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彼女の「腹ドン」がエッチすぎるので、俺たちの高校生活はカオスになります。  作者: 阿井川シャワイエ
1章 霧島優羽

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40話 混沌

「でもね、あくまでもお付き合いできないのは、今の私だから。もしナオ君が恋人にフラれちゃったら、最終的には私が責任を取らないといけないからね。頑張ってナオ君に相応しい女の子になるつもりはあるんだよ」


「俺に相応しい?」


 優羽の言葉の意味は、正直よく分からないが……。

 今がダメなだけで条件さえ揃えば、俺と恋人になってくれるってことか?

 希望は、まだ消えていない?


「そうだよ。ナオ君のために私は――欲張りセットな私になってみせるから」


「……うん?」


 欲張りセット?

 一体なんの話だ?

 このタイミングで出てくる単語とは思えないが……。

 フラれて衝撃を受けていた間に、彼女の話を聞き逃していたのだろうか。


 優羽は俺の困惑をよそに、こちらに近寄ってくる。


「ナオ君が私をドンドン言わせたときの、あのギラギラした目、イヤらしい表情! 私、分かったの。ナオ君はかなりこじらせた性癖の持ち主だって!」


「……えっと……?」


「今まで私にドンドン言わされてたのに、立場が逆転して私を一方的にドンドン言わせる、そういうの好きだったんだね。そう考えてみると、ナオ君はたくさんの性癖持ちだって気付いたの。人妻と思ってたユキお姉ちゃんのことが大好きだったでしょ? それに脚フェチで、私の足の裏をくすぐったときの興奮っぷりもすごかったね。もちろん大きなお胸が好きなのも把握してるし、あっ、あと、私のお尻にも興味を示してくるよね。そしてなにより、私のお腹! 特におへそを見るときのあのエッチな目といったら……。考えてみたら、だいたい私のせいかなあ、参っちゃうね。でも安心して。さっきも言った通り、ナオ君の性癖をこじれにこじらせた責任はちゃんと取るよ」


 早口で言ってくる彼女。

 なにか言い返さないといけない。

 それだけは分かっていた。

 けれど、どんな返事も思い浮かばない。

 彼女がぶつけてくる言葉のラッシュについていけず、説明も釈明も反論もできないまま、ただただ優羽の言葉を浴び続けてしまう。


 ――俺は今、優羽が生み出す「なにか」に飲み込まれようとしている。 

 そんな諦めにも似た感覚が、頭の働きも口の動きも鈍くしていた。

 いや、「なにか」ではない。

 こういった状況には心当たりがあった。

 ……この周囲全てを混乱させるような、思わず黙り込ませるような、そんなワケの分からない状態……。


 優羽はついに俺の肩をグッとつかみ、情熱的に俺の目を覗き込んでくる。


「そういうナオ君が抱えている変態願望をうまく刺激できれば、いずれナオ君も理性というリミッターから解放され、ドSとして私に襲い掛かれるようになると思うんだ。私という性欲モンスターを力でねじ伏せて最後の瞬間までリードできる、エッチな若旦那になれると思うの。だから、もし恋人にフラれても安心して。それまでの間に私も修行を積んで、ナオ君のどんな性癖にも対応できる、こじらせ性癖全部乗せ女になっておくから!」


「なっ、なに!? なんの話なのこれ!?」


 矢継ぎ早に言ってくる彼女。

 頭にはハテナばかりが浮かび、耐えきれなくなった俺は思わず叫んでしまう。


 彼女は俺の声が聞こえなかったのか聞く気がなかったのか、笑顔でこちらに手を振りながら部屋から出て行った。


 彼女の部屋に1人取り残される俺。

 呆然としながらもなんとなく思い浮かんだのは、マコトとユキさんの言葉。


『ナオはカオスを生むからなあ』


『優羽とナオ君は、本当によく似てる』


 ……なるほど……。

 みんなが言っていたことの意味を、俺はいまようやく理解できた気がする。


 ――これが、カオスか……!


 優羽も、カオスを生み出すタイプの人間だったのだ。

 考えて見れば、そもそもワルミちゃんなんて人格を活用する時点で既にカオスの片鱗を見せていた。


 そして俺も確かにカオスな空気にすることに関しては身に覚えがある。

 俺と優羽というカオス生成者同士が恋人になろうとすると、自然とこういったカオスを乗り越えねばならないわけだ。

 お互いに好き同士なのに、よく分からない遠回りをすることになるわけだ。


 一瞬へこたれそうになるが……それでもなんとか気持ちを立て直した。

 だって、優羽は俺のことが嫌いなわけではない。

 むしろ好き過ぎて、身を引こうとしているのだ。

 それなら俺はまだ頑張れる。

 

 ああそうだ、やってやる……!

 カオスになんて絶対に負けない!!


 どんな欠点があろうとも、俺は優羽のことが好きなんだ!

 少しくらいカオス生成能力があるからと言って、それがなんだ!

 お互いに悪いところがあっても、補いあって幸せに暮らす。

 告白の時に言った言葉を取り消す気はないのだ!


 俺は絶対に優羽と恋人になる!

 別の恋人なんて作らない!

 フェチズムの力も借りず、自力で優羽をリードして見せる!

 優羽をこじらせ性癖全部乗せ女なんかにさせない!

 ていうか、なんなんだそれは!


 ここは優羽の部屋なのだし、待っていれば彼女は戻ってくるだろう。


 彼女が部屋に入ってきたら即座に気持ちを伝えよう。

 カオスに巻き込まれる前に、きちんと伝える。

 ありのままの優羽が一番いい。

 俺が恋人になりたいのは、今の優羽。

 そう言って、優羽をギュッと抱きしめよう。

 優羽の様子によってはそのまま押し倒してもいいかもしれない。

 俺はすでにエッチな若旦那なのだと証明するのだ。


 頭の中で、繰り返しイメージトレーニングする。

 ありのままの優羽。それがステキ。俺と恋人になって。そう言いながら、ギュッと抱きしめる。そのあとは俺の欲望のまま、優羽をリードして――。


 ギィィィ……


 そんなときに聞こえた、扉が開く音。

 イメージトレーニングの成果だろうか、扉が開き切る前にバッと立ち上がることができた。

 けれど。

 ……練習の成果を披露することは無かった。


 入ってきたのはもちろん優羽。

 だがその服装に目が奪われる。

 優羽が着ているのは、ゴスロリメイド服。

 彼女が俺のために買ってくれた、あのメイド服だ。

 注目すべきは彼女の足。


 その素足の美しさは前回のデートの時に間近で見て知っていたわけだが。

 今はそのときよりさらに美しい。

 まるで洗った直後のように、瑞々しく輝いている。

 というか、本当に軽くシャワーでも浴びてきたのだろう。


 優羽の髪も湿っていて、彼女からほんのりと漂うシャンプーのいい香り。

 なんだか頭がボンヤリしてきた。

 そしてそんな優羽が手にしているのは、黒の二ーソックス。


 これは……まさか……!


「ねえ、ナオ君。約束してたよね」


 そう言いながらニーソックスを俺に差し出す優羽。

 爽やかさと妖艶さが同居する、魅力的なその微笑み。


「あの時の続き、今のうちにしておこう。――履かせてよ、二ーソックス」


 優羽の言葉は俺の脳ミソにダイレクトに届き、強烈に揺さぶってきた。

 俺の答えはもちろん……。


「はい、よろこんでっ!!」


 笑顔で叫びながら彼女の前まで駆けていき、ニーソックスを受け取る。

 その動きは、久しぶりにご主人様に会えたワンちゃんのよう。


 優羽の生み出すカオスはとても魅力的で、どうも俺には逆らえないようだ。


 ある意味この状況が、俺と優羽の恋人としての日常ではないか。

 そんなことを思いながら彼女の脚にいそいそとニーソックスを履かせる、新人脚フェチの俺だった。


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