盃の記憶 後
(_ *˘ω˘)_Zzz…ぜろぉ……
なんで、ぐらびあみずき、
ないなったんやぁ……
〇月 ✕日
また、トドメの杖が爆発する。
あの子は、いったい
何回、中央池に落ちれば、
気が済むのか……。今まで、
大きな怪我をしていないのが、
不思議なくらいである。
優しい子ではあるので、
あの愚直さが、どうにか
器用な方に転んで欲しいのだが。
〇月 ✕日
ぬり薬が減っていたので、
トドメを問い詰めると、
やはり、ヒザを擦りむいていた。
このままでは、まっくろなヒザに
なってしまいますよ、と説教する。
この子は勉強は出来るが、
やはり、少し要領が悪いようだ……。
ただ、一度、しっかりと
おぼえた事は、きっちりするので、
どのように納得させるのかが
大切なのかもしれない。
〇月 ✕日
トドメは、あの杖を
持ち歩くようになった。
雨の日も、カサの代わりに持つので、
杖の上の、器の部分に
雨水が溜まり、滝のようである……。
やめなさいと注意しても、
意地でも持つ。
かなりの重さのはずなので、
体は鍛えられているかもしれない。
〇月 ✕日
トドメは、
よく歳下の世話をするし、
今日も、新街の出店から、
かなりの量の食料を
もらってきてくれた。
ここも、かなりの人数に
なってきたので、
トドメの当番の日は
たいへん助かっている。
あれだけ大きなカゴを背負って、
よく、歩き回れるものだ。
〇月 ✕日
少し、トドメに
くどく、説教をし過ぎてしまった。
あんな爆発を起こすのに、
冒険者なんて……。
この子は、根気よく
何かを、し続けることが
できるので、
出来れば、この孤児院を
継いでほしいのだが……。
ただ、トドメにも夢があるなら、
ソレも尊重したいと思っている。
だからといって、
暴発する杖を振り回すことは、
そろそろ、やめさせなければ
ならないだろうが……。
〇月 ✕日
夕食前に、南の駐屯地から、
人手不足とのことで、
仕事の依頼があった。
避難したラクーン族が
手助けを求めているようだ。
毒の噂は、
こちらにも届いてはいるが、
どうやら今回は、
"至高"の皆様が、
出張ってきてくれたらしい。
街より、とても近い場所なので、
万が一、問題が悪化すれば
すぐに引き上げても良い、
という条件を取り付け、
合意する。
ウチの子どもたちは、
家事は、お手の物だ。
〇月 ✕日
避難所となった駐屯地は、
思いのほか手入れが
行き届いており、
物資も豊富なようだった。
少しの手伝いで、全員分の
食料が支給されたので、
こちらが恐縮する。
ただ、流石に甘いものは、
少ないようで、期待はできない。
確か、いちばん近くの果樹園も、
毒の霧に飲まれてしまったはずだ。
トドメが、街で神官様に、
親切にされていたようで、
他の子供たちに、
ジャムと、ちぃず、のパンの
話をしていた。
ああ、そんな話をしたら、
みんな、食べたくなってしまうに、
決まっているのに……。
トドメは、話してしまってから、
しまった、と思ったようだ。
相変わらず、そこいらが、
下手っぴな子である。
何とか、甘いものが食べたくなった
チビっ子たちを なだめ、
避難所の、頑丈そうな木の家を借り、
皆で就寝する。
〇月 ✕日
今日の日誌は長くなりそうだ。
避難所に、火の鳥のようなものが
降り立ち、たいそう、たまげたが、
あれはどうやら、
トウゼンロー様の術の一つであり、
伝書バトのようなもの、
であるらしい。
私のように、知らない者が見たら、
魔物か、神の御使いだと、
勘違いするに、違いない。
どうやら、その火の鳥の
知らせによって、
小さな地図とフミが
もたらされたらしく、
部隊の方々の明るい反応を見るに、
至高の皆様方は、
素晴らしい働きを、
されているようだ。
なんでも、果樹園より、
はるか先まで、
毒の霧を、追いやっているらしい。
私は冒険者様方には明るくないが、
風に乗って広がる、
ふわふわとした毒を、
南の向こう側まで押し返すなど、
尋常ではない偉業であることは、
感じいる事ができる。
何にせよ、もう、
果樹園には毒がないらしく、
子供たちに、
もしかしたら、はやく果物が
手に入るかもしれないね、
と言ったら、
甘いもの食べたい組のダダが、
再燃してしまった。
トドメが、カゴを背負って、
街に甘味を取りに行こうとしたので、
慌てて止める。
近い駐屯地とはいえ、
街まで2ケルガはある。
重い杖を持ったまま、
小さな女の子が歩いて
よい道ではない。
今回の奉公は良い機会だと思ったが、
何人かの子供がホームシックになり、
甘いものねだりが、
いつもより長引いてしまった。
あの孤児院を家だと思って
くれているのは、嬉しくもあるが、
全員を泣きやますのには、
ひと苦労があった。
また、帰ったら、
梅のシロップでも
出して上げようと思う。
〇月 ✕日
朝。
トドメがいない。
いやな予感がする。
ユータ:「 ((;゜Д゜)) あっ… 」










