⚙⚙⚙ 能力おろし ⚙⚙⚙
15歳の誕生日で、能力おろしの日だ。
魔無しの救済、最後の砦だ。
そりゃちょっとは期待してる。
学校のクラスで魔法が使えないのは私だけだ。
神様は、救済を与えてくださる。
くださる、ハズ。
隣街の教会はステンドグラスがとってもきれいだ。
あんまり信仰心がない私でも、感じる美しさや、神聖さがある。
太陽みたいにひかる神話を象ったモチーフがきれいだ。
「準備はよろしいですか?」
すっかりステンドグラスに気をとられていた。
優しそうな女性の神官さんがこちらに笑顔を向けている。
「えっと、ど、どうすればいいの、でしょう?」
なんか、プチ挙動不審になっちゃった……。
神官さんは微笑ましい小動物を見るような感じだ。
たまにここに来るであろう、私みたいに魔法がダメな子らも、やっぱりこんな感じなのかな?
「こちらへ。ここに両膝をつけてください」
言われたとおりに進み、魔法陣? のようなものがある石の円の中に進む。
白い石の上に削りだされていて、所々に魔石も埋め込まれている。お昼の陽射しが先ほどのステンドグラスから射し込んで、あたたかい。
「ゆっくり息をはいて、穏やかな心を意識してください。まぁ、穏やかさって、意識するようなモノじゃないかもですけど」
なんかチャーミングな神官さんだな。
オトコの人はこういう人がいいんだろうな。
白い服にかかる、くせのある栗色の髪が目を惹く。
いいなぁ。私の髪は色素の薄い金髪なのだ。
ぱっとしない色で、細くて結わえにくい。
クセがなく、ストンと腰までおちてしまう。
当然、跪いた私の肩から、サラサラとこぼれる。
「まぁ……」
「?」
神官さんが何か変な反応だったが、もうすぐ正午、能力おろしの時だ。
太陽の力が一番の時。ここを逃すわけにはいかない。
気にせず、胸の前で手を組み、祈りを、ささげる。
「では……」
魔法陣が光りだす。
昼間なのに、うすぐらい暗闇が広がる感覚。
魔石が淡く輝いている。
……っていうか目ぇ開いてたらダメじゃんあたし。
集中集中……。
あぁ、でもこれでやっと魔法が使えるのね。
どんな系統になるかな。楽しみだな。
炎とかいいな。強いし。
あ、でも闇の魔法使いとかも憧れる。
土はちょっとやだな。
水は生活魔法のイメージが強いしな~。
とにかくハデで、クラスの連中を見返せられる属性がいいなぁ~。
昨日あんまりにも連中が馬鹿にしてくるから、
「お前らみんな私の魔法で地獄おくりだ!!」
って啖呵切っちゃったんだよな~。あちゃ~。
なので神様お願いします。
どうか、
どうか、
みんなに吠え面かかせるような、
すっごいすっごい特大魔法を、
私めに~~~~!!!!!
****〈神官さん視点〉****
「(す、すごい必死な表情ですね……ッ!?)」
目の前のおんなの子の必死なオーラに当てられている最中、突然バチッと、床に埋め込まれた魔石から音がした。
急激に魔法陣から魔力が抜けていく。
光は外から内側に、すぐに消えてしまった。
普通はもうちょっと緩やかにおさまるんだけど……。
「お、おわった、のですか?」
ハッ、と我に返ると、目の前のオレンジの瞳がこちらを向いていました。
「え、えぇ、そうですね……そのはずです」
「! こ、これで私も、つ、ついに!」
「あ、あはは、では今からあなたを鑑定して、どんな魔法を授かったのかを確認します。今回は能力おろしの日ですからサービスですが、次に鑑定してもらう時はもちろんお金を払ってくださいね」
うーんさっきの何だったんでしょう。
だいじょぶでしょうか。3年の神官生活で初めてです。
でも能力おろしが失敗したって聞いたことないですし。
弱い力を授かった子でも、生活魔法の水くらいは出してましたし。最悪それと同レベルでも、まぁ食いっぱぐれはないですよね。旅に水使いあり、です。
さて、では……
「鑑定!」
…
……
………
アンティ・キティラ
人間(♀)15歳
スキル:歯車法Lv.1
うわぁ、これどうやって説明しましょう。