ、耳元で、


 音楽が聞こえた気がした。




『>>>……ま、順番に、蹴飛(けと)ばしていくか。

 >>>それしか、ないよな?』


『────:はぃ……☼』









 ── そんなに、わるい夜では ないさ。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[気になる点] デスにより大量死がシゼツ復活のトリガーになってたんだっけか。色々複雑だなぁ [一言] クラウンが膝抱えて胎児寝してそうな感じがするー
2021/11/23 01:44 ズブロッカ
[良い点] まぁ荒れてなくて、良かった [一言] 『>>>……ま、順番に、蹴飛ばしていくか。 ふむ、ならば最初に蹴飛ばすのは『先輩』だな 箪笥の角に足の小指をぶつけそうになったり、酒だと思って口…
[良い点] 全話も含めて、静かな愛情表現がすごく上手いと感じる。 描写されていないけど確かにそこにある後ろの空気が綺麗なイメージ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ