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10.聖女、制圧する


 開けた場所で騎士団(ゴミカス共)が休憩を開始。


 部下たちを周囲に散開させ、完璧なまでの包囲殲滅陣が完成しました。


 馬から降りて休んでいるバカ共(騎士たち)の前に私たちが姿を現します。


「——な、なんだお前ら!!」

「て、敵襲! 敵襲だ!」

「クソッ、いつの間にここまで接近されたんだ!?」

「落ち着け皆! 数は俺たちの方が上だ! 負けようがないぞ!」

「いち、にい、さん……ほ、ほんとうだ!? お前ら俺たちが第三騎士団と知って挑んでるんだろうな?!」

 

 知ってるから挑んでいるに決まっているだろうにこのバカ共は……


 索敵能力も無いバカ共の戯言は無視することにします。


「身に着けている装備と金目の物を置いて逃げるのなら見逃しましょう——

 そうでないのなら痛い目にあいますよ——」


 私の言葉を聞いたゴミ共は笑い出しました。


「——ぷ、アハハハハハ! き、聞いたか皆?」

「き、聞こえてるに決まっているだろ! アハハハハ」

「は、腹が、腹が捩れる……!」

 

 隣に立っているユーリに首を傾げます。


 私はそんなに面白いことを言ったのでしょうか?

 

 ユーリも何が可笑しいのか理解出来ないようです。


 なので素直に聞いてみることにしました。


「何がおかしいんですか——?」

「フ、フフフ。本気で聞いているのかい? これだから低能な連中は困るね」

「全くだ。こんな連中でさえ導いてやらないといけないとは……貴族というのも大変だよ」


 私のストレスゲージがそろそろカンストしそうです。


 部下に殺すな、と言った手前このゴミ共を処分できません。

 

 必要なら殺しますが、今はその必要がないので見逃しましょう。


 私はプロですから——


「おい。お前らが最近噂になっている盗賊か?」

「そうですよ——」

「まさか……お前みたいな小娘が率いてるのか?」

「そうですよ——」

「戦力差は歴然としているんだ。大人しく投降したらどうだ?」

「そうですよ——」

「……会話をする気はあるのか?」

「そうですよ——」


 これ以上会話を続ける必要はありませんね。


「総員、抜刀——」


 私の言葉に部下たちは事前に渡しておいたユーリ特製の鉄の棒を抜き放つ。


 それはどこからどう見てもただの鉄の棒。


 ちなみに角があると危険なので丸くしてあります。


 生身の人間を全力で殴れば死ぬでしょうが、相手は鎧を着込んでいるので問題ありません。


「それでは貴方たちには我々の糧となってもらいます——」

「こちらが優しくしていればつけ上がりやがって! 男は全員嬲り殺せ! その小娘も死んだ方がマシな目に遭わせてやろうじゃないか」


 ゴミ共は勝ち誇ったように下卑た笑いを浮かべ剣を抜き放つ。


「はいはい怖い怖い——

 〈再生魔法(リジェネレイト)〉——」


 私の部下にバフを付与。


 これで多少の怪我をしようが問題ありません。


 万が一にも死ぬような者がいた場合は、二度とヘマをしないように私とユーリの個人レッスンが待っているだけです。


 死んだことを後悔してもらいます。


 目の前のゴミ共が殺気立って行くのを感じながら一言。



「それでは皆さん——

 ご安全に——!」


 ◇


 森の中に鉄と鉄がぶつかり合う音が響き渡り、獣とは違う悲鳴が木霊する。

 そしてその中に嬉々とした少女の声が聞こえてくる——


「逃がすなー! 囲め囲めー!」

「ひ、ひいいいいい! た、助けてくれ!!」

「ぐえっ! 痛——痛い! やめっぎゃあああああ!」


「気絶した奴は放置でいいですからね——

 いちいち追撃しないように——」

「「「うーっす」」」


 数は私たちの方が少なかったとはいえ、蓋を開けてみれば圧倒的優勢。


 弱い、弱すぎる——!!


 包囲殲滅陣を敷いて徐々に円を縮めることによりゴミ共を一ヶ所に集める。


 向かってこようが逃げようが関係なしに鉄の棒で叩き続けた結果。


「こ、降参だ……命だけは……助けてくれぇぇ……」


 一人を残して全員気絶してしまいました。


「カイン——

 コチラの被害状況を報告してください——」

「はい、切り傷を負った者が四人。あとは無傷です」

「すばらしい結果ですね——

 四人は後で私とユーリが特別に愛でてあげるので覚悟していてください——」

「ひぃいい、勘弁してくださいボス!」「後生です!!」「何卒命だけは!」「コイツらのせいで……!!」

「はいはい八つ当たりはしないように——

 では各自装備を剥ぎ取る作業を開始してください——

 四人は他の人より働いたら免除になるかもしれませんね——?」

「「「「お任せくださいボス!!!!」」」」


 部下たちがテキパキと第三騎士団の装備を剥ぎ取っていきます。


 その様子を眺めながら近くの木の根元で一休み。


 ちょうど木陰になっていて気持ちいいですねぇ。


 スイッチを切っておきましょう。


「ところで、ユーリはどこに行ってたんですか?」

「おっと、気付かれてたか」

「途中から抜け出して……おしっこですか?」

「女の子がそういうこと言うなよ……」


 戦いの最中にユーリが包囲殲滅陣の輪から抜け出して何処かへ行ったのは確認済みです。


 個人的にはトイレかな? と思いましたが、周囲に感じていた気配が消えているので別件でしょう。


「どんな奴らでした?」

「多分第三騎士団の監視役だな。一応連中は貴族の子息だからな。万が一に備えてたんだろ。無駄だったけどな」

「ですねぇ。それで、そいつらはどうしました?」

「向こうで木に繋いでいるよ——どうする?」

「生かして返すのは騎士団だけでいいので、残りは処分でいいですね」

「わかった。じゃあ殺してくるからお前はそのまま休んでてくれ」

「はーい。あっ! 装備も剥ぎ取ってくださいね!」

「はいはい——」


 ユーリを見送ると、大きな欠伸が出てしまいました。


 まだ時間がかかりそうなので少しだけ目を閉じるとしましょう……少しだけです、少しだけ……



「ボス。終わりましたよ」

「——んん、ご苦労さまです。どれくらい集まりました?」

「鎧だけでアイテムバックの容量を超えました。残りは手で運ぶしかないですね。武器の類は絨毯に乗せてあります」

「よろしい。では撤収!」

「「「「うーっす」」」」


 回収した戦利品を各々が風呂敷に包んで背負い終わったタイミングで雑音が聞こえてきました。

 

「き、貴様ら! この俺を誰だと思っていやがる! こんな目にあわせてただで済むと思うなよ!!」

「えーっと、あなたがどこの誰かなんて知りませんので、どうぞご自由になさってください」

「な……ふ、ふふふ、いいだろう教えてやる。俺はハメーツ王国に仕える宰相の息子だ!」


 な、なんですってー!!!! ……とはなりませんね。


 宰相の息子といえど、第三騎士団にいる時点でお察しですし。


「貴方は現実が見えてないようですね。宰相の息子といえど、第三騎士団に追いやられている時点で貴方の価値はないに等しいんですよ? 理解できます? ウケますね(笑)」

「き、貴様ぁあああ——あ?」


 何かが宙を舞いドチャッと音を立てて落ちた。

 宰相の息子は最初なにが起きたのか理解できずにいた。

 だが次第に熱を帯びた傷口から溢れ出る血を見ると理解する。

 理解した瞬間——切り落とされた左腕の付け根から発せられる痛みによって、感情の全てが痛みへと塗り替えられていく。


 痛みに呻きながらも顔を上げると目が合った。

 目出し帽から覗くその瞳からは、何ひとつとして感情を読み取ることができない。

 怒りも、喜びも、悲しみも、哀れみさえも——

 


「おっと、やってしまいましたね。〈回復魔法(ヒーリング)〉」


 まるでついウッカリやってしまったような軽い口調。

 宰相の息子は恐怖し理解した。

 目の前の存在は人の皮を被った化け物であると——

部下の男ども 15名 15/15


タンタン:大冒険に憧れて冒険者になった男。現実は非情である。

チーズ :犬の鳴き真似がうまい。アンアーン!

ツイン :一人なのにツイン。そんな感じの男。

テッド :熊に似た毛深い男。2番目に強かった男。

トーマス:エジソンという弟がいるらしい。

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