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異世界マサカー  作者: 香草(かおりぐさ)


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1/12

1 大虐殺

 血と肉と臓物と・・・

 それが全てだった

 何もわからないし、なぜ生きているのかもわからない

 ただ俺は、目の前にいる人間を、右手ののこぎりと左手の鉈で切り刻み殺す

 殺せば殺すほど気分は高まり、高鳴る鼓動を抑えることはできなかった

「や、やめてくれ! 殺さないでくれ!」

 俺の前にいる男は必死に助けを乞うているが、聞き入れてやる義理などない

 そして俺の右手ののこぎりが奴の頭に振り下ろされ、かぱぁと頭が二つに割れる

 その直後、血に染まった俺を雷が貫いた

「ああ、やっと、死ねる」

 何故そうつぶやいたのか分からない

 もはや俺が何者で、なぜこんなことをしていたのかも理解ができない

 痛みはない


 光が導いた

 白く白く、まるで俺を天に召すかのようにして

 その光に手を伸ばすと、花畑に俺は立っていた

「フー、フー」

 雷の衝撃が戻って来たかのように、体にけだるさがあった

 周りを見ると、何かが立っていた

「来ましたね。では行きましょうか」

 それは白く光る光の柱

 声はまるで頭に響いて来るかのようだ

「何も、聞かないのですね?」

「・・・、・・・・・?」

 声にならぬ声でつぶやく

「破壊者を、殺人者を、この世界を蝕む異界からの放浪者を」

 俺はただうなづき、その白い何かが出した光の扉をくぐった

 その時体に何かが溢れる感覚があったが、気にせず歩みを進めた


「アレ、本当に使えるの?」

「使えるなどと、そのような言い回しは好きではありません。あのこにはこの世界を救えるだけの力と、そして、心があります。きっと、いいえ、必ず救世主となるでしょう」

「そ、じゃあ僕も見守るよ。君が信じたあのこを」

 

 扉の先にあったのは燃え盛る家々と死体の山

 血と肉と臓物と

 ああ、これは俺が生を実感できる景色だ

 俺は今笑っているのか?

 白い光が殺してほしいのは、これをやった者に間違いないだろう

 そしてそいつは瓦礫となった家で大笑いしていた

「ぎぃいいああっはっはっはっはっはっはっは!!!! 気持ちい! 最高に気分がいい!」

 そいつの手に握られているのは錆と欠けでボロボロの鉄の剣

 にもかかわらずそれは磨き上げられた刀のように美しさを放っていた

 血濡れだからか、それともそういう力か?

 そうだ、なぜだか分かる

 相手には力がある

「何だ?まだガキが生き残っていたか?」

 そいつは首を傾け、俺をにらむ

「おいガキぃいい。まずどこからだぁ?」

 何を言っているのか分からず俺も首をかしげる

「言葉が通じねぇのか? まあこの世界のガキってぇのはバカばっからしいしなぁ」

 気味の悪い男だが、俺が言えた義理でもない

「フー、フー」

 俺は深く息をしてから何も持たない右手と左手を交互に見る

 分かる。なぜか分かる

 俺の右手から出るのこぎり

 それはオレが長年使い古した、この手に馴染むものだった

 だがやけに大きい

「フーフーフー」

 息を吐く、吸う

「何だぁガキ、そんなもんでやるってのか?」

 足に力を込めて飛び上がって斬りかかる

「うお!」

 突然の動きに男は驚き、それでもボロボロの剣で受けた

「ぎゃぁああっはっはっはっはっはっはっは! ガキの割には大した腕力じゃねぇか。お前、まさか俺と同じかぁ?」

 俺は答えない

 ただ、左手からもう一つのこぎりを出して二撃目を加える

「ぎひぃ! 俺と、同じタイプかよ!」

 男もまた左手からボロボロの剣を出し、俺の胴を切り刻んだ

「グフッ」

 臓物が俺の腹からあふれ出て、口からは大量の血液が噴き出す

「弱っちいなぁ、面白くねぇ」

 下半身が地面に落ちるのが見えたが、俺は手を止めなかった

 のこぎりをさらに出して臓物で掴み、男の頭に振り下ろした

「ぎ!? あ、れぇ? お前、真っ二つぅう」

 いともたやすく男が斬れた

 そして俺もびちゃぁと地面に落ちて、ドロドロのまどろみへと落ちて意識を消した


 死んだはずなのになぜか目が覚める

 一番最初に目に入るのは木造りの天井

 古めかしいが手入れはされていた

「目が覚めたのね。良かった。血まみれの中倒れてたから死んでいるのかと思ったわ」

 声のする方へ首を傾けると、女性がこちらを優しいまなざしで見つめていた

「ツッ」

 その時何かがフラッシュバックするかのように頭をよぎるが、それが何なのか分からない

「もしかして怪我があった!? ちゃんと脱がして隅々まで調べたけど、もしかしてどこか骨が? ごめんなさい、この村、治療師様がいらっしゃらなくて」

 俺は首を横に振る

「痛く、ないの?」

 その問いには首を縦に振った

「そう、良かった!」

 女性は椅子から立ち上がると、どこかへ行き、すぐ戻って来た

 木のカップだろうか? それを俺に差し出す

「お水よ。ずっと寝ていたから喉が渇いたでしょう?」

 差し出されるがまま、俺は水を飲み下した

 確かに喉が渇いていたのだろう。割と大き目なカップの中身はすぐ空になった

「ふふ、それにしてもあの大惨事で良く生き残ったわね。村を襲撃した異世界人は誰かに倒されてたみたいだけど、あなた、なぜすぐ避難しなかったの?」

 俺は首をかしげる

「分からない、の? そう言えばあなた名前は? 言葉は、分かってるわよね? どこから来たの? この村にあなたみたいなかわいい子、私以外にいないはずだし、別の土地から来たのよね?」

 言っていることは理解できるが、意味が分からない

「もしかして、話せないの?」

 俺は喉を抑える

 そしてまた、頭痛と共に映像がフラッシュバックした

 焼けた家、取り残される自分

 そこで映像は途切れる

「そっか、しゃべれないなら仕方ないか。もしかしたらあの男を倒した人を目撃してるかもって思ったけど・・・。村を救ってくれた恩人だからお礼が言いたくて」

 そうか、俺が倒したことは気づいていないようだ

 まああの状況であの場に残っているのはよほどのバカか、見捨てられた者くらいだろう

「ところであなた、行く当てはあるの? もしよかったら、ここにいてもいいわよ」

 俺は少し考え、コクリとうなずいた

 白い光の言っていたターゲットは、あの男のような者のことだろう

 一人で探してもらちが明かないことは明白だ

 この俺がいた世界とは全く別の世界の情報もなにもない

 言葉が通じるのはきっと白い光によるものだろうが、情報が無ければ何もできない

 ひとまずこの女性の厄介になることにした

 だがこの女性はなぜ俺をこんなにすんなり受け入れた?

 俺はこんなにも()()()()()をしているのに

 不思議に思いつつ、俺は再びカップに注がれた水を見てみる

 そこに写る顔は・・・

 俺はベッドから勢いよく飛び上がり、近くにあった掃除用と思われる水桶をのぞき込んだ

 誰だ、これは!

 いや、微かに記憶がある

 これはオレがまだ・・・

 そこで激しい頭痛に襲われ倒れ込む

 彼女の叫ぶ声が聞こえ、抱きかかえられたところで再び意識を失った

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