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炎の十字架

1958年、アラバマ州モンゴメリー。夏の夜は湿気と憎悪で重苦しかった。トミー・レイ、32歳、白人至上主義団体ホワイトフューリアスの一員は、薄汚れた作業着のポケットに手を突っ込み、公民権運動のビラを握り潰した。「黒人どもが調子に乗ってる」と彼は吐き捨てる。トミーの信念は単純だった。白人は神に選ばれた民、黒人はその下で仕える存在。奴隷制度がなくなったことすら、彼には過分な慈悲だった。

公民権運動の火種が南部の町に広がり、バスボイコットや学校統合の話が新聞を賑わすたび、トミーの怒りは燃え上がった。彼は酒場で仲間と語り合った。ホワイトフューリアスの集会では、白いフードの下で松明が揺れ、十字架が炎に包まれる中、トミーは仲間と共に計画を練った。「黒人どもに、誰がこの町を支配してるか教えてやる」と。



ある夜、トミーと数人のホワイトフューリアス仲間はピックアップトラックに乗り込み、町外れの黒人居住区へ向かった。トミーの手にはロープ、隣の男の腰には猟銃。目的は、地元の教会で公民権運動の集会を開いたジョー・ウィルソンという黒人労働者を「教育する」ことだった。ジョーは最近、町の白人経営者に賃上げを要求し、若者たちに「権利」を説いていた。トミーにとって、それは許しがたい越権行為だった。

夜の闇に紛れ、トミーたちはジョーの家を囲んだ。ドアを蹴破り、怯える家族の叫び声を無視してジョーを引きずり出した。「お前、調子に乗ってるらしいな」とトミーはジョーの顔に唾を吐きかけた。ジョーは抵抗しようとしたが、ホワイトフューリアスの男たちに押さえつけられ、地面に叩きつけられた。遠くで犬が吠え、近隣の家々の窓は固く閉ざされていた。誰も助けに来ない。地元の警察署長はホワイトフューリアスの「友人」であり、こうした「夜の仕事」を黙認していた。


トミーはジョーの耳元で囁いた。「この町で黒人に権利なんてねえ。次はお前の家族だ、わかったな?」 ロープがジョーの首に巻かれ、恐怖で彼の目が見開かれる。だが、トミーは最後の引き金を引く前に一歩下がった。「今夜は警告で済ませてやる。次は燃やすぞ」と言い残し、仲間と共にトラックへ戻った。背後でジョーの妻のすすり泣きが聞こえたが、トミーの心には何も響かなかった。彼にとって、これは正義だった。


翌朝、町は静かだった。黒人たちは怯えた目で通りを歩き、白人たちは何事もなかったかのように笑い合った。トミーは酒場でビールを飲みながら、仲間と昨夜の「仕事」を自慢した。「連中に分をわきまえさせなきゃな」と彼は笑う。だが、心のどこかで、かすかな不安がよぎった。公民権運動のビラは増え続け、若者たちの目はかつてなく鋭かった。それでもトミーはそれを振り払った。「この町は俺たちのものだ」と。



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