3の1 ここは何処だ?
「ここは一体何処だ?」
魚をとって生活する儂は海流に捕まって流されてしまい、もう帰れない思っていたが、知らない間に小さな島に漂着していたようだ。
儂が流されて着く位なら、儂の国にも近いはずなのに見たことがない島だ。
島の中程からマナが吹き出している。儂の国にもマナの滞留する場所があったが、なんという量だ。
こんなに濃いマナなら、魔獣も多いに違いない。速く逃げ出さないと、魔獣に喰われて仕舞う。
こっそり静かに島の周りを巡って小舟をこいでいくと集落があった。上陸して話しかけてみよう。
「****?」
なんと言っているか、全く分らない。矢張、違う国に漂着してしまったのだ。
「ここは、なんという国だ。儂の国のちかくなのか?」
「***」
「***** ***!」
ここの住人が慌ててどこかに行って仕舞った。儂はこの集落の入り口に一人残され、呆然とたたずんでいた。
暫くして村長のような男が来た。彼には熊のような耳があった。隣に人間では有るが小さい老婆がいた。猿に似ている。
その老婆が儂の頭に手を置くと相手の言葉が分るようになった。
「貴方は、結界の外から来た、余所の国の方ですね。」
「結界?その様なもんは感じなかったが。海流に捕まって、気がついたら此処に居たのだ。」
「竜神様が出かけられた、タイミングで結界が解かれた隙にここに着いたんだと思う。」
熊の耳が言った。
ここは『龍神の国』と言うらしい。
この国に来た初めての外の人間が儂と言う事だ。ここの住人が、儂に色々話しかけてくる。皆人なつこい。驚いたことに、ここの住人は犬耳や、鳥の羽を持つものがいた。見た目は人なのだが何かしら動物の痕跡を有している。龍神のおかげで人間に成れたと口々に言うのだ。
そして最大の驚異は、皆魔法を使うと言う事だ。魔法というのは、魔獣が使うものだ。この獣人達は魔獣なのか?
しかし、彼等は親切で、柔和だ。とてもあの恐ろしい魔獣の親類とは見えない。
ここは獣人が、最近創った村だと言った。もっと中心に行くと大きな島があり其処に龍神の住まうマナ火山が有るという。
ここの獣人の技術力は目を見張るものがある。
今まで使っていた儂の小舟など只の木桶だ。
彼等が造った船を貰い、儂はここを出ることが出来た。
暫く進んで振り返っても、其処にあったはずの島は影も形もなかった。
ただ、薄らとした火の輝きが広がっていた。
国に帰りこの事を話しても誰も信じてはくれなかった。儂が乗ってきた船は、皆に驚かれたが、これを作れるものはいない。その内に壊れて朽ちるままになるだろう。誰も直すことは出来ないからだ。
この話は、お伽噺として子孫に語り継がれるだろう。
『火の国、龍神の国』魔法を使う獣人の住まう国。




