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無愛想な旦那様は、私の『耳』を溺愛しているようです 〜機密情報を囁くだけで、甘いお菓子と安全なベッドが手に入りました〜  作者: 河合ゆうじ


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第238話 防衛機構

 長官の背後にある壁面が左右に分かれる。

 岩の摩擦音が響き、現れた暗がりから蒸気が白く吹き出した。

 蒸気の奥で、鈍い赤色の光が明滅している。

 金属の関節が擦れ合う音が近づいてくる。

 人型の金属骨格が、絨毯の敷かれた床へ足を踏み出した。

 胸部の装甲の隙間から、赤い鉱石の放つ光が漏れている。


 レオニスが銃を構え、引き金を引く。

 発砲音が連続して空間を打つ。

 鉛の弾丸が金属の表面に命中し、火花を散らして床に弾き飛ばされる。

 装甲の表面に浅い窪みができるが、機械の足は止まらない。


 「経費の無駄撃ちね。弾代も請求書に上乗せしておくわ」

 私は散らばった書類を踏まないように後退する。

 レオニスは空になったシリンダーを開かず、銃をホルスターに戻した。

 彼は壁際に視線を向け、崩れたレンガの下から突き出ている太い金属の配管を掴む。

 力を込めて引き抜くと、固定具が外れる高い音が鳴った。

 彼は長さのある金属の棒を両手で構える。


 機械の腕が振り上げられ、レオニスへ向かって振り下ろされる。

 彼は体を沈めて軌道を避け、金属の棒を機械の膝の関節へ叩き込んだ。

 金属同士が激突する硬い音。

 装甲が凹むが、機械は体勢を崩さずに別の腕を振るう。


 私は目を閉じ、機械から発せられる音の層を分解する。

 モーターの唸り、金属の摩擦音。

 その奥で、液体が細い管の中を流れる連続音が聞こえる。

 冷却液の循環する音。

 右側に立つ機械の胸部から、液体の流れる音が不規則に途切れている箇所を拾う。

 熱が滞留し、管の圧力が上昇する微かな摩擦音。


 「右側の手前。首の付け根のすぐ下よ」

 私は目を開け、レオニスの背中へ向けて声を張る。

 「冷却液の流れる音がそこだけ詰まっているわ。熱が溜まって装甲の膨張が限界に達している」


 レオニスが床を蹴る。

 彼は振り下ろされる機械の腕を金属の棒で受け流し、相手の懐へ滑り込んだ。

 彼が棒の先端を、私が指摘した装甲の隙間へ正確に突き立てる。

 金属が破断する鋭い音が鳴る。

 突き立てられた隙間から、高温の蒸気と透明な液体が勢いよく噴き出した。

 液体が床の絨毯に染み込み、焦げた匂いが立ち昇る。

 機械の赤い光が点滅を繰り返し、完全に消灯する。

 重力に従い、金属の塊が絨毯の上に倒れ込んだ。

 地響きが足元を揺らす。


 長官は椅子の横から立ち上がり、奥の暗がりへ向かって無言で後退していく。

 彼が身を隠した壁の奥から、新たな金属の足音が重なり合って聞こえてきた。

 胸部の赤い光が、蒸気の向こう側で列を作って増殖している。

 レオニスが金属の棒を握り直し、靴底を絨毯に擦って体勢を低くした。

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