あとがきと解説
「しんせつ兵士さんとのんびり村人さん」いかがだったでしょうか。
村人に語りかける兵士の発言のみで描かれた、とくに何も始まらないファンタジー開拓村の日常。
少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです。
本作品の冒頭説明部分にも書きましたが、この作品の主な登場人物である兵士と村人については、あえて性別や外見、年齢の描写をしていません。
二人がどんな人物なのかを読む人の想像にまかせたかったからです。
性別は男同士なのか女同士なのか、男女なのか男装の麗人なのか男の娘なのか不明なのか可変なのか?
種族はどれだろう? 人間? エルフ? ドワーフ? インプ? まだ見ぬなにか?
外見はどんなだろう? 身長は? 髪は? 並んで立ったらそっくり? ギャップあり?
年齢はいくつくらい? 二人は同い年? 年の差がある? あるならどれくらい?
読んでいて、なんとなく頭の中に思い描いた、もっとも心ときめく組み合わせ。
それがこの物語の兵士と村人です。
▼この作品を書いた経緯▼
この作品、元は別サイト「カクヨム」様5周年企画への参加のために書いたものです。
企画の概要は、「出された題をもとに2~3日で1,200~4,000字の作品を書く。それを計10回くり返す」というものでした。
企画の詳細について知りたい方は、以下公式サイトをご覧ください。
『KAC2021 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2021~』
https://kakuyomu.jp/special/entry/5th_anniversary#menu3
企画への参加にあたり、現在執筆中の別作品「欠けた騎士との開拓録 ~竜騎士ですが竜が女の子でした~」(以下「開拓録」)の世界観を使った外伝的なものを書いてみたくなりまして。
その方向でやってみた結果、「開拓録」の舞台になるファンタジー世界の新大陸に作られた開拓村の日常を描くという、連作短編集というか連作ショートショート集のようなものができました。
(「短編」や「ショートショート」、「連作」の定義って掲載サイトや人によって変わるようです。ちょっと迷いましたが、冒頭の説明では本作品を「連作短編集」としました)
もし興味とお時間がありましたら、以下「開拓録」本編をぜひお読みください(露骨な宣伝)。
また、このページ下部にも「開拓録」本編へのリンクをつけております。
『欠けた騎士との開拓録 ~竜騎士ですが竜が女の子でした~』
https://ncode.syosetu.com/n8242fx/
ちなみに本作品は、「開拓録」の時系列で言うと第三章開始(第39話 第一次開拓民、合流!)頃になります。
「開拓録」第3章「第一次開拓民、合流!」
https://ncode.syosetu.com/n8242fx/41/
▼KAC2021にて各話に設定されたお題と解説▼
各話ごとに設定されたカクヨム様指定のお題と、それに沿って各話を書いた後の振り返りです。
見直してみると、全体的に説明っぽさが強いなぁ。
■ようこそ開拓村へ!■
書き下ろしです。
今回ひとまとめの作品にするため、物語への導入が必要と感じ追加作成しました。
■第1話 開拓村での雨の日の過ごし方■
お題:おうち時間
いきなり困ったお題。ファンタジー世界で「おうち時間」って。
しかも舞台は屋外での開拓整備が主軸になる開拓村。
強引ですが、雨の日でのインドアな過ごし方という方向で書きました。
本編の状況を踏まえつつ、本編では語られない兵士や村人の生活設定を含めた話になりました。
■第2話 開拓村で走る理由■
お題:走る
わりと扱いやすいお題でした。
最初は兵士の訓練風景という方向で話を考えてましたが、それでは兵士と村人を関わらせるのが難しいので変更。
村人や兵士たちは、彼らなりに自分たちの目で正騎士たちを見て、理解してます。良くも悪くも。
■第3話 開拓村の直観力談義■
お題:直観
直観という言葉そのものについて考えされる面白いお題でした。
とはいえ書いてみたら物語というより自分なりの「直観」論になってしまったかも。
さらにオチがちょっと唐突というか強引でした。
■第4話 開拓村の夜に響く音■
お題:ホラーorミステリー
わかりやすいけど難しいお題。そもそもホラーもミステリーもまともに書いたことないです。
謎を残す方向で作ってみましたが、説明不足が過ぎますね。申し訳ないです。
描写できていない部分ですが、兵士が聞いた「女の声」の犯人はキツネの子でした。
キツネの子の目的はつまみ食い。
声に誘導された兵士が騎士様とぶつかって会話してる間に、キツネの子はこっそりつまみ食いに向かっています。
キツネの子がなぜ人の声を出せたのか?
その理由は「開拓録」本編にて(隙あらば宣伝)。
■第5話 開拓村でスマホ?■
お題:スマホ
困ったお題その二。
いやスマホって言われても。異世界スマホ?
悩んだ結果、謎の新生物が誕生してしまいました。でも生態はほぼスマホ。超むりやり。
このスマホが本編に登場する可能性はほぼないと思います。
■第6話 開拓村の読み書き事情■
お題:私と読者と仲間たち
困ったお題その三。
とくに「読者」。
ファンタジー世界における識字率、そして「本」ひいては「紙」の貴重さ加減。
作品によって設定が大きく変わるものかと思います。
そして自作品ではそのへん裏設定こそしているものの、本編では未描写。
非常に困りましたが、本編でまだ描写していない裏設定の一部先出しと説明を織り交ぜてなんとかしました。
でっち上げたとも言う。
■第7話 開拓村のダイスゲーム■
お題:21回目
最初はお題を「21回目」ではなく「21」と誤解していました。
そしてネットで「21」を調べているうちに、六面サイコロの出目すべての合計が21であることからヒントを得て、架空のダイスゲームを作成。
ダイスやボードゲームの歴史、ちょっと調べるだけでいろいろ面白いのが出てくる出てくる。
でもそこまで踏まえてがっつり描写すると字数がたりないし、くどくなる。
で、時間もないし頭も煮詰まって、中身がゲームルールの説明だけでほぼ終わってしまったという残念な結果に。
さらに、書き上げてからお題が「21」でなく「21回目」だということに気づいて、強引にオチを付け加えたという。
その後で改めてネットで調べたら、同じようなゲームが出てきました。そりゃ他の人も思いつくよね。
でもゲーム自体は気に入っているので、何らかの形で活かせたらいいなぁ。
ちなみに本文では普通の数字と漢数字を両方使っています。
普通の数字はダイス目そのものに対して使うようにしています。
漢数字はダイス目以外の数字、なにかの回数や個数などの数を現すものに使っています(四回振る、三周する、六面ダイス等)。
数字の混在が気になってしまったらごめんなさい。
■第7.5話 開拓村のダイスゲーム■
第7話として書いていたけど、途中で説明長すぎじゃないかと思ってばっさりカットした部分です。
ただでさえ説明ばかりの7話に、これまでいれたら冗長にもほどがある。
そこまで描くならゲーム内の駆け引きとかまでやったほうがよかったと思いつつ、時間が足りなかった。
でも完全に消し去るのも忍びなかったので、ここに掲載。
■第8話 開拓村のどうぶつふれあい騎士■
お題:尊い
アイデア自体はすぐ思いついたけど、これでよかったのかという不安が頭の片すみに残り続けたお題。
尊いという感覚をまだつかみきれてませんが、こんなんでよかったのかな。
今回の話は、本編を読んだか読んでないかで印象が大きく変わるものになったと思います。
字面だけから想像される「獣騎士」「竜騎士」とお供たちの姿と、「開拓録」にて描写されている彼らの姿は、おそらくかなり違いがあるでしょう。
気になった方は「開拓録」本編をお読みください(何度でも宣伝)。
本編を読んだ方向けに補足しておくと、本編冒頭の事件の前も後も、竜騎士と飛竜、獣騎士と使い魔のふれあい行動内容は変わってません。
いつもこんな感じです。
■第9話 開拓村からの単独行動訓練■
お題:ソロ〇〇
かなり苦戦したお題。
物語の舞台が、危険な魔獣がうろつく自然の中に作られた開拓村。
そのため、そもそも登場人物のソロ活動は推奨されないし、やる理由や余地が少ない。
なかなか話が思い浮かびませんでしたが、兵士たちの訓練に結び付けてなんとか作りました。
題材的に話がシリアスよりになるので、冗談めかした死亡フラグを混ぜてギャグ調に。
■第10話 開拓村の未来は大きく■
お題:ゴール
お題内容と合わせ、連作の最後の締めを意識して作りました。
外伝としての本作品はここで終わりですが、本編のほうはまだまだ続きます。
それを踏まえ、作品内でも登場人物ごとに現状の見方を変えるようにしました。兵士は終わりが近く、村人はまだまだ始まり、と。
▼書き終えてみて▼
いろいろと勉強になる企画でした。
執筆にあたって個人的な目標として立てていたのは……。
・あまり書いたことのない形式で書く。→登場人物である「兵士」の言葉のみで作られた文章を書く。
・「開拓録」本編を読んでなくても楽しめるが、読んでいればより楽しめる。
・「開拓録」本編の直接的なネタバレは防ぐ。
・「開拓録」本編に直接影響するような事件は起きない。
というものでした。
文章の形式、「兵士」の語りによって文章をつづる方法は「第二人称小説」になるんでしょうか? ちょっと違う気もしますが。
この書き方、表現の制約が大きいです。
さらに、村人の発言があってもそれ自体は書かず、兵士に繰り返させるという書き方をしているため、発言としては不自然に感じる部分がどうしても出てきます。
とはいえ、うまく使いこなせれば独自の魅力が出せるかもしれませんね。
また、意図していませんでしたが「開拓録」本編を読んだ人と読んでない人で印象が大きく変わる話というのもいくつか作れました。
しかし、実際に書きあがったものを見直してみると、不満点は残ります。お題限定、舞台限定かつ二~三日で作成という制約は大きい。
まぁそれはそれとして、普段はやらない手順で書くチャンスだったのもあり、新鮮な気持ちで楽しく書くことができました。執筆活動の刺激にもなったと思います。
習作、実験作の色が強い作品で恐縮ですが、お読みいただいた方に改めて感謝申し上げます。
で、カクヨム様の企画参加自体は完了したのですが、せっかく作ったものですし消してしまうのももったいない。
そう思い、「開拓録」を同時掲載している本サイト様にも掲載させていただくことにしました。
掲載にあたって投稿形式を変更しています。
(カクヨム様では一話一作品、こちらでは各話をまとめて一作品)
また文章表現を一部修正し、導入となる「ようこそ開拓村へ!」と締めの本稿「あとがきと解説」を追加しました。
いったん完結となる本作品ですが、よければ画面下部からブックマークや評価を頂けると今後の作品執筆の励みになります。
最後に、改めて自作品の宣伝です。
『欠けた騎士との開拓録 ~竜騎士ですが竜が女の子でした~』
https://ncode.syosetu.com/n8242fx/
竜が大好きな竜騎士と、女の子になってしまった竜が主役の開拓冒険記です。
本作品の世界を騎士たちの視点で描いた、コメディありシリアスありのハイファンタジー長編になります。
よかったらこちらもご覧いただければ嬉しいです。
お読みいただき、ありがとうございました!