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ホワイトフューリアスの影

1958年秋、アラバマ州モンゴメリーの空は灰色に淀んでいた。トミー・レイはホワイトフューリアスの集会場である古い納屋の隅で、タバコの煙を吐き出した。公民権運動のビラが町中に貼られ、黒人たちが教会で歌い、行進する姿が新聞を賑わすたび、トミーの胸に燃える憎悪はさらに熱を帯びた。「こいつらは南北戦争以来の戦いを仕掛けてきた」と彼は呟いた。ホワイトフューリアスのリーダー、ビリー・クロウも同じ考えだった。「奴らを潰すには、俺たちの血を未来に繋げなきゃならねえ」とビリーは拳を振り上げ、集まった男たちを煽った。


ジョー・ウィルソンへの「警告」から数週間、町の空気はさらに緊迫していた。黒人たちは怯えながらも教会に集まり、公民権運動の指導者たちが「平等」を説く声は止まなかった。トミーは苛立った。「連中に分をわきまえさせたはずなのに、なぜ黙らねえ?」 ホワイトフューリアスのメンバーたちは、この戦いが一夜の暴力では終わらないことを悟っていた。彼らが必要としたのは数と力だった。そして、その鍵は若者たちにあった。


ホワイトフューリアスは新たな戦略を立てた。町の白人青年たちを引き込み、組織の未来を担う戦士を育てること。ビリーはトミーに命じた。「お前は口が達者だ。学校のガキどもを連れてこい。俺たちの正義を叩き込んでやる」 トミーはその任務に燃えた。彼にとって、若者たちに「白人の誇り」を教えることは、神聖な使命だった。



トミーは地元の高校や酒場の裏で、10代の少年たちに近づいた。学校をサボりがちなジェイク、父親の農場で働くビリーの息子サム、町の雑貨屋で働く内気なハリー。トミーは彼らにビールを奢り、こう囁いた。「黒人どもが俺たちの町を乗っ取ろうとしてる。奴らが学校や仕事、果ては女まで奪うぞ。お前たちは白人の血を引く戦士だ。立ち上がる時が来た」 少年たちの目は好奇心と怒りで輝いた。トミーは彼らをホワイトフューリアスの集会に連れ出し、松明と十字架の炎の下で「白人の団結」を説いた。


ホワイトフューリアスは若者たちに単純な物語を刷り込んだ。白人は神に選ばれた民であり、黒人はその秩序を乱す敵。公民権運動は「共産主義者の陰謀」であり、抵抗しなければ南部の伝統が滅びる。トミーは少年たちに銃の扱いを教え、夜の「仕事」に連れ出した。最初はビラを燃やす程度だったが、やがて黒人居住区の窓に石を投げ、脅迫の手紙を配るようになった。ジェイクは特に熱心だった。「トミー、俺もロープ持っていいか?」と彼は笑い、トミーはその目を誇らしく思った。


ホワイトフューリアスの影響力は広がった。新しいメンバーが加わり、町の白人コミュニティでの発言力が増した。地元警察は相変わらず彼らの「友人」であり、夜の暴力を黙認した。ある夜、トミーとジェイクたちは、公民権運動の集会を妨害するため教会の前にトラックを停めた。少年たちはトミーの指示で、教会のドアに「白人の町から出て行け」とスプレーで書き殴った。遠くで賛美歌が聞こえたが、トミーはそれを憎悪でかき消した。「これで連中も怯むだろう」と彼は思った。

だが、トミーの胸の奥には、かすかな不協和音が響いていた。公民権運動は衰えるどころか勢いを増し、町の外から記者が訪れ、黒人たちの声が全米に届き始めていた。ジェイクのような若者たちは熱狂したが、トミーは気づいていた。ハリーのような少年は、夜の「仕事」の後に怯えた目でトミーを見ることがあった。「トミー、俺たち、やりすぎじゃねえか?」とハリーは一度だけ呟いた。トミーはその言葉を無視したが、心のどこかで炎が揺らいだ。



ある晩、ホワイトフューリアスの集会でビリーが叫んだ。「この戦いは俺たちの子孫のためにある! 奴らを土の下に叩き込むまで、俺たちは止まらねえ!」 少年たちの歓声が響く中、トミーは松明の炎を見つめた。ホワイトフューリアスは強くなっていた。だが、公民権運動の歌声は、夜の闇を突き破って響き続けていた。



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