第18話
登場人物紹介
青山 輝樹 平凡な人生を歩んでいた社会人だったが
痴漢冤罪により人生が崩壊し、少年院の特殊な教育施設の教師になる。
進藤 傑 警察の人間で本人曰く上層部の人間らしい。
見捨てられたプロジェクトの後片付けとして施設の責任者になったが目的は謎に包まれている。
鮎川 茉莉 施設の生徒、未成年にして国内最強のハッカーにして重度のオタク。
堅剛エリカと仲が良い。
堅剛エリカ 施設の問題児、ヤクザの組長の娘で母の罪を自分で被り警察に捕まった。
学力が低く単純だが根は優しい、鮎川茉莉と仲が良い。
山本 椎 施設の生徒だが体調不良でほとんど休んでいた。罪状は毒物による大量殺人。
しかしそれは冤罪である事が判明した。
料理が得意で怖がりな性格
NO.7080 施設の生徒、自分の身元に関する情報を日本人である事と
(ユエ) とある組織にいた番号と愛称の「ユエ」しか分かっていない。
組織では殺し屋として数百人の人間を殺害したと思われる。
施設では他人と距離を置いている様子である。
青山輝樹に関する事件の登場人物
鰆田 桜 青山輝樹を痴漢の罪で告訴した人物で、豊鏡女子高の3年生。
バイト感覚で援助交際や痴漢の冤罪を着せる仕事もしており、月守聖とは敬遠の仲。
青山 美代子 青山の妻であったが痴漢の罪で逮捕をされた事で離婚。
大学のバトミントンサークルで知り合う。
現在古山と結婚して古山美代子となった。
古山 竜 青山と同僚で美代子と共謀して青山を痴漢の罪に陥れた。
山本椎に関する事件の登場人物
好村 香苗 椎と同じバイト先で働き、椎とは仲が良かった。
椎が冤罪を受けた事件の真犯人で
現在は行方不明。
鮎川茉莉に関する事件の登場人物
鮎川 憲吾 鮎川茉莉の父親、ある会社のデータを娘のウィルスを使い初期化し
その技術を海外に売ろうとした所国によって殺害される。
大木 保則 そこそこ名の知れた探偵で今年に入って大木探偵事務所を開業。
茉莉には恩があり父親の行方に関して無料で調査を行った。
堅剛エリカに関する事件の登場人物
堅剛 芳香 堅剛組の組長、堅剛虎鬼門の妻。
虎鬼門が行方不明のため現在彼女が組を仕切っているが
その事実は組全体にしか知られていない。
堅剛 虎鬼門 堅剛組の組長、十数年前から姿を消し今も行方不明。
月守 聖 堅剛組の事務所の隣の麻雀店で働いている、鰆田とは敬遠の仲。
作者の前作「The Reverse Side」の登場人物。
事件・出来事
重罪少年・少女社会復帰プロジェクト
警察の上層部の間で計画されたもので
実験として40人の少年院の中でも重い罪を持つ子供たちを
森の隔離された空間でできるだけ現実の学校に近い様なスタイルで教育すると言った計画である。
しかし後述する事件により計画は凍結。
36人が辞退し、辞退しなかった4人については進藤傑氏が後片付けとして本来の予定通り1年間教育を続けることになった。
無法地帯化事件
最初の頃は真面目にやっていた40人の生徒も。
少年院より規制が厳しくなくなっている事に気づくと一部が調子に乗り始め。
生徒が教師に暴力行為を働き、それを上に報告するはずの警備員を口封じした事により。
事件の長期化と更に悲惨な事態になる事になった。
生徒同士の暴力行為が盛んになり。
喧嘩、虐め、略奪、強姦行為が当たり前の光景となる無法地帯と化した。
これにより34人の生徒が脱臼、骨折、ノイローゼ、性病感染等様々な問題を起こし
大きな問題のなかった6名の生徒の内2人もプロジェクトを辞退。
これにより警察内で上層部の管理能力の甘さと無計画さが露呈する事になるが。
警察は事件を隠蔽し、世間にこの事件が報道されることはなかった。
青山輝樹の痴漢
真宿駅行きの電車において青山輝樹が女子高生に痴漢行為を行った事件。
青山は逮捕され有罪判決を受けたがしかしそれは誤った判決であり
被害者は青山に痴漢の冤罪を掛け、賠償金を支払わせた。
被害者は真宿にある裏社会のグループの一員でグループのメンバーもサクラとして青山が有罪になる様な状況に仕向けた。
裏社会のグループは一連の犯行を依頼されてやったことが判明しており
その依頼者は青山 美代子と彼の同僚の古山と言う男であった。
第18話
あれは何時ものように怒龍組と抗争をしている時でした。
夫の虎鬼門がいなくなり私は組をまとめる立場になり周りに指示をしながら確実に敵を減らしていました。
「ふん!虎鬼門の妻だかしらねーが女なら一人でじゅ...」
怒龍組の幹部とも呼べるその男、名前はもう忘れましたが
その男は私に慢心しながら襲い掛かろうとした時
彼は私の蹴りで宙を舞い、戦場の相棒であるヌンチャクで的確に相手の弱点を狙い
打撲や骨折はさせても命だけでは奪わない様注意を払いそのまま相手が再起できないほどの連激を食らわせると
彼はそのまま地面に落ち足を骨折させていたので歩けるはずもなくそのまま痛みで気絶しました。
私がその戦いに夢中になっている時で隣でドカンと言う音が響きました。
この音は今でも私は鮮明に覚えています。
私は異様な音を聞き音の聞こえた方向に向かうと
灰色の車が壁に衝突し動かなくなっていました、車の前部は壁にめり込み前部の人間が助からない事は誰が見ても分かりました。
詳しいことを周りの部下に聞くと、追い詰められた怒龍組が銃を乱射し
それが後ろの通りを通っていた一般の車のタイヤに偶然命中し操作の利かなくなった車は
銃を乱射した男を巻き込みながら壁に激突した様なのです。
私はその車から泣き声が聞こえてくることに気づきました。
車に近づくとそこには後部座席に固定され泣いている赤ちゃんと。
前の座席には既に頭を強打し血を流して死んでいる母親の死体と
ガラスに顔を突っ込み誰が見ても死んでいると分かる変わり果てた父親の死体がありました。
この子は私たちの戦いのせいで孤独になる.......。
私たちがこの子の将来を奪った.......。
今まで抗争で一般人が巻き込まれてしまうことは数回ですがありましたが
その度に黙祷を捧げるだけで自分に仕方なかったと言い聞かせてきました。
でも私はこの子の泣き声を聞き、この子の泣く顔見て初めてここまで罪の意識を感じました。
そして私は次の瞬間ある決意を固め私はその赤ちゃんを抱き上げ
自分の事務所へと連れて行ったのです。
「芳香様この子を育てるってほ..本当ですか!」
私は育児本を読みながら部下の質問に頷きました。
正直私のした事への反応なんて何を考えてるのやらと言う呆れの感情が多かったでしょう。
だが私は自分の抗争で未来を失ってしまうこの娘への罪滅ぼしに
この娘を育てると決めました。
赤ちゃんの服にエリカと言う名前が入っていたのでこの娘の名前と性別はすぐ分かりました。
「これからおまえは堅剛エリカとして生きていくんだぞ~」
「きゃっきゃっ!うーうー!」
意味なんてわかってないだろうがエリカは私の腕を掴みニコニコして
私と遊んでいました。
幸いこの娘はとても丈夫で元気な女の子だったので
私はとても嬉しくて彼女の成長が楽しみで仕方ありませんでした。
最初は私の事を馬鹿にしていた部下たちも
何時の間にか育児本やこどものおもちゃを買ってくるようになり
エリカと遊んだりしていました、彼女に暴力を振るう人間がいたら除名どころか消してやると思っていましたが
そんな部下は一人もいなくて皆彼女を可愛がり、彼女が健やかに成長してくれるのを願いました。
彼女が幼稚園の時珍しく病気にかかったのですが、その時は彼女の心配ではなく
20人ぐらいの男達全員が泣きながら彼女の安否を心配して中には救急車を呼ぼうとする人間まで現れたので
そちらの方が心配なくらいでした。
そして彼女は17歳になり、馬鹿で常識もなくて胸も大きくなったのにブラをつける事をしなくて何時もノーブラで夏は絶対裸で寝るし.....
元気すぎる余り女としての恥じらいやお洒落と言った物を全く知らないままでした。
何せこの親に育てられ、馬鹿な男達に可愛がられ最終的には共闘するようになったのですからしょうがない事なのかもしれません。
女としての恥じらいや勉強については私もあまり人の事が言えなかったので強くは言えず。
そうそう私がもう少しその辺の躾をするべきだと痛感したのは
一人で風呂に入れるようになってからずっと部下と同じ時間に地下の大浴場で入っていたのですが
小学生ならまだ良い物の中学生になっても気にせず挙句の果てに高校生になっても男と同じ時間に風呂に入っていたので。
部下の方から理性が抑えられなくなりそうだし直接言うのは申し訳ないから、何とかして欲しいと言われたのを聞いて頭を抱えたのを私は忘れません。
人としての心や仁義は体に染み付くぐらいきっちりと教えました。
その上彼女は私だけの愛では留まらず、この組の全員から愛されて育ったので
人に優しく信じる心も強く、下衆な人間を絶対に許さない心と言う事だけは立派にできたと私は思っています。
しかしそこだけしか彼女に与えられるものがなくて
その上彼女は私が反対したにも関わらず組の抗争を手伝うと言って
戦いにも中学生の頃から参加するようになってしまい......。
罪滅ぼしのために彼女を育てたのに、与えられるものがなく
むしろ彼女から与えられているものが多いのではないか.....。
そんな事を思っていた矢先でした、あんな事になってしまったのは......。
「ここであいつんとこの娘がジョギングしてるんですってよ兄貴」
「堅剛組の糞アマだろ、しかも強くて俺の相棒がボコボコにされてよぉ
本当腹立つわ」
娘が日課のジョギングをしている場所を用事があって通り過ぎ様とすると
堅剛組という言葉を聞きふいに立ち止まると
20人くらいの怒龍組の集団が広場にたむろっていた。
「いくら普通に戦っても勝てないならこれ使えばいいでしょ
その為の催眠スプレーってやつ、抗争の時じゃ化学兵器とか禁止だからバレたらやべーけど
まぁバレなきゃ大丈夫、大丈夫だろ、なっ」
「かぁー組長の娘犯せるとか一生ない機会ですわ
で散々まわしたらそのままあのでけぇ胸にナイフぶっ刺して
首切って怒龍様に献上すれば俺らも側近じゃね!」
堅剛組の組長の娘......エリカ。
こいつらはエリカがジョギングしている所を催眠スプレーを使って眠らせ
最終的には殺す気でいる.......。
「んでそいつどこなの今?」
「この公園を1週してくんだからいずれ回ってくんだろ」
「作戦通りにな
5人ぐらいで囲んでそれに気を取られてるうちに催眠スプレーかけて眠らせろ!
その後は地獄を見せてやるよ堅剛組の糞アマにな!」
「おい!おまえら.......」
私は何時の間にか着ていた和服を脱ぎ捨て戦闘体制へと変わっていた。
自分でも頭に血が上って冷静な判断をする事ができなくなっているのがわかっていた。
「へっ.....おまえは堅剛組の芳香!聞いてねーぞ
母の方がこっちにきてんだなんて!」
「俺だって知るかよ、おまえらこうなったらやけだ全員でかか.....」
そう言った瞬間私は全員でと口にした男を宙に飛ばし
以前の様に当てる場所を意識してヌンチャクを振り回すことをせず
我武者羅にヌンチャクを振り回しそのまま地面に落とし
「許さん許さん許さん許さん娘には一歩も触れされない!」
それは今思えば狂気の沙汰だった落とした後もヌンチャクを振り回し続け
許さんと連呼をし続けながら相手の顔が変形するまでヌンチャクを当て続ける
「ひぃ.......ねっ眠れーーー!」
後ろの男が恐怖に震えながら催眠スプレーを発射すると
私はすかさず飛び上がりスプレーを回避しそのまま怯んだその男に対しドロップキックを食らわせ
催眠スプレーを奪い取り遠くに投げるとそのままただ怒りに任せたヌンチャクでのラッシュが始まる。
どれくらいの時間が過ぎただろうか、少なくとも私の周りに立てる人間がいなくなった時
私は初めて自分が20人の人間をすべて殺してしまった事に気づいた。
いくら娘を守るためとは言え私は自分の感情で人を20人殺してしまったのだ。
それは警察や怒龍組の協定に違反する、勿論最初にルールを破ったのは怒龍組だが
組長代理でありながら冷静な判断ができなくなるのは致命的なミスであった。
「組長失格.......ね」
私は警察に自首をする事を決め。警察に向かおうとしたその時だった。
「嘘だろ....お袋....なんで....」
ジョギングで通り過ぎた娘が私のことを驚いた眼差しで見ていたのだ。
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「後の事は娘から聞いていると思います
娘が私の代わりに自首した事......
元々私はあの娘に抗争の手伝いなんかさせたくなかったし
それなのに私のためにあの娘自ら汚れ役を買ってでて....
私は親なのにあの娘に何もしてあげられない....親としても組のトップとしても失格です......」
芳香さんはとうとう泣き崩れてしまった。
しかし話を聞いていても悲しいすれ違いの話である。
芳香さんは本当は彼女を不幸にして罪滅ぼしに親になったにも関わらず
親として自分はあまりよくしてあげられなかったと思い込み、その上娘の方が色々してくれて
自分はエリカにも駄目な親だと思われてると思い込んでしまってる。
けどエリカは芳香さんに会いたがってた。
本当に駄目な親なら会いたがる訳はない。
それにエリカさんが語る芳香さんはカッコよくて強くて彼女にとって憧れの存在の様に感じられた。
そして芳香さんがエリカを心配する事が逆にエリカが自分は頼られてないのかと言う不安にも繋がり
エリカ自身も芳香さんに返事が出せない状況になってしまった。
本当に悲しいすれ違いだけれども今二人の感情を知った僕なら。
すべてを元通りにする事ができるかもしれない。
僕はある秘策を考え付き、芳香さんに提案した。
「芳香さんもうひとつ話があるんですが聞いてもらえませんか?」
続く




